規模感も事業体も異なる3社のCOOが登壇

司会者:それでは登壇者のみなさまをご紹介いたします。モデレーターは、株式会社ROXX・山田浩輝様。スピーカーは、DMM.com最高執行責任者COO・村中悠介様、株式会社クラウドワークス取締役副社長COO・成田修造様、株式会社PATRA取締役COO・鈴木真彩様。

(会場拍手)

以上のみなさまです。それではよろしくお願いいたします。

山田浩輝氏(以下、山田):はじめまして、株式会社ROXX COOの山田と申します。

今回は「No.2の方程式」ということで、こういうイベントでもNo.2というのは、なかなか光が当たらず、焦点が当たらず、社長さんばかりがしゃべるというところで、こういう機会は少ないんですね。でも、今回はNo.2にあえて焦点を当てて、すごく多様なNo.2のメンバーに集まっていただいておりますので、うまくその差分や違いを感じてもらいながら、共通項を見つけていければいいなと思っております。

まずは簡単に自己紹介をしていただければと思います。軽い自己紹介と会社の説明、あとはちょっと社長さんの特徴というか、「うちはこんな感じの社長ですよ」というところも説明してもらえればなと思います。村中さんからお願いいたします。

村中悠介氏(以下、村中):DMM.comの村中と申します。2002年からDMMグループに入っていますので、今17年ぐらいになります。DMMがどんな事業かというとちょっと説明が難しいぐらいにたくさんの事業があるので、この場では割愛させてもらうのですが、現在会長兼CEOになっているのが亀山です。どんな人かというと、昔から変わらず、要求の高いタイプという感じですかね。その中でやっています。

山田:ありがとうございます。成田さんお願いします。

クラウドワークスのCEOとCOOの関係性

成田修造氏(以下、成田):クラウドワークスの成田と申します。クラウドワークスは2012年にサービスをスタートして、今(従業員が)350名ほどの会社です。クラウドソーシング事業を展開しておりまして、インターネットで人の働き方を変えていこう、ということをビジョンにしている会社です。

僕自身、2012年に4人のコー・ファウンディングメンバーでスタートしていて、上場後に僕は副社長になりました。2015年から今の肩書でやらせてもらっている感じです。代表の社長は、吉田という者なんですけれども……。

山田:そこにいますね。

成田:あっ、いた! ちょっと見えないんですよ。これによって一気にやりにくくなるので、できれば退散いただいて(笑)。

山田:あ、本当にいなくなっちゃった。

成田:えっ? あ、いなくなりましたね。はい、こんな関係性です。アグレッシブで一点突破型の経営者です。どちらかというとバランス感覚があるタイプではなくて、非常に狭い領域の中で一点突破してアグレッシブに攻めるタイプの経営者になります。よろしくお願いします。

(会場拍手)

企業規模や事業内容によって、No.2の役割はどう変わる?

鈴木真彩氏(以下、鈴木):株式会社PATRA取締役COOの鈴木と申します。弊社は「PATRA MARKET」というInstagramを集客の軸としたBtoCのブランドを今10個運営しております。

特徴としては、トレンド×テックというところを強みにしています。ブランドを運営しているインフルエンサーが現在7名いまして、Instagramでの総リーチ数が約70万人となっています。

自社運営のメディアも複数ありまして、SNSのマーケティングを強みの1つとしているのと、「PATRA MARKET」というECのプラットフォームがあって、すべてフルスクラッチで自社開発しているサイトになっています。かつ、商品の生産管理の部分から配送システムなど、すべて垂直統合して自社でオペレーションを回しているところが特徴です。

社長の海鋒さんの特徴はエンジニア社長でして、彼が男性で、私が女性なので、男女の役員でやっているんですけれども、基本的には放任主義で。なにか新規でやるときは、基本、全部信じて任せてくれる人で、私がサービスの芽をちょっと出すと、それをすぐにうまく仕組み化してくれる、というところが得意な人だと思っています。よろしくお願いします。

(会場拍手)

山田:ありがとうございます。今日揃ったNo.2ですが、PATRAさんはちょうど今日リリースを出しまして、資金調達をしたということです。資金調達を真っ最中にしている15名で、「今から伸びるぞ」という会社のNo.2です。

クラウドワークスさんは、上場してこれからさらに伸ばしていくというかたちで、村中さんのところは従業員数が1,600人ということで。従業員數15〜1,600名という振れ幅の中で、No.2の方々に集まっていただいております。ですので、まずはそこの違いだったり、逆に「ここだけは共通しているよね」というところを含めて、お聞きしていければなと思っています。

No.2として、誰よりも行動指針を体現する存在に

山田:まず聞きたいこととしましては、「今、No.2個人として特にどういうミッションを追っているのか?」ということであったり、「業務の時間をどこに一番割いているか?」をお聞きできればなと思います。