トラブルを起こさないために積み上げてきたものが足かせになる

西舘聖哉氏(以下、西舘):あとは、まさにそこからもう一歩踏み出せるかですよね。そういう意味で言うと今、国の話を少し聞かせてもらったんですけど、ちょっと質問の中にもあって。

今日参加してくださっている方の中でも、とくに松本さん所属の富士通などは歴史のある会社ですが、歴史が若かったり、若い人たちが中心で活躍している会社のほうが文化的に変わりやすいんでしょうか。

松本国一氏(以下、松本):あると思いますよ。「セキュリティって何のためにありますか?」という話があると思いますけど、結局過去にあったトラブルに蓋をしていくために、いろいろつぎはぎでやっていくんですよね。

だから、歴史ある会社はどちらかというとガチガチになっちゃうんですよ。要はトラブルを起こさないために積み上げてきたものによって、がんじがらめになっちゃうんですよね。

一方で、若い会社はそういった経験がないというよりは、そういったものが起きないような環境が整った中でできあがっている会社もあるので、古いセキュリティの観点を持たなくて済んでいるんですよね。そこの差って大きいんですよ。

ただ、やはり「新しい会社だ、古い会社だ」というよりは、いっそ今回はセキュリティポリシーをもう1回きっちりと見直すべきだと思うんですよね。

つまり、セキュリティと言っても、レベル感がいろいろあるじゃないですか。例えば、個人情報のように「必ず保護しなさい」と国のほうから言われているようなものと、「これは会社の機密情報でもないんだけど、会社の中の情報だから」というものを今は同レベルで扱っちゃっているんですよね。だから、VPNをしっかり張ったイントラの中で仕事を全部やらせればいい。

結局、現場で使っている情報や仕事のセキュリティレベルがよくわからないから、一番低いところから全部ガードしようとなっているのが、今の日本だと思うんですよ。でも、個人的にはすべてをVPNでやるのはもう無理だと思う。イントラを自宅まで引くのは無理だと思っている。

今回のテレワークを機に見直すべきポイント

松本:だったら、やはりコンプライアンス上である程度レベル感をつけて、(セキュリティが)低くて済むものは別にクラウドに移してもいいじゃない。そっちの方が仕事がやりやすし、社内のイントラも圧迫しない。古い基幹システムに残っている個人情報などの重いものは、アクセスする際だけVPNを使えばいいじゃない。

だとすれば、会社としてもテレワークをするための投資は抑えられるし、ユーザー側からも従業員側から見ても、みんなが使いやすい環境になるわけじゃないですか。

ここは今回のテレワークの中で大きく見直す機会だと思うんですよね。Boxもそうだし、MicrosoftのOffice 365もそうだし、Office系もそうなんだけど、ああいったものを見越してどれを選んでいくのかが、たぶん今回のテレワークにおけるIT投資の正しい姿だと思うし。

もしそこがまったく検討されずに「今のITのインフラで全部やりたいです」と言われたら、たぶん破綻するんだと思うんですよね。全員が全員テレワークができなくて、だから会社に行きなさいなんて話になったりするわけですよね。

やはり、そこのところを今回の新型ウィルス騒ぎの中でしっかりと見直せる会社は伸びていく。見直せずにずっと「会社のイントラの中で仕事しないといけない」と延々言っちゃう人たちがいるんだとしたら、やはり(自分が)辞めるまで行くのかどうかわからないですけどね。

そこを変えるべきだと言うのか、もしくは話を聞いてくれない。もう在宅勤務はいっさいできないと言うんだったら、ちょっと自分の立場を見直すべきなのかなという気がします。

西舘:ありがとうございます。今、裏側で倉貫さんがみなさまの質問にコメントで対応してくださっていて、それがまさにイベントという観点で言えば、今日もまた新しいかたちになっていて。これをみなさまにお見せできたのもすごくいいなと思っています。

倉貫さんの情報発信の話とかいろいろ書いてくださっていて。本当にこれまでのやり方がまだまだ残っていて、「変えたくない」という話が、本当にもうどこからともなく聞こえてきている現状ではありますけれども。

今日の話でやはりたくさん出てきた「どうしていきたいか」。倉貫さんもおっしゃっていたとおり、本当に会社を跨げばもう古いとか新しいとか関わらず、それぞれにいろんな問題があって、それを考えて解決していくことが必要なんだなというのが、今日の本当に大切なポイントだと思っています。

締め方を見失いました。すみません。

(一同笑)

