2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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仲川げん氏(以下、仲川):はい。それではぼちぼち参加者の方も巻き込んでの時間になってきたということで。やっぱり最後は出雲さんにいい球を振っていただきました。
ご質問やご意見がある方はまず数だけ票読みしたいので。
(会場挙手)
はい。多すぎですね。20人ぐらいいらっしゃいますので、3人ずつ質問をうかがって、回答して、時間があれば第2ターム、第3タームぐらいでいかせていただきます。では独断と偏見で、前の青い方にお願いします。
質問者1:はい。座ったままで失礼します。ユーグレナさんのミドリムシを愛飲しています。2012期のイケダです。
出雲充氏(以下、出雲):ありがとうございます。
質問者1:私は、ふだん研究開発部門でオープンイノベーションの仕事をしており、その傍らで、弊社の創業の地である秋田の活性化も3年ほどやっています。ようやく今年に入って、やってきたことが実を結びはじめてはいるのですが、ステークホルダーとの関係性の築き方を教えていただきたいです。
とくに石川さんと末松さんにお聞きしたいです。先ほど行政との付き合い方についてお話がありましたが、それ以外で地元の住民の方や地場の会社さんとの付き合いも大事だと思うのですが、そこの関係性の築き方など。
「これをやるぞ」と言って、社内がみんな賛成するとも限らないと思いますが、どうやってうまく巻き込んで実現していったのかをご教授いただければ幸いです。お願いします。
仲川:ありがとうございます。あと、お二人もお願いします。そちらの白いTシャツのお手を上げていただいている方。
質問者2:2017年の英語MBAを習っているソネと申します。2019年の年始に、武雄市図書館に子どもを連れて行きました。あそこはアジアを含めてたくさんの観光客が集まってますし、すごくよかったんですが、話を聞いてみたら、やっぱりあそこは市のパブリックの施設であって、地元の方々は(観光客が集まることを)必ずしも喜んでいないという声もあるようです。
行政はやはりすべてのアグリーをとっていくようなところがあると思うんですが、その上でいかにとがったものを作っていくのか、リードしていくためのポイントがあったかをぜひお聞かせ願えればと思っています。
仲川:それは石川さんにですか?
質問者2:そうですね。ぜひ。
仲川:はい。わかりました。では、もうひと方。後ろの女性、青くてピンクの。みなさんその組み合わせですよね。
(会場笑)
仲川:はい。今うなずいておられる方です。では、そこまでいきましたらみなさん、回答をお願いいたします。
質問者3:オオクボと申します。先ほど逆風に立ち向かう民間企業というお話があったと思いますが、逆風に立ち向かったときに、ともすると吹き飛ばされたり、既存事業への影響も少なからずあると思いますが、そのあたりの乗り越え方について、寺田さんに教えていただければと思います。
仲川:わかりました。はい。では、1問目から。まず1番目におっしゃっていただいた、地域とのリレーションの部分からお願いします。
石川康晴氏(以下、石川):一言で言えば、地域のキーマンを押さえるということだと思いますね。キーマンは地方だと、地域銀行など。岡山だと中国銀行の頭取ですね。ここがだいたい経済同友会の代表幹事になります。あとは、地元のガス会社あたりが商工会議所の会頭になっていきます。
さらに新聞社の会長・社長あたりが、すべての地域の地上波と連携して動いています。メディアと金融機関、地域のインフラ会社の経営者がだいたい地域の団体のトップになっていきますから、このあたりはしっかり根回ししながら、議員に頭を下げながら。あとは世論形成でメディアに露出させながら世論を巻き込んでいくというのが、1つの流れだと思います。はい。
質問者1:ありがとうございます。
仲川:じゃあ、このテーマ(の回答)。はい。
末松弥奈子氏(以下、末松):そうですね。地域は「見ている景色が一緒だ」と実感することが大事だと思っています。最近は組織を超えた集まりなどが増えていると感じますし。そういったところにどんどん参加していくというのが1つ。あと、我々のところでやっぱり思うのが、同窓会。
