2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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林智也氏:ご紹介にあずかりました林です。よろしくお願いします。たくさん楽しいイベントがあるのにここを選んでいただき、ありがとうございます。
ちょっとだけ自己紹介をします。今回、このように企画を通すコツ・ヒットを生むヒントについて話す機会をいただきました。ふだんはテレビ業界を目指す人や、学生などに対して話すことが多いですが、今日はすごく多岐にわたるご職業や立場の方々がいらっしゃっているということで、楽しみです。
ズブズブと刺さっていくかはわかりませんが、自分なりに思っていることを一生懸命やろうと思っております。
この1億人総クリエイター時代というのは、「みんなSNSをやろうよ」ということじゃなくて。自分の会社もそうで、テレビも別に(そういう時代を率いているような)リーダー企業ではなくてですね。
はっきり言って、内部ではプロデューサーが「自分たちで次のチャンスを、つまりお金を稼いできなさい」という時代になっていたりもします。
たぶん僕らだけじゃなくて、いろんなところで、そういうことが言われているから、こういうマネーフォワードのイベントのニーズがあるのではないかと。そこで自分なりに言えることを話していきます。
僕はどんな人かというと、毎日放送というテレビ局に入りまして、ずっとテレビ制作だけをしています。毎日放送は関西に本社があって、今は全国ネットの番組も多くやっています。
そこでアシスタントディレクターをやって、ディレクターをやって、演出家になり、そしてプロデューサーになり、どこにも異動せずにずっとやっているのが自分の特性です。
いろんな企画を書きましたし、驚くほどの失敗もしました。ですので、その経験をもとにしゃべっていきます。
データを見ると、今日はスポーツ界の方も来ていただいているようです。僕は学生時代にずっとアメフトをしていました。危険タックルで話題になった、タックルを受けたほうのチームでやっておりました(笑)。オフェンスだった僕も、たくさんタックルをしていましたね。
これは僕の作った番組です。『サタデープラス』という関ジャニの丸山(隆平)さんの番組ですね。今も放送されています。『林先生が驚く初耳学!』というのも、僕がプロデューサーとしてやりました。
あと、今は『教えてもらう前と後』というのを火曜日の8時(※番組放送時間帯はイベント当時です)にやっていて。「そろそろ滝川クリステルが子どもを生むのではないか」とか、「小泉進次郎さんが……」というネタで賑わっています。
この番組は彼女(滝川クリステル)と(博多)華丸・大吉さんとやっていて、これが今自分の中のメインの仕事だったりします。
若いときには関西で『歌ネタ王』という、お笑いコンテストみたいなことも多くやっていました。
過去には、志村けんさんとの番組や、島田紳助さんの『世界バリバリ☆バリュー』というお金持ちを紹介するような番組でのディレクターを経て、今に至ります。
そんな経験の中で、企画を通してヒットを生んでいくために、僕が実践している方法をみなさんがどう思うかな? ということをしゃべりに来ました。
まず、僕が紳助さんに教えてもらったことの1つ目が、この「魚のいる池で釣りをしなさい」という言葉でして。
企画を作るうえで言わずもがななのですが、テレビでいうと、「視聴者が興味のあること、みんなが見ていることに釣り糸を垂らしなさいよ」というのが、とても大事です。そのために研究をするわけですが、それだけじゃなかなかうまく企画は生まれない、というのがもちろんあります。
僕にはすごく大事にしている、とっても簡単な考え方があります。
というのも、テレビを作る人にも、クリエイターといわれる人にも2つのパターンがあって。もともと芸術家みたいに天才肌でやっていくタイプと、市況を見て、こういうものが必要とされているな、というのを研究して当てていくタイプ。僕は後者ですけれども。
大きく言うと、この2つに分かれるのではないかと思っています。
僕が今日こうやってしゃべりに来ているのは、新しいチャンスがほしいというのもありますが、圧倒的に後者だったわけです。
天才肌ではなくて、ずっと人の真似をして、「どこにオリジナルがあるだろう?」というのを確かめてやってきた感じですね。
