俯瞰して見ることで、そのもの自体の本質が見える

尾原和啓氏(以下、尾原):でも、おもしろいんですけど、1個1個細かい話に入っていく中で、逆にこんなに矢継ぎ早に話している中で、安岡さんやチームはなぜ、各ジャンルでAIや5Gのオポチュニティ・機会を見つけられるのか。それを疑問に思っている人もたぶんいると思います。これって、どういうふうにブレストされたのか、どういうふうにやられたんですか。

安岡寛道氏(以下、安岡):要はもうちょっと目線を上げるんですよね。教育サービスだけ見ていたのではだめだったので、イチローさんの話もそうですけど、自分が調子いいときにどうすればいいかというものがあるじゃないですか。発想を変えるんですよね。

スカイハイに立ってみて、上から自分を見下ろしてみる、上から教育サービスを見下ろしてみると、もっといい話って本質的になんだったのかが覚えやすいんですよね。

尾原:なるほど。狭いビジネスでやると、どうしても勉強する、机に向かってやる瞬間だけを見たくなっちゃうんですが、スカイハイに立ってよく考えてみると、勉強が上手くいっているときは「なんか興味を持てたときだよな」とか。

そういうふうに広げてみると、実は物事が上手くいく瞬間ってもっと手前だったり、もしかするともっと後ろだったり。ないしは他のものだったりということが見ることができるということですね。

「理想からの逆算」で見えてくるもの

安岡:そうですね。まさにその通り。続けると、これは美容ですけれども。今カウンセリングして、ネットでやるのが流行っていますが、だいぶ前の2016年に出てきている話なんですが、自分の顔を映して、魔法の鏡「スマートミラー」ですね。自分がなりたい容姿がプリントアウトされて出てくると。

尾原:なるほどね! 

安岡:(デバイスを鏡に)ピタッと貼っちゃう。今は在宅勤務でいろんなネット会議するときに、化粧せずに入ってくると。

尾原:画像修正で化粧をすることがあるけど、画像修正じゃなくて、リアルのほうを修正できるようにシールで貼っちゃうと。

安岡:シールで貼っちゃう(笑)。そっちの時代になる。塗るんじゃなくて貼る時代になるんじゃないかということですね。

尾原:それはもう完全に画像認識の技術もあるし、どういうふうにするべきかをちゃんと合成する技術もある。3Dプリンターみたいな立体的に印刷する技術もありますよね。

安岡:そうですね。あとは自分の一番いいかたちが記録されていたほうがいいと思うので。それを何回も塗っている場合じゃないという。それだったら貼りゃいいじゃんという話です。

尾原:確かに。逆に言うとアウトプットから逆算して、本来こうなるべきというものに、今の現状に縛られるとこれが魔法のように見えちゃうけれども、実は理想型から逆算すると「そうですよね」みたいなところに立ち戻れるかみたいな話ですよね。

サブスク型の自販機に見る、AI予測のこれから

安岡:今は普通に警備でも防犯カメラを見て、なにか来たら直行することはありますけれども、これも5Gになると、リアルタイムで変な動きをしているのがすぐわかると。

プライバシーの問題はもちろんあるんですが、特定人物を1秒以内に発見する技術も去年の10月にできているので、それを元にして、かつ登録している人、一番近い人が駆けつけるので、いろんなことができるし、避難誘導とか警備だけじゃなくて防災にも対応ができますね。これはタクシーと一緒ですね。

自動販売機。これも今はサブスクリプションサービスですね。定額だと毎日飲める次世代自販機があります。最近は場所がある程度わかるので、自動販売機の起点のIoT無線サービスエリアの見通しと書いてありますが、要は自動販売機がつぶやいてくれると。

近くに行くと、今は「こういうのがありますよ」とつぶやいてくれて、それでもちろん購入するのもあります。あとは、サブスクリプションサービスも健康系のサービスと一緒にカロリーとかも含めて「こういうふうにすれば一番いいよ」というものが、企業を超えてサブスクリプションサービスができるんじゃないかと思いますね。だから健康管理が好きな人だったら、そういうもののサブスクですし。

尾原:このへんはパーソナライズという話もあるけど、AIによって実際にどのくらい使うかが予測可能なので、月額いくらぐらいでやれば、みんなハッピーなのも出せるし、そのAIの予測範囲みたいなのが広がってくると、1社に閉じたサブスクじゃなくて、複数社で連合したサブスクになってもみんなハッピーになっていくと。

まさにスカイハイで大きなシステムでも最適化できて、そうするとユーザーから見ても楽ちんだから使えるみたいな。バランスですよね。

安岡:利用料もすぐにつかめるはずなので、どこかの会社が損をするのではなくて、ちゃんとそれに応じて配分すればいいだけの話なので。今でもパスモを使ってJRに乗ったり、そんなのが平気でできたりしますので。それと同じ状態が自販機でもできます。