仲川:同窓会。
末松:同窓会ですね。私自身、大学の同窓会よりは、中高や地域の中での同窓会のネットワークが強いという実感があります。そこはかなりキーになると思います。
仲川:はい。ありがとうございます。そして、図書館の件ですね。
石川:武雄ですね。武雄はチームラボのイベントをやっていますよね。さらにファイブスターの旅館もありますし。そして、市長の肝いりで手がけた図書館がある。そのあとに(市長は)落選していますが(笑)。これは、グローバルにリーチしようと思うのか、地域の便益だけを考えるのかの差だと思ってます。地域の便益だけを考えるんだったら、たぶん老人ホームを作ったほうがいいかもしれないんですよね。
ただ、もう九州中から人を呼ぼう、アジアから人に来てもらおうとして、ああいった図書館のようなアプローチがあったことは、僕は武雄の価値を上げたんじゃないかと思っているのです。
市長の前ではあまり言えませんが、ごく一部の反対派が出るのは、グローバルマーケティングをするためにはしょうがないことじゃないかと。その覚悟がお金を出す側にあるのかどうかが大事なことじゃないかと思います。武雄の図書館は僕もすばらしいと思います。はい。
仲川:はい、ありがとうございます。そしたら寺田さん、逆風の話。
寺田航平氏(以下、寺田):一言でいうのは難しいんですけどね。今、寺田倉庫という会社は未公開企業なので、好きなように会社のお金を使ってどんどん投資ができるポジショニングではあります。一方で石川さんのように財団法人を作るようなやり方でサポートすることもあります。一般的な上場企業がそのステークホルダーの方々との調整の中で何ができるかというと、これはやっぱりどうしても限界があると思いますから。
簡単ではありませんが、地域を再生しようとやったことが結果的に自分たちの会社のサスティナブルな成長や人との調和、さまざまな実事業に返ってくる。そういうものと関連して結びつけるようなサービスモデルを自分たちなりに考えて、それを組み合わせて実行していくことで、結果的に会社に認めてもらうというやり方をとるしかないのではと、私自身では思っております。
実際に寺田倉庫という会社もそうやって、現実的には1つのフラッグシップを作っていきながらそれを横展開することで、どんどん伸ばしていこうという側面があります。そこには何らかの意図があって、その延長線上でどこまで会社の中で認められる仕組みを作るのかという部分じゃないかと思っています。
仲川:はい。ありがとうございます。それでは、次の質問がおありの方で挙手をいただけますか。そしたらお一人目はこちらの茶色のネクタイの方。あとそちらの水色のシャツの方、あと女性がいいんじゃないかと石川さんがおっしゃっているんですが、そちらの眼鏡の女性の方。
観客1:いいんですか?
観客2:はい。
仲川:なんか美しい譲り合いになってしまった。
(会場笑)
仲川:いろんな出会いがありますので。
(会場笑)
仲川:じゃあ、どうぞ。
質問者4:ミウラと申します。私は3月まで島根県の邑南町(おおなんちょう)という、1万人しかいない過疎高齢化の小さな町で中小企業支援相談所センターのトップをやっていました。その中で地方創生や地域の再生で一番の課題は、人がすごく減るということだと思います。
生産性などは技術だったりAIの導入だったりでなんとかなる部分があるにしても、田舎だと人がオペレーションに入れないので回らなくて、売り上げが下がったりもしました。もっと言えば、人が減ると消費する体力が本当になくなっていくので、今度は売り先がなくなったり、サービスを使う人がいなくなる。それがまた海外などで起こると、今度は輸出先がなくなるようなことで、地方にとって苦しい時代がくるんじゃないかとは思っているんですが。
みなさまの中で、新しい地方創生にあたって人口が減少していくという課題に対してどういったアプローチや戦略を描いてるか、お持ちの方があればお答えいただけるとうれしいです。
仲川:はい。わかりました。ではこれ、答えられる方が答えるということで。では、お二人目の方に、お願いできますか。今マイクをお持ちの方。
