「武道館でコンサートをやるので、午後半休をください」

山口周氏(以下、山口):はい、みなさんこんにちは。

会場:こんにちは。

山口:今のお二人(注:(株)エンファクトリー 代表取締役社長 CEO 加藤健太氏からの事例紹介、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事 平田麻莉氏からの調査報告)のお話を聞いていても、やっぱり時代・世の中というのは大きく変わってきているなという気がしますね。僕はもともと、今非常に悪名高い、電通という会社でキャリアをスタートしています。

(会場笑)

(電通は)人事の世界の人からすると「外れ値」というか特殊なサンプルなんですけれども、ある意味ではパラレルキャリアの巣窟みたいなところがあります。例えば『美味しんぼ』という漫画の作者の雁屋哲さんは、ずっと電通の社員で、ちょうど僕が入ったときが辞められた直後だったんですよ。

あとは、新井満さん。この人は芥川賞作家(注:1988年『尋ね人の時間』)になりました。あとは当時、フィギュアスケートに非常に詳しい方(注:五十嵐文男氏)が電通社員にいらっしゃって、フィギュアスケートの番組に解説者として出演してましたね。

あとは、小椋佳さんってみなさん覚えていますかね? (サラリーマンのかたわら)歌手でして、「武道館でコンサートをやるので、午後半休をください」って言ったんです(笑)。

(会場笑)

あの人は第一勧銀(注:第一勧業銀行)のサラリーマンですからね。しかも、役員になられましたからね。会社できっちり成果を出して、大ヒットのフォークの歌手でもあって、上司に対して「今日は武道館でコンサートをやるので、午後半休をください」って言って申請を出した。なかなかシュールな図なんですけれどもね(笑)。

僕からすると、やっとなんかそういうのを、(一部の特別な人だけでなく)みんなでできるようになってきて、とても良い世の中になってきたなと思います。

会社は本当に必要なものなのか?

逆に言うと僕は、「会社って本当に必要あるのか?」という気がするんですね。みんなは会社があって、会社に勤めるのが当たり前だと思っていますけど、会社に勤めるのがライフスタイルで当たり前になったのは、この100年くらいです。もうごくごく最近のこと。

2万年くらいずっと、人類というのは会社に勤めることなく、生きてきたわけですよ。100年って、2万年のうちでは0.5パーセントぐらいでしかないですよね。短いものってやっぱりこの先も短いので、たぶん会社もすぐなくなっちゃうんだろうなって思っているんです。

今日は、ワーキングスタイルでいろいろなところがすごく変わってきているって話を用意しています。10個しっかりやるとたぶん時間がなくなっちゃうので、メリハリをつけてやっていきます。おもしろいやつだけピックアップしていけばいいかなって思っています。

(スライドを指しながら)1つ目がこれですね。日本の会社って、歳を取っている人のほうが、なんとなく価値が高いと思っているわけです。端的に言うと、歳を取っている人の平均年給与が高いんですね。「これって、なんでだろう?」。いまだに僕はよくわからないです。会社という存在もよくわからないです。たぶん「会社って何?」って言われて定義できる人は、この世に1人もいないと思うんです。

「会社の存在ってなんだろう?」っていまだによくわからないし、「歳を取っている人のほうが高い給料をもらっているのって、なんでなんだ?」って、これがよくわかんないです。

(スライドを切り替えながら)この数字。みなさん、これは何だか、わかりますか? ……手を挙げなくてもいいですから、思いついた方はその場でぽろっと言ってください。

GAFAの創業者たちが起業したときの平均年齢は24歳

参加者1:創業者の、創業したときの年齢。

山口:そうそう。それぞれの会社の創業者が、会社を創業した時の年齢なんですね。(Facebookの)マーク・ザッカーバーグは19歳。(Googleの)ラリー・ペイジは25歳。(Appleの)スティーブ・ジョブズが21歳。(Amazonの)ジェフ・ベゾスは31歳。平均年齢は24歳ですね。

今、地球を牛耳っているGAFAというプラットフォーム企業。この地球を牛耳っている会社を作ったのが、(創業当時平均年齢)24歳の人たち。牛耳られる側に回っている日本の多くの企業(の経営者層)というのが、50代~60代の人たち。(価値が高いと思われている年を取っている人たちが)もう振り回されているわけですね(笑)。

それで僕が企業経営者の所からに相談に応じて会いに行くと、「やっぱり人材育成が課題だ」「もう避けて通れない」「若手の育成が経営上の重大な課題だ」と言われるわけですよ。「なるほどですね。失礼ながら、御社の時価総額は、ここ20年でどういうふうに推移しているんですか?」と聞くと、「うーん、残念ながらほとんど伸びていない。むしろちょっと目減りしている」と言うんです。

「まさにみなさんが30代の半ばから50代の半ば、リーダーとして現場の舵取りをやっていたその20年の間に、この会社の価値・企業評価はまったく上がってない。そういうパフォーマンスしかあげられなかったみなさんに、入ってきた若手が育成されたとして……」

(会場笑)

「時価総額が伸びる会社ができるんですか? みなさん、できなかったんですよね? みなさんに、教えられるんですよね?」と言うと、大変、不愉快そうな顔をしますね。

(会場笑)

だいたい「この先、この会社とは取引したくないな」と思ったら、そういう質問をして帰ってくるんですけどね。

(会場笑)

日本の大企業の経営層は、会社を成長させられなかった人たち

そういうことなんです。端的に言うと、この国で今、経営陣の人たちというのは、会社を成長させられなかった人たち。経営者失格です。パナソニックの営業利益率はもう、4パーセントですからね。アメリカの会社だったら、こんなのは株主代表訴訟です。役員は即座に全員、取り替えですよ。

そういうまったくパフォーマンスをあげられなかった人たちが、大きな会社の役員とか本部長とかの席に座っているんです。今の世の中で、存在感を表わす会社を見てください。ほとんどみんな、20代の人たちが作っている会社ですよ。ですから、これはもう、諦めたほうが良いんです。

日本では20代はひよっ子、30代で一人立ち、40代で中堅のリーダー、50代で会社を代表するリーダーということなんですけど、この構図はもう完全に崩れ去っています。

価値はもう、年齢フリーです。世代フリーの時代が来たということなんですね。価値を出したほうが偉いということなんです。そういう世の中になっているにも関わらず、「基本的に若い人の価値は低い」という前提の中で構造が出来上がっている環境に、価値を生み出せる若い人たちがいるのであれば、僕は「即座そんなところは出ろ」と言っていますね。

そういう時代が来たということですね。相対的に、年長者の価値が目減りしていく時代だということです。僕は「クソ上司」と言っていますけども、これは別に今に始まった話じゃないんですね。

頭の良さのピークは10代半ばで、年を取ると減っていく

(スライドを指しながら)これは(レイモンド・)キャッテルという心理学者が言った、「結晶性知能」と「流動性知能」の問題です。「流動性知能」のピークはだいたい10代の半ばにきます。ですから利発、才気煥発という頭の話ですね。これは10代のピークに頭の良さが来て、ずっと年齢とともに減ってくるということですね。

「結晶性知能」というのは、バランスシート型の知性です。積み重ねていくということですね。どんどん積み重ねていくわけですけれども、これはいわゆる「大人の知恵」とか、「賢者」というもののイメージに近いですね。

世の中からデータを集めてすごいアイデアを一発で出すというのは「流動性知能」です。一方で、いろいろな知性を積み重ねて「大人の判断」ができるようになるというのが「結晶性知能」です。

さて、この「結晶性知能」の構築に非常に重要なのは、勉強をずっとするということなんですね。良質なインプットをずっと積み重ねて、人間性に対する理解を深めていくということなんですが、今の経営者とかのシニアの人たちに話を聞いてみると、まずほとんど本を読んでいる人っていないですね。

何をやっているかと言うと、もう「同じ仕事を30年間やってきました」ということなんです。「30年の経験があります」ってよく言うんですけど、あれは嘘なんですよ。1年の経験を30年繰り返したというだけなんですね(笑)。

(会場笑)

これはなかなか厳しいなと。

今やIBMもAppleもGoogleも、大学卒業というのを入社試験の項目から外しちゃいましたよね。非常に正しいことだと思います。(スライドを指しながら)だって、これを見てください。「流動性知能」のピークって10代の後半なんですよ? 

その人の一番パフォーマンスが出るピークを買おうと思ったら、大学まで待っているとちょっとなんて言うのかな……お湯を入れて、思わずちょっと忘れて、「6分ぐらい経ったインスタントラーメン」みたいな状態になっているわけです。

3分が一番おいしいんですよ。3分で食べないといけないってなったら、もう高校に入るのを待っていられないですよね? ですから高校・大学で何かをやるんだったらもう、「Googleでプログラミング学んで、うちで1億円を稼げ」とやったほうがいいんですよ。非常に正しい戦略だと思うんです。

アップデートされない「積み重ね」には価値がない時代

そういう世の中になっています。一方で、「結晶性知能」は「積み重ね」が非常に重要ですけど、この積み重ねは世の中が変わらない場合に、価値が発揮できるわけです。世の中が変わらない前提だと、価値がある。つまり30年前の知識が役に立つんです。

僕はもともと20代にずっと電通で広告の仕事やっていましたけれども、例えば広告・マーケティングの僕の知識なんて、今はもうクソの役にも立たないですよ。インターネットのなかった時代ですからね。携帯電話もなかった。

ですから、広告のキャンペーンは「テレビでやって、新聞でやって、雑誌をパラパラ売って、駅前でどーんとやったら売れますよ!」とか言っていた。それがもうアホくさい営業で、「ヨッシャー!」とかって言って、電話で「じゃあ5億」とかやっていたわけですね(笑)。

今はもう、人工知能まで使ったものすごく精密なキャンペーンの設計をやっていますけれども、僕みたいな人間がそれで管理職になって指導できるかって言ったら、まったくできないわけですね。

今日も来ている方がいらっしゃるかと思いますけれども、IT企業からよく受けるご相談があります。プログラミングのエキスパートでずっとやってきて、組織に求められて管理職になった人が、だいたい3年ぐらいで、現場の仕事がよくわからなくなってしまい、マネジメントがうまくいかないという話です。

プログラミングの技術とかコード自体がどんどん進化していくので、管理職になってプログラミングをやらないと、あっという間にもう減価償却しちゃうんですね。現場のエンジニアというのは日々、そのアップデートをやっているわけです。良いコードを書くために、ものすごく努力しているわけです。

そうすると、5年もするとどういうことが起こるのかというと、「あの人はコードも書けねーくせに、俺の評価にBを付けやがった!」みたいな話になるわけですね。これは、(部下からすると)やっぱり「ぜんぜん評価されない」ということです。

年功序列は本当に競争力につながっているのか

僕のアドバイスとしては「『プレイヤーとしても一流、マネージャーとしても一流』って人をマネージャーにしないと、パフォームしませんよ」というのを人事の人に言っています。「やっぱり、そうですよね」って言われて、それでもうおしまいということです(笑)。

ですからどんどん物事が変わってくるとなると、ラーニングをずっと続けなくちゃいけなくて、「1年の経験を20回繰り返しました」という人が威張れない世界がやってきたということです。

価値自由、年齢自由ということになった時の、ヒエラルキーの構造をどう考えるか。今、だいたいみなさんは等級制度を持たれて、等級ごとに役割等級を定めて、バンドをつけてということをやっているんですけれども、本当にそれで年齢が上の人が上の等級になっていて、給料が高いのって、競争力につながっているのかということですね。……というのが2つ目です。