The Breakthrough Company GO代表の三浦崇宏氏が登壇
三浦崇宏氏(以下、三浦):こんにちは。The Breakthrough Company GO(以下、GO)という会社の代表で、PRとクリエイティブディレクターをやっている三浦です。今日はよろしくお願いします。
(会場拍手)
人の前で話すのに慣れていて「よく話す人だな」と思われがちなんですけど、毎回人前で話すときには「ちゃんと話そう!」と思って立っているんですよ。
「いつも話しているんだろうな」「いつもこの人はペラペラしゃべっているんだろうな」と思わないでくださいね。毎回僕もちゃんと緊張して、「どう持って帰ってもらえるかな?」という気持ちで立っているので。僕もサービス精神を発揮してめっちゃしゃべるので、ぜひみなさんもサービス精神を発揮して、めっちゃ拍手してください。
(会場笑)
練習します?
(会場拍手)
もっといけるでしょ、ありがとうございます。今日は雨ですからね。雨の日に来てくれるお客さんはめちゃくちゃいいお客さんだと思っているので、大事にしたいと思います。
今日話すネタ自体は、3時間くらい分のネタです。3年目の若手官僚向けに講義をしてくれという依頼を内閣府人事院からいただきまして、そこで3時間しゃべった内容をタイトルだけ変えて持ってきました(笑)。
(会場笑)
今日の尺は何分? 45分ですよね。まあまあ短いのでバンバンやっていこうかなと思っているんですけど、ちょっといい話ができたらなと思っています。
めちゃくちゃ喉が渇くんですよ。(スタッフに向けて)帽子持ってきて。(帽子を交換して)今日はこっちの気分だったんですよ。でも、オフィスに置いてきちゃった。
変化と挑戦にコミットする会社
お話しさせていただきますね。僕はGOという会社をやっていて、どんな会社かというと、「Breakthrough Company」という言い方をしています。Breakthroughは一体なにかというと、行き詰まりの状況を打破することや、科学技術などが飛躍的に進化すること、あるいは難解な障害を突破することをテーマにしています。いわゆる広告ですね。
僕はもともと博報堂という広告会社で10年ぐらい働いていて、2017年に独立したんです。そこから新しい……単なる広告やPRを作るだけじゃなくて、世の中やテクノロジーがどんどん変化していく中で、社会の変化や挑戦を後押しする会社をやりたいと思ってGOという会社を作りました。
僕らがやっていることは、顧客や対象に対して変化や挑戦を企画・実行し、行き詰まりの状態を打開、あるいは飛躍的な進歩、難解な障害の突破を促す。こういったことをテーマにやっている会社です。
僕らの目的は、社会のあらゆる変化と挑戦を同化・加速させることと考えています。人間の進歩と多様性が社会を良くすると信じているからです。
進歩というものについて疑問がある場合もあると思います。例えば原発があって、テクノロジーの暴走によって日本の、人間の生活が脅かされたと。
じゃあそれを受けて、「便利な生活は諦めて、もうやめましょうよ」と言うのか、あるいはその先にある原発以上に強いパワーを持った水力・風力発電を考える、あるいは安全な原発を考えるのかとか。そんなふうに、テクノロジーの限界は、その限界を凌駕することで超えていくしかないと思っていて。
人間の進歩と、あらゆる思考の多様性が人間の進化・文明の進化・社会を良くすることにつながると信じているという信念で会社をやっています。なので、僕らGOは変化と挑戦にコミットする会社という言い方をしています。
広告やPR制作会社とは一線を画した仕事の領域
改めまして簡単に自己紹介をします。三浦といいます。今までやってきた仕事はメルカリさんとか、AKB48のミュージックビデオとか、渋谷界隈でヒカリエの隣にあるCAMPFIRE(キャンプファイヤー)というクラウドファンディングの会社のCMを作ったりもしています。
何度も言いますが、僕らがやっていることはいわゆる広告・PRを作ると言うよりは、社会のあらゆる変化と挑戦を支援することなんです。例えばクラウドの新規事業を一緒に作ったり、スタートアップに出資してその会社の成長を一緒に走りながらやっていくというスタンスで仕事をしています。
(スライドを指して)今メンバーは20人ぐらいで、こんな感じのメンバーで仕事をしています。ここの4人がすごく狭いとかいろいろあるんですけど。
(会場笑)
スタジオの関係もあってね、狭すぎて。同じような体(型)が4人いる。影分身みたいになっていますけど、こういう会社でやっています。
電通とか博報堂とかADKとかゴールドマン・サックスとか、いろんなところから人が来ています。ちょっと簡単にここ1~2年でやった仕事をまとめたムービーを観てください。
(動画が流れる)
