2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
The Surprisingly Retro Future of Batteries (全1記事)
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マイケル・アランダ:風力やソーラーなどの再生可能エネルギー資源は画期的ではありますが、安定しないという欠点があります。よりサステナブルな送電網を構築したい場合には、発電した電力を後で使えるよう蓄電する必要があるのです。
とはいえ、化学バッテリーの利用はコストが高い上に環境にやさしいとはいえず、積極的な利用はあまり考えられていません。「環境保護のために再生可能エネルギー資源に切り替えていこう」という当初の目的にもかないません。
しかし、化学薬品を使ったバッテリーではなく、位置エネルギーや運動エネルギーを貯蓄する機械バッテリーという選択肢があるのです。その多くは、古くから開発されていたものですが、近年見直されつつあります。つまり、エネルギーストレージは、まったく新たな手段を開発することも可能ですが、何世紀もの長きにわたり活用されてきた方法を、うまく現代風に刷新して活用することができるのです。
より身近なものとして、圧縮空気から解説を始めましょう。1650年に初めて空気ポンプが発明されて以来、圧縮空気は、電車のブレーキやネイルガン、手持ち削岩機など、派手な音を出す道具の動力源として利用されてきました。こういった道具を大幅にスケールアップして、エネルギーストレージに活用できそうなことがわかってきました。
まず、高圧エアコンプレッサーにより、岩塩空洞や、廃坑などの広大な広大なスペースに空気を送り込みます。そしてエネルギーを利用したい場合は、圧縮した空気を解放し、発電タービンを回すのです。
そのスケールの大きさゆえに、この「空圧電池」は発電所に必要なキャパシティとされる321メガワットもの出力が可能です。さらにコストも非常に安い上、12分以内に電力供給開始が可能です。これは、従来型の化石燃料で回すタービンの半分以下の反応時間です。さらに、蓄電された電力は1年以上保ちます。
ただし、欠点もあります。熱力学の作用により、空気は圧縮すると熱を生じ、時間の経過と共に壁に放散されてしまいます。さらに空気は減圧すると温度が下がるため、タービンへのダメージを避けるために再加熱する必要があります。つまり、エネルギーを使う際にも、さらにエネルギーが失われてしまうのです。
蓄電される電力と利用可能な電力の割合、つまり充放電効率は、最高品質の化学バッテリーであれば90パーセントですが、空圧電池はそれよりも低いのです。現行の空圧電池は、圧縮の際に生じる熱を再利用して放出する空気を温めることができますが、それでも60から70パーセントの充放電効率しか得られません。今後の技術の向上は期待できますが、現時点では別のレトロなバッテリーテクノロジーを利用した方がよさそうですね。
たとえば、鉄道エネルギーストレージが挙げられます。これは、荷を積載した列車の形をとった、重力を利用して蓄電するバッテリーです。
プロセスは簡単です。機関車が岩石やセメントを積載し負荷を加えた貨車を引いて、坂を上ります。貨車の数は、必要とされるエネルギー貯蓄量に応じて増やします。貨車が坂道を降下すれば、回生ブレーキの作用により、重力エネルギーが電力に変換されるのです。回生ブレーキとは、ハイブリッド自動車や電気自動車で既に利用されているテクノロジーです。
さて、重力をエネルギー貯蓄に利用することは、重錘を動力源とした塔時計が14世紀に発明されて以来、ずっと行なわれてきました。現代でも、巨大な荷を揚重したり吊るしたりといった作業をするクレーンなどでは、重力利用のバッテリーが活用されています。
しかし、現時点で開発されている重力バッテリーの大規模運用は、先に挙げた高所から列車を走らせる方式のもの以外はありません。鉄道バッテリーのキャパシティは約50メガワット程度であり、空圧電池に比べ蓄電の効率はあまりよくはありません。
とはいえ、鉄道バッテリーには利点も多くあります。まず、エネルギー貯蓄に大規模な「バットケイブ」は必要ありません。5パーセント以上の傾斜があればどこでも運用可能です。また、充放電効率も優秀で、78パーセントほどあります。さらに、起動時間は5から10秒で空圧電池に比べ1桁近くも短縮できます。
しかし、それもフライホイールバッテリーの早さの比にはなりません。フライホイールとは、元々は膨大なエネルギーを消費して回転する、単なるホイールです。
シャフトを軸に回転するホイールは、慣性の法則により、回転に使う力を運動エネルギーとして貯蓄できます。そのエネルギーは、回転の減速と引き換えに抽出できるのです。原理としては、回生ブレーキに似ていますね。
フライホイールは、はるか昔から使われているテクノロジーです。すでに紀元前3世紀ころから、陶芸のろくろを回す道具として使われてきました。
電気自動車以外に乗ったことがある人は、フライホイールの恩恵を被っているはずです。内燃エンジンの爆発による振動を緩和するのが、フライホイールだからです。
さて、フライホイールはバッテリーとしても利用できます。エネルギーストレージ専用に開発された初のフライホイールは、1833年に自走式魚雷の推進装置として開発されたものです。
当然のことながら、フライホイール・バッテリーにも欠点はあります。たとえば、フライホイールバッテリーは大規模な発電所で使うには適していません。電力を1日で20パーセントも摩擦で失ってしまうからです。
しかし、現行のフライホイールは、カーボンファイバーなどの最新式の素材でできており、超伝導電磁石ベアリング上で浮上しながら真空で回転するのです。そのため軽く小型化され、摩擦で失われる貯蓄エネルギーも抑えられており、回転数や蓄電キャパシティも上昇しています。
その一方で、空圧電池や鉄道ストレージ・バッテリーに比べ、製造コストは非常に高額になってしまいます。とはいえ、90パーセントという高い充放電効率を見ると、高いコストに見合う価値はあるようです。化学バッテリーに比べて遅くはありますが、反応時間も数百ミリ秒という早さです。
さらに、最新式のテクノロジーにより小柄化されているため、無停電電源装置としても利用が可能であり、サーバファーム、鉄道、ハイブリッドレースカーなどで活用されています。
これら古来から使われてきた3つのバッテリーテクノロジーは、「壊れていないものは直すな(正常に機能しているのなら、下手にいじくるなの意)」という古い格言が真実であることを示しています。一つ確かに言えることは、クリーン、ローコスト、そして信頼できるこれらのエネルギーストレージのテクノロジーは、レトロでありながらも、未来の在り方を示しているのかもしれませんね。
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