結婚式の当日に会社が倒産し、波乱万丈の中で起業を決意

萩原雅裕氏(以下、萩原):本日最後のゲストとなります。有限会社ケイ・ピー・ディ代表取締役、加藤木一明さんです。どうぞ、拍手でお迎えください。

(会場拍手)

萩原:よろしくお願いします。おかけください。さっそくですけれども、自己紹介をお願いできますでしょうか。

加藤木一明氏(以下、加藤木):はい。私はプリント基板の設計を中心にやっております。起業したきっかけというのが、その直前に勤務していた会社が倒産してしまったんですよ。しかも自分の結婚式の日に……。

萩原:(スライドをみながら)転職した会社が入社半年で倒産とは、すごく波乱万丈な人生を歩んでいらっしゃるんですね。

加藤木:ははは(笑)、結婚式の翌日には無職になったという。

萩原:波乱万丈すぎます、当時はさぞ大変だったのではありませんか?

加藤木:そうですね。結婚式が終わったあと、上司から携帯に留守電が入っていて「明日保険証とIDカードを持ってこい」とのことでした。なんだろうと思ったら、弁護士と会社に集まって「会社が倒産になります」という、衝撃的な発表をされました(笑)。どうしていいかわからなくなりましたね。いろいろと就職活動はしたんですけれども、やっぱり自分で(起業して)チャレンジしてみようと決意しました。

萩原:創業した会社では、どのような事業を展開しているのでしょうか。

加藤木:回路設計、基板設計、製造、組み立てという一連の作業を請け負っていますし、どの作業からもご対応させていただいています。

社員は数名ですけれども、デザイン重視の製品を主に扱っていまして、小型で軽量、こだわりのあるお客様にお話をいただくことが数多いです。写真の建物ですが、実は東京理科大学さんに入居しています。そういった意味でも、新技術や新製品に取り組む案件は非常に多くなっています。

萩原:従業員のみなさんは非常に高い技術力をお持ちで、名前は明かせませんが日本を代表する企業をお客様でいらっしゃると伺いました。

クラウドファンディングで注目を集めた「基板アート」

萩原:その他にユニークな事業もしていらっしゃるそうですね。

加藤木:(スライドを見ながら)これは基板アートといいます。

プリント基板は普通は工場で作るようなもので、当社はたいていお客様の新製品を扱うこともあって、それを展示することもできないので、アピールができないんですね。

萩原:確かにそうですね。機密ですもんね。

加藤木:はい。NDA(秘密保持契約)があったりするので。そこをなんとか、実際の商品とは違ったかたちでアピールできないかと考えたんです。うちは基板の技術に特化していましたので、その技術を応用してアート作品を作りました。基板工場で作った、こういう葉っぱのデザインのストラップですとか。

萩原:これが基板なのですか?

加藤木:工場で普通に作っている基板なんです。「基板はきれいなんだ」という思いをアピールしたんです。

萩原:すばらしいですね。しかも、これクラウドファンディングで事業化をされたんですね。

加藤木:そうですね。クラウドファンディングで「Healing Leaf」という基板アートのブランドを立ち上げました。資金調達をしたり、展示会に出したことで、東京理科大さんの目にも止まって。

萩原:それがきっかけで入居されることになったんですね。

加藤木:そうですね。そのおかげで大手さんですとか、いろいろなところからもお声がけをいただけるきっかけになった事業になります。

基板設計は、アイデアがかたちになるまでの製造管理

萩原:本日はいろんな業種のお客様にご来場いただいたので、製造工程なども含めお仕事の流れを教えていただけますでしょうか。

加藤木:うちの事業内容はお客様から「こういった製品が作りたい」というお話をいただいて、それを実現するために回路設計者が目的にあった半導体などの電子部品を探し調査し 機能や性能、コストなど検討しながら 回路図を仕上げていきます。

実際の製品の基板サイズやデザインを考慮して、ちゃんと動作するように、信号の流れや半導体やスイッチなどの電子部品をレイアウトを考え配置配線するのが基板設計という工程になります。その技術を応用した作品が、先程お見せしたプリント基板アートになります。

ちょっとお持ちしたので、見えるかわからないんですけれども、今は青色の基板もあります。ここまでがもともと創業当時からメインでやっている事業になります。

その後、基板ができて部品実装・組み立てと一通りやらせていただくのですが、基板設計は回路設計の担当者とも連携して、製造管理をする。全体を一式でかたちにする窓口のような作業になります。

