2024.11.25
「能動的サイバー防御」時代の幕開け 重要インフラ企業が知るべき法的課題と脅威インテリジェンス活用戦略
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井本陽久氏(以下、井本):質疑応答ですね。質問のコメントがなかったらどうしよう、怖いな。
ああ、けっこうありますね。とりあえず今、一番上にあるのも縁なので、ちょっと一番上(の質問から始めましょう)。
「このようなオンラインの教育の可能性について、先生はどうお考えですか? “いもいも”の授業は、生のふれあいこそが肝ではないかと思います。しかしながら、時代は変わります。デジタルツールでもできる、ダメを活かす方法を……。」
「ダメを活かす」か……。難しいですね。答えになるかどうかはちょっとわからないんですけれど、僕はオンラインだったらオンラインで、オンラインだからできることをやればいいと思うんですね。
もちろんそれは、(生の)授業でできることとイコールではない。だから、授業の真似をする必要もないと思うんです。とにかく「オンラインだから超わくわくして楽しめること」をやればいいと思ったんです。
でも、オンラインが全部に取って代わることができるかといったら、それはどうなんだろうと思います。実は今の時期、“いもいも教室”も(子どもたちを)教室に集めることはできなかったんです(注:2020年3月、新型コロナウイルスCOVID-19の感染症が世界中で蔓延しており、集団感染の危険性が高いとして多人数の集会に対し自粛要請が出ていた)。
それで、オンライン授業をちょっとやってみようということで、一部の授業でオンライン授業をやったんですね。その前に、とりあえず「大人たちでやろうよ」ということになって、大人たちでやったわけです。そうしたら、僕が最初にふざけちゃうんだけど、大人たちはオンラインの機能がおもしろくて、背景を変えちゃったり、ぜんぜん進まなかったんです。
でも、ある一人のスタッフが「オンラインって、目が合いませんね」と気づいたんです。物理的には目は合っていますよ。だって、みんなカメラを見ているから。みんなこっちを見て、向こうも見ているから、僕が見たところと目が合う。だけど、それって目が合うとは違うじゃないですか。目が合うって、「圧」を感じるじゃないですか。
つまり、そこで触れあっているということです。そこで心が動きながら会話するというのが、目を合わせて会話することなんですけど、(オンラインの授業だと)目が合うことがないんですよ。
それはある意味、安心な部分があると思うんです。実際に学校に行けていない子が(オンライン授業に)参加したときに、「自分の顔は出せませんでしたけど、安心して受けられました」と言う子もいます。そういう部分もあるけど、やっぱり目を合わせるから何か生まれるものもあると思うんですよね。
だから、全部デジタルに替えられることは絶対にないとは言えると思います。
次の質問は、「学生とのコミュニケーションはどうされていますか?」。
これは、いい質問ですね。相性って絶対にあるんですよ。パッと見たときから「ああもう、ぜんぜんうまくやれる」という(子がいる)。でも一方で「心からは認められない」という子もいるんですよ。
認められない。イラッとする。怒るか、怒らないかじゃない。僕が教員として何をしているかと言ったら、自分の中で「認められない」「イラッとする」という気持ちをまったく感じない(ようになって)、イラっと感じるその子の同じ部分を見ても、それを「最高!」と思えるようになりたいと思っているんです。それって当然、難しいですよね。だけど、そこの意欲は絶対に持ち続けているんです。
その意欲を持つことで、自分をどんどん解放させてもらっているんですけれども。……いろいろ方法もありますよ。例えば、そういう(相性の良くない子に接する)ときは、1対1で向き合わないと、絶対僕が逃げちゃう。だから、呼んで話をしますね。二人の場面を作って話す。
でもね、どうなんだろう。それでうまくいくかというと、そういうわけじゃないと思いますね。何かハプニングが起こるんですよ。神様からのプレゼントですね。一生懸命なんとかしようと思っていると、何かが起こるんですよ。
そりが合わないというのとも、またちょっと違うかもしれないんですけれども。まったく反応しないような、すごく静かな子がいたんです。タスマニアの動物みたいな感じ。
(会場笑)
ぜんぜん動かない。頭はいいんだけど、ぜんぜん反応しないんですよ。僕はそういう子を見ると、ちょっかいを出したくてしょうがない。ちょっかいを出して、頭をピュッてやる。お尻をたたく。腹をつつく。……みたいなことをするんだけど、「されるがまま」という感じの子がいてね。
どうなんだろう。でも、「絶対に喜んでいるよな」と勝手に思っていたんです。あるとき、僕が休み時間にまた彼にちょっかいを出していたら、前にいた生徒が「先生は○○のことが好きなんですか?」と言うから、「俺は○○のことが大好きだけど、でも○○は俺のことを好きじゃないかもな」と言ったんですよ。