質問者5:はい。英語MBAのクボと申します。英語のクラスにいるものとしては、地域創生では、観光がかなりみなさんキーポイントになってきているように拝聴したんですが、実際に外国人がたくさん来ることも増えていると思います。
そうすると自分たちの想定外の認識であったり、ぜんぜん理解できない行動など、かえって地域の迷惑を作ってしまうようなものですね。そういった懸念の解消も一緒に整備していかないと、良かれと思った取り組みがかえってトラブルのタネになるという問題もあるかと思うんですが、もし携わっている、または協力されていらっしゃれば、ぜひお知恵をうかがいたいと思います。
仲川:はい。わかりました。そしたら3人目の方、はい。お願いします。
質問者6:はい。コダマカオリと申します。今日はお話ありがとうございます。石川さんにおうかがいしたいのですが、岡山芸術交流では地域の方たちと一緒に活動されていると思うんですが、実際、地方には商店街の売り上げを上げるだとか、目の前にある課題が非常に山積してるのではないかなと。
どうしてもより困っていることの方に気持ちが動いたり、アートと言われてもピンとこなかったり、リテラシーがない方は理解が難しいんじゃないかと思います。そういったことに関心がない方とのコミュニケーションや、関心を持ってもらうためにどのようなことをされているか、具体的なことがあればおうかがいしたいと思います。
仲川:はい。ありがとうございます。それではまず1つ目の、邑南町に行っておられる方からの「人が減る問題」をどうするのかというお話で、答えられる方。では、末松さんお願いします。
末松:いきますかね。はい。2013年に藻谷浩介さんが『里山資本主義』を書かれていますよね。たぶんお読みになってらっしゃると。
『里山資本主義』から5年が経って、それが今どんなふうになっているのかを、ちょうど藻谷さんたちとお話をしています。人口減少で苦しんでいるのは、地方だと思っていらっしゃるようですが、では本当に都会は安心・安全なんですかということなんですよね。
そういったことをきちんと比較しながら考えなければいけないんじゃないかと思っています。これもよく藻谷さんとお話をするんですが、「いい地域にはいいカフェがある」。人が集まるようになりだしたら、その地域は息を吹き返していくんじゃないかというような話をしています。
東京のすごく人口が多いところで起こっていることではなくって、その地域の中の人口の中でどのような分布になっているか。どんな人がIターンしてきたか。Uターンしてきたかという、本当に1人の人が地域を変えるんですね。
私たちがいつも事例に出しているのが、『里山資本主義』の未来の形ということで、山口県の周防大島の話をするんですが、そこの最初の扉を変えた人は、実は“嫁ターン”だったんです。
奥さんの実家に一緒に来た男性が始めたジャム屋さんからストーリーが始まるんですが、たった1人の人が地域に戻ってきたことで変わる、そういったきっかけを見逃していませんかということがまず1つです。
その次が地域を変えていく上で大事なのは、地域の良さ。「課題は孫が提案する」という。孫からの提案というものもキーになっていると私たちは思っています。例えば小学校や中学校が地域学習をして、地域の魅力や地域の課題をおじいちゃんたちに提案するんです。
権力者のおじいちゃんたちは息子に言われるとむかつくんですが、孫に言われると素直に聞いたりするんですよ。ですから、そういった小さなTipsのようなものがあって、その変化をしっかりとらえていけば、私はどの地域でも可能性があると思うし、やっぱり愛情がある人たちが小さくやっていくことが、そのコミュニティのサイズに見合った規模の変化をしていける。そういったことが大事だと思います。大きな町と比べないということも大事だと思います。
仲川:はい。ありがとうございます。それでは時間が厳しくなってきたんですが、次の質問ですね。外国人が地域の迷惑になってしまわないようにという……寺田さんでいいですか。すみません。無茶ぶりで。
寺田:はい。ぜんぜん大丈夫です。そうしたトラブルは、つきものですね。とくにもちろん地方においても、まさに。奈良なんて、かなりそうしたトラブルもあるんじゃないかと思いますが。
