1つが崩れると全体に悪影響が出る難しさ

上村紀夫氏(以下、上村):「個人活性」を3つにわけると、心身のコンディション、働きやすさ、働きがい。

具体的に働きやすさにはなにが入るかというと、業務量の負荷とか、人間関係、上司関係や部下関係、同僚関係。給与なんかは(働きやすさと働きがいの)両方に入るかもしれないですね。

働きがいに関してだと、ビジョン共有、帰属意識なんかも入りますね。あとは存在承認とかも入ります。居場所感というものも入ってきます。

それはどういう関係性になっているのかというと、このピラミッドみたいなかたちの存在になっているかなというのが、今まで見た感じです。

なんだか当たり前のことをずっとたどっていると思われるんですけれども。これはピラミッドにしていますけれども、厳密に言うとピラミッドではないんです。

これは「心身のコンディション」。個人で考えてくださいね、心身のコンディション(ピラミッドの下の部分)が崩れると、当然上も崩れる。 

例えば気持ちの面で落ちてくると、上が崩れる。ですから心身のコンディションを保ちましょうということで、健康経営なんて話をされている方もけっこう多いと思います。健康経営はここ(心身コンディション)にフォーカスさせている。

一方、これがピラミッドではない理由はなにかというと、上です。この「働きがい」「働きやすさ」。これが崩れると、意外と下にも影響して「心身のコンディション」を崩すことがあります。下にも影響します。

なので、ただのピラミッドではないんです。上が重たいと、それで下が潰れていくということが起こります。この、「下から積みあげればいいというものでもないぞ」というところに難しさがある。ピサの斜塔ですね。

ですので、実際のケース1。難しいと思うので具体例を出しますね。業務量の負荷が多い場合はどうなるか。もしその方が業務量の多さに影響を受けた場合にはどうなるかというと、「働きやすさ」にマイナスが発生する。もしくは疲労がたまって「心身のコンディション」が悪化する。ここまでは普通に考えられることですね。

ここから先、実際に疲労が蓄積していくと、もう1回下に影響します。「働きやすさ」が悪くなって気持ちが鬱々すると、再度「心身のコンディション」が悪化するんです。

ただ、これだけではなくて「働きがい」も下がります。スタート地点は下のほうからですが、上のほうにも影響が出るんですね。上からも下に影響しますが、こういったかたちで相互に関係し合うというのが1つの例ですね。

これは普通にあるものです。実際に起こる現象としては、体調不良やメンタルダウン。あとは精神的余裕が低下するなんてこともありますね。

管理がうまいマネージャーのもとでメンタル不調が増えるワケ

2つめは、上司がマイクロマネジメントをする。マイクロマネジメントはわかりますか?「これをやれ」「あれをやれ」みたいな感じで、かなり細かく指示をしてくる。そうなった場合、マイクロマネジメントは「働きやすさ」がプラスになると思いきや、人によってはマイナスになる。

「自分の裁量権がなくなる」と感じられる方もいらっしゃるので、ここで下がる方も出てきます。働きやすくなることもあるんですけれども、悪くなることもある。そこからどこに行くかというと、「働きがい」が減ることがあります。自分で動かしている感がない。自己効力感がなくなるとか、そういった表現をされる方がいますね。

それだけではなくて、そこから下に行ってメンタルダウンを起こす方もいらっしゃいます。たまにすごく管理が上手なマネージャーのところでメンタル不調が増えていることがあるんですが、こういった現象が起こっているんですね。ですので、業務管理だけですべてが回るかというと、そうでもないよというお話です。

3つめは、この頃こういった方が増えています。入社してから「希望する配属ではなかった」と思うんですね。とくに新卒の方がそう思った時にどうなるか。ホリエモンの『多動力』でいうと、たぶん「すぐ辞めなさい」という話なんですけど。

