100万円以上の売上を失うも、オンラインへの新たな動きが増加

新條隼人氏(以下、新條):西村さんはコロナ前後で変化したことはありますか?

西村創一朗氏(以下、西村):大きく変化したなと思っています。やっぱり外出自粛になって、オフラインでのイベントなどができなくなったことによって、とくに2月・3月は僕も(打撃を受けました)。

大村さんほどではないものの、講演・講師業は全体の収益の1~2割ぐらいあります。2月から3月、4月の一部のイベント・研修は、もう軒並み中止もしくは延期。カンファレンスとかもそうですね。

新條:うーん、なるほど。

西村:だから売上で言うと100万円ちょっとぐらいぶっ飛んだみたいなところはありますね。

新條:確かに。

西村:ただ、講演業がメインではなかったので大怪我と言うよりは、かすり傷ぐらいで済んだかなとは思います。逆に言うと4月以降は「オンラインの中でもイベントをどうにかやれないか」みたいな動きがだいぶ浸透してきました。2月から3月はまだぽつぽつでしたけど、4月以降はだいぶ増えてきました。今回のanother life.さんのイベントもそうですけど、またちょっと風向きが変わってきた感じはしますね。

新條:なるほど。さっきの大村さんと同じ質問です。今はもう独立されて1つの会社だと思うんですけど、それこそ新卒3年目から複業を始められて、西村さんの事業が成長してきたなかで、お客様の獲得の仕方とか、どんなふうに広げていかれたんですか?

西村:最初はブログメディアの運営だったので、BtoBで営業をしてと言うよりは、僕はひたすら自分なりに企画を練って記事を書いて、がんばって拡散して、いかにバズる記事を書くか、みたいなことをけっこうやっていました。

2013年の5月、ゴールデンウィークに初めてメディアを立ち上げて、1本目の記事を書きました。そこから「1週間に1本以上は書くぞ」と決めてやっていました。始めてみたらなんだかんだで楽しくなっちゃって、毎日書き始めたみたいな感じです。月あたり40時間とか50時間ぐらい、週あたり10時間ぐらいはブログを書いていたかと思うんですけど、7月に初めて、人生で「初バズり」を経験しました。

家族と過ごす時間のために、リクルートを辞めて独立

新條:それは始めた年の7月ってことですか?

西村:そう。ブログを始めてから2ヶ月後くらいですね。

新條:けっこう早いですね。

西村:いろいろ研究し尽くしました。当時は「はてブ(はてなブックマーク)」でヒットしている記事を毎日見て研究して、「こういう角度でやったらウケそうだな」という感じで試行錯誤しながらやりました。始めて半年ぐらいで月間1万PVぐらい、(2014年の)3月ぐらいには5万PVぐらい。1年経ったぐらいに月間10万PVぐらい。それ以降は10万PV~20万PVを行ったり来たり、みたいな感じになりましたね。

新條:なるほど。とはいえ、それこそリクルートさんでは複業許可が出ていて、本業をしながら複業を続けるみたいな選択肢もあったと思うんです。いざ独立ってときに、どう決められたとかあるんですか?

西村:正直、独立してリクルートを辞める必要って、まったくなかったなって思っているんです。だけど1個だけ、リクルートで働き続けながらチャレンジするのは難しいことがあったんです。

新條:はい。

西村:それは「娘と過ごす時間を最大化する」ってことだったんですよね。

新條:西村さんは「ファザーリング・ジャパン」とか、家庭系の活動もやられていますもんね。

西村:そうですね。当時大学2年生でしたけど、19歳で1人目の子どもが生まれ、今はもうその長男は小6です。2人目が社会人1年目に生まれて、社会人1年目から2児の父、みたいな感じだったんですね。

新條:凄まじいですね(笑)。

西村:その次(3人目)は、2016年に生まれました。男、男ときて、3人目で人生初めての娘だったんですよね。娘がもう、想像していた1億倍かわいくて(笑)。

新條:(笑)。

西村:「これは今、娘と過ごす時間をたっぷり取っておかなかったら、絶対にいつか後悔する」と思ったんですよ。

新條:なるほどなぁ。

「育休的起業」へのチャレンジ

西村:そうなったときに、「働く時間と働く場所を自分でコントロールできるようにしたい」と思ったんです。「今日は子どもとたくさんの時間を過ごしたいから、4時間だけ働いてあとは娘と遊ぼう」みたいなことって、会社員では無理じゃないですか。