こういう感じの仕事をいろいろやっています。見ていただけるとわかるんですけど、いわゆるCMやポスターだけを作るわけじゃなくて、クライアントさんと一緒に事業をやイベントを作ることもあるし、いわゆるブランディングそのものをやることもあります。
簡単に言うと今までカンヌ広告祭でいろいろ賞を貰ったり、いろんなクライアントと仕事をやっていたりもしています。今日は時間もあんまりないのでバンバン進めていきますね。この話からしようかな。
日常生活を一変させるきっかけはあちこちにある
今日お越しになっているみなさんはどんな話を聞きたいのかな? と思っていたんですけれども、たぶん世の中がどう変わっていくのかとか、渋谷という街とか、多様性みたいなものが概念としてあるときにこれから世の中はどう変わっていくのだろうか、みたいなことを話したらいいんじゃないかと思って。
まず、この話からしようと思っているんです。これは1回ブログにも書いたんだけど、令和の時代になって「ポスト平成」と言われていますけれども、第4次産業革命とも呼ばれていて。この時代がどういう時代かというと、人類史上最大の予測不可能な時代だと言われています。
2020年に5Gが実用化されて、4Gとの性能差が速さ100倍になって容量が1,000倍になる。これは具体的にどういうことかというと、例えば光の通信回線の濃度がめちゃくちゃ上がるから、目の前に立体映像を再現するようなことがすごく簡単にできる。
つまり、アニメに出てくるような立体映像のお姉さんやアニメのキャラクターと会話ができるようになったりします。あるいは、2020年代中盤のAIならびに自動運転のレベル3の実用化が市場規模でいうと22兆円。AI関連産業が87兆円。
AIや自動運転レベル3がどういうことかというと、車の形が変わりますよね。自動運転で運転しなくてよくなるから、前に運転手さんがいなくなる。
今の時点ではまだハンドルを持たなきゃいけないとかいろいろあるんですけど、そのレベルが進化すると、家がそのまま移動できるようになるとか、部屋がそのまま車みたいに移動できるようになると。
そしてどうなるかというと、家の中にずっといるから、たぶんパジャマがめっちゃ売れるようになりますよね(笑)。
少子高齢化とAV産業と美容整形の相関性
こうやって数字とか世の中が変わるということを考えると、みんなまるで自分とは遠いもののように考えるんだけど、実はすごく簡単に日常が変わるレベルの変化が起きるということなんです。
5Gの実用化によって立体映像のホログラムが圧倒的な精度で現れて、なおかつVRもできるようになって、しかもAIの精度が完璧になるとなにが起きるか。これはたぶん少子化が進みます。
だって、別に恋愛しなくても理想の女性や男性とずっと会話できるようになるから。そうなると「あれ、恋愛ってなんだっけ?」みたいな。
少子高齢化と日本のAV産業と整形産業の発達は、必ず相関性があると僕は思っています。こういったいろんな変化が日常をガラガラ変えていく。なにが起きるかわからないことが起きるという時代です。
ブロックチェーン市場が世界中で急拡大して市場規模が67兆円ぐらいになるとか、生活の頂点が超高齢化して、2020年に65歳以上の人口が30パーセントになる。
あとは副業の自由化。2020年に副業とフリーの労働者数がだいたい2,000万人くらいになる。日本の労働人口の約3分の1がフリーかなんらかの副業をしている人になるという変化が起きる。
そうなると、たぶん転職や新卒採用というものがなくなるとか、「大学4年で卒業したってなにをするんだ」というように考え方が変わるとか、あるいはそもそものキャリアというものがめちゃくちゃ複雑になってきますよね。
一生の間に複数の夢を持てる時代へ
この前、ある大学のミスコンの女の子と飲んでいたんですよ。その子に「将来どうするの?」と聞いたら、おもしろくて。「実はある芸能事務所の所属で、アイドルになることが決まっています」「あー、そうなんだ。へー、どこの事務所?」と。なんかちょっと大きい事務所の名前だったので、「あ、じゃあもう今日解散しようか」となったんですけど。
(会場笑)
その女の子のキャリアプランを聞いたんですよ。今21歳で、(この先)どうしたいの? と聞いたら、まずアイドルになってデビューして、めちゃめちゃがんばると。そして25歳か26歳で1回引退して就職する。「どこ行くの?」「PR会社」「あ、そうなんだ。じゃあうちとか来たら?」「はい」と。
その子の地元が青森県なんですけど、30歳で地元に帰って、結婚してお母さんをやる。その後35歳で地方議員をやる。「めっちゃ飛んだなキャリア」と思って。
そして、35歳から40歳は国会議員を目指したいと。さらに40歳を越えたら1回政界を引退して、地元で保育士になるということを言っていて。すごくおもしろいのが、「夢」というとみんな1つのことを考えるじゃないですか。「宇宙飛行士になりたい」「社長になりたい」「政治家になりたい」「スポーツ選手になりたい」とかね。