同じような話で配属が希望通りにならないとなったら、「働きがい」がまずシンプルに下がります。下がるとなにが起こるか。これで終わったらいいんですけれども、終わらないです。

そうすると自然に下に落ちて「働きやすさ」も下がります。気持ちのモチベーションが下がるので、そのぶん働きづらくなる。「これはやっていて意味があるのかな」みたいな感じのところから「これ、しんどいな」「やらされているな」というかたちになってくる。

そうすると「働きやすさ」がどんどん下がり、最終的には「心身コンディション」に至る。そしで我々産業医のところに来て、メンタル不調というかたちで面談をするケースが出てくる。これは最近多いです。

なので、出てくる現象は「やる気の低下」「離職」「メンタルダウン」なんですけれども、プロセスを見ないとわかりづらいところがありますね。これが個人のお話でした。

メンタル不調の3段階

続いてマイナス感情の伝染についてお話をします。組織の活性はどこから生まれるのかというと、個人活性の合計です。

例えば10人の部署があったら、それは10人の個人活性の集合体です。ですが、個人の話から組織の話に変えると、またちょっと見え方が変わります。(スライドを指して)なにが変わるかというと、ここに書いています。連鎖反応がものすごく起こりやすいです。

連鎖反応のケースは、例えばストレス耐性が低めの従業員が多い会社。1個1個説明しますと、ストレス耐性に関してうちは「バケツ理論」という言葉を使っています。バケツに水が入ってくる。バケツから水があふれると、メンタル不調になりますよという理論です。

メンタル不調は悪化の順番が必ず決まっています。メンタルダウンは、初期はぼんやり調子が悪い、やる気が起こらない、感情の起伏が激しくなる。あとは頭にもやがかかるとおっしゃる方もいますね。それが最初の段階です。

2段階め、我々は「心身症」と呼んでいます。こころ(心)、からだ(身体)と書きます。これは睡眠障害や、自律神経失調症が出てくる状態です。この段階になってくると、ちょっとケアが必要です。

3つめは「行動変調」。あきらかに周りから見ておかしいとわかる状態。具体的に言うと電車に乗れないとか、引きこもるとか、突然泣き出すとかですね。必ず順番通りに悪化すると考えてください。その中で心身症、とくに睡眠の質が悪化したら、たぶん自力では戻れないです。

これはぜんぜん違う話なんですけれども、もし管理職の方々がいらっしゃった場合、「ちょっと怪しいな」と思った方には「最近ちゃんと寝られている?」と必ず聞いてください。

「最近ちゃんと寝られている?」というクエスチョンだけでいいです。そこで睡眠の質が悪化している方がいらっしゃった場合には要注意です。自力で改善できないようだったら、そのタイミングでたぶん薬を使ったほうがいいです。

つまりクリニックの受診を促したほうがいい。自力で改善できない睡眠の質ですね。悪化が見られた場合にはメンタルクリニックですね。そこに行っていただくというのがいいかなと思っています。

ストレス耐性の時代的な変化

話を戻しますが、バケツ(ストレス耐性)の話。バケツには人それぞれ大きさが決まっています。その大きさが大きい方はストレス耐性が高い。小さい方はストレス耐性が低い。最近の若い方を見られるとどうですか? ストレス耐性は高いと思います? 低いと思います? 感覚的に。

参加者2:逆にストレスなんか感じていないんじゃないかな。

上村:感じていない(笑)。たぶんいらっしゃいますよね、おっしゃるとおり。

参加者2:中高年のほうがけっこうストレスがたまっているような気がします。

上村:中高年の方々は慢性的に水がたまっている感じがしますけれどもね、ありがとうございます。

このごろの若手はどうでしょうか? 若手に接する方とかいらっしゃったらどうでしょうか。メンタルは強そう? 弱そう? 