働き方を変えていくための一歩

西舘:これはどうしても言いたいという部分が1個ありまして。例えば、社内を変えていかないといけない。それは、松本さんが話してくれた持ち運べる(軽量の)パソコンとかOffice系の製品やツール、安達さんの会社で提供されたBoxのようなクラウドストレージとか、あとは制度上の話とかもそうなんですけど。

いきなりバンと「変わらなきゃいけない!」と言われても、やはりわからないと思うんですよね。今日のメンバーは個別に相談に乗ってくださっている方たちなので、今日参加された方の中で、もしもう一歩進みたいという方は、4名のスピーカーの方に個別に連絡を取っていいですよね。

松本:大丈夫です。

西舘:とくに今日、倉貫さんが画面を見せてくれたRemottyなどに興味を持ってくださった方もいると思うので、たぶんこの辺を直に見ると「こう変えられるんだろうな」と。見て知って聞いたからこそ見えてくるものがあると思っていて。

それを感じた上で、自分の組織が変わろうとしていなかったら、今日倉貫さんが言ってくれた「こう改善すればいい」というものを見せて、それでもダメだったら次の段階を考えていくという流れかな。

松本:相談ください、でOKだと思う。例えば倉貫さんのところのRemottyもそうだし、Boxの安達さんのところもそうだし、クラウドでどうやったら仕事がうまくいくようになるのかという話もあるし、私も別に富士通でエバンジェリスト講演やってもいいし。

さっきのサーキュレーションに声かけてくれて、スポットコンサルをやってもいいし、いろんな手段はあると思うんですよね。あと、総務省に行って箕浦さんのところに、「実際に総務省のやり方どうなんだ」と聞いてもらうのもいいし。

やはり、今日参加されたみなさん一人ひとりの立場も違うだろうし、たぶん会社も違うだろうし、やらなきゃいけない段取りも違うだろうから、それに合わせて声をかけてもらっていいと思いますよ。という終わりで大丈夫?

西舘:ちょっと時間が残ってしまったので。

(一同笑)

働き方改革で目指すべきは「働くことの喜び」を取り戻すこと

松本:1人ずつ、一言ずついく?

西舘:そうですね。クロージングとして、今日の振り返りやコメント欄を読んでの感想を聞いていきたいと思っています。安達さんからお願いします。

安達徹也氏(以下、安達):私は何のためにリモートワークをやるのかというと、1つは「社員を幸せにするために」というと言いすぎかもしれないんですけど、社員の幸せな働き方を考えたときに、リモートワークは1つのあるべき姿だと思うんですよね。

逆に言うと、これを機に社員の幸せのことを考えられない会社や組織は淘汰されてしまうかもしれないので、そういう緊張感を持って取り組んでいただきたいなと思います。逆にその緊張感を越えてしまえば、けっこう楽しくテレワークでいろいろできるんじゃないかと思っていて。

新しいことにチャレンジすることを、ワクワクしながら一歩を踏み出してもらえたらなと思います。ちょっと宣伝をすると、コロナ対策のためにリモートワークをどうしたらいいかという相談会をWebベースでやっていますので、BoxのWebサイトを訪ねていただいたらと思います。最後、宣伝で締めて申し訳ないですが、私のコメントは以上です。

西舘:ありがとうございます。続いて箕浦さんお願いします。

箕浦龍一氏(以下、箕浦):言いたいこと、安達さんに全部持ってかれちゃったんですけど。

(一同笑)

僕も働き方改革の目指すべき理想は、やはり人が働くことで幸せを感じられることがすごく大事だと思っています。仕事は何かを誰かにしてあげることで対価をもらうことなので、人を喜ばせるのは人間のすごく本質的な活動のはずだと思うんですね。

ところが今、僕たちは働くことで喜びを感じられない状態になっている。そこを変えていくのが、僕は本当は働き方改革の本質だと思っています。

これはリモートワークや今日のテーマに限らない話ですけど、経営者もワーカーもきちんと軸を持っていかないと、労働時間を短縮することばかりに目を向けていると、その先には幸せな未来はないと思っています。

そのあたりはまた機会があったら、このメンバーと話してみたいなと思いました。今日は本当に楽しかったです。ありがとうございました。

西舘:ありがとうございます。続いて倉貫さんお願いします。

開き直って、5年~10年後に笑っていられる状況を作っていく

倉貫義人氏(以下、倉貫):そうですね。さっきの幸せな働き方改革みたいなところは、ちょっと2時間くらいしゃべりたいんで。

(一同笑)

西舘:そうですよね。やはり。

倉貫:ぜひ話をしたいなと思うんですけど。今回の状況というのが、言ってもチャンスでもありピンチでもありというのはあるんですけど、本当にまだ先行き不透明な状況で、まったく予測がつかない。

