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2019年卒新卒者の入社後追跡調査(全1記事)

2020.05.12

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「入社早々に転職意思を持つ新卒社員」の分かれ道は就職活動 2019年卒新卒者の入社後追跡調査

提供:全国求人情報協会

昨今は働き方改革や雇用制度改革などによって、個人と組織の関係やキャリア構築のあり方が大きく変化しています。このような中、公益社団法人全国求人情報協会が、2019年卒新卒者を対象に、入社時および入社後約半年の就業意識について調査・発表しました。新卒者が入社時点でどのような就業意識を持ち、それが入社後にどう変化しているのか。そして、企業において新入社員の入社後の定着・活躍を図る重要なポイントは何か、大学が学生の就職支援に果たすべき役割は何かを解説します。

2019年卒学生の入社後約半年間の意識変化を追う

佐藤博樹氏:本日は「2019年卒新卒者の入社後追跡調査」についてお話しします。今回の調査結果報告のトピックスは3つです。順に解説していきます。

まずは調査の構造を説明します。今回は、同じ調査対象者に2回の調査を実施しています。

1回目の調査は2019年の3月に実施しています。2019年3月に卒業し、4月以降に新卒入社予定であった大学生・大学院生に、就職活動の状況を調査しています。

2回目の調査は2020年12月から2020年1月に実施しています。1回目の調査に回答してくれた人たちに、入社後の仕事経験を尋ねています。調査発表資料には「入社後約半年」と書いてありますが、正確には、4月入社の方なら約8ヶ月経過した時点で回答してもらっています。

2回目の調査では、これは回想データになりますが、入社時点を振り返ってもらいました。入社時点に、就職した会社に「しばらく勤めよう」と思っていたのか、あるいは「転職も考えようかな」と思っていたのかを聞いています。そのうえで、入社後約半年たった2回目の調査の時点で、その会社に「しばらく勤めよう」と思っているのか、「転職も考えようかな」と思っているのか、またあるいはすでに離職しているのかを聞いています。

入社時・入社後約半年の就業意向/転職意向の変化を示したのがこの図です。なお、入社後約半年に転職した人とすでに離職した人については、まとめて記載しています。

入社時にその企業に就業意向を持っていた人は73.6パーセントでした。およそ4分の3の新卒入社者が、入社時点は「しばらく勤めよう」と考えていたわけです。しかし、入社時に就業意向を持っていた人たちを100パーセントとしたとき、その23.2パーセントの人が入社後に「転職意向」に変化しています。

入社時点で4人に1人は「転職しようかな」と考えている

入社時に「転職も考えようかな」と考えていた人は26.4パーセントでした。ご存知の方も多いと思いますが、入社して3年の間に離職する人は、大卒者では約3割。“3年3割”のように言われることもあります。これは最近のことではなく、約20年前から3年で3割ぐらいの方が離職している状況が続いています。

データ(公益社団法人全国求人情報協会, 2018, 「若者にとって望ましい初期キャリアとは〜調査結果からみる“3年3割”の実情〜」)を見ると、入社して1年目、2年目、3年目に離職している人を累積して、3年目までに約3割の大卒就職者が離職していることが分かります。入社1年目の離職率は1割ぐらいです。入社時におよそ4分の1の人が転職意向を持っている……入社後に就業志向のある人の中で転職志向に変わった人も含めると、今回の調査結果は“3年3割”に近い数字です。

入社時の転職意向は入社後もあまり変わらない

ここで、先ほどの図に戻ってみましょう。入社時に転職意向を持っていた人の中で、入社約半年後に就業意向に変化した人はかなり少ないことが分かります。これが最初のトピックです。

入社時に転職意向であった人を100としたとき、8.4パーセントの人しか就業意向に転じていない。回答者数が少ないため、今回はこの8.4パーセントの人たちについては触れませんが……ここで注目していただきたいのは、「入社時に転職意向を持っていた人は、入社後もその意向がほとんど変わらない」ということです。

では、なぜ入社時点で就業意向の人と転職意向の人に分かれるのかというと、今回の調査で、就職活動時の行動や意識が影響している様子が見えてきました。

就業継続の意思を左右する就職活動

入社時に就業志向を持っていた人と転職志向を持っていた人に関して、第1回調査で聞いていた就職活動の状況をもとに、就職活動の違いを分析しています。これが2番目のトピックです。

