2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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前田ヒロ氏(以下、前田):ほかに何か、リモートワークでマネージャーでもいいですし、ユーザーでもいいんですけど、意識したほうがいいことってあったりします?
鈴木淳一氏(以下、鈴木):いろんなツールを併せて使うべきだなとはすごく思っています。SNSツールやチャット、Web会議ツールを使うとか、用途に合わせていろんなツールを併せて使って、コミュニケーションの色を変えることはすごく重要だなと思っていますね。
チャネルを変えることで気分も変わりますし。同じ指示を出されても、Web会議で言われるのとチャットで言われるのと、みんなに共有するSNSで言われるのは、違います。なので、伝えたいことを伝えたい方向に合わせて使いこなすっていうのが、やってみてすごく納得がいくというか、やり方としてはすごくいいなと思っていますね。
前田:モードを意識するのと、目的を意識するというのはすごく重要ですよね。混乱を起こさないように、そこははっきりしたほうがいいですよね。「Chatterはこういうコミュニケーションの場で」とか「Salesforceはこういうコミュニケーションの場で」という感じで、ちゃんとわかりやすくしてあげるのもすごく重要ですよね。
鈴木:スライドに簡単に書いたんですけど、13番ですかね?
(スライドを指しながら)計測したら、コミュニケーションの比率としてはChatterが50パーセントで、Quipが35パーセント、Web会議が15パーセントくらいになったんです。
Quipっていうコラボレーションツールでは「WEB会議を効率化する為のノウハウ」や「美白モードはどうやってオンにするんだ」みたいなTipsとかがあります。あとはウェビナーの準備とか、いわゆるコラボレーションですね。スライドとかスプレッドシートとかを一緒に編集したい場合は、これでやります。
Chatterはナレッジ共有で「こういうのは、どう思う?」というのをみんなでコラボレーションするためのツールなので、朝に「元気を出しましょう!」「この人がこんなノウハウを持っているから、みんな真似しようぜ!」みたいなことをやる感じです。
Web会議はディスカッションとか、みなさんに明確に意思を伝えるとか、チームとか部門の方向性を伝えるときには、ハングアウト・WebExを使っていますね。
前田:なるほど。最初のほうに出てきた「ものの使い方」とかTips系は、まとめるのが本当にすごく重要ですよね。
鈴木:そうですね。
前田:社内の人でも、ツールを使い慣れてなかったりとか、使いこなせてなかったりとかします。使いこなすだけでその人の生産性もぜんぜん変わっていくので、このへんのノウハウとか使い方っていうのはどんどん積極的に社内共有していくのが重要ですね。
鈴木:そうですね。私も正直、Web会議のツールとかディスカッションツールとかはそんなに使ってきたわけではないので。「オンラインでいかにディスカッションするか」ということで、かなりいろいろ試してみました。
Jamboardとかも最近使って本当にびっくりした。みんなで付箋を貼りながらディスカッションしていくのに慣れてくると、やっぱりホワイトボーディングに近いというか、みんなの意見をまとめて話すのにすごく適していて、すごくいいなと思いました。やっぱり使えるソリューションとかツールっていうのを、用途に合わせてチェンジしていくのがいいですね。
前田:そうですね。もうすぐ質問受け付けタイムになるんですが、残りいくつか鈴木さんに質問したいと思います。
信頼関係の構築や文化作りなど、やっぱりリモートに切り替えた会社でよく出てくる課題というのは……。団結感が減る、社内交流が減るといった課題が出てきていますが、そのあたりでなにか工夫していることはありますか?
鈴木:そうですね。ここは本当にみなさんに対して、会社として、また部門としてのメッセージを強く伝えるということが、すごく重要だと思うんですね。
ですから、私もやらせていただいたのが、例えば15分の全体会議や、ランチタイムに15分だけ時間をいただいて、各マネージャーが1人ずつ、数字の話や成績の話は一切せずに、みなさんに対してひたすら「今こういう状況だからこそ、我々ができることはなんだろうか」と。
本質的に今、みなさんがお客様に提供できるものはなんなんだろうということを、伝えるだけの15分間の時間を作って、メッセージだけを言う。
あとは、12枚目のスライドにも書かせていただきましたが、Salesforceとしては企業ロゴを使ってメッセージを出しています。Salesforceロゴの文字から何文字か抜いて、「Stay safe」にするというものを作っているんですが。
Twitter上でも明確に出しているんですね。ですから、心を強く持ちましょう、健康に気をつけて在宅しましょう、接点を持とう、助け合おうといったこと。これは繰り返し明確にお伝えしています。これを出すだけではなく、部門長・マネージャーの口からお礼と共に大切なメッセージというのを繰り返し伝えるということは、やっています。
ですからChatterでもチャットでもなく、Web会議でみなさんに集まってもらって、10分でも15分でも話す。というように、すごく気をつけています。
鈴木:あとは、今日もお昼に全体会議をやったんですが、そこにはうちの営業を統括している役員にも来ていただいて、実際に若手のメンバーやインサイドセールスに対するリスペクトというのを、もう議題などは設けずに30分間それについてだけを話してもらい、質疑応答をするというような形です。
今までにやったことがないパターンなんですが、みなさんに感謝を伝えて、質疑応答をするだけの全体会議というのをやることで、とにかくメッセージを伝えるようにはしていますね。
前田:このメッセージは、すごく重要ですね。物理的に一緒にいないので、かなりしつこいほどメッセージを伝え続ける、僕らの方針というか会社の存在意義といったところのメッセージを言い続けることはすごく重要だと思いましたね。
今日もSmartHRの記事を出していましたが、コロナと一緒に僕らはどのように存在していくのか。そうした感じの……。
鈴木:ああ、宮田さんの記事ですね!
前田:宮田君の記事が出ていましたが、すごくいいメッセージだと思っていたし、すこし身が引き締まるようなメッセージ性があったので、そうした取り組みはかなり重要だと思いましたね。
鈴木:そうですね。私どもも話していましたが、日本の実際のワークフロムホームというか、テレワーク導入率が去年の総務省の調査で19パーセントしかなかった。それに対して簡単に捉えてしまうと、「19パーセントしかテレワークをやっていない!」になってしまうのですが、事実は、みなさんやりたくても19パーセントしかできていないということだと思うんですよね。
会社の文化、カルチャー、テクノロジー、制度、営業の商材など。ですから、外出したくないのに出なければいけない方々が80パーセントぐらいいるかもしれないということを考えて、その方々がどうやっていいかたちで外出をせずにテレワークで仕事ができるかということに対して、本気で向き合わなければいけないと。
ですから「テレワークしなきゃだめっすよねー」「したほうがいいっすよ」ではなく、みんなそう思っているのにできないので、それをなんとかしてみんなで変えようということもかなり強く繰り返し……。この機会だからこそ、Salesforceができることを考えてくれということは、もう何回もお伝えしているという状況ですね。
鈴木:ある意味SaaSの存在意義の1つですよね。
前田:そうですね。はい。
鈴木:こうやってすべてがクラウドにあって、リモートでも仕事ができる状態は、かなりSaaSがイネーブルする部分がありますから。本当にSaaS企業であれば、ある意味そのあたりを一緒に考えてあげるとか、そうしたリモートワークの文脈を訴求するということは、ほとんどのSaaS企業はやらなければいけませんね。
前田:そうですね。やっぱり、使命感として、すごく我々が貢献しなければいけない部分が強いと思います。
鈴木:SaaS企業に入ってきたメンバーのみなさんは、素直にお客様に貢献するとか、しっかり使い続けていただくというところに興味が高い方が多いですから。
そうした方々だからこそ、こうした大変な時期のときに、社会公益性の高いことをする部分ではみなさんにご納得いただけますから。「ここで踏ん張ろう」、「ここでがんばろう」ということは、すごく強く言っていますね。
前田:いいですね。次の質問が、たぶんこれはみんなが気になる部分だろうと思っているんですが、やっぱりコロナウイルスの影響によって、売り方なども変わったところがありましたか。
鈴木:そうですね。当然提案はWeb会議へのシフトになりますので、対面営業に関してはもう我々のほうから積極的にお客様へ、Web会議にスイッチさせてくださいとお願いしています。基本的にはお客様の安全を考えたいので。来ていただく・訪問するというのはリスクを上げてしまうため、Web会議にシフトするという形で、当然変えていますね。
ただWeb会議だからといって、成約率が落ちる、商談ができなくなるということは正直考えていません。
幸い私たちは地方のお客様や、定着支援、活用支援はもともとWeb会議を使ってかなり成功実績があります。現状は近場や都内のお客様であっても、Web会議にシフトする、Web会議のノウハウに関しては社内豊富に持っていますので、クオリティはしっかりと担保して対応するようにはしています。
前田:なるほどですね。その中で、商談フェーズの定義であったり、BANTのやり方であったりなどは、あまり変わっていない感じですかね。
鈴木:そうですね。商談のフェーズの定義やBANT情報に関しても、基本的に押さえるものはいわゆるフレームワークとして持っていますので、そこは変わっていませんね。
基本的には、今のところそこの大きな変化はありません。もともと我々はWeb会議の段階でも、チャンピオンと呼ばれるキーマンや、決裁者は可能な限り初回から参加いただくようなアクションをずっと取っています。
「なんとなく対面じゃないとキーマンやチャンピオンを探しにくい」というような方々がいらっしゃったり、そういう概念もあったりしますが、我々はできる限りWeb会議でも決裁者の方ですとか、キーマンの方々に参加していただくよう設定し、お願いしています。なので特に決裁者・オーソリティが見えないということはありませんね。
前田:なるほどですね。では、ぜんぜん対面営業なしでもクロージングは可能という感じですね。
鈴木:はい。大丈夫です。ただ1点だけ、大規模商談ですね。特にエンタープライズ向けの大規模商談に関しては、すこしどうなるかわからないというのが、正直な、偽らない感想ですね。
前田:なるほどですね。その場合はオンラインでできる限りフェーズを進めていくしかないという感じですかね。温め続けるしかないという。
鈴木:そうですね。今Salesforceとして考えているのが、各部門との調整であったり、合意を得る方々が増えていくので、例えば1時間ではなくて30分の商談など、短い商談をたくさんセットしていく。
「単純接触回数」を増やしていき信頼を得るというのが、セールスではよくあるテクニックだと思いますが、その時間を短くして行っていこうということを今、大規模商談に向かっては考えているところですね。
前田:なるほど。
鈴木:この案件については30分を細かくたくさんやろう、この案件に関しては1時間半できっちり決めようというように、商談の長さと接触回数を、案件によって変えていく取り組みをはじめたところですね。
前田:他になにか工夫しているところはありますか?
鈴木:オンラインセールスについてですか?
前田:そうですね。
鈴木:オンラインセールスに関しては、ノウハウは昔からずっと持っていますから。14枚目のスライドですかね。これもこのタイミングで作ったわけではなくて、実は2年ぐらい前からずっとある資料なんです。
オンラインセールスで何をすべきかというものは、オンラインセールスの経験が長いとか、例えば地域の方々に向けて商談を行って、成績がいい営業を集めてノウハウを作っているので、こうしたTips集というようなものは、実際にもう展開しています。
このあたりの、時間配分やツールの使い方、あとはマウスの動かし方や機材の用意、確認の仕方といったものはけっこうありますね。
前田:なるほど。このあたりは重要ですね。
鈴木:マウスを円で動かしてはいけないという決まりがあるんです。マウスのポインターは最大にしますし、マウスを動かす場合は、線で動かさなきゃいけないんですね。
前田:へー! こういった感じですね(笑)。
鈴木:そうです。そうです。ぐるっと囲ったりすることも禁止で、線で動かしましょうと。
あと、けっこうみなさんやってしまっているのが、他社さんなどでも、私も当然やることがあったんですけど、画面スクロールをするときに、マウスのホイールでスクロールしてはいけないというルールがあります。ホイールでスクロールをされると、見ているほうは上に行っているのか、下に行っているのかわからないんですよ。
前田:なるほどね。
鈴木:ですから、必ず「下に行きます」と言ってから、サイドのスライダーで下にずらす。
前田:なるほど。こうした感じでスライダーでずらしてあげると。
鈴木:そうです。そうです。
前田:なるほど。へー!
鈴木:そういったTipsとか。あとは、商談の前に必ず事前コールという電話確認を10分ほど実施します。
先ほどのミーティングのノウハウの1つですが、限られた時間で非対面でやるので、お客様と、アジェンダと出席者、環境、温度感といったものを事前に確認するために、お電話をしてからミーティングに挑むというのも、対面の商談とは1つ違うところですね。
前田:へー、それはだいたいチャンピオンと一緒にやっているんですか?
鈴木:そうですね。チャンピオンの方と一緒に進めます。決裁者になる人を呼んで欲しいとか、こういうアジェンダでやっていきましょうとか、商談時間はどうしましょうか、などなど。
あとは接続チェックもそうです。Web会議パターンを複数用意して接続チェック、マイクの接続チェックというのは、ここできちんとやって、本番の30分、60分を有効活用する。合意や接続チェックだけで15分とか20分もいっちゃうケースが、オンライン商談で失敗するパターンなので。ですから、事前コールはとても大切です。これをすごくきちんとやっていますね。
前田:確かにありますよね。僕も昔、そんな経験がありました。偉い人が集まった会議なのに、最初の15分間はテクニカル面でみんな苦戦して、お互いの声が聞こえない、画面が動かないということが過去にありました。確かに、事前にこれを全部やるのは、すごく重要ですよね(笑)。
鈴木:そうですね。こっち側ができていてもお客様側ができないということが、かなり多い。
我々は完璧に揃えていっても、お客様側で1つスピーカーがきちんとつながっていなくて、音声が出ませんというだけでも、会議自体が成立しないので。ですから、そこは本当にかなり気を遣って事前チェックをしますね。
前田:了解です。これは意外に重要なポイントですね。
鈴木:Tipsは他にもあります。プレゼンテーションの場合は、10分以上しゃべらない。オンライン会議は10分1人でしゃべり続けると、かなりの確率で伝わりません。みなさん、ただ聴いているのはイヤなので。
前田:確かに重要ですね。では、私から最後の質問です。リモートワークに切り替える企業への全体的なアドバイスがもしあれば、いただけますでしょうか。
鈴木:そうですね。今このタイミングなので、先ほどもすこしお伝えしましたが、テレワークやリモートワークにいきたくてもいけない会社さんがたくさんいらっしゃるというのが日本の現状だと思います。カルチャー的なものや、制度的なできない要因というものをまずつぶさなければいけませんし、切り替えることができた企業様はやはりすばらしい状況にあると思っています。
これをきっかけにSaaSツールであったり、先ほどの話ではありませんが、業務・目的に特化したツールはたくさんいいものが出ているので、いろいろなものを使い合わせて、最適化をしていただきたいと思っています。
「Salesforceを使ってくれ」とここで宣伝するつもりはありませんから、いろいろなツールを使えばいいと思いますね。今、ソリューションを見ていると、受付であればfondeskさん、RECEPTIONISTさん、この時期の入社業務であればSmartHRさん、freeeさん。名刺であれば、Sansanさん、Phone Appliさんというように。
契約でハンコを押さなければならないとなれば、CloudSignさん、DocuSignさん。あとはモチベーション管理をするなら、Uniposさん、モチベーションクラウドさん。電話会議だったらベルフェイス、MiiTelさん。さまざまな状況に合わせて、いろいろなSaaSがあるので、それを使い分けていただく。
ポジティブに、と言うと失礼になりますが、このタイミングだからこそできるものをどんどん導入し、テストして、最適なものを残していくかたちにするといいと思います。
特にデジタルネイティブな若い層は抵抗がぜんぜんなくて、実際にやってみるとテレワークはかなりスムーズに移行できるんですよね。ですから、しっかりと継続および計測できる体制を整えて、コミュニケーション、コラボレーションができる状態を作ることができれば、もしかするとテレワークを今後数年でやっていかなければいけないということが、すぐに当たり前になっていく可能性が高いですから。
このタイミングを機に、1つステップアップができるという状態を作れることが、一番理想的だと思います。ですから、ぜひメンバーやみなさんを信頼して、ぐっとシフトしてもらいたいです。
前田:重要ですね。やっぱり、これを機会として捉えて、より自分たちを強くしたい、組織を強くしたい、信頼関係をもっと強化したいというように。あとはお客さんというか、自分たちの存在意義を再確認するというような。なにかそういったことを、今回を機会として受け止めることが僕も一番だと思いますね。
鈴木:そうですね。インサイドセールスが大きく伸びたのもリーマンショックの後というのがデータとしても出ていますから。
やはりこういうときがあるからこそ、新しいソリューションや新しい工夫が生まれると思いますので、その1つが今回はテレワークなのではないだろうかと思っていますね。
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