記者・ライターとしての経歴

加藤恭子氏(以下、加藤):ちょっと前置きが長くなりました。ここから三浦さんにバトンを渡して、三浦さんからプレゼンテーションをいただきたいと思います。三浦さんよろしいですかね?

三浦優子氏(以下、三浦):では始めさせていただきます。

加藤:お願いします。

三浦:よろしくお願いします。まず自己紹介からさせていただきます。1990年に、今はBCNという社名になっている、当時はコンピュータ・ニュース社で記者の仕事を始めました。それから2003年までBCNさんでお仕事をさせていただきました。

その後フリーライターになりまして、現在はフリーランス(個人事業主)で仕事をしております。BCNにいたころは比較的いろんなジャンルの取材をしておりまして、ゲームの取材をたくさんしたこともありますし、パソコンショップの取材をたくさんしたこともあります。地方に行って地元でパソコン販売をしているインテグレーターさんの取材をしたこともありますし、もしかしたらちょっと特殊な取材もたくさんしたような気もします(笑)。

現在はエンタープライズ系を中心に、オンラインの媒体で記事をいろいろ書かせていただいております。 さて、本題のオンライン会見ですが、既にエンタープライズ系の重鎮のライターさんがすでにニュースサイトで発信をされています。

こちらのプレゼンデータには大河原克行さんの記事を3つ紹介しておきました。広報の仕事をされている方は、たぶんほとんど見られているとは思います。こんなことがあったよ、こんなツール使ってたよということを事細かに3回に分けて書いていらっしゃいます。もし読まれてない方はぜひ読まれるのをお勧めします。

昨日は谷川耕一さんが、ブログでオンライン取材をしながら感じていることを率直に書かれていて、これも非常に勉強になる内容でした。いろんな方に読んでいただくと、たぶん参考になるんじゃないかなと思います。

「記者会見共有サービス」という試み

三浦:そういう諸先輩がたくさんいらっしゃる中で、なんで私が今日話をすることになったのかというのは、たぶん(スライドを指して)これが1つの理由になってるんじゃないかなと。

今、IT系って非常に記者会見が多く、何故こんなにたくさん同時刻に会見があるんだろうと困っちゃってるんですね。同じ日、同じ時間に会見がないほうがいいよねっていうことで、カレンダーに情報を共有できるような記者会見共有サービスというか、Googleカレンダーを共有し、見ていただくようにしています。

これは私が自分でポチポチやっているもので、非常に更新が遅かったりとか、私のところに来ている記者会見だけなので全部の記者会見を網羅しているものではないです。見ていただくとわかるように、詳細は書いてないんですね。「どんな系統の会見が何時からあるよ」ということだけ書いています。

会見をする企業名、開催場所等は一切書いていないので、これを見たからといって会見に行けるというわけではないんですけど、PRのお仕事をされている方に見ていただいて。「この時間にこんな会見があるんだったら、ちょっとうちは避けたほうがいいかな」と考えていただければ。

これを見て、メールやお電話をいただいて「うちが会見をやろうと思ってる時間に似たようなジャンルの会見があるんですけど、これってもしかして業界でトップのところですかね?」といったご質問に対して「あ~そうですね」とお返事をして。「うちは日にち変えますわ」となったケースもあります。

別なケースでは、実際に会見をやって、思ったほど記者さんが来なかったときに社内から「なんで今日こんなに会見人が少ないんだよ」という文句が出てですね。「実はカレンダーで共有させていただいてわかってるんですけど、今日ものすごく会見が多い日なので日が悪かったんですよ」という社内の言い訳に使ってます、という方もいらっしゃいました。

そんな状況だったんですけれども、4月に入って非常に会見が少なくなりました。まず2月の終わりくらいにコロナが非常に激しくなったということで、会見がどんどんオンラインに変わっていきました。4月に入ってからはオンラインの会見でさえ、非常に少なくなりまして、1年前のものと今年の第2週と比べてみると、(スライドを指して)これだけ会見の数が違いました。

「会見どうしましょう」「やっぱりやらないほうがいいんだろうか」という判断をされた会社さんが多かったのかな? というのが4月前半の印象です。このあと、ちょぼちょぼ会見の案内をいただくようになってまして、少し会見が増えてきたかなとは思います。ただ去年に比べるとやっぱり相変わらず、ずいぶん少ないのが今のところの実情です。