入社時の就業意向と転職意向を分ける要因をみると、まず、自己分析や企業研究、職種研究といった行動をしっかりやれているかどうかです。入社時に就業意向を持っていた人は、企業説明会やインターンシップへの参加、大学の相談サービスの利用に力を入れたと答えている割合が高い。それは自分自身のことを分析したり、企業や職種について研究したりしていたからであったことが見て取れます。

それらの行動によって、勤務先についてさまざまな情報が得られていたことがわかります。逆に言うと、入社時点で転職意向のある人は就業意向が継続している方と比べて、そういうことをやれていないということですね。

転機となるのは「納得のいく就職活動ができたかどうか」

もう一つ、就職先に納得しているかどうかも、入社時に就業意向を持っていたか、転職意向持っていたかに影響しています。やはり就職先に納得して入社していると就職意向が高くなり、他方、就職先に納得していないと転職意向が高くなります。

では、就職先の納得度は何によって得られるのか。これはより精緻な要因分析が必要ですが、自分の就職活動に納得できているか否かが重要そうです。

自分がきっちり就職活動をして、入社後のイメージを明確にして、「もう一度就職活動をするとして、今の就職予定先と同じ企業(団体)に就職したい」と思えるくらいに、就職先に納得できているかどうかということが大事です。

「勤め続けたい」という思いを持ち続けられる条件

入社時に「しばらく勤めよう」思っていた人の中には、入社後に転職意向に変わってしまう人がいます。もう一度先ほどの図に戻ってみましょう。入社時は就業意向であった人を100とすると、そのうち23.2パーセントは、入社後約半年の時点では転職意向に変わっていました。入社時点で就業意向のある人がその後も就業志向を持続する要因が大事になります。これが3番目のトピックです。

入社時に就職意向のある人が、その後も転職意向を持ち続ける要因としてはまず、仕事以外のことも相談できる関係性があったかどうかです。2回目の調査で、指導担当社員の有無、その指導担当の社員にどんな相談をしているかを聞いています。

入社時に就業意向であった人のうち、入社後も就業意向を持ち続けている人・転職意向に変わった人どちらも、指導担当の社員がいた割合は変わりません。重要なことは、指導担当とどんな関係にあったかということです。就業意向を持ち続けている人は、担当する仕事以外のことも含めて相談できたという人が多くなります。

調査では「自分から相談していたこと」について聞いています。仕事上の上司・先輩ということだけでなく、個人的なことも自分から相談できるような人間関係を持てる環境にあった人は、就業意向を持ち続けているということです。転職意向に転じた人では、自分から相談することはなかったという割合が高くなっています。

もう1つ見えたのは、配属希望です。入社前・入社後に、新入社員の希望を伝える機会があった人の方が、就業意向を持ち続けている傾向があります。

ここで注意してほしいのは、配属希望を伝える機会の有無であって、希望通りの配属だったか否かとは違うという点です。日本では企業・団体等が入社者の配属先を決めることが多いといわれていますが、入社者の希望もしっかり聞きながら、あるいは入社者と対話をしながら配属先を決めていくことが、入社後に就業意向を持ち続けてもらえるか否かに影響していると言えそうです。

インターンシップが就業意向にあたえる影響についてですが、まだ短期のインターンシップが多いものの、インターンシップの参加が入社の決め手になっている……インターンシップを通じて「この会社に勤めよう」と思った人は、就業志向を持ち続けています。

新卒・若手社員の定着につながる企業側の情報提供

最後に、「企業・団体等としてどのような求人情報を発信すべきか」ということがコラムに書かれています。2番目のトピックで見たように、新卒入社者が就職活動中に自己理解・企業研究・職種研究などに力を入れ、勤務先についてさまざまな情報が得られると、入社時に就業意向を持つようになります。就職活動中の学生が企業研究・職種研究に取り組み、自社の理解を深めてもらうためには、企業の情報発信が大事です。

また、入社後に転職意向に変化した人は、将来の給与の見通しや職場の人間関係・雰囲気等について就職活動中にもっと「知っておけば良かった」と思っている人が多い。入社後に経験する実態と入社前の想定・期待が異なる”リアリティショック”が、入社者の定着・活躍を妨げないように、選考中や入社前に、自社についてきめ細かい情報開示を提供することが重要です。

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