新條:そうですね(笑)。

西村:わざわざ有給みたいなの使わなきゃいけないし、限度がある。そんな中で、僕は「育休的起業」っていう表現をしたんですけど、一時期はもう週休4日で、平日も週2日は仕事を一切せずに娘と過ごすということをしていたんです。

完全にそのためだけですね。「家族と過ごす時間を2倍にする」っていうのをKPI(重要業績評価指標。Key Performance Indicatorsの略)に置いて、そのためだけに会社を辞めたって感じです。

新條:なるほど。

西村:それがなければ正直、「リクルートで固定給をもらいながら、複業でやりたいことをやる」っていう働き方のほうが間違いなく合理的だったとは思うんですけど、僕は合理的じゃなかったんですね。

新條:あはは(笑)。ちなみに今回、図らずも家庭の時間ってすごく増えていると思うんですけど、その辺で何か変化みたいな話とかってありますか? 

西村:いやもう、めちゃめちゃありますよ。

新條:ということは、3人のお子さんがお家にいるということですよね?

西村:3人が家にいますね。休校・休園になっちゃったので、僕も含めて朝から晩まで家にいるという状態ですね。

在宅勤務中のパフォーマンスの保ち方

新條:なるほど。「両立」と呼ぶかはわからないですけど、その辺りで西村さん的なパフォーマンスの保ち方とか何か、工夫とかはあったりするんですか?

西村:そうですね。パフォーマンス……。どうしても仕事に割く時間はだいぶ減らさざるを得ないですね。一応まだ仕事部屋みたいなものがあるので、ずっと家にいても仕事に集中できるスペースはあるんですけどね。ずっと仕事だけをしていればいいというわけじゃないし、どうしても「家事も育児もしなきゃいけない」というところが出てくるので、仕事に割ける時間はやっぱり減りましたよね。それに伴って生産性というか……。

新條:なるほど。

西村:もう、どうしても減っている部分はあるとは思うんですけど、間違いなく移動時間とか、そういう無駄は減りました。僕はもともとコロナ(の騒動が)起きる前は、「WeWork」というコワーキングスペースを借りていて、そこに行ったり、時にはお客様先にミーティングで行ったりしていました。1日の仕事の時間の中で、移動時間がけっこう占めていたというところがなくなって……。

新條:確かに。

西村:それを仕事だったりとか、家事・育児に当てられるようになっているのは、すごくプラスですよね。なので、プラス・マイナスでゼロまでは行かないですけど、仕事時間が2割減ぐらいしている感じですかね。

新條:うんうん。あれですよね。まさに「それで生まれた時間もあるよ」というところですね。逆に言うと、「時間当たりの質を上げよう」みたいな動きで、カバーされているみたいな……。

西村:そうですね。

自分の活動をオンラインにシフトする工夫

新條:なるほど。その辺は、次の項目もかなり重なるかなと思うんです。

今みたいな劇的な変化が起きている中で、例えば先ほどの大村さんのように「商品を変えた」という話もあると思います。これからの個人活動とかパラレルキャリアのビジョンだったり、今のこの前提だから何を変えようかという話とか、何か考えられていることってありますか?

大村信夫氏(以下、大村):やっぱりさっき西村さんがおっしゃったとおり、これからって絶対にオンラインで完結していくようになっていくと思うんですよ。やっぱり本当に価値の提供がオンラインベースになっていくので、自分の活動というものがオンラインにシフトしていく必要があるなというのは思っていることです。

新條:なるほどなぁ。

大村:ただ、例えばふだんリアルな場でやっている研修とかを単にオンラインで代替えし、内容がそのままになってしまうとライブ感というか、解像度というのが絶対に劣化するじゃないですか。

新條:確かに。

大村:なので、その解像度をなるべく劣化させないような工夫が必要です。あとは、例えばこういうチャットとかでURLをバッと送るとか、やっぱりオンラインならではのメリットってあると思うんですよね。そういうメリットを組み合わせて、付加価値をつけていくことが必要なのかなと思っています。