会見に参加する側も「デジタル武装」が必要

三浦:オンライン会見にはいくつか参加させていただきました。実は今日の昼間もオンライン会見に参加して、これはちょっと特殊な会見で純粋なIT業界の会見ではなくて。神戸市さんがUber Eatsさんと連携して「地元の飲食店を盛り上げるような提携をしましたよ」という発表会でした。

昨日ご案内をいただいて今日「じゃあ参加しまーす」ということで参加して、記事を書いたりしました。こういうことができるのもオンライン会見のいいところだなと、実感しました。地方の自治体の会見に参加するなんて、しかも東京から参加するなんて今までは考えられなかったことなので、非常に新鮮な感じがしました。

実際に会見に出ていていろいろ感じるのは、会見に出る(見る)側もけっこうデジタル武装が必要です。パソコン1台でやるとプレゼンテーションの資料をどうやって見ればいいんだろうと、迷ってしまうときとかがあります。人が画面で話されている表情も見たいし、プレゼンも見たいしとなると、どうすればいいんだろうと迷ったりすることもあります。

さらにその状況をメモするときにはどうやってメモすればいいんだろうか、録画していいのだろうかとか、いろいろ迷うところがあります。「録画してオッケー」とか「ダメだからやめてください」とか、そのへんも事前に連絡をいただけたりすると、とてもありがたいかなと思います。

それからオンライン会見の案内は来たんだけれども、中止になったケースも何件かありました。1つは外資系の会社さんで、本社が非常に厳しい状況になっているので日本でも会見はやめておいてくれということでした。また、会見の案内をいただいてから、1週間、2週間経ち、激しく状況が変わるので、内容がそぐわないということで会見を中止しますというご案内をいただいた会社さんもありました。

オンライン会見に参加した際の実態ですが、毎回毎回違うツールで会見が行われるので、会見に出る前に今日のツールは何だっけと確認しないといけません。そもそも申し込みをしないと会見に参加できないタイプもあるので「オンラインだからいいや。今日は急に参加できるようになったから参加しよう」と思って時間になって参加しよう としたところ、「あ、申し込みしてないから会見にそもそも参加できなかったー」ということもありました。

使うツールが毎回違うと、あるツールはブラウザから、あるツールはダウンロードが必要だいうことになって「あ~ダウンロードしてないよ~!」とギリギリになって慌てたこともありました。たぶんみなさん、会社の中で使われていることが多いので、あまり違うツールを毎日毎日使うという経験がない方もいらっしゃると思います。出る側はわりと毎回違うツールなので、毎回新鮮な発見とか驚きがあったりします。

それから開催中はいろいろトラブルというかハプニングが起こります。ある会見は、ご本人がブログ記事でまとめてらっしゃったのでご覧になった方もいるかもしれません。その会見は会場の会見とオンラインの会見と両方ができる会見だったんですね。

そしたらオンラインと会場と違うプレゼンテーション画面が出てしまって、オンラインで参加してる人には一切会場の様子が中継されずにパソコンの画面だけが永遠に映るので、自宅から参加していたプレゼンター側の人が、「しょうがないから僕が話しますね」と言って、会見が二元中継になってしまって(笑)。まったく違う内容の会見が併走されてしまったという、ユニークな会見もありました。

先ほどお話した神戸市の会見はYouTubeを使った会見だったんですけれども「質問は別のツールを使ってやりますよ」ということだったんです。そのツールとYouTubeがすごく相性が悪かったみたいで、質問を入れて送信をすると音声が切れてしまうんですよ(笑)。再びYouTubeで入りなおさないと音声が伝わってこなくて、終わったあと「すみません! 音が聞こえなかったから音声ください!」といって記事を書き上げたりしました。

でもやってみると「思ったほどできなくもないな、けっこうオンラインで会見ってできるよね」というような感想もあります。

オンライン会見のメリット・デメリット

三浦:オンライン会見って、やっぱり参加しやすいというのが最大のメリットです。通常の会見は2つ重なる行けないんですけれども、オンラインでは重なってもひとつは録画して参加しちゃいましたという人もいらっしゃいましたし、2つの会見を2つのモニターを並べてハシゴしましたという方も実際いらっしゃいました(笑)。

大河原さんと谷川さんが話されていたのは、できれば会見は50分で終わってほしいと。例えば10時から始まったら10時50分で終わってほしい、と。そうすると11時から別の会見があってもスッと横にいけるので、同じ日に開催される複数の会見に出られるようになります。