そうしたら、その子の表情が変わったんです。硬くなっちゃったんですよ。僕は「しまった」と思って……。「傷つけた。なんてことを言っちゃったんだろう。もうこれは、完全に心を閉ざしちゃったな」と思いました。つい、ものを考えずに言っちゃったんです。
そうしたら、僕の次の授業でどうしたかといったら、彼は(それまで)一度もそんなことをしていないのに、手を挙げて答えました。手はこう(垂直)じゃないんです。こう(水平)なんです。(地面に)平行ですけど、手を挙げて答えたんですよ。
僕は狙ったわけじゃないんですよ? だけど、なんとか彼と心を通わせたいと思っていました。ハプニングですよ。おそらくですけど、きっと彼は「ああ、先生はそう(自分に好かれていないと)思っていたんだ。ぜんぜん伝わっていない」と思ったんですね。
こんなの計画できないですよね? だから僕は、いろんな場面で助けてもらっているんです。ハプニングに助けてもらっている感じですね。
(スライドを指しながら)「イモニイにとって、そもそも教育とは何ですか? 教育する目的とは何ですか?」。
そうですね。何なんだろう? さっき、「学校は目的がないのが一番いい」って言っておいて(笑)。
そうですね。「教育の目的」と言うとすごく一般的になるので、答えにくいです。だけど、僕がなぜ教員を続けているかというと、やっぱり子どもたち一人ひとりの出会いを通して、自分を変えてもらっているからですね。
変えてもらうというのは、自由にしてもらっているということです。例えば若い頃は、もともと子どもたちのことは大好きだけど、一方で「許せない」「これはダメ」というものがたくさんあったんですよ。
自分にそういう価値観があるから、認められないんですよね。でも「これが大事だ」という価値観よりも、子どもたちのああいう(生き生きとしている)姿を見ちゃったら、そっちのほうがずっと説得力があるんですよ。
その彼らの魅力のおかげで、僕は自分が持っていた価値観を捨てられたんですね。自由になれるということです。自由になるということは、自分も認めることができるということなんですね。
なので、目的というか、本当に僕は子どもたちを通して自由にさせてもらっているということなんですね。本当に、子どもたちのおかげですね。離れられないですね。
(スライドを指しながら)あとは、「どうしてそんなに子どもに興味があるんですか? 大人の教育は興味がありますか?」。
「子どもに興味」というと、なんかちょっとあれなんですけど……(笑)。親に聞くと、僕は小さい頃から、年下の子には優しかったんですって。それで、年上には対抗していたんです。わからないですね。でもこれは、縁だと思うんです。僕の人生は、今に向かってずーっと進んでいったように思うんです。ぜんぜん計画なんてしていないんですけれどもね。
それこそ、スティーブ・ジョブズが言う「Connecting the dots(点と点を結び付ける)」ですかね。振り返ると、つながってここに来ているんだなとすごく感じていますね。
(スライドを指しながら)どうですか? いろいろとパッと見て、「これについて聞きたい」とか、何かありますか?
「現在の教育スタイルが確立されるまでに影響を受けたり、参考になったおすすめの書籍を教えてください」。
僕は何かを参考にしたり、教育モデルの勉強というのは一切したことがないんですよ。人のやっていることにぜんぜん興味がなくて、本当に思うようにやっていたんですね。
僕は栄光じゃなかったら勤められなかったと思いますけれども、栄光学園って本当に、新人(教師)の1時間目からもう(他の先生は)誰も見に来ないんです。全部、任されているんですね。
カリキュラムも細かくないんです。「この範囲でやって!」というものを渡されたあとは、全部、自分でやるんです。全部、自分の思うようにずっとやってきたんです。なので、何かを参考にしたことはないんです。でも、言い換えるとおそらく毎日、生徒から学んでいたと思います。
やっぱり学校の先生って、すごくいいですよね。目の前にいろんな子がいて、いろんなことに向き合わざるをえない。逃げられないんですよね。本当に出会いの縁というのから逃げられないところが、僕にとってよかったなと思いますね。
本も、僕はあんまり読まないですね。読まないんですけど、今振り返って「あの本はよかったな」というのはあります。『木のいのち木のこころ』という本で、法隆寺の宮大工の西岡常一さんが書いたものです。あれは本当に影響を受けたと思います。
解説をしはじめると時間がかかるのと、僕は解説が下手なんですよ。授業でもぜんぜん解説とかしないです。ちょっと(質問の回答としての本の解説は)割愛しますが、『木のいのち木のこころ』は、ぜひ読んだらいいと思いますね。
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