でも、彼女はアイドルになって、OLになって、保育士になって、お母さんもちゃんとやって、政治家になって……というふうに、自分の夢が複線化しているんです。
これはどういうことかというと、人生100年時代に加えてこういった副業とフリーランスが出てくると、夢をシナリオとして考えていくことができるようになる。
夢というものは、今まで僕らにとって……僕は36歳になったばっかりなんですけれども、10代や子どもの頃は「将来小説家になりたい」とか、なにか1つの夢を追いかけなきゃいけないというイメージがあったんです。
でも人生100年時代と雇用の複数化、あるいはSNSやスマホによって自分のキャリアを自由に変えられるようになったことで、夢が複数持てる時代になっている。これはすごくおもしろいですよね。
ルールが変わる時代の競争戦略
僕も今クリエイティブディレクターという仕事をやりながら、自分の会社を経営していて、でも小説を頼まれて書いているので、もしかしたら小説家になれるかもしれない。でも、もしかしたら50歳になったときに突然「ダンサーになりたい」とか言って、自分の夢をガラッと変えちゃうかもしれない。
そうやって自分のやりたいことをいつでも変えられるし、長い人生の中で自分のキャリアのいろんな夢をたくさん叶えられるような、そういうおもしろい時代が来ているのがすごくいいなと思っています。
こういう時代に企業や個人が生き残ったり活躍するためにはどうしたらいいのか、という話なんですけど、例えば昔は恐竜がいたけれども結局生き残れなかった。恐竜は滅んでしまって、生き残ったのは哺乳類だったということが起きた。
これと同じことが今起きているんです。ここで話を聞いてくださっている方々は企業の方々、あるいは学生さんとかですよね。今の世の中は、市場に対応する競争の戦略をずっとやってきたんですよ。
マーケティングでいえば、マーケティングは競争の戦略だった。既存のルールでうまくやる。例えば一番おいしいビールをつくる、一番速い車をつくる。そしてそれを一番安く売るという戦い方をしていて。
それぞれビール会社はビール会社と戦っていたし、車会社は車会社と戦っていたんですね。例えば車会社は日本の人口1億7,000万人のうちの普通免許を持っている5,000万人を、どうやって他の会社から奪うかという奪い合いをやっていた。それが今までの市場に対応する競争戦略です。
だけど今はもうルールがコロコロ変わっちゃう時代ですから。僕がよく言っているのは、例えばみんなはサッカーをやっているつもりだったのに、ある日突然アメフトにルールが変わってしまう。ただ、「今からアメフトだよ」ということを誰も教えてくれない。
みんながサッカーをやっているときに1人だけバッとボールを持って、「え!? あれ反則じゃないの?」と思ったら、そのまま駆け抜けてタッチダウンをして点を取ってきちゃう。そういう時代になっていると思うとわかりやすい。
“新たなステークホルダー”を定義すべき理由
ある日突然テクノロジーによって世界のルールが変わる。人間のモラルが変わる。そういったことが普通に起きている。昔だったら既存のルールでうまくやることが大事だったけど、今は新しいルールに早く慣れる、新しいルールの中で1個チャレンジをした人が勝つ時代になっている。
昔だったら自動車会社の競合とか、例えばトヨタの競合は日産とホンダとメルセデスだと思っていたけど、今はGoogleやAppleは競合じゃないんだっけ? とか。トヨタは今モビリティシティ構想というのを唱えていて、移動と都市に関するプラットフォームを目指している。
そうなると、もしかしたら森ビルとか東急の不動産会社とかが競合になるかもしれないし、あるいはライバル、いっそ一緒に仕事をする仲間になるかもしれない。
2個前のセッションで僕の博報堂時代の先輩の佐藤夏生さん(EVERY DAY IS THE DAY共同代表)というクリエイティブディレクターが「フレネミー」という言い方をしていました。フレンドでありエネミーであるという言い方ですね。それも素晴らしい。
たぶん、敵だと思っていたものがある日突然味方にもなるし、味方だと思って一緒に共同開発をしていた会社が、突然ものすごい競合になって市場を奪ってしまう。そういうことが起きる時代になっている。
だからこそ、新しいステークホルダーを定義しないといけないんです。あなたは敵じゃなくて味方、あなたは味方じゃなくて敵。あるいはあなたは共同開発していく、あるいはもうあなたは自分と同じ一部だと。
そういった自分の周りにいるステークホルダーが一体なんなのか。その彼らと一緒になにをやっていくのかということを、変化し続けるルールの中で定義しなきゃいけない時代になっている。