経営層がグローバル化のボトルネックになっている

坪内俊一氏:(人材の量と質のうちの)質についてです。「ローカル優秀人材をグローバルタレントへ」と書きました。いわゆる高度なスキルを持っているような質の高い人材を迎え入れていく中で、考えるべきことはたくさんあると思います。

ここに挙げているのは一例です。例えば、先ほど日経の記事を出しましたけれども、給与テーブルをベンチマークする時に、横目で見なきゃいけないのはもう日本企業ではなくて。それはたぶんシリコンバレーの会社であり、深センの会社であり、バンガロールの会社でもあり。ちょっとITに寄っているところもありますが、要はグローバルで働ける人はグローバル企業に働き口があるので、そういう会社と競わなければいけないのです。

そして、グローバル標準の評価制度。日本的な年功序列を前提にしたような、もしくは終身雇用を前提にしたようなものは変わってきていると思いますが、よりドラスティックにそこを変えていかなければならない。

もしくはキャリアパスを考えた時に、日本的な「下積みが大事だ」という発想だけだと、たぶん来てくれないかなと思います。このあたりをクリアしなくてはいけないというのは想像に難くないかと思います。

この辺の仕組みを変えていく上で何が一番のボトルネックかというと、私はマネジメントや人事が本気を出すか出さないかというところだろうと思っています。まさにHENNGE(ヘンゲ)さんの事例であったとおり、社長が「もう英語をやる」と、「日本語はしゃべりません」と言うと変わったわけですよね。

それは、そんなに難しくないとは申し上げないですけれども、トップダウンで進めていけばそれぐらい変わっていく。逆に言うと、それをボトムアップでやろうとするということは極めて難しいだろうなと。

なので、ここにいらっしゃる方、もしくはみなさんの上長であったり、社長以下経営陣ですね。こういった方々がどれくらい本気になるのか。逆に言うと、どれくらい危機的な状況なのかをご認識いただくしかないと思っています。

優秀な日本人社員も「グローバル」と言われると尻込み

もう1つの切り口として、今も日本人の中で優秀な方々がいらっしゃると思います。そういった方も、英語はちょっと……と思ってしまったり、グローバルと言われると尻込みしてしまう。

そういう方を、いかに外国人人材と働ける状態にし、グローバルにビジネスを回していくか、新たなものを作っていくか。これをできるようにすることが、大事かなと思います。

この三角形は、我々がグローバルに活躍できる人材のスキルを単純化して表しています。大きく分けると三層ぐらいなのかなと。1つはやはり英会話、英語コミュニケーション能力ですね。もちろん英語を話すだけじゃなくて、読み書きも重要だと思います。

ただ一方で、多くの日本人の方にとって大きく欠けているのは、英語で会話をするところ。そこがボトルネックになるかなと思います。そこを底上げすること。もう1つは、本当にグローバルに活躍することを考えた時に、日本人のやり方を英語に訳しただけでは、やっぱりうまくいかない。

シンガポールの会社と交渉しなきゃいけない。中国の子会社の社員にフィードバックしなきゃいけない。アメリカの本社にいるボスにレポーティングしなきゃいけない。そういう状況を考えた時に、日本語でやっているものをそのまま(英語で)やっても、たぶんうまくいかない。

そういう意味では、英語プラスアルファでビジネスのやり方をグローバル標準として、英語で運用できるようにしていかなければいけない、というところを2番目に掲げています。

一番上に掲げている、グローバルな経営や事業運営に必要な能力はもちろん必要になってくると思うんですが、すごく限られた方だと思いますし、下の2つがまずできないと話にならない領域なのかなと感じています。

英語研修の成果とモノサシが合っていない企業が約半数

英会話力を向上させるところに関しては、我々も10年以上このビジネスをやっているなかで、学習効率×学習量の2つが非常に大事だと感じています。いかに限られた時間の中で成果を生むのかということと、いかに継続的に量を担保するのか。

まずその学習効率のところを考えた時に、アンケートから浮かび上がってきたのが、ゴールがうまく設定されていないこと。

「英語研修の成果って何ですか?」と聞くと、当然80パーセントくらいの方に「英会話力が向上することだ」とお答えいただきました。

じゃあ「それをどういう指標で測っているんですか?」と聞くと、TOEICが多い。その中でも、「スピーキング(の成果)が測れないのが課題です」とおっしゃっていただいている方が、50パーセントくらいいらっしゃいます。

では「研修の課題は何ですか?」と聞くと、ゴール設定がない。(ゴールは)英語で会話ができるようになることだと言っているのに、英語が話せる指標を設定していない。だから、研修のゴールが設定できない。

これはロジカルにすごく当たり前だなと思うんですけれども、逆に言うと、目指す成果とモノサシがいかに合っていないのかが見えるかなと思います。

TOEICだけでは実務で必要な英会話力が測れない

英会話力の向上を成果としていて、3分の2ぐらいの会社さんで英語力を測る指標を導入いただいています。さきほどHENNGEさんのほうでTOEICという話がありました。TOEICは私、まったく否定もしないですし、非常に重要な能力を測っていると思います。

一方で、それだけでコミュニケーション力が測れるかというと、そうではないかなと思います。今90パーセントぐらいの企業でTOEICを導入いただいているので、少し片手落ち感があるんじゃないかなと。

そういう中で、やはりスピーキング能力が測れない。結局、実務で使う能力を測ることができていないところが課題だとおっしゃられている。結果として、英語研修のゴール設定がない・できないことが一番大きな悩みだとおっしゃられています。

これは少しおもしろいんですけれども、縦軸に先ほどの海外売上高比率を並べています。上が10パーセント未満で、下が50パーセント以上。

下に行くほど海外売上高比率の高い会社さんです。左側が英語能力指標を導入している会社、右側が取引先や子会社・親会社から「英会話力の不足に関して指摘がある」とお答えいただいている会社さんで、左も右も下に行くほど見事に割合が高い。

すなわち、多くの会社が指標は導入してるんだけれども、海外売上高比率が高い会社さんほど「英会話力が足りていませんよ」という指摘が多く、指標の導入が必ずしも課題解決につながっていないと言えるのかなと思っています。

ここに対する処方箋はシンプルで、結局モノサシがあっていないものは測れないということなので、モノサシをちゃんと導入しましょうと。私が今申し上げたのは英会話力の例ですけれども、これに限らないと思っています。

いわゆる人材開発の中で、「何が求めたい成果なのか、人材なのか」という定義なしに施策を打っても成果が測れないので、やっていっても意味があるのかないのかわからない状況に陥ってしまう。そういう意味では、人材開発全体に言える話かなと思っています。

英語研修へのモチベーションをあげることが重要

もう1つ、学習の量という点だと、「英会話力向上に何が必要だとお考えですか?」という質問に対して、「本人の学習意欲、要はやる気です」とお答えいただきました。

英語研修の悩みの1番目は、英語研修のゴール設定がないことだったんですが、2番目は「参加する人に意欲がない」ということですね。

これもなんだか、すごく大事なことができていないということをおっしゃられていて。そこは非常に課題感があるなと。もしくは、我々のお客様ですので、まだ我々の至らないところが多いとすごく反省する部分ではあります。

この課題に対して、あまりシンプルなソリューションはないんですが、定期的にお客様の受講状況を把握し、それを受講者にフィードバックし、足りないんだったらお尻を叩く、というのがアンケートから見えたことです。

HENNGEさんのお話の中でありましたけれども、自主性に任せるのはやっぱり難しいところがあって。みなさんもお忙しい中で、トレーニングのところに、自主性だけではうまくいかないのが現状なのかなと思います。

英語学習の量と効率を担保する、レアジョブの強み

ここまで申し上げた道筋をまとめます。量という点では、外国人が働ける環境、言語や文化の壁をいかに打ち破っていくのか。それから質というところでは、まずトップが本気にならないと始まらないでしょうと。加えて今いる人材をグローバルタレントにする。言語は当然で、さらにグローバルに活躍するための素養が大事なんだろうなと考えています。

言いっぱなしはよくないので、「じゃあレアジョブとしてどうするんですか」という話ですが、今申し上げた言語のところ、それからグローバルに活躍するための土台とスキル向上をご支援させていただきたいなと思っています。

今この瞬間は、英会話能力の向上に向けたサービスだけを提供していますが、さらにグローバルに活躍するための素養(を身につけるための事業を展開していきます)。冒頭に申し上げたとおり、この事業を立ち上げるのは私の責任なので、私がいかに早く立ち上げられるかだと思っています。

先ほど申し上げた学習の効率と量というところでいくと、「スマートメソッド®コース」が最大の武器かなと思っています。スピーキングテストできちんとアセスメントする。成果を測るモノサシをきちんとセットする。かつ個別の個人のレベルに合わせて最適化したレッスンを提供する。

日本人の専属コンサルタントが伴走することで、モチベーションを保つ。愚痴を聞いてあげる。ガス抜きする。鼓舞する。こういったことをやっていくのがスマートメソッド®コースの特徴でございます。

加えて、今後も英会話能力の向上に向けてサービスを提供していきます。英語学習の中でやろうとしてることを少し頭出しさせていただくと、1つはこのCEFR(外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠)に基づいた、スピーキングテスト。

(このテスト自体は)今もあるんですけども、自動採点できるようなものを開発しています。詳細は申し上げられないんですが、このモノサシをもっと気軽にみなさんに使っていただけるようになることを目指しています。

返金保証ではなく、成果保証を掲げる「スマートメソッド®」

もう1つのモチベーションのところ。モチベーションを上げるのは、極めて掴みにくいところで難しいのですが、ここはやはり我々EdTechの企業として、「テクノロジーをどう使えば、これが実現できるんだろうか」というところを考えながら実装しようとしています。

スマートメソッド®コースを受講いただくと、約4ヶ月間でレアジョブのスピーキングレベルが1上がることを保証しております。

レアジョブレベルの4から7、CEFRのA2.1からB1.2が本サービスの対象レベルになります。HENNGEの汾陽さんがおっしゃっていたとおり、ある程度英語の基礎がある方でないとなかなか難しいところがあって。まさにもうちょっと文法の基礎からやりましょうという方は、スピーキングに行く前に、まず基礎を固めるところが大事です。

2018年の10月からサービスを提供させていただいていますけども、このプログラムを完走して、成果が上がらなかった方は1人もいません。16週間を完走していただいた方は全員、レベルが1以上上がっていると。これは本当に我々もすごく誇りに思っていますし、すごくしんどいんですけど、やっていただければ必ず上がるものになっています。

スマートメソッド®コースがご好評をいただいてるんですけども、その理由の1つは成果保証というところです。みなさんも他社さんの短期集中型のサービスをご存じかなと思います。我々は成果が上がることを保証しています。他社さんは費用の返金を保証されていたりしますけれども、我々は費用をいただいた以上、絶対にレベルを上げるというところを保証しています。

これが1つ特徴的なところです。あとは2007年からこのビジネスをやっている中で、4,000万回(以上)のレッスンを提供しています。我々自身の中にいかに英会話力を上げるのかというノウハウが溜まっていますので、これを使えるのも、オンライン英会話の草分け的存在である我々にしかできないことかなと。

英語研修を通して、自主的に学習を続ける意欲を高める

また、コストをかけて英語を学ぶ優秀な方ほどお忙しいと思うので、1時間かけて教室へ通学するということと比べると、スマートメソッド®コースはオンライン完結型ですので、時間を無駄にしないで勉強できるところも極めて良いポイントかなと思っています。

英会話力向上への投資としては、ROI(費用対効果)が高いサービスだと思っています。(スマートメソッド®コースの税別費用は)45万円ですけれども、英会話能力がある方は(そうでない方と比べて)年収が100万円、200万円上がります。仮に外部から人を採用することを考えると、採用エージェントに年収の3割を渡すことになり、30万円、60万円のフィーがかかる。

加えて、その人が立ち上がるまで、当然3ヶ月、半年の期間がかかる。その間の機会損失を考えた時に、今いる社員に45万円を投資することが、いかに安い投資かはご理解いただけるかなと思います。さらにスマートメソッド®コースを受講した後に、HENNGEの汾陽さんもおっしゃられたとおり、楽しさや達成感がある。社会人になってこれだけの学びをするのはなかなかない機会です。

自分の能力が上がったことを実感すると、人って不思議なもので、その能力をもっと高めていこうという欲が出てくる。「45万円で4ヶ月の短期間だけ勉強したらおしまいで、またズルズル下がっていくんじゃないの?」というお声をいただくのですが、そうならない。

みなさんの声を聞く限り、そこで上がった英語の能力を維持しよう、もしくはもっと上げていこうという、ある種自走するメンタリティになっていく。この4ヶ月の投資としては、そういう学習意欲のある人材にできるところもポイントだと思っています。

英会話のみならず、グローバルで活躍するためのスキル向上を支援

最後に、グローバルに活躍するためのスキル向上。英会話の次というところで、私が今実行に移そうとしているところです。

トレーニングには、インプットとアウトプットの両方があると思うんですが、英会話も文法の学習や語彙を増やす、例文を暗唱する。こういうインプットの学習は、中学・高校を含めて、これまでみなさんもやられてきたところです。社会人になられてからもやられていると思います。

一方で、「英会話は発話しないと上手くならないよね」という話があるんですが、これはグローバルに活躍するためのスキルも同じかなと思っています。いわゆる異文化理解ワークショップや多様性理解のセミナー、海外での短期就労も無駄じゃないと思うんですが、やっぱりこれはインプットでしかないだろうなと思っています。

逆に言うと、本当にグローバルに働く実務の場面で、どういう英語を使うのかを訓練・トレーニングできない限り、この能力って絶対上がらないと思っています。ここも詳細は申し上げられないですけれども、この右下のところを、我々は次のサービスとしてご提供していきたいなと考えています。

今日もいらしていただいている、パソナグループのキャプランさんと一緒にやらせていただきます。キャプランさんはグローバルリーダーの育成という文脈も含めて、法人向けの研修をやっていただいている会社さんです。

インプットとアウトプットを組み合わせていかに新しいサービスにしていくのか、というところを一緒にやらせていただいています。

最後のページです。最初に申し上げた3つですね。人材が足りない。量・質、両面でグローバルという文脈で、非常に必要になってくるというところが、2020年代の経営アジェンダだと。その中で人事のみなさんはおそらく会社の最重要機能の1つだと思いますし、ローカル人材をいかにグローバル化するかがポイントになってきています。

レアジョブとしてはそこをお手伝いしていきたいと考えております。長い間、ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)