新技術への挑戦が多い分、やりとりも情報量も増加

萩原:基板設計が窓口になるということですが、ふだんはどのようにお仕事をされるのでしょうか。

加藤木:そうですね。デザイン、メカ、電気、ソフト、あるいは外部のスタッフから連絡や情報がおりてきて、品質を考えつつ、コストも優先しつつ調整していきます。

基板設計は製造設計とも言われるんですけれども、比較的短納期で対応することも心がけなければならないので、製造現場から「この基板はどうなっているんだ」と連絡があったり、頻繁に確認や連絡をとりあうことが多く、全体の中心となる重要なポジションになります。

萩原:ちょうど真ん中にいるような立場の方が基板設計者なんですね。先ほどのお話のように非常に高い技術力で新しいものを作っていらっしゃるということなので、やはりこの工程は細かなやりとりがあるのでしょうか。

加藤木:そうですね。うちは同じものはあまりつくらないので。同じものですと、だいたいルールが決まって、テンプレート化されますが、大学さんがらみの新技術などは日々新しいことへのチャレンジですので、前回と同じようにというわけにはいかないですね。

萩原:なるほど。そういう意味では、お客様側とのやりとり以上に部品メーカーさんや、工場の方とのやりとり、取引先とのやりとりがけっこう密にあるということですね。

加藤木:はい、そうです。

LINE WORKS導入後、案件数も業績も2倍に増加

萩原:なるほど。加藤木さんにとって、今回LINE WORKSを導入いただいて、最も大きなインパクトがあったところはどのようなところでしょうか。

加藤木:はい。ずばり、うちの場合は業績アップにつながりました。

萩原:……あれ、みなさん。ここ、(スライドの)写真撮るところですよね(笑)。

(会場笑)

萩原:業績アップということですが、実際のところは?

加藤木:今回ご登壇のお話をいただいた際に、LINE WORKS導入前後の案件数を比較しました。今回調べてみてびっくりしまして、案件数自体は倍になっていました。

萩原:2倍ですか。

加藤木:細かく調べたら受注率もアップしているんですよ。なので結果的に売上も倍になっていて。

萩原:みなさん、聞きました? 取り扱い案件数が2倍、受注率もアップして、その結果、売上が2倍ですよ。念のため確認ですが、従業員数は増えていらっしゃらないんですか? 

加藤木:はい、同じ5名です。営業方法も業務も変わっていません。逆に外に営業に行っていないぐらいで、1ヶ月外に出ないこともあったりするぐらいなんです。座っていて仕事がくるわけじゃないですけど、お客様からお声がけいただくというケースが本当に増えています。

萩原:うらやましいです(笑)。従業員の方が増えていないということは、固定費が増えていないということですよね。もちろん案件ごとに変動費はあるでしょうけれども、それで売上が2倍ということは実質的にかなり利益が上がっていらっしゃるということですよね。

加藤木:そうですね。グーッとではなくて全体的に伸びていて、今までやれなかったことが幅広くできるようになったんですよ。今まで、実は私がボトルネックで設計案件のみ対応ということがあったのですが、製造の手配からすべてできるようになったんですね。そういう意味では取引先も拡大しました。

ミスも多いメールでの対応が、成長のボトルネックだった

萩原:なぜ同じ人数で2倍の案件が扱えるようになったのか、もう少し詳しく伺いたいです。以前はどんなかたちで、取引先さんとやりとりしていたんですか?

加藤木:導入までは社内も社外の工場さんもすべてメールで対応していました。でも、それ自体に限界を感じているくらい、似たような内容のメールがどんどん来て、ミスも多く、私自身の限界がきました。売上はそこで決まるなというのを実感していました。

これをなんとかするしかないなということで、いろいろなツールを探して、LINE WORKSにたどり着きました。

萩原:本当にありがたいです。今はLINE WORKSをつかってどんなかたちでやりとりされていますか。

加藤木:今はまず社内をLINE WORKSのトーク1本にしています。メールは一切やっていないですね。あとは、取引先の工場さん、工場の営業さん、外部の技術さんから、お客様以外の内部のスタート工程を全てトークで一括してやっています。お客様とはメールで行なっていますが、作業の分担が明確になってわかりやすいですね。

萩原:なるほど、メールが来たらお客さんだと判別できるんですね。ちなみに仕入先や工場の方とは、どんなやりとりをしていらっしゃるんでしょうか。

加藤木:これが基板設計チームの設計が終わった後のトーク画面になるんですけれども、設計者から、LINE WORKSのドライブにCADデータをアップして、それを私とお客様が見る方法をとっています。

修正内容もLINE WORKSにそのまま貼り付けてアップして、「修正はこうだよ」というのがあって、そのイラストになりますね。イメージというか、実際の設計図になります。