できれば50分をルール化して、さらに午前中の会見にしてくれるといろいろ作業がしやすくてありがたいですねということを、大河原さんと谷川さんはおっしゃっていました。実際、今週来た会見案内で、50分で終了する会見が2件くらいあります。「大河原さん、谷川さん、いろいろなところに伝わってますよ」と、その会見案内を見ながら思いました。

逆につらいこともいくつかあります。やはり写真はみなさん困ってらっしゃるとおり、なかなか撮りにくいですね。現場で撮っていただいたものを送っていただいたりもします。

今日、日経BPで編集をやられていた方がTwitterで書いてらっしゃったのは「カメラマンさんが撮ってくれた写真と比べると、動画画面キャプチャーだと(登壇者の顔の)向きが一方向になってしまう。記事を作るときに平坦な記事になっちゃって非常にやりにくい」ということをぼやかれていました。そういうところも含めて、写真問題はどうすればいいかは、みんなでいろいろ意見を出しながら考えていったほうがいいんじゃないかなと思いました。

それから名刺交換ができませんという話。これは昨日、谷川さんが書いてらっしゃいました。これは会見じゃなくてオンライン取材の場だと思います。3人くらいの方が出てらっしゃって、先方はこっちが誰かを知っているんですけれども、3人の方のそれぞれの名前がわからないような場合だと非常に話もしにくいし、あとからまとめるときに誰が誰だかわからない。

オンラインで名刺交換というのは、ちょっと考えなきゃいけないねと。小池さんがあとから「待ってました!」とおっしゃるかもしれません(笑)。そんなこともちょっと考えないといけないかなと思いました。

オンライン・オフラインでの「質疑応答」の差

三浦:それから質疑応答は、いろんな方式があります。音声のものもありましたし、チャットもありましたし、メールを送ってくださいというのもありました。文字で送ると、わりと「同じ質問なので1つで答えさせていただきます」ということがけっこう多いんです。

でも実際の記者会見って、ちょっと不思議な現象が起きるんです。例えば、(お互いを)まったく知らない記者が(前の記者の質問と)同じことを聞きたいときに、ちょっと状況を変えながら「前の方の質問をもう1回繰り返すんですけど……」と3回くらい聞くケースがあるんですよ。

3回答えているうちに相手も「う~ん、おっしゃってることはわかりました。できないとは思うんですけど、善処したいとは思ってるんですよ」とかちょっと本音が出て、記事に書きやすいような応答になってくることがあります。この現状のオンラインの会見だとなかなかそういう質問がしにくいので、ちょっとそこは難しいなと。

あとはやっぱり会見に来た人、もちろん主宰される側もそうだし、一緒に来てる記者さんなんかとも雑談することで確認することっていっぱいあるんですよね。その確認ができないので、いろいろ不安な部分は私たちもあります。

先ほど話したように、やっぱりメモが取りにくいですね。私は今、紙のノートで取ってるんですけど、デジタル機器だと複数台ないとデジタルメモが取れない。そこのところはどうやったらいいんだろうか、というのは答えがなくて非常に迷っております。

それから長時間の会見は、家にいるとやっぱり集中力がちょっと続かなくなってしまうようで、見ているのが厳しいなと思うことも多いです。わりとメリハリのある話し方をされるスピーカーじゃないと、オンライン会見というのはつらいかもしれません。話すのが苦手で下を向いて話されるような方だと、見てるほうもちょっと困ってしまうことがあるので、しゃべり方、見せ方には工夫がいるような気がしています。

環境、写真、事前質問について

三浦:オンライン取材の感想についてもお話します。オンライン取材はわりとクローズなので、最初はすごく心配していたんですけれども、やってみたらけっこううまくできました。ただ今日、谷川さんが「電話取材をしたんだけれども、非常にやりにくくて。音声がハウリングしてちゃんと聞こえなくて、これはダメだ」という投稿をさっきFacebookにされていました。明瞭に見える、聞こえるというのは必要かなと思います。

これは帯域の問題もあると思うんですけど、取材の間、自分の姿を映さないでお話しされる方もいらっしゃいます。やっぱり顔を見てないとちょっと取材ってつらい場面があるので、お互いに顔が見える環境で取材はしたほうがいいかなと思いました。