あとは、我々は「オンラインエチケット」みたいなもの、マナーってたぶん習っていないじゃないですか。

新條:おー。確かに。それはそうですね。

大村:けっこう重要なんですよ。たぶんみんな対面だとちゃんと聞いているんでしょうけど、オンラインになった瞬間、それこそ人の話を聞きながらネットサーフィンとかをしていると、けっこうバレバレなんですよね(笑)。

新條:あはは(笑)。確かに。

大村:そうなんです(笑)。だからそういうところのオンラインエチケットやマナーも重要だと思うんですよね。

オンラインのデメリットは、行き過ぎた効率化

新條:なるほどなぁ。確かにテレビのザッピングじゃないですけど、こっちのブラウザは見られていないので、何をしているのかわからないということもありますね。

大村:そうなんですよ。あとは、オンラインのデメリットとしてとくに思うのが、逆に効率的になり過ぎちゃうんですよね。余白がなくなるというか、息抜きとかね、そういう余白がなくなってしまいます。例えば会社だと会議室から会議室への移動のときに、同僚と「最近どうよ?」とか、タバコ部屋とか休憩スペースでの他愛もない雑談ってあるじゃないですか。それがなくなるんですよね。

仕事での人間関係とか信頼関係って、そういう仕事以外のちょっとした雑談を通じて得られる「その人らしさ」で構築されるところが、けっこうあると思うんです。それが今、まったくなくなってしまっています。

だからなおのこと、僕はこういうオンラインミーティングのときには、必ず前と後ろでアイスブレイク的なことを意識したり、今日はちょっと真面目なバーチャル背景ですけど「えっ!? これは何ですか?」というものをぶち込んだりとか、そういう細かいところをやっていますね。

新條:なるほど。話が若干戻っちゃうんですが、ご自身の売り物をオンライン前提にして活動をしていくときに、例えば「ここに抵抗があった」というものはありますか? たぶん、そもそもオンラインはあんまり考えられていなかった活動じゃないですか。

大村:実は、オンラインは3年前からやっているんですよ。

新條:あ、そうなんですね。

オンラインなら距離の問題を超えられる

大村:やっぱり全国の方と(コミュニケーションをとることが)できるのは、オンラインしかないなと思ってやっているんです。だけど、「やっぱり、ライブの臨場感の方がいいな」と思って、しばらくその活動を停滞していたんですよね。

でも、オンラインのメリットって本当に距離の問題を超えられるじゃないですか。もう一回オンラインでやってみることによって、やっぱりそれってすごいことだなと思っています。今日ここにいらっしゃる方も、東京の人じゃない方もけっこういらっしゃると思うんですよね。ふだんだったら来られない方とお会いできたり、こういうこと(オンラインイベント)ができるのはやっぱりすごいなと思っています。

新條:ちなみに研修を作るときって、オフラインの研修でやっていたことをオンラインに置き替えるというよりは、もうまったく別物にしようという感じなんですかね?

大村:オフラインベースなんですけれども、やりながら「オンラインだったら、ここをこう変えていこう」というふうにしていますね。

新條:なるほどなぁ。あと1つ、さっきから副音声的に(チャットの)コメントで、ご家庭の話がすごく盛り上がっているんです(笑)。もしよかったら、大村さんもご家族の話とか、例えば「家庭と仕事」みたいなテーマっていかがですか?

大村:やっぱり今は在宅ワーク(が推奨されている時勢)なので、うちは妻もフルタイムなんですけれども在宅になったんですよ。なので、ほぼ24時間、子ども3人と妻と私が同じ場所にいるという環境になりました。やっぱり子どもは「なんでお父さんとお母さんがいるの?」的なところがあり、「かまってほしい」というところがけっこう出てきちゃいますよね……。

そういうことなので、なかなか仕事のオンとオフの切り分けがすごく難しい感じではあるんですけれども、最近はやっとわかってくれたみたいです。さっきからチラチラのぞいたりしてくるんですけれども。実は今日も僕が息子の勉強部屋を総占拠してやっています(笑)。

やっぱりこうしていると、「オンラインでこうやっていることが仕事なんだ」と意識してくれるようになり、非常に協力的になってくれましたね。

新條:ありがとうございます。