わずか半年で5万人にダウンロードされた単発バイトアプリ「wakumo」

——すきま時間で働ける単発アルバイトマッチングアプリ「wakumo」は、昨年のリリースから半年で5万人がダウンロードしたとうかがっています。まずは、お二人がネオキャリアに入られてから、wakumoを立ち上げられた経緯を聞かせていただけますか?

北浦健太氏(以下、北浦):2014年に新卒で入社し、ずっと介護職の派遣事業にいました。最初は東京、そのあとは熊本の支店長、九州の責任者、東京の責任者をやって大阪で子会社の立ち上げをして、2019年にwakumoの立ち上げという流れですね。

水本明宏氏(以下、水本):私は2015年にネオキャリアに新卒で入社し、入社直後は経営企画部で、当時いくつか立ち上がっていたWebサービスのマーケティングに従事していました。

それから保育系サービスのマーケティング責任者を経て、開発側も見るようになり、 PM(プロジェクトマネージャー)としても仕事をしてきました。その後、ネオキャリアの子会社であるネオラボに異動し、社内外問わずお客様のサービスや自社サービスの開発・マーケティングに関わる仕事をやってきました。

そして、2019年4月の北浦と同じタイミングでwakumoの事業に参画しました。

前月比200%で急成長してきた背景

——2019年の立ち上げから今まで、どのように事業を拡大されてきたのでしょうか?

北浦:事業側で言いますと、2019年4月にwakumoの構想が立ち上がって、そこから半年ぐらいは開発期間で、9月にアプリをリリースしました。

9月にアプリが完成し、3ヶ月半後には登録者数が1万人を超え、今は前月200パーセントぐらいで成長を続けているようなイメージです。

急成長の背景としては、時代的なニーズがあると思っています。マーケットが急激に拡大していっているところと、それに合わせて集客が非常にうまくいっているところが大きいですね。

水本:プロダクト開発とマーケティングは私のほうで担当していますが、やはり時流的に単発のアルバイトをアプリで探されている方もかなり多いんです。

そういった方が増加している中で、いかにwakumoを知っていただく機会を増やすかというところにうまく対応できたので、今の状況下では、ある程度満足のいく数のユーザーさんに使っていただけています。

営業が獲得してきてくれているお客様のニーズがあってこそですが、スモールスタートながらも毎月毎月、徐々にプロダクトの成長を感じるようなかたちで進めてこられたのがよかったなと感じていますね。

雇用する企業側が「安心できるサービス」を提供したい

——アプリのユーザーさんのコメントで「運営事務局(wakumo側)がチャットで対応してくれるので、人が間に入って対応してくれている感じがする」という声がありますが、そのあたりで工夫していらっしゃることはありますか? 

北浦:ネオキャリア自体が人材紹介業として会社を20年やっているので、その中で1日単位のアルバイトという領域に取り組んでいるイメージなんですが「誰でもいいからマッチングする」というのは本来適切ではないと思っています。

ちゃんと中に人がいて、その人が責任を持ってマッチングをするところまでこだわっているところは、短期・単発アルバイトの事業者としては他ではまだそんなにいらっしゃらないかなと思います。

wakumoは、ワーカーさんを雇用する企業側の目線を重視しているサービスです。企業様に適切なワーカーさんをご紹介したいと思うからこそ、中に人がいてご対応をする。そこがワーカーさんにとっても安心していただけているのかなというイメージですね。

例えば、一般的なマッチングサービスは、1つの求人を出して、それに一番早く応募した人が採用されるという早い者勝ちのイメージなんですが、僕らはそれをやりたくなくって。

ワーカーさんにとってはいいかもしれないですけれども、企業様からすると「早い者勝ちで誰が来るかわからない」という状態は決していいものではないですよね。

早いものがちゆえにミスマッチも起きかねなく、そうなると、ワーカーさんにとっても不幸な話ですので、集まった応募の中から、お客様もしくは運営側が「一番適切である」と判断した人を採用してマッチングをするというフローです。

あとは例えば、今から2時間後に人手がほしいという特に緊急性の高い募集であっても、運営側がワーカーさんにチャットや電話を通して「今からいける人、いないですか?」というアプローチをしてアテンドすることが可能です。

100パーセントマッチングできるという保証はできないですが、企業様からは「いざというときになにかしら手を尽くしてくれる」というところで評価をいただいています。

——なるほど。単純に早い者勝ちではなく、本当にその業務にマッチした人をご提案するということですね。適性はどのように判断されているんでしょうか?

