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トークセッション(全6記事)

“助手席”に座り続けるのは危険 変化の時代に日本人が持つべきマインドセット

これからの時代は仕事も人材も、よりグローバルかつ流動的になっていくことが予想されます。日本企業と外資系企業における働き方・キャリア・文化の違いから、今後の働き方を見直すことを目的に開催された本イベント。日系・外資系企業それぞれに長年所属し活躍している4名が、各企業の内情を赤裸々に語りました。本記事では、変化の時代に個人が持つべきマインドに関するディスカッションの模様をお届けします。

「外資系」の定義とは?

藤田祐司氏(以下、藤田):会場のみなさん、せっかくなのでこちらの4名に聞きたいことを……。

澤円氏(以下、澤):そうだよね、質疑応答。

藤田:はい、どうぞ。

質問者1:このテーマでぜひ聞きたかったのが、みなさんが使う「外資」という概念ですね。みなさんの頭の中にあるイメージをお聞きしたいです。

背景は、私は外資を3社ほど回ってます。はっきり言うと、フランスの会社とアメリカの会社ってまったく違ったんですね。なので外資って言葉が実は嫌いです。“外人”と言っているのと同じような意味ですもん。そのところを、みなさんにそれぞれにお聞きしたいなと思っています。

:端的に言うと、新卒一括採用と終身雇用に依存していないかどうか。

松本国一氏(以下、松本):(笑)。

:あと、くだらない組合がない。

松本:わかりやすいな。

藤田:仕組みの違いということですか? 

:そう、そう。これはたぶん大きく違うかな。雑にくくるんだったら、一番手っ取り早いのが外資系と日本企業。それが一番楽。

そうすると主語がすごくでかくなって、外資系というのはいろんなものが外資系に含まれるんだけども、たださっき言った仕組みで言うと、日系はほとんどそれにならっています。日系というか大企業。法令がそういう作りになっているので、ここはやっぱり大きい違いかなと思いますね。

藤田:安達さん、どうですか? 

安達徹也氏(以下、安達):アメリカの会社しか行ったことがないので、あんまり考えたことがないですね。

(会場笑)

ちょっと勉強させてもらいたいな。フランスの会社はだいぶ違うんですね。

女性会社員を「女の子」と呼ぶ会社はアウト

藤田:ちなみにフランスの会社とアメリカの会社ってどう違うんでしょうか? 

質問者1:みなさんが先ほどおっしゃっていたとおり、外資系はウェットだと思うんですね。その中でもフランスはとくにファミリー的にウェットですね。制度的に言うと女性はすごく働きやすいんじゃないかなと感じましたね。

:フランスの女性の就業率。それと、わかりやすい言葉を使うと、出世する率がすごい高いんですよね。セールスとかなんとかというところとは、切り離されて考えられている。あとビジネスパーソンとしてちゃんと認められる土壌があるというところですね。

これ、ちょっと逆に聞いてみていい? 会社の中で若い女性社員を「女の子」って呼ぶカルチャーがある会社はどれくらいあります? 

(会場挙手)

藤田:意外とありますね。

:意外とあるな。これはけっこうリトマス試験紙になっていて、その会社は早めに辞めたほうがいいです。

(一同笑)

藤田:先ほどの倉貫さんの話じゃないけど、そういう会社は早めに辞めたほうがいいと。

:これは本当に深刻な根腐れを起こします。性別でヒエラルキーを作っているという証拠ですから。僕は、これは絶対にすぐにカルチャーを改めるべきだと常に言っています。

藤田:そういうのって、トップが変わろうと思えば変わってくるものなのか。それとも、企業の根深い問題なんですかね。

:根深いけれども、本当に変えたいなら、トップはそれに対して責任を取らなきゃいけないです。本気でやるんだということを徹底する。「そうはいっても」とか「本音と建前」とかじゃなくって、徹頭徹尾やらないと、これはなかなかうまくいかない。

トップが変わらなければ会社も変わらない

藤田:そうですね。ありがとうございます。では日系ですね、お願いします。

松本:外資の考え方については、日系企業とそれ以外だなと思っています。伝統と風土を重んじたいというのが日系企業で、そこは無視してもいいなと思っているのが外資系に近い考え方かなと思っています。

ビジネスにおける男性・女性の関係とか、「女の子」と言ってしまうのは、正直言っちゃうとたぶん風土的なものだと思うんですよね。それが未だに残っていて、まだこの先も残り続けるのはまずい。日系企業って、そこから変えていかなきゃだめなんじゃないかな。

さっき「トップが変わらないといけない」という話があって、うち(富士通)のトップが時田さんという方に変わったんですね。その際にメッセージを出したのですが、「根底から富士通を変えていく」という言い方をしているんですよね。これは、ものすごく重要なことだと思っています。

トップがそこまで腹をくくらないと、会社って変わらないんですよ。だから今、どれだけ変わっていくのか、半年、1年後どうなっているのか、個人的にはものすごく期待をしています。

今日もオフィスに行く際は、私服でした。ドレスコードフリーというのを最近始めたんです。それってたぶん、きっかけの1つなんですよね。「スーツを着ていないと仕事していない」と思っている日本企業って非常に多いんですよ。そのこだわりを持っている以上、何も変わらないじゃないですか。

スーツを着て出社することが目的になっている

:はっきり言っちゃうと、「スーツを着ているとちゃんとしている」とか言うじゃないですか。みなさん、スーツの着方を知らないですからね。

藤田:確かに。着ればいいというものではない。

:(上着のポケットを指して)このフラップ、何のためについているか知ってる人、います?

(会場挙手)

:ぜひ、正解を。

参加者:雨に濡れないように。

:ポケットから出すのと入れるのと、どっちが正式だと思います?

参加者:出すのが正式。

:室内では中に入れるのが正式。外で出すためのものなので、中では入れるのが正式なんです。これはおっしゃるとおりで、なにかが入らないようにしているものなので、外用なんです。だから室内に入ったらこっちに入れるのが正式という、1つの考え方なんです。

そういう小ネタがあるわけですよ。

藤田:小ネタが。

:何をもって正式にスーツを着ているのか。ちなみにスーツを着ている間、座っているときは(ボタンを)外すのが正式。立ったら止めるのが正式とか、色合わせとか細かくあって、そこまでは知らないけどね。でも安い紳士服フェアの吊しのスーツを着てればいいと思ってるんですね。

藤田:そういうことじゃないと。

:そういうことじゃない。

松本:スーツを着て、会社に行ってればいいという考え方はありますね。

(会場笑)

:行くことを仕事にしちゃっている人ね。

松本:そう、だから9時から17時に事務所にいることが仕事なんだ。そのために給料が払われているんだと思っている。

:すごいですよね。それでお金がもらえるんだったら座敷わらしですよ。

思考停止を正当化するマインドから抜け出そう

藤田:倉貫さんは、お話を聞いている感じだと外資とか日系とかそんなのは……。

:超越してますよね。

藤田:超越しているという印象です。自分の中で線引きはあったりします?

倉貫義人氏(以下、倉貫):そうですね。今日「日系VS外資系」というテーマで、日系にくくられていて非常に不本意です。

(会場笑)

藤田:異次元だなと思っていますね。

西舘:申し訳ありません(笑)。

倉貫:さっきおっしゃったとおり、「外資だから」「日系だから」といってひとくくりにするのもそう。そもそもこのイベントのテーマを覆すようなことを言ってしまうんですけれども、外資とか日系とか、ステレオタイプでくくることに何の意味があるのかな、と。

藤田:そこがわかったということですね。

倉貫:うん。そうだし、あらゆる会社が一つひとつが違うんだということですよね。いろんな会社さんのサポーター支援とかをさせていただくことが多いんです。そうするとトップが違えば社長が違うし、カルチャーも違う。それらをひとくくりにして話すことはお話のネタとしては楽しいんだけど、「何の解決になるんだ?」と思ったなという話ですね。

:ただ、そのくくられていることに安心している人数のほうが、圧倒的にメジャーという問題はあります。「うちの会社はこうだから」と言って、思考停止している自分を正当化するというマインドセットは変えていかなきゃいけない。ここに参加していらっしゃる方の中には、そういう方はいないと思うんですけどね。

倉貫:そうですね。途中で「もう会社を辞めたらいいんだ」と僕は言ったんですけれども、本当に会社を辞めるかどうかというのはまた別の話。(澤氏を見て)これだけ自由にしている人もいたりします。

(一同笑)

僕がここに来ているみなさんを見て思うのは、大事なのは会社にいるとかいないとかじゃなくて、主体性を持っているかどうかだなと。自分の生き方・働き方に対して、「台風どうしましょうか?」と聞くんじゃなくて自分で考える。

別に会社にいようが外にいようが独立しようが、まず主体性を自分で持つことが先だなと思っています。それを持たずに「会社を辞めましょう」と言って辞めたら、本当に危ない。

(一同笑)

さきに主体性を持つというのが、第一歩としては大事なんじゃないかなと思います。

人生のハンドルは自分で握らないと意味がない

:自分の頭で考えるということですよね。与えられた時間、自分で確保した時間でどれだけ価値が出せるかというのが説明可能な状態は、絶対条件ですね。

安達:自分の人生のハンドルは自分で握っていたくないですか? 自分の人生なのに、(自分は)助手席に乗って会社がハンドルを握っているという状態が、僕は怖いんですよ。

藤田:いい例えですね。それ怖いですね。

松本:怖いけど日本の人たちって、意外と安心してるんですよね。

:そう。死なないと思ってるんですよ。

藤田:大きいバスに乗ってると安心というのは、感覚としてはあるかもしれないですよね。

松本:事故ったら他人のせいにするんですよね。

:ある。ある。

倉貫:他人のせいにしても、結局つらいのは自分。

(会場笑)

藤田:ただの慰めにしかならないという。

松本:そう。そう。自分の人生じゃないですか。やっぱり自分の人生って自分で選ばないと意味がないですよね。

日系・外資系、どこで勤めるかというのもあるかもしれない。でもそれこそ自分で選んだ会社で、自分が選んだことをやっていくなら、やっぱり一番重要になってくるんじゃないですか。

西舘:最近すごく気になっている会社があって。タニタの社員さんが、個人事業主になられたんです(注:株式会社タニタは、2017年に社員の雇用契約をやめて業務委託契約に切り替える制度を導入した)。

僕も個人事業主としてちゃんと自立できたけれど、最初は仕事があるか不安でした。だから、「そのままうちの仕事を続けていいよ」と、ああいうタニタみたいな制度を1つのロールモデルとして、他の会社ももっとやっていけばいいんじゃないかなと思う。

:こないだランサーズさんのイベントで登壇したとき、僕の直後がタニタさんで、あの話はすごくおもしろかったですよ。まだ制度を使えるのは一部の社員の方だけらしいけど、すごくうまく回っているという話をしていて、これをどんどん浸透させたいという話をしていた。すごくいろんな質問を受けていましたよ。

アンテナが鈍い人はそもそもイベントに来ない

藤田:そろそろ時間になるので、最後に四方に、そもそも日系対外資みたいなところから始まって、1時間半ぐらい話して、今どういうところに至ったかと。

(一同笑)

:とりあえず、あんまり参考にならない組み合わせの4人だったなと。

(会場笑)

これは半分冗談です。これによってマインドを変えていかなきゃいけない人たちというのは、別のところにおそらくはいるんでしょうと。そういった人たちはアンテナ感度がめっちゃ鈍いので、絶対こういうイベントに来ないんですよ。

知ることもないし、知る必要もないということで安心しちゃってる。さっき言った、乗っているバスは事故らないというマインドセットになってる人たちなんです。聞く必要がないと思ってる人たちなんだけど、おそらくそういった人たちは、5年10年で本当に居場所がなくなってくると思ってる。

僕はオーバー(誇張)ではなく、50パーセントぐらいの日本企業は中国企業に買収されるだろうと思っているんですよね。激しい競争に突然さらされたりすると、そのときにようやくもしかしたら気づいてくれるかもしれないんですけど、その前に気づいてくれる人が増えるといいな、なんて。僕は本当に好き勝手に生きさせてもらっているんでね。

これは真似してくれる人がいるといいなと思っています。髪を伸ばすところからでもかまわないです。

(会場笑)

松本:形から入ってもかまわないということですね。

:形から入ってもかまわない。そういった人たちが増えるといいですね。

藤田:ありがとうございます。

働き方・会社に対する先入観を自覚しよう

西舘:それでは、安達さん。

安達:実はこのイベント、「やりましょう」という最初の企画段階で、私も一員として入っていたんです。このタイトルを「日系VS外資」と決めたときから、オチは見えていた。この4人に、日系とか外資系とかは関係ないというオチ。

(一同笑)

藤田:読み通り。

安達:読み通りです。今回こういう企画に携わったのは、僕ははじめてです。やっぱりこういうイベントって、まず澤さんがおっしゃったように、参加しない人、足を運ばない人がたくさんいる。

ここに参加するというだけで、ものすごく楽しいんですけど、企画する側に入るともっともっと楽しいなと思えちゃって。今日は最高に楽しい時間だったなと思いました。ありがとうございました。

西舘:ぜひまた一緒にやりましょう。

安達:ぜひ、ぜひ。

西舘:では、松本さんです。

松本:私も最初の企画メンバーの1人でもあって、実は日系・外資系の登壇者って2人の予定で話してたんですよね。「私は日系だし、安達さんは外資系だし」って。先ほどの話のとおり、私もオチは見えていると思っていた。

ただ、このタイトルをつけると、ものすごく興味のある人たちがいっぱいいるんじゃないかなと思ったんですよね。今日集まってくれた方々がこれだけいたというのは、やっぱりこのタイトルが成功だったなと個人的には思っています。

なぜこう思っているかというと、働き方とか会社に対して、やっぱりみなさん先入観があるんですよ。そこが、先入観だけで、実は内情は違うんだよということを今日は理解してもらえたらいいなと思ったので、実はこのタイトルをつけたんです。

だから結論的にこの落としどころというのは、私は既定路線だと思っていましたし、また、今日聞いてもらった人たちが「あ、やっぱりそうなんだ」と思ってくれればいいなと正直思っていました。

西舘:ありがとうございました。

人を外から根本的に変えることは難しい

西舘:倉貫さん、お願いします。

倉貫:さっき話したとおり、日系・外資というくくりは意味がないなということです。

(会場笑)

僕の基本的なポリシーとして、なかなか人は変わらないなと思っています。人の根っこを外から変えるというのはなかなか難しい。登壇させていただいて、たぶんこれだけ言ったとしても変わらない。

もし本当に人を変えるんだったら、高級な壺とかを売って変える。そういうことはできないので、せめて本(『ザッソウ 結果を出すチームの習慣 ホウレンソウに代わる「雑談+相談」』)だけは買ってもらえればいいなと思っています。

(会場笑)

西舘:あちらで売っております。

ザッソウ 結果を出すチームの習慣 ホウレンソウに代わる「雑談+相談」

倉貫:大事なことは、人は変えられないんだけど、変わるきっかけは作れるかなと思っています。これだけ自由に働いている人たちを見ていると、できそうだなという気がしてくるじゃないですか。「もしかしたら自分もできるかも」と思ってもらえたら、それが変わるきっかけになるのかなと思っています。

今日は何かしら有意義な会になっていたらと思っています。ありがとうございます。

(会場拍手)

藤田:ありがとうございました。

西舘:では、トークセッションは以上になります。今登壇者のみなさまが言ったとおり、ここからだと思います。ぜひこれからも、この6人が出るようなイベントとか、ここでつながった人が行っているようなイベントにぜひ足を運んでみてください。身近にいる人たち1人、2人を常に拉致していくみたいな感じで。

藤田:拉致(笑)。

西舘:草の根的にやっていくと変わっていくと思うので、ぜひここにいるメンバーとつながって、今後もここから変えていくことができればいいかなと思います。本日はお越しいただき、本当にありがとうございました。

(会場拍手)

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