写真は先ほどお話したように、やっぱり課題の1つですね。名刺交換に関してもやっぱり課題で、サイボウズにいらっしゃる風穴さんは「自分の(話す画面の)背景を自分の名刺みたいなかたちにして参加するんですよ」というお話をされていて、いろんなアイデアがあるなと思ったりしました。

それからやっぱり、質問が事前にあったほうがオンラインはうまくいくような気がしています。取材には事前の工夫も必要だと思います。

非常に難しい時期だと思いますけれども、オンライン会見はどんどんやっていただけるとありがいなと本当に心から思っております。参加の敷居をできるだけ低くしていただいて「書かないけれども、この会見を聞いておきたいんですよ」という人にも積極的に間口を広げていただくと、聞いたお話をもとにして次の取材を考えられることもけっこう多いです。

毎日家で書く仕事だけしているのではわからないことも非常に多いので、どんどん会見をやってください。短時間で、30分くらいでいいので1つのテーマで勉強会みたいなことでも構いませんので。お互いに意見を言いながら、そういう勉強会とかも含めてたくさんしていただけるとありがたいと思います。

おそらく、コロナ騒動が終わったとしても、オンライン会見というのは残るんじゃないかなということはみんなおっしゃるようになってます。もうすべてオンラインでもいいんじゃないかという声もあるかもしれないですけど、実会見も非常に大切だと思うので、できればオンラインと実会見と併用していただけるとありがたいなと思っております。どうぞよろしくお願いします。

記者同士の横のつながり、資料配布への希望

加藤:三浦さんありがとうございます。質問をいくつかさせていただきたいなと思うんですけど、よろしいでしょうか?

三浦:はい。

加藤:記者の情報交換、終了後にみんなでちょっと雑談をするみたいなのは、例えば「今の会見どうだった?」みたいなのを情報共有してどこを主に書くかとか、どう感じたかという話をするみたいな感じなんですか?

三浦:そうですね。どんなところを書くかとか「こう聞こえたんだけど、そう聞こえたのは間違ってなかったかしら?」という自分の聞き取りを確認するような場合もありますね。

加藤:それはもしかしたら広報の初心者の人にはわかりにくいかもしれないんですけど、記者は基本的にみなさん横のつながりがけっこうあるんだよ、ということですよね?

三浦:そうですね。横のつながりもありますし、横のつながりがぜんぜんない人でも同じ会見場にいて同じような反応をしてると、急に意見を交換し合うなんていうことも起こります。

加藤:そうなんですね。あとは30分くらいでちょっと勉強になるものをみたいな話がありました。そういうのは新しい発表じゃなくても、ちょっと聞けるような場があるとありがたいという?

三浦:そうですね。タイムリーじゃないことで、そういう勉強会が頻発しても困るような気もするんですけれども(笑)。4月は非常にオンライン会見も少なくなっていて、お家にこもって仕事をする人が増えていたので、ちょっとした勉強会で意見交換ができるとホッとするなと思う方も、多かったような気がします。

加藤:なるほど。ありがとうございます。(スライドを指して)今、画面に出している中で、資料の配布方法ですね。「例えばどんなかたち、どんなフォーマットが受け取りやすく活用しやすいですか?」というのがありました。これは三浦さん的にはどうでしょうか?

三浦:さっきのデジタル武装をどれくらいするかによっても、答えが違うかなとは思います。会見が始まる前に資料を先に送ってくださる会社さんが、何社かあります。そうすると事前に資料を見ながら、こっちでは人の顔を見ながら会見を聞くことができるので、意外とありがたいなと思っています。

私はそれを印刷したものにメモをしているときに「ITの記者を長くやっていて、印刷してメモを取りながらオンライン会見を聞くというのも、非常にアナログでバカバカしいな」と思いながらも(笑)。意外とそれが有効だったりします。資料をスマートフォンに移して、それを見ながらデジタルメモをするというのもありだと思います。5分とか10分くらい前に資料を送っていただけると、ありがたいかなと思います。

加藤:なるほど。確かにあとから送るケースが多い気がしますね。

三浦:多いですね。

加藤:わかりました。それから、オンラインでの視聴者側の反応。これはメディア側の反応だと思います。基本的にはみなさんウェルカムというか、このタイミングではやってほしいと思われているということですね?

三浦:そうだと思います。

加藤:わかりました。だいたいこんな感じでしょうか。三浦さんありがとうございました。

三浦:ありがとうございました。