金融業界の慣習も変わっていく可能性がある

安岡:あとは金融ですね。これは普通にCIC(信用情報機関)とか全銀協の与信情報を元にして貸し借りをするんですけれども。今後は個人の、返せない人に対して利率が高くなっちゃうんですね。なので、ネットでつながるんだったら、返せないんだったら、例えば車買ったんなら止めちゃうよとか。止めちゃえばいいので、その分利率を低く抑えることもできます。

あとはその人の信用情報、ソーシャルレンディングです。SNSの情報だったり、いろんな情報を元にしているんですよね。家や友達、車の使い方の情報とか、スマホの使い方とかですね。

払わない人の友達は払わないとかですね。そんなかたちで与信がとれるので、それに応じてある程度社会的信用のある人は絶対に払うので、そういうことを元にして与信を判断して、金利をできるだけ抑える。よく残価設定ローンとかありますが、それに応じて、できるだけ安く抑えることができます。

あとはレンディングだと個人が貸すこともできます。銀行じゃなくて、お金の余っている人たちが集めたお金を人の融資に回すことができます。

尾原:このへんがおもしろいのが、金融って今まで大手の金融機関しかできなかったことが、小分けにインターネットでできるから、個人が出すこともできる。左下にあるように、そういう管理するデバイスを提供すればなんでも貸せるようになる。

「バリューアンドバンドル」という言い方をしますけれども、なんでもばらけさせることによって、ばらけさせることを加速するプレーヤーがプラットフォームになり得るようなところもおもしろいところですよね。

安岡:あとは、個人の信用とかも勝手につけるんじゃなくて、ブロックチェーンだと中立的にできますので、そこで評価してもらって、その情報をサクラじゃないかたちでできますので。それも1つあるかなと思いますね。今度、機能的なものをさくっといきます。

尾原:渋いですね。

人が見落とすかもしれない危険な事例をAIで検出することで、対策が打てる

安岡:物流ですけれども、これはヒヤリハットの情報の検出ということで、どういうときにヒヤリハットしたかをちゃんと検出しておけば、それに応じて避けることができると。

2年前、これはソフトバンクの実証実験で5Gの通信で自動運転したんですけれども。これは先頭だけ人がいて、他はいないんですよね。

高速道路にダーッと何列もあって無人機があって、一番前だけ有人機がいました。そこから先を他の物流とつなげば大量物流の幹線ができます。こういうかたちに進んでいくというのが、もうすぐそこまできているかなと思います。

尾原:ヒヤリハットって業界じゃない方は知らない可能性もあるので説明すると、なにか事故が起きてしまいそうなシチュエーションのことをヒヤリして、ハッとするということで「ヒヤリハット」って言うんですね。なので、物流にしても製造にしても、とくに物を運ぶときって、本当にヒヤリしてしまったら事故って大怪我をして、場合によっては人が死んだり。

もっというと物を運ぶことで、大量の損害を出してしまう。AIを使うと、どういうシチュエーションでヒヤリハットが起きているかが、本当に事故が起きていなかったとしても、どこでヒヤリハットが起きたかみたいなことを検出することができるし。それができるとどうすれば防止できるかもわかる。

究極でいうと、自動運転になれば解決するじゃないかってみんな思うかもしれないですけれども、結局、全部の車が自動運転にならない限り、自動運転と人間がミスコミュニケーションするかもしれない。人間が残された部分でなにかヒヤリが起こってしまうので。

そこをあらかじめどういうケースでヒヤリが起こるかわかる認知を、人間ですら気づかないところをAIがしっかり認知してくれて、認知できるから対策がとれるみたいな。そういう使い方ですよね。

安岡:まさにその通りですね。フォローしていただいてありがとうございます。

尾原:このへんのケースでいうと、この本は産総研の人工知能研究センターがサポートしていますけど、彼らの研究でいうと子どもが幼稚園とかでいつ事故るかと同じように、AIでずっと見ていくことで、どういうシチュエーションのときに子どもの事故が起きやすいかを識別してから対策を打つ。このヒヤリハットはあらゆるシチュエーションに使えたりするんでしょうね。

決済は便利になっているようで複雑化している

安岡:それの物流版と思えばいいですね。ポイント・クーポン・決済は私の専門ですが、ここだけは現状を見ると、こんな感じです。

私と一緒にやっている人間が出しているんですけれども、例えばおむつをレジに持参するとトモズのポイントカードを提示して、LINEを自動で起動して15パーセントのクーポンを掲示して、Pontaのアプリを掲示してポイント画面を提示して、楽天ペイアプリを起動して、QRコード画面を掲示。

尾原:面倒くさい!