そんな中で行き着いた、僕なりのすごくシンプルな作り方があって。それがこれです。
僕が企画を作るときや、ヒットしている企画を見るときに、とてもシンプルで大事だなと思うのが、「自分が何に興味があるかと、世間が求めるものは何かをすごく突き詰めていくこと」。これをすごく研究していく。
(スライドの)右のほうの関心。自分が何に興奮するのかを、すごく興味を持って模索していく。そこの最大公約数といいますか、間にあるものを取って見つけていくと。そこに模造紙が置いてありますよね。後ほどのワークショップで、一緒に実践してみたいと思います。
こんな簡単なこと、「何言ってるんだよ」と思うでしょうけど、僕はこれに到達するのに10年ぐらいかかりました。なんでかというと、いいものを作りたいから。「こういうところがおもしろいのではないか」というおごりがあって、最初は自分の興味と関心で仕事をやります。
それで、だんだん頭を打たれたりするわけです。そうして、社会人4年、5年と経って、ちょっと先輩風を吹かせながら真似をしているだけですが、世間が求めるものをずっとずっと作ることをやっていました。
それが、とにかくこの「間」を狙っていくということをやりだして、自分が作るものが変わってきたなという感じがあります。
具体的に言いますと、僕がさっき見せた『サタデープラス』という番組では、世間が求めるものは何かなというので、医療をやってみようと。だけど僕も当時30歳ぐらいで、なかなか医療に興奮できない自分がいました。
そこでどうやって興味を持っていこうかというときに、誰とやるか、どういう影響・ゴールを求めるか、みたいなことになっていきました。
僕はそこで「この番組を関ジャニとやりたいな」と思いました。なぜかというと、僕が自分で感じていた医療の堅苦しさみたいなものが、それで柔らかくなるのではないかと。
もっと言うと、今でこそ、みんなが健康情報に興味を持つようになりましたけれど、当時はぜんぜんなくって。そんな中で医療の番組を土曜の朝にやろうとしていたので、「なにやってるんだ」「なんて企画を持ってきたんだ」と言われました。
だけど、僕はこれをジャニーズ事務所に持っていきました。社長のジュリーさんにドキドキしながら説明しに行って、「バラエティは中居君ができます。ニュースは嵐が読めます。でも、医療で何かやっているジャニーズの先駆者は、なかなかいません。だから挑戦をさせてほしい」と。
企画を通すうえで、自分自身も医療にすごく興奮しているわけではないけれども、例えば街の合コンとかで、三大疾病の対処法ぐらい言えないと女の子にモテない、みたいなことが、若いアイコンを通して世の中に浸透していくと、おもしろいのではないかと。そうやって、自分の中で納得のいく理由を見つけました。
それによって、企画に説得力が増してきます。「何言ってんの?」と言っていた大人もお金を出してくれる。当時でいうと、スポンサーや、電通などに対しても、「自分は世間が求めるものを探しましたよ」と。自分はここにすごく興奮していると。未来がこういうふうになるとすごくいいんだよって。
この2つはとてもシンプルですけど、間に重なるところまで突き詰められると、企画書などが急に真実味を帯び出す。
そこの練習をすごくやっていくと、ただ単に奇をてらって、自分の興味のあることや、世間の……。最初はめちゃめちゃいいと思うけど、「あれ、もうこの会社が先に始めてるな」とか。企画書のときによくあるじゃないですか。
そのときに、ここに戻ってきて「もう1回会議してみよう」となると、とてもいいなというのが僕の経験の1つ目です。それがほぼすべてと言ってもいいと思っています。
じゃあ、こういう気づきを得るために、今度はどういう人間でいたらいいのかというのが、次ですね。
自己演出できる人とできない人ということを、僕はいろんなところで話します。自分がどういう人間であればヒット企画を生み続けられるか……。まあ、ヒットなんていうのは誰にも読めないですが、どう生むかというところで。
1つだけ大きな差があって。自分がヒットを生める人だとは言いません。だけど、ヒットを生める人とそうじゃない人の差は、絶対にこれだと思っています。ヒットを生み続ける人は、人に頼まれて考えるのではなくて、企画案を常に何十個も持っています。僕はこれが真実だと思います。
プロの写真家と、普通のスマホで写真を撮る人の決定的な差は何かご存じですか?