北浦:もちろん履歴書だけでは判断しかねるので、ワーカーさんと直接電話でお話したり、チャットで連絡を取ったりしています。

企業側のニーズに合わせて、「実績がある方で、絶対に来てくれる方にしてほしい」と強く望まれる企業には、そういう方をアテンドしますし、柔軟に対応しています。

コロナウイルスによる短期アルバイト市場への影響

——今回の新型コロナウイルスは、短期アルバイト市場にどういう影響を及ぼすのか。また、そこに対してwakumoさんがどういうふうにお役に立てるとお考えでしょうか。さらに、今実施されている「飲食店応援プロジェクト」についてもお聞かせいただけたらと思います。

北浦:コロナウイルスの影響でいうと、各社こういった単発アルバイトのマッチングアプリをやっている企業に関しては、ほぼほぼ通常時の半分以下程度まで求人数が減っているイメージです。

特にマッチングアプリを運営している企業は、どこも飲食系の求人が多かったんですが、正直、今は飲食系は軒並みご利用頻度が下がっています。

次点でイベント系ですね。イベントの設営などの派遣スタッフさんなども、軒並みイベントが中止になっている影響から、求人が出ていません。このあたりはコロナの影響と言いますか、シンプルに仕事がないので求人が出ないという状況です。

逆に、今忙しくされているところで言うと、やはりデリバリー系であったり、食品関係の製造業であったり、例えばスーパーの精肉加工などは非常に忙しくされていたりします。あとは、物流・倉庫系などは、お忙しくされているところがある状況かなと思います。

「飲食店応援プロジェクト」と不況でこそ求められる利点

北浦:また、wakumoがどう役立つのかというところと、飲食店応援プロジェクトについてですが、本来であればwakumoのようなサービスや1日単位のアルバイトマッチングアプリは、こういった不況などに強くご活用いただけるサービスになりえるはずです。

人員配置などを含めて、企業側が長期の雇用をすることに非常に不安が募っているようなシーンにおいては、必要なタイミングで必要な人員を確保することができます。本来は、業務量が急激に増えたタイミング、もしくは急激に減ったタイミングで人員配置をしていただくような使い方ができるかなと。

ただ、弊社も含めて、短期雇用の事業を展開している各社が、“いざというときの人員配置ができるツール”というメリットを認識していただけていない状況で、今回のコロナウイルスによる事態が起こってしまったと思っているので。

本来は、不況であったり世の中がざわついている局面において、一番柔軟な人材配置を可能にするといったところに価値のあるサービスかなと思っております。

また、飲食店プロジェクトはまったくの別枠なのですが、平素よりご利用いただいていた飲食のお客様が今は非常に苦戦をされており、売り上げが立たないような状態です。

そうした中で、各社様がやはりなんとしても売り上げを立てるというところで、デリバリーやテイクアウトへの舵取りをされています。とはいえ、急にデリバリーやテイクアウトを始めても、お客様にデリバリーをやっていることを知っていただけなければ、当然オーダーが入るわけがないので。

ネットでそういった拡散をすることも1つの方法ですが、とはいえ自分の家の近くにあるかどうかは、デリバリーのテイクアウトでは非常に重要です。

であれば、非常にアナログなやり方ではありますが、ポスティングが一番適しているかなと判断をして、その部分をご支援したいなということで、今回「飲食店応援プロジェクト」をやらせていただいたという流れになります。

具体的には電話やメールなどを使って、ご依頼主様とコミュニケーションを取らせていただいて、こちらのデザイナーがポスティングのチラシを作成をしてご提供するというかたちです。僕が飲食店さんからお申し込みをいただいて、水本がデザインやWebでの告知などを担当してくれています。

業種ごとに専任チームでのサポート体制を構築

——wakumoさんは、もともと飲食以外の事業も広く扱っていらっしゃいましたが、なぜそうした取り組みをされていたのでしょうか?

北浦:正直、これまでも飲食は取り扱ってはいたものの、もともとのwakumoのサービスのコンセプトは、大学生と飲食店をつなぐものではなく、1日単位で働きたい方全般にご利用いただくことを目指しています。

今の世の中で人手が足りていない業界は飲食だけではないので、企業様側からアプローチをすると、飲食以外の業界にも届いていくということで、倉庫や物流、製造という業界にもどんどん広がっていったという感じですね。

ある程度、戦略的に業界をしぼる部分はあっても、それほど限定してはいないので、他のサービスに比べて業界のバリエーションが多くなっています。

——扱う職種や業種が広がるほど、ご紹介する側としては大変な部分もあると思うんです。同じ業界なら、ノウハウもある程度は共通している気がしますが、飲食と運送業と小売と製造業といったら、違う工夫が必要になりそうですが、企業様に安心していただけるような試みをされていますか?

北浦:業種毎に営業担当を変えているので、その個人やチームにノウハウが溜まっていっていくようにしています。1人ですべての商材を扱うのではなく、個人やチームで、飲食や倉庫などの担当を持って運営しています。

チーム内のノウハウも溜まっていっているので、ある程度、価値のあるサービスを提供できているのかなと思います。

物流・倉庫事業の人件費を3~4割削減した事例

——wakumoを導入されている企業様の事例を教えていただけますか?