一応僕も経営者なので他の経営者の方と情報交換していると、そんなにすぐ戻るというか、回復するというのはなかなかない。「1年とか1年半くらいは耐えられるようにしていきたいね」というのは励まし合っているんですけど。

そうなってきたときに、今回の状況が不可逆なものだなと感じてはいて、楽観的なことは言えないんですけど、過去にどうやって戻ればいいのかとか、1ヶ月耐え忍んでまた元に戻るねという状況ではなくなってきたときに、もうある程度前向きに進めるしかないなと。

この状況がもう1ヶ月とは言わずに1年とか10年とか続くともし思ったら、もう開き直るしかないんですね。開き直ってどう適応していくしかないなというふうに考えると、前向きに自分自身も変えていくというところが(必要で)。5年後10年後になったときに、今の自分の決断が良かったなと思えるようなことに取り組める。

今が大変だってみなさんわかっているし、僕もそうだと思うんですけど、だからこそ何が取り組めるのか、変化にできるのかというところが大事なポイントなのかなというふうに思いますね。5年、10年経ったときに笑ってられるようにしていけたらなというふうに思いますね。

西舘:ありがとうございます。最後に松本さん、お願いします。

松本:はい。みなさんにも言いたいこと言われたので。

西舘:(笑)。そうですよね。

自分が実現したい「仕事のやり方」を考えてみる機会

松本:変化球で。仕事の仕方って、正直言っちゃうと型はないと思っています。こだわる必要はないと思っていて、みなさんスタイルをこだわらずに、どんどんどんどん仕事変えちゃっていいんじゃないかなと思っています。

やり方を変えている例として、私自身は実際、スマホ自体で仕事をしているのが7割、ノートPCを使って仕事をしているのが3割です。事務所の中でスマホを使っていると遊んでいるようにしか見えないんですけど、でも、今どき若い人たちってみんなスマホでなんでもやっちゃうじゃないですか。

論文も書ければ、コミュニケーションも取って、自分の情報発信もしている。当たり前のようにできているんですよね。それが会社でできないよって思っちゃうこと自体が問題で。

やはり各個人がそうじゃなくて、それは仕事の仕方としてありなんだと思って、一番効率がいいやつってどっちなんだろうなと思っていけば、リモートワークだろうが、それこそワーケーションだろうが、会社の上司の関係だろうが、ぜんぜん変わっていくと思うんですよね。

だから、まず恐れずに変化をちゃんと受け入れて楽しんでいくことと、やはり「自分がやりたい仕事の仕方ってなんなんだろうな」ということを、もう一度ちょっと考えてもらう。それをうまく会社の中に落とし込むためにどうすればいいんだろうなということに、ちょっと取り組んでみてもらえればなと思います。

西舘:はい。ありがとうございます。そろそろお時間になるので、イベントを終了させていただこうと思うんですけど、今日のイベントがきっかけで、自分がどうしたいのかというのを考えるみなさんのきっかけになれば幸いです。

何か困ったときには、今日のメンバーはみなさん相談を受け付けてくれているメンバーなので、どんどん連絡していただいたり、直接が緊張するということであれば、僕をクッションにしてもぜんぜん大丈夫なので、Peatixでメールでいただいたり、Facebookのメッセージとかいただいたりとかしていただければぜんぜん対応するので。

ぜひ今後ともみんなで前向きにがんばっていくときだと思っていて、SNSとかふと見ていると、すごくネガティブな空気が漂っているなと思うんですけど、そこに流されず一致団結なのか、それとも個別なのかというのはその時々によると思うんですけど、みんなでがんばっていければいいと思っているので、引き続き今後ともよろしくおねがいします。

最後に1点だけ告知になってしまうんですけど、今日、マネジメントの話もけっこう出たと思っていて、実は伸び伸びになってしまっていたんですけど、5月11日に倉貫さんとサイボウズさんと一緒にイベントをすることが決まっておりまして。

今日のみなさまが申し込みしていただいたPeatixページからイベントの詳細も出ていて、もともとは本当はマネジメントに寄った話をしようと思っていたんですけど、この状況なので、もっとリモートワークなどに寄せた、まさに今みなさんが必要としているような情報を、また倉貫さんたちと一緒に発信していけたらと思うので、引き続きみなさんよろしくお願いします。

そして、今日集まっていただいたみなさん、本当にありがとうございます。僕自身もかなり勉強になりました。引き続きみなさんから僕自身も学ばせていただこうと思っています。では、今日のイベントはこれで終了したいと思います。みなさんありがとうございました。