レスポンスの速さで競合との差別化が図れ、受注率がアップ

加藤木:CADを開いてキャプチャーを撮って、ここをこうしてあれしてというのをワーッと書いています。それによって伝わり方も速くなりました。以前は、メールで圧縮して、パスワードをかけてってやらなければいけなくて、そのやりとりをやっていると、もう翌日になることがありました。

LINE WORKSの場合ですと、「こうして」と言うと、うちの担当者が翌日には直しちゃっていて、レスポンスがすごく速くなりましたね。

萩原:細かなやりとりのスピードが上げていった積み重ねが、先ほどの取り扱い案件数2倍につながったということなんですね。

加藤木:そうですね。サービスに特化できたのと、今までは相見積もりで連絡が来ていた案件が、どちらかというと相談に変わったんですよ。なぜかというと、レスポンスが速いからなんですね。

私がお客様から電話やメールで相談を受けたら、もう工場だったり関係者に、できる、できない、いつになるという回答をすぐに集約して提示できます。お客様にとってはその日の午後には返信ができて、どうするかを決定できるわけです。

萩原:なるほど。そうすると競合にもならずに、すぐにお仕事が決まるという。

加藤木:そこがまさに受注率アップの要因にもなっています。

視覚的なコミュニケーションで効率がアップ

萩原:すばらしいですね。以前と今とで、社内のここが変わったなというエピソードはありますか。

加藤木:数字では出ていませんが、体感的に社内の開発、設計スピードが上がっていますね。それはもう明らかに、この例でもそうなんですけれども、見積もりと同時に図面を送れちゃうとか。

見積もり時に、「ここ、どうなっているの?」って内部でやりとりをするんですけれども、それをお客さんに聞いて、トークで返してあげて、「同時にもう設計しちゃいました」というのが、ここ何件かあるんですよ。

萩原:すごいですね。

加藤木:大きいものは別ですけれども、手軽なもので急ぎのやつは「もうやっちゃえ」という感じで(笑)。どうしても、電話とメールでは伝わらない、つながらないということがあり、以前はもっと頻繁に集まって打ち合わせをしていました。

萩原:特にこれ(図面の修正)を電話だけで伝えるのはつらそうですね。

加藤木:そうですね。「こっちにやって」と言っても、矢印がないので、逆方向に回しちゃったり、見て、開いてびっくり、というものが今までは多かったですね。

萩原:それはやっぱり、お仕事の効率がかなり上がったということですね。社内や取引先の方々と一緒につながることで、さらに伝わりやすくなったということを体現していらっしゃるようなお話ですね。

お客様と一緒に開発をしている感覚が生まれた

萩原:ずばり今、お仕事は楽しいでしょうか?

加藤木:楽しいですね。LINE WORKSを導入したことによって社内のスピードと対応がよくなったこともあるんですけれども、それ以外に、お客様と一緒に開発をしているような感覚があります。社内のメンバーにも、「メールに戻れる?」って聞くと「やめてくれ」「戻れません」と。

萩原:わかります。我々の社内もそうなんです。けっこうメールがつらくてですね。

加藤木:そうですね。そういう意味でもお客様の1つの開発室という気持ちで取り組んでいるので日々、非常に楽しい毎日を経験しています。

萩原:とてもいいお話、ありがとうございました。業績アップの秘訣、もう少し詳しくお伺いしたいと思うんですけれども、お時間が迫ってまいりましたので、いったんここで閉めさせていただき、ぜひ懇親会でお話をまたお伺いできればと思います。加藤木さん、本日はどうもありがとうございました。

加藤木:ありがとうございました。

(会場拍手)

萩原:いかがでしたでしょうか。まさにお客様とチームになって働く世界を、加藤木さんにお話しいただきました。私たちが実現したい世界をもうすでに実現していらっしゃるお客様は、今日お越しの3名の方以外にもたくさんいらっしゃると思います。

ご来場のみなさま、「実はうちの会社はこんなふうに使っているよ」といったかたちで、「ちょっと話したいんだけど」「自慢したいんだけど」という方は、ぜひ懇親会でお話を聞かせてください。

今後私たちは、お客様のお話を聞く機会をどんどん増やしていきたいと思っておりますし、またお客様同士で交流いただけるような機会ももっと設けていきたいと考えております。

ご登壇いただいた加藤木さんは、実は2年前のLINE WORKS DAYの参加者としてご参加いただいていましたけれども、たまたまご縁があって、今回ご登壇いただけることになりました。

もしかしたら次回のLINE WORKS DAYでは、会場のみなさんにご登壇いただくことになるかもしれません。ぜひこの後の懇親会もお楽しみいただければと思います。以上でカスタマーボイスセッション、終わりにさせていただきます。ありがとうございました。

(会場拍手)