北浦:業界や業種はかなり幅広いのですが、例えば倉庫や物流系だと派遣よりもwakumoのほうが安いので、wakumoに乗り換えていただくことによって、単純にコスト減につながると。倉庫・物流系はもともと日雇い派遣を雇われていた企業様が多いのですが、そういった企業様がwakumoにどんどん乗り換えていただいています。

——費用が安くなるだけではなく、スキルも担保できるものなのでしょうか?

北浦:そうですね。物を運んだりピッキングするといった仕事内容でしたら、それほど特殊な能力は必要ないです。wakumoでも、採用の際に経験者などでしぼることはできるので、派遣スタッフの方とwakumoのワーカーさんの質はほぼ同等で、企業様のコストが安くなるというかたちです。

派遣さんの人件費は時給2,000円~2,500円かかりますけど、wakumoで採用すれば、1,000円~1,500円になります。手数料を入れても6割か7割ほどなので、コストダウンにつながります。やはりコスト削減につながることは、企業様にwakumoを導入いただいている理由の1つです。

繁閑の波や突発的な欠員のフォロー対応が可能

北浦:また、人手不足が常態化しているところや、突発的な欠員、繁忙の波がある業界でも、wakumoをご利用いただいています。今週は忙しいけど来週は暇というような業界は、長期で雇用契約をしてしまうと、その分の人件費が無駄になってしまいます。そのあたりの人材配置ができるところは、必要とされるところですね。

また、例えば今、急にアルバイトの方が「今日休みます」と言っても、今夜のマッチングは間に合います。これは普通に日々発生する事案なので、欠員が出なかったという状態を作ることは、ほぼ可能ですね。

——お客様がwakumoさんを選ばれた決め手はどのようなところでしょうか?

北浦:フォロー体制が多いですかね。中の人がちゃんといるところと、あとは入職日前日に電話やチャットなどで、ワーカーの方に「明日は大丈夫ですか」といった確認は必ずするようにしています。それによって、高い入職率を担保しています。とにかく企業様側に向けたフォローを徹底しているところは、選ばれるポイントとして多いですね。

水本:先ほどのような「急に欠員が出た」という状況で、急いで対応して欠員を補充できたことで、「wakumoさんがいてくれて助かりました」というお声をいただいたりもしています。

この時期だからこそとか、欠員してしまうというタイミングで、なんとか人を探してきて、アサインしてマッチングできましたと。小規模のお客様だと、人がいないとそもそも運営が回らないといったことも少なくないです。そうした急な欠員も、細かくちゃんと人をマッチングしてあげて、入職に至るようにサポートをしています。

人材紹介業の免許を持つ「wakumo」ならではの強み

——求人とワーカーさんをうまくマッチングできないようなときは、企業様が欲しい人材が見つかるまで探すこともあるのでしょうか?

北浦:そうですね。仕事の斡旋行為自体は、人材紹介業でなければできないので、wakumoならではの強みです。

水本:求人広告を出せるだけではなく、「こういう人がほしい」というニーズにあった人を探すところまで対応しています。ただし、弊社がいただく手数料は他社さんと変わらないです。

こういったことができる大前提として、「人材紹介の免許を持っているかどうか」というところがあります。ネオキャリアはもともと人材紹介業ですが、他の単発アルバイトマッチングアプリを提供している会社さんは、そういう免許を持っていらっしゃらない。

なので、弊社の場合だと、アプリ上に求人が出た上で、「今こういう求人が出ているので、ぜひ応募してくださいませんか」「今日空いていませんか」というコミュニケーションを取ることが許されているんです。

いわゆる求人広告だと、それにマッチングして応募するだけというところまでしかできないんですね。

北浦:ちなみに、企業様に導入いただいた事例として、ちょっと変わった知育系の保育園もありましたね。採用の条件が英語をしゃべれる人だったんです。保育士というよりは、ちょっと子どもたちの相手をする接客に近いような感じでした。

水本:シリコンバレー教育ですね。

北浦:そうそう。だから、英語がしゃべれて子どもの相手ができる人が採用条件で、なかなかいないかなと思っていたら、意外にめちゃくちゃいたという。最後は直接チャットでやりとりをして、いけるかどうかをきちんと確認して採用するといった感じですね。そういったかたちで、企業様のご要望に対応しています。

年齢や性別・経歴に関わらず、人々の「はたらくを自由に」していく

——最後に、今後の展開について教えていただけるでしょうか。

北浦:今は関東・関西エリアで営業をしていて、次は名古屋で東海オフィスがスタートします。そのあとは福岡や仙台、北海道のような政令指定都市に展開していくイメージですね。

wakumo自体がワークモビリティー、「はたらくを自由に」というテーマでやっていますので、自由度が高く働ける方を1人でも多く増やしていければなと思っています。

なので、年齢や性別、場所やこれまでの経歴に関係なく、真面目に仕事をしていただける方であれば、柔軟に働いていけるような社会を作れればなというのが、事業自体の目指している方向ですね。

——ありがとうございました。