安岡:要は便利になっているようでむちゃくちゃなんですね(笑)。これがシームレスで、PayPayはスーパーアプリと言っていますけど、全部一番いい支払い手段で、その人にあったかたちで割引をシームレスに適応して。

尾原:そうですよね。本来的に。

安岡:それをシームレスにやるというのが通常ですね。例えば使いたいクーポンや、有効期限が間近、キャッシュバックが多い支払い手段。仮想通貨も入れる感じで、自分で優先順位をつけておけば、その通りに自動で決済してくれるようにしないと、便利になったのか、便利になっていないのかよくわからないような現状です。

尾原:そうですね。このへんは安岡さんが2006年に『2010年の企業通貨』という本を書かれて、実際にポイント経済が起こり、15年経って2020年に本当に企業通貨が世の中の通貨になる時代に入ってきたときにどう思うか。こういった深掘りは後半でぜひしていただきたいと思います。

2010年の企業通貨―グーグルゾン時代のポイントエコノミー (未来創発2010)

安岡:まさにそうです。あと2つ、ユーザー検証。Webアンケートはかなり浸透しました。私がコンサルタントを始めたときはWebアンケートがだいぶ偏っていたんですけど。今はだいぶ一般性を出すようになってきたんですけれども、それでも答えるのに構えちゃうんですよね。

これをどうするかというと、個別のいろんなLINEで聞いてみるとか、クエスチョンに画像で答えてみるとか、いろんなものがその場その場で答えられるようにすると、それがたまってアンケートになるかたちになります。

そうすると、変に構えた感じの答えじゃなくて本質に近い答えになってくるんじゃないかなというのが今後のAI×5G時代のアンケートになるかと思っています。

社員のモチベーションの可視化やチーム作りにAIを活用

安岡:最後に人事なんですけど、これはもうすでに出ているんですけど、社員のモチベーションを見える化する、プラスアルファコンサルティングの「タレントパレット」では、誰と誰をつなげると一番業績がよくなるかがわかってきて。

そのタイプをちゃんとAIが認識して、このタイプの人にはこういう人を連れてくればいいと。もしそれを社内だけではなくて社外の人材ももしデータベースがつながったら、それに応じて人を集める。

やっている側はどうすればいいかというと、AIの対応力も評価項目になってくるのが今後の人事なのかなと思います。

尾原:一見すると感情はAIでは扱いにくい項目に見えるんですが、結局は人のやる気や、成長した楽しみは、ユーザー自身に聞いちゃえば結果がとれるから、そうするとAIがその中に関係性を見つけて、この人とこの人を結びつければより元気になれたり、実はこの人が人のやる気を引っ張っていることを可視化するんですよね。

安岡:そうですね。そうしないと、単に業績がいい人といっても意外とそれを後ろで支えている人を外しちゃったりする可能性もあるので。そういうのもちゃんと見ていきましょうよと。

尾原:ついつい人ってAIイコール自動化と思っちゃうんだけども、分類して関係性を見いだすことによって、本当に大事な物を守ろうみたいなことだったり、具体的にやりたいときにどういうふうにすればいいかをできるんじゃないかと。

そこらへんも分類分析・予測・自動という、この3ステップのどこの部分をやりたいかみたいなことをきっちり教えていただきました。

安岡:まさにその通りですね。

AI×5G時代に役立つ思考法

尾原:いいですよね。ということで、あっというまに前半45分が経ってしまいましたけれども、ありがとうございました。なので、今回抜粋していただいたのは全部で何個でしたっけ。

安岡:十数個ぐらいでしたかね。

尾原:そうなんですけれども、本の中ではまだまだあと40個ぐらいのものがありますし、先ほどお話ししたように、この裏側に「どういう軸で考えればこういったアイデアが出せるのか」という7つの主要コンセプトだったり。そもそもそういう思考法に至るためにはスカイハイから考えてみようといったPDCAの回し方もけっこうあります。そのへんはぜひ後半深掘りできればと思います。

デジタルマーケティング2.0 AI×5G時代の新・顧客戦略

あと、安岡さんとはまた、この本から少し離れていきますが、先ほど言ったように2006年当初から企業通貨を見られていて。ようやく今、時代が追いついたときにこの先どういうことが起こるのかを安岡さんが考えられているかを聞かせていただきたいです。

ということでいったん無料パートのほうはここで終わらせていただいて、続きを見たい方に関しては説明文のところに入っております。ぜひこの本のURLも書いてありますので、本当に1つでもヒントがあればビジネスが作れるいい時代だと思います。安岡さん、ありがとうございます。

安岡:どうもありがとうございます。Thank you very much.

尾原:というわけで引き続き、会員レベル2に深掘りたいと思います。では、失礼します。