参加者:撮った枚数。
ああ、そうです。すごい。本当にそうです。撮った枚数ですよ。それはプロになる前だけじゃなくて、プロになった後も。
今の人って1日6時間ぐらいスマホを見ています。とはいえ、まあ100枚も写真を撮れば多いほうですよね。ご飯のときに20回もカシャカシャ鳴ってたら、よく撮る人だなと思うじゃないですか。プロはその比じゃないです。
結局企画もそうで、常に自分をどんな人間か演出して、企画を考える人になれると、企画を頼まれやすくなる。ふだんの雑談の中で「どこどこで、いついつ募集でこんなことがあります」と言ってから考えていると、写真家の話と一緒で、企画を生み続ける人にはならない。
じゃあ、どうやったら、そういう人になれるのか、というところを話していきたいと思います。
僕が大好きな考え方があって、これを「インプット無限ループ」と勝手に呼んでいます。世にあるすべてのことを「ああ、これ企画になるな」というふうに見て、毎日を生きられるようになると、とってもいいですね。
例えば、このBiz Forwardの話をいただいたときに、「ビジネスは冒険だ」とみんなが言うじゃないですか。「このままだと日本はやばいぞ」と。これもみんなが言いますよね。
そのときに具体例として今まで正解だったような、日本で大学を出て終身雇用で同じ会社に勤めるということが保障されなくなる、という話をみんながします。じゃあ、そのときにどういう話ができるとおもしろいかな、と考えるところに企画は転がっていると思います。
インプットを常にループさせると。何をしていても仕事に関係ある、企画に関係あるという状態にする。正月に子どもと家に帰って、「『はぁ』って言うゲーム」というのを家族でやりました。ご存じですか?
これは会議でもよく言いますが、今日のBiz Forwardのセッションでも、答えや正解がなくなっている。既成概念を解き放しなさいというのは、たぶんすべての会場でも言われていると思います。
「『はぁ』って言うゲーム」は、子どもが演じます。怒っているときの「はぁ」、驚かされたときの「はぁ」、落胆の「はぁ」をみんなで演じていくゲームです。
最近の子どもの遊びからも正解ってなくなっています。自分で演じて、「ああ、それもあるよね」っていう。それで小学校の企画をやりたいなと。実際に自分のところで、滝川クリステルの番組で作っています。
じゃあ、これを仕事にしましょうと。おもしろい入試問題を見ていると、例えば、早稲田大学で「じゃんけんにこれを足して、もっとおもしろいじゃんけんを考えなさい」というのがある。
これは実際に早稲田大学のスポーツ学部か何かで出た、新聞に載っていた入試のテストです。そこで僕は教育の場で答えを求めることをやめて、どうやって考えるかとが重宝される時代になっている、という話を雑談でしていく。
そうすると例えば、映画を見ていても、Netflixで見ていても、マンガを読んでいても、そんなふうに考えるようになっていく。結局、自分が経験したことなんていうのは、そのうち尽きてしまいます。
僕が会ってきた名演出家やプロデューサーは、みんなインプットが上手ですね。みんなが、正解がこの世からなくなっている、日本からなくなっている、どうなるだろう、という話をするけど、そのときに「この前、子どもと『はぁと言うゲーム』をやってさ。そこでも思ったよね」という話をする人はおもしろいなって。
受験の話をするのもいいなと思いますし。もっと違うところに視点があってとやっていくと、生きている間にすることが全部企画になっていく、という癖がついていきますよね。
大好きな先輩から教えてもらったことで、「電車のつり革広告に載っている話題を全部企画にしてみなさい」というのを練習していくと、無駄な時間がなくなっていきます。
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