参加者3:すぐ折れる感じ。

上村:すぐ折れる感じ。どうですか? これは後ほど取り扱う話題なんですけれども、バケツの大きさに関して言うと、最近はちょっと小さくなっていると思います。

これには理由があって、一番は教育現場から理不尽が減ったことですね。いわゆるめちゃくちゃな教師がいなくなったとか、あと先輩後輩とか、そういうところで教育の世界から理不尽をなくそうという風潮です。でも、今でもまだありますけれどもね。

そうすると、社会人になった時にいきなり理不尽の塊みたいな場所に入ると。変化は全部ストレスになりますので、その変化の大きさで全部潰れてしまうというケースがけっこうあります。そういった理不尽を経験していない方々が増えてきている。ストレス耐性の低さが出てきています。

ストレス耐性が低い人が集まった「砂の城系組織」

仮にもしそういったストレス耐性の低い方、原因はそれだけではないんですけれども、ストレス耐性が低い方が集まった会社さんがあったらどうなるのかというと、こうなります。

(スライドを指して)さっきの三角形だと、「心身コンディション」はちょっとした変化で悪化します。変化はストレスです。いいことも悪いことも全部ストレスです。

別に「みなさん守りなさい」というのではなくて、「ストレスがかかっているよ」ということを認識していただくだけでもずいぶん違います。変化の重なりはとくに危ないです。そういった変化があったりすると、「心身コンディション」が悪化します。

そうすると休職したりパフォーマンスが落ちたりする。誰が穴埋めをするのか。もちろん元気な方が穴埋めをする。いつもの流れですね。そうなると、その穴埋めメンバーはどう思うか。やりがいを持って「うおー」と思うかどうか。

たぶん思わないんですよ。思わない。そうすると「働きやすさ」が下がります。そうすると当然リンクして「働きがい」も下がってくる。そして全体像として三角形の面積がぎゅっと小さくなる。これが活性が落ちている状態です。前向きに業務ができなくなる。

この状態のことを、我々は「砂の城系組織」と読んでいます。ストレス耐性が低い人は雇うのを避けたほうがいいかなと言われますけれども、避けられるなら避けていただいたほうがいいですが、これはとても難しいです。

いくつか対策は出ていて減らせる施策はあるにはあるんですけれども、なかなかすべての会社さんにイコールで効果があるとは言い切れないので、ちょっとまだ今日ご紹介は難しいです。

ただ、ストレス耐性の低い方を雇いすぎると全体の活性が落ちることは十分に考えられます。ですので、採用の時のチェックは先ほどの労働価値の合わせだけではなく、ストレスに強そうかな・弱そうかなという観点は確実に必要です。ここは絶対に面談の時に見ていただくことをおすすめします。

ストレス耐性が低い人の2つの可能性

とくにキーワードとして、ストレス耐性が低い方は2つの可能性があります。

1つめはものすごく弱い、見るからに脆そうなケース。そういった方の場合には、特徴として自責が出ます。自分が悪いとか、自己効力感がないとか、そういうかたちで出ますので、雰囲気的にはたぶんみなさんも見抜けると思います。

雰囲気に「自信がなさそうだな」という方がたぶん出てくるのですが、そこはたぶんみなさん引かないです。

みなさんが引いてしまうのはもう1つのタイプ。他責性が強いタイプ。他人のせいにする人。「新型うつ」というのも表現としては出てきていますけれども、自分を守るために他人への攻撃性が出る方がこの頃増えています。

でも、そういう方は、履歴書や面接では超ピカピカです。なので高い評価で入る方が多いですが、そこをどうやって見抜くか。他責性をどうやってあぶり出すかが面接においてはキーになります。

これはいろんな聞き方があると思うので、ちょっといろいろ研究していただくといいかなと思いますが、他責性を見ていただくとわかりやすい。

自分のことをちゃんと反省して内省できる方はいいんですけれども、全責任を他に持ってきてしまう方は入った後にそれが起こる可能性があります。それをどういうふうに見抜くかを、ちょっといろいろ考えていただくといいかなと思いますね。