2024.11.25
「能動的サイバー防御」時代の幕開け 重要インフラ企業が知るべき法的課題と脅威インテリジェンス活用戦略
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新井宏征氏(以下、新井):では佐宗さんとお話していきたいと思います。最後、この「Udemy」のお話では、結局企業などでの学び方は、みんなが集まってやっているだけじゃなくて、知識を学ぶところと実際に手を動かすところに分かれるというお話がありました。実際、私のお客さんからも、シナリオプランニングのワークショップをやるときに「オンラインにしていこうか」という話が出ているんです。
まずコロナのあとで実際に佐宗さんの周りで起きている変化で、佐宗さんが「これは特徴的だなぁ」と思ったこと、例えばお客様の企業で起きている変化など、シェアしていただけるものは何かありますか?
佐宗邦威氏(以下、佐宗):あまりにいろんなことが起こりすぎているので、何から話していいかわからないという感じです(笑)。
まず長期ビジョン、いわゆる5年から10年の長期ビジョンの支援をけっこうしていたんですけど、そういう方々はほぼ例外なく「自分たちが考えていたことが5年早まった」というかたちです。「描くこと」をテーマにしていたはずだったのが、いきなり「どう実装するか」という議論が始まった。時計の針が早まったことが、まず1つ目の変化ですね。
佐宗:2つ目の変化はある種、リモートワークというものが組織のヒエラルキーを作っていた「無意識のパワーバランス」みたいなものを、ちょっと崩していると思っています。このZoomも、誰かが一番大きな画面ではないじゃないですか。(イベント参加者も多数いる中、登壇者である)僕ら3人が比較的しゃべることが多いんですけども、実際にはこのZoomの中においてはみなさんとフラットなんですよね。
例えばこういうことが1年目の社員と役員が同じZoomに入っていたときに、役員会議で話していたときのダイナミズムと、Zoomで話しているときのダイナミズムが違います。しかも家から入っていると、今まではかなり肩に力が入った感じで会話していた人が、とくにえらい人ほどゆっくりになるんですよね。
「自分性」みたいなものがすごく出てくる。なので、ゆっくりというか、少しやわらかくなる。そういう意味でより自律分散型で、さっきの少し自分というものが出たモデルが否応なしに生まれてきてしまっているんだろうなということを思っています。
これはちょっとテーマに関係ないかもしれないですけど、あともう1個くらいあるとしたら、「家族との関係を見直す」ということは、すごく起こっていると思っています。家族との関係性を見直すことで、仕事と家族が一体化していく。
(新型コロナウイルス感染症が蔓延する前は)もうちょっとビジネスはビジネスで、ライフスタイルはライフスタイルで別物という感じだったと思うんですけど、そこが少し融合していって、ある種「ハレ」と「ケ」で言うと「ケ」の価値がものすごく上がっていく。そのようなことが起こっているのかなと思っていました。
新井:ありがとうございます。ホールネスというか自分の全体が、いろんな感じで突きつけられている感じだろうなと思うんです。そういう中で、さっき佐宗さんが出してくれた3つのお話がありました。「自分で作って提示する」とか、「循環型」のお話ですごく印象に残った「資源を使いすぎずに楽しむ」とか、あと最後は「自律分散」ですね。
結局3つに共通しているところって「あなたは何をやりたいんですか?」という、自分の答えを出すことですね。さっきの役員会も、リアルだと席次とか座っている椅子の質とかで、なんとなく「自分は黙っていてもいいや」とか、なんとなく「自分は話を聞いていればいいや」というものがあったけど、そういうのがなくなると「自分を出さないと」というふうになってくるじゃないですか。
佐宗:そうですね。
新井:一方でそれって、さっきの「ヒエラルキー型」にいた人にとっては「ちょっと怖いなぁ」というところもあると思うんです。それこそ「創造性」ということを扱うとき、佐宗さんとしては、みなさんにどういうかたちで第一歩を促していますか?
佐宗:まさにおっしゃるとおりで、『ひとりの妄想で未来は変わる』で書いていることは、企業においてはある種、大きなシステムの「部品」を演じることが必要だったんですね。それは例えば部署とか、部署における職掌みたいなもので、いわゆるジョブディスクリプションというのは「お前はこの部品で、これをやることがすばらしい」というものですよね。
自分というものが生まれることは、それが定義されないことが出てくるということです。ときどき新規事業とかの企業をやっている中でも、最近は「最初からこの部署は(役割を)定義されていません」という部署を作ることも増えていると思うんです。
佐宗:研究者などによくあるような「自由な場所だけ与えられて、そこで自分で何かをやる」というとき、「部品」だった人は何をやっていいかわからない。やっぱり最初はほかの人に対して承認や褒められることをもとに動いているので、困るんですよね。
最初は困るんですけど、そのうち「誰にも褒めてもらえなくてもいいや」と気付くと、「好きなことをやりゃいいじゃん!」となるんですよね。これってある種の麻薬みたいなもので、ずっと褒められる、褒められる、褒められるという循環でグルグル回っていると、なくなったときには不安でしょうがなくなるんです。だけど、それもたぶんある程度の時間が経っていくと、だんだんそれがいらないことに気付いてくる。
そのときにポイントとなるのは余白。今回、まさに在宅勤務で人によっては余白が生まれているはずなんです。人によっては、家庭に子どもがいて忙しいというのもあると思うんですけどね(笑)。
とはいえ、やっぱり仕事は今までと同じやり方ではできないので、そういうときに「自分って何をしたいのかな」と考えたとき、(ポイントは)それがたとえ今の仕事じゃなかったとしても、それを否定しないことじゃないかなと思います。
新井:なるほどね。そこってけっこう悩ましいところで、「どこかに自分の本当にやりたいことがあるんじゃないか」という感じで、その一歩がセミナーに出てみるとか、転職を考えてみるところがあると思うんです。
(Slidoを指しながら)ここですでに質問をいただいているように、それってある意味、先ほどの話の逆ですよね。外からの刺激で「自分ってこうなんだな」ということに気付くようなところを探そうとしていると思うんです。
そうじゃなくて、「誰かが何かを与えてくれる感」を払拭する。我々って、もしかすると大学受験とかから「これをやっていると、こうなるよ」という感じのことって、すごくわかりやすく(植え付けられて)きていると思うんです。
個人としてでもいいんですけど、そこについて佐宗さんとしては「第一歩のヒント」みたいなところって、どういうことを考えていますか?
佐宗:ちょっと逆説的なんですけど、危機の状態、いわゆるクライシスって、これのトレーニングだと思うんですね。僕自身が自分の生き方をできるようになった1個のきっかけがあります。27歳のときに鬱になって1年くらい仕事をしなかった時期があるんですけど、その時期に一旦、方向感覚を完全に失ったんですね。
すごくしんどかったんですけど、そこで見えた光明というのは、周囲が眩しいとき、いわゆる出世とか給料とかでずっと眩しい世界では絶対に見えなかった光だったんです。それが見えたときには、逆に言うと北極星みたいなもので、「一歩一歩、歩いていけば、人生(の目標地点に)たどり着かなくてもいいや」ということを、その2~3年後には思えるようになった経験があるんです。
例えば今のコロナもそうですけど、たまたま大企業にいて「自分はまだ雇用が守られているからいいや」と思う方もいらっしゃると思うし、僕も経営者ですけど、例えばフリーランスで「これはマジで洒落になんねぇな(笑)。死ぬ気で生き残らなきゃ」というのもあるじゃないですか。
新井:ありますねー。
佐宗:どちらかと言うと、ここで「死ぬ気で生き残らなきゃいけない」くらいのモードになったほうが、自分の動物性が出ると思うんですね。動物の直感で光を必死で探しに行くかたちは、実は体が目覚めることだと思っています。それは劇薬ですよ? 劇薬なんだけど……。
日本代表の岡田(武史)さんに『直感と論理をつなぐ思考法』の推薦文をもらったんです。彼が例のフランスワールドカップの前、(最終予選の)ジョホールバルの前日、サッカー日本代表がワールドカップに出られるか出られないかのタイミングで、「完全に開き直った瞬間があった」って言っていました。「さんざんバッシングを得たあとに最後に自分の遺伝子にスイッチが入る瞬間があり、そこから自分の人間は変わった」ということを仰っているんです。
僕はすごくその感覚に近くて、むしろこういうタイミングだからこそ自分の持っている潜在能力というか、生きる力が開花する可能性すらあると思っています(注:1998年開催のFIFAワールドカップ・フランス大会のアジア最終予選において、サッカー男子日本代表は岡田武史監督のもと、マレーシアのジョホールバルにて史上初めて予選突破を決めた)。
新井:なるほど。先ほど「センスメイキング」のところでお話をいただいたみたいに、「感じる」ところから始めていくというのに近い。まさにそれですよね。自分も2013年に会社を立ち上げてずっとやっていますけど、会社を立ち上げようと思った1つのきっかけが2011年の311(東日本大震災)だったりします。
そのときに「あれ? 本当は何をやりたいんだろうな?」というところがあって、自分はそのあと感じたことをビジュアル化することにいかなかったんです。けれども、自分で読むためだけの日記とか、あとはブログもずっと続けていたのを、けっこうがんばりはじめたところがあるんです。
佐宗:はいはい。
新井:佐宗さんの本にもちょっとありましたけど、いきなりビジュアル(化する)って抵抗がある人もいると思うんですけれども、そこらへんを発信していくことについてはどう思われますか?
佐宗:すごくいいポイントですね。「自分と向き合う」「自分のビジョンを作って生きる」というのは、逆に言うと「自分と向き合うことで自分と対話する言語を持つ」ということなんですよね。大事なのはたぶん、言語を持つということです。
僕がおすすめしているのは「ジャーナリング」という手法です。毎朝2ページ、ページ数を決めて、今自分が感じているありのままの言葉、例えば「ちょっと気持ち悪い」「コロナにかかっているんじゃないかと思って不安になった」「こんなのは、止めてしまいたい」というような「剥き出しの感情」をノートに書く。書いて、終わり。そのあとは何もしない。それを毎朝続ける。起きたときに、5分くらいの時間でやるというものです。
こういうことをやることで、自分と自分の内面との対話が生まれてくるんですね。それは別に絵でもいいんです。何でもよくて、誰にも見せないスペース・もので対話をしていく時間を取るということは、自分としゃべる言語がすごくうまくなっていく1つのコツだと思いますね。
新井:そうですよね。確かに体で感じるということを言っても、それですぐポーンと動いちゃうと、もしかするとそれが「脊髄反射みたいな感じで嫌だから止める」みたいなものか、「本当に自分がやりたいことなのか」というところってなかなか……(判断が難しい)。そういうブレインダンプ(思考の中にある考えをすべて紙の上に書き出す手法)じゃないですけど、一度自分の外に出すということをやると、少し客観視できるようなところがあるんでしょうね。
佐宗:そうですね。自分のビジョンとかもそうですし、自分の内面が基本的にかたちになっていかない理由は、フィードバックがないということなんですよね。外のことはフィードバックがあるから前に進むんですけど、自分自身の内面って自分自身で問いかけて、何かかたちにしない限りはフィードバックがないんです。
逆に言うと、やりたいことは「なんとなく、やりたい」と思って終わっているか、さらに言うと本当は(やりたいことが)あるのかもしれないけど、認識もしてないし、聞こうともしていないような状態がけっこうあると思っています。そこに対して、出してあげる。それを、客観的に見てあげる。出してあげる、見てあげるというのを繰り返すと10倍、30倍、50倍くらいの差が出てくると思いますね。
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