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ビリー・アイリッシュインタビュー(全1記事)

2020.04.24

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ビリー・アイリッシュ「将来の姿はあえて考えない」 新世代アーティストの素顔に迫るインタビュー全文

提供:ユニバーサルミュージック

世界が注目する若手アーティスト、Billie Eilish(ビリー・アイリッシュ)。2020年1月に行なわれた第62回グラミー賞では、史上最年少で年間最優秀レコード・年間最優秀アルバム・年間最優秀楽曲・最優秀新人賞の主要4部門に加え、計5部門を受賞。そんなビリーが語った、楽曲制作やレコーディング、ファッションへのこだわり、そして日本のファンへの熱い思いなど、盛りだくさんのメッセージをお届けします。

女性に笑顔を求めることへの違和感

――あなたは2000年代生まれで初めてビルボード1位を獲ったアーティストですが、それについてどう思いますか?

ビリー・アイリッシュ氏(以下、ビリ―):
私が生まれたのは2001年で、2002年直前(注:2001年12月18日)。そうね、何と言えばいいのか分からないけど「感謝している」という言葉が正しいと思う。それからラッキーだとも思う。ただ、実際すごく頑張った。でも運もあったと思う。だからたぶん、その全てだと思う。心からありがたいと思ってる。

――デビューEPは『don’t smile at me』ですが、そのタイトルの由来はなんですか?


ビリー:えーっと、15歳の時のビリーの脳に戻らなきゃ。確かあの当時、すごく反抗的で、自分でもすごくムカつく奴だったと思う(笑)。いつも、「いかに笑うのが嫌いか」について話してた。

本当は笑うの好きだし、いつも笑ってるし、しゃべってる時も笑うし、今も笑ってるけど。別に笑いたいわけでもないのに。「スマイル」が私の定位置なの。それって変だけど。でもそれが好きじゃなかったんだと思う。だから、そういうタイトルにしたかったんだと(思う)……。

世間では女性が常に笑っているでしょ? それも変だと思っていた。だから「笑って!」ってよく言われる。男性には「笑って!」って全然言わないのに。女の子がすごく大変な仕事をしていても、「なんで笑わないんだ」なんて言う人がいる。「だって仕事しているから!」っていうね(笑)。「何言っているの?」ってね(笑)。そういうことがおもしろいと思ったから。

楽曲制作のこだわり

――作曲の過程について聞きたいのですが、曲を作ったらそのままスタジオに入って、集中して制作をするタイプですか? またはノートなどを取っておいて、アイディアが固まったらスタジオに入るタイプですか?

ビリー:制作過程はいまだ完成していなくて。というのも、自分で作曲する最高の方法を見つけられたのかまだ分からない。でも無理矢理書こうとしないで、いかに書きたいと思えるような境地に辿り着けるのかが大事なんだと思ってる。

前に、締め切りまでに曲を完成させなくちゃいけない時があって、それがあまり楽しくなかった。仕事のように感じてしまったから。もちろん仕事だし、いつも大好きだと思ってやっているんだけど、必ずしも仕事だと思いながらやりたくはない。大好きなままでいたいから。

でも時々そうは思えないようなこともある。だから、好きだと思えないでやっている時は、一からやり直しするようにしている。時間がかかってもいいから、無理矢理やらないのが大事だと思う。

朝から晩まで毎日何週間もスタジオにこもって作るのが好きな人もいる。でも私はそういうやり方は絶対にできない。私はスタジオが嫌いだし、今が何時なのか何日なのか分からないないような、窓もない暗い場所で作るのは嫌い。家とか小さな部屋でレコーディングするのが好き。

ブースに入ってレコーディングするのも嫌いだし、それよりもベッドの上で、マイクが吊り下がっているようなところでレコーディングするのが好き。だからブースには行ったことないし、ヘッドフォンをつけてレコーディングするのも嫌。可能な限りカジュアルな環境が好き。

――作曲中やレコーディング中に、一番こだわっていることは何ですか?


ビリー:大事なことは、自分が好きだと思えること、かな。そこに一番こだわっているかどうかは分からない。でも自分が好きだと思えることが、自分を最もハッピーにしてくれるのは間違いない。

私は兄と一緒に書くから、2人ともが満足できるものを書こうとする。でもそこで大事なのは、2人が妥協することが絶対にないということ。2人ともが、まあまあかなと思いながらやるということはない。むしろ、どちらかがすごくハッピーで、どちらかが悲しいと思いながらやることのほうが多い(笑)。悲しいというのは違うかもしれないけど、その中間点で妥協することはない。いつでも、どちらかのアイディアが勝つというやり方をしている。

音楽でもそれ以外のことでも、2人の間で論争があった場合、どちらかが必ず勝って、もう1人の意見は採用されない。時には、勝ったほうのアイディアがバカみたいなものだったこともある。だから、結果的に最高の曲にならなかったりもする(笑)。その時々で違う。つまり戦うべき時を知ってなくてはいけないし、そこで勝たないとダメ。

多様なアーティストにカバーされる喜び

――新しいアルバム(『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』)の中から、一番好きな曲を選べますか?


ビリー:『ilomilo』がすごく好き。なぜなら、毎回聴く度に新しく聴こえるから。そういう曲って、めったにないと思う。でも、本当に心からこのアルバムの全部が大好き(笑)。本当に本当に大好きで、作ってる時も好きだったし、パフォーマンスするのも好き。だから全曲すごく満足しているんだけど、その中でもどういうわけか『ilomilo』が際立って好き。

――『bad guy』は、TWO DOOR CINEMA CLUB(トゥー・ドア・シネマ・クラブ)から、BASTILLE(バスティル)のようなバンドにまでカバーされています。様々なアーティストにカバーされることについては、どう思いますか?


ビリー:最高だと思う。私が音楽を始めた時もやっていたことだから。若い時は、ずっとそういうことをしていた。人の曲をカバーしていた。自分で作曲を始める前もそうだし、曲を書き始めてからもやっていた。好きだと思える曲があった場合はね。

人が自分の曲を聴いて、必ずしも好きになってくれるとは限らない。だから、私の曲を聴いて「オーマイガー! この曲絶対歌いたい」と思ってくれるなんて、考えてみればすごくクレイジーだと思う。私もいつもやっていたから。生まれてからずーっとやってきた。


――最近とくに気に入っているアーティストや曲はありますか?


ビリー:実は最近アリーヤをすごく聴いているの。

――その理由は?


ビリー:分からないけど、最近なぜか心を掴まれたから。ニューヨークにいる時に、自分の頭の中である曲が聴こえてきて、その曲が何か分かっていなかった。それで歌詞を調べて探してみたら、間違いなく彼女の曲『At Your Best (You Are Love)』だった。それを聴いてから「アリーヤだ!」と思って、彼女の曲をたくさん聴いている。これまで聴いたなかで、最も美しい曲だと思えたから。

目立ちたがり屋だからこそのオリジナルスタイル

――音楽だけではなくて、あなたのファッションスタイルも有名です。好きなスタイルや、おすすめのアイテムはありますか?


ビリー:私は自分が着たいと思ったものを着ているだけ。あんまり真剣に考えすぎたくない。私が好きだと思うものを着ているだけだから。なんで好きなのかっていう理由を挙げられない。真剣に考えればできるかもしれないけど。私は本能に従うタイプで、ほとんどの場合、自分の本能は正しいと思っているから。

――自分のファッションスタイルをどのように表現しますか?


ビリー:私はそういうことを聞かれた時にいつも言うのは、私は「常に人に注目をされたい」と思ってきたということ。だから笑っちゃうのは、「私はいかに自分がもう外に出られなくなったのか」と話す時期があったこと。

私の友達に言わせると、「そういう格好しているのは私で、『これが私だ』って発表しているのは自分じゃないか」って(笑)。つまり、自分で自分の状況を悪化させているんだと思う。私がいかにも私ならではの特徴的な格好をしているから。

だから「ビリーはこうあるべき」とか、「何かのフリをして、こういう格好をしている」と言う人がいるけど、そうじゃない。なぜなら私は前からずっとこうだったから。みんなから注目されたかった。

それは「あ、ビリー・アイリッシュだ!」と思ってもらいたかったわけではなくて、「なんかすごくおもしろそうな人」「この人すごくカッコいい」と思ってもらいたかったから。または「最悪な格好だ」と思ってもらってもいい。

どちらにしても、私は注目されるのが好きだということ(笑)。常に目立つ格好をするのが好きだった。そのおかげで今は、本当にどこにも行けなくなってしまった。人には「(今と)違う格好をすればどこでも行けるよ」って言われるんだけど、そんな格好したくない。こういう格好をしているのが心地良いから、こういう格好をしているわけだし。今とは違う格好をしたくない。それってバカなのかもしれないけど、そう思っている。

「自分が着たいものは何を着てもいいんだ」

――他の女性アーティストが、より体を強調したような服を着るのに対して、あなたはオーバーサイズのストリートスタイルファッションですよね。そのような服装をしている理由は?


ビリー:私が着ている服を見て、人が「自分も人と違う格好をしていいんだ」と思ってくれたらすごく嬉しい。「ビリーの着ている服を見て、子どもたちが人とは違う格好をするようになった」と言われるのがすごく好き。

私がファッションでやりたいと思っているのは、「自分が着たいものは何を着てもいいんだ」と発信すること。みんなを自由にしてあげたい。つまり、決まりきった格好をしなくてもいいという機会を与えてあげたい。型にはまった格好をしなくちゃいけないと思わなくていい。いつだって自分が着たいと思う服を着ればいいの。

――あなたは、ツアー会場に投票の登録をするブース(注:アメリカの有権者登録所。選挙のために身分情報を登録する場所)を置いていて、素晴らしいと思いました。どのような意図があったのでしょうか?

ビリー:世の中の人たちって「みんなどうせ私は1人の力しかない」って考えていると思う。間違いなく1人でしかないけど、世界中の人全員が1人でしかないわけだから。1人でしかないからあなただけ特別というわけじゃない。1人でしかないから投票しなくていいというものではない。投票しなくちゃダメ。

例えば、みんなが「私1人くらい、良いことをしなくてもいい」と言い出したらどうなると思う? 全員が同じように、永遠に良いことをしなくてもいいと思ったらどうなる? みんながそんなことを言い出したら、今ですら最悪だと思える世界が、さらに悪い世の中になってしまう。それって最悪だと思う。私は「自分1人くらいならいいだろう」と思っているような状態が、本当に耐えられない。

日本の靴屋での体験

――日本の音楽フェス「サマーソニック」に来てパフォーマンスをしましたが、日本のファンの印象は?

ビリー:日本のファンはすごく敬意を表してくれていると思った。「みんな! そこまでナイスにしてくれなくていいのに」と思ったくらい。「物を投げてくれてもいいし、ちょっと意地悪なことをしてくれていいのに」ってね(笑)。

正直言って、ああいう観客を見たことがない。アジアでは全体的にそうだったと思う。観客が静かに聴いてくれているというのは、いつもとは違って全然慣れなかった。だから最初に見た時は「どうしよう」と思ったけど、ライブをしている間に実は好きになっていった。

誰もスマホを持っていないし、誰かとしゃべってる人もいないし、ブーイングしたり喧嘩し始めたりする人もいない。みんなしっかりと聴いてくれている。そういう雰囲気の中で歌うという心構えは必要だったけど、すごく楽しかった。それにみんな優しくて、みんなからプレゼントをもらった。日本のファンってプレゼントをくれるでしょ? 優しすぎる。すごくキュートだと思う。

――日本の文化に興味はありますか?

ビリー:日本のファッションはクレイジーでゴージャスだと思う。日本には以前、合唱団として1週間半くらい行ったことがある。私は14歳くらいだったと思う。

自由時間にみんなで買い物に行ったら靴屋さんがあって、私がこれまで見たこともないような靴が並んでいた。クレイジーだと思った(笑)。「なんで見たこともないような靴がここにあるの?」って。それにびっくりした。

だから、それから2年後にライブで日本に帰ってきた時も、同じことを思った。ものすごくオリジナリティのある物がある。だからみんな東京が大好きなんだと思う。

自分の将来の姿はあえて考えない

――将来どんなアーティスト、またはどんな存在になっていきたいですか?

ビリー:将来どんな存在になりたいのか、むしろ考えないようにしている。それを考えると、今の自分がやりたいことを何かしら妨害するような気がするから。自分がどうなりたいのか考えた時期もあったけど、それが自分をダメにしてしまうと思う。

3年後にこうありたいと思うがために、道からそれてしまうような気がする。あまりに遠い未来のことで、そこに今すぐには行けないわけだから。あまりに遠すぎて。だから未来について考えるのは好きじゃない。今の自分だけを考えたい。

2年前に『don’t smile at me』を出した時は、あの時の私だった。あの当時の私は、今とは違うフィーリング・信念・意見を持っていた。でも、今になってそれを後悔したり反対したりすることは絶対にない。今は違うことを感じるけど、「あの当時の私は間違っていた」とは言わない。それがあの時の私が感じたことで、これが今の私が感じることだから。

だから、これから2年後にこのアルバムや、今やっていることを振り返ったら「あれは本当にバカだった」と思うかもしれない。でも間違いないのは、過去の自分を振り返って、その時感じたことや、やったことに対して、怒りを覚えたりはしない。なぜならそれはその時の自分がやらなくちゃいけないことだったわけだから。そして、その時々で変化していくことは、常に必要不可欠だと思う。

――これからの夢や目標はありますか?


ビリー:夢も目標もあるけど、でもそれは私自身のためのもの。それは自分の中の目標であって、人には言いたくないな。私の人生の目標であって、他人の人生の目標ではない。だから、他の人に何か意見も言われる必要もないしね。

――最後に、日本のファンへ一言お願いします。


ビリー:ハロー! アイ・ラブ・ユー。早く、日本にまた行きたい。そして見たこともない靴をまた見たい!

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