仲川:海外の方も多いですし。はい。
寺田:現実論、それを結果論として受け入れられるように、行政とタイアップしていくしかないと私は思っております。ただ、一方でもう僕たちが最初に引っ張っていく間は、かなりいろいろとあります。
我々は富裕層の物品をお預かりしたりするビジネスをやっていますが、そうするとやっぱり宗教による違いや、人種による違いからさまざまさまざまなトラブルが発生していくんです。民間であれば自分たちの中でどう解決するかという問題になりますが、やっぱり地域に対しての全体被害ということになると、そこに対しては行政とどのように一緒になって考えられるかが1つ大事になってきます。
最終的にはコミュニケーションというところに帰結します。京都や奈良などは今、まさに大変だと思いますが、現実論から言えば3年から5年すればプラットフォーム上の言葉の壁をなくしていけると思うので、そういった問題はほぼ解決してしまうと、個人的には思っています。
本当にそういう意味では、「受け入れるか、受け入れないか」というようなことは、いろいろな局面で発生していて、私は都心に生まれているんでそんなに偉そうなことを言える立場ではないんですが、やっぱり最終的には自分たちも変わろうという意志を持てるか。企業や中心となる存在がムーブメントが作れるのかというようなことは、やっぱり最大のポイントですよね。
基本的にはどこの町においても、一つひとつの場所において考え方の固い人たちが中心となりがち。それを打ち破る力のような。先ほどの末松弥奈子さんの話じゃありませんが、私も1人の力でも変えうると思っています。そうしたムーブメントのようなものを映していくような世界観を、みんなで醸成する。だいぶできあがってきていると思うので、それに向かっていければいいと個人的には思っています。
仲川:はい。ありがとうございます。それでは最後に、石川さんへの質問にお答えいただいて。
石川:はい。現代アートというのは、かなり嫌われるんですよ。もう本当にとくに高齢者の方などには「ようわからんし」というようなことを言われます。先日、パリの国立ミュージアム「ポンピドゥー・センター」の館長と会ったら、同じ意見だったんですが。「すごく難しい現代アートと、すごくみんなから人気のあるものを組み合わせるのがいい」。
僕たちもそこを大事に考えています。今回岡山芸術交流はロボットと現代アート。AIと現代アート。さらに古いもので、古墳と現代アート。古墳好きな人も来るし、ロボット好きな人も来るし、AI好きな人も来る。その古墳とかAIとかロボットに興味がある人が、やむなしで現代アートを見て帰るというような流れが生まれるんです。
だからもう少し大げさにいうと、バラと現代アートでも、スヌーピーと現代アートでもいい。森美術館では一回(美少女戦士)セーラームーンと現代アートをやったこともあります。なにかとっつきやすいものと現代アートを組み合わせることで、遠かった現代アートが自分のものになっていく。そうした合わせ技というのが、現代アートをスケールさせるために必要なことじゃないかと。
次の2022年は、ミドリムシと現代アートをやりますので。ミドリムシを飲んでいる人たち、みんなが来ると思うんですが。
(会場笑)
石川:まぁそうした組み合わせ。イノベーションもあるし、組み合わせが大事だと思うんですが。町が再生するためには、いろんな意味で市民の気持ちをイノベーションしていかなければいけないので、そのためには市民が共感できるものと小難しいものを合わせながら、小難しいものを体に入れていくということが大事じゃないかと思っています。はい。
仲川:はい。ありがとうございます。時間がオーバーしてしまいました。限られた時間ではありましたが、企業による地方再生、町づくり、都市再生ということでございました。今までのみなさんのイメージが今日のセッションで一歩前進して、これからまたいろんなチャレンジの可能性が開ければこのセッションの価値があったというように思っています。登壇者の方に大きな拍手をお願いします。
(会場拍手)
仲川:はい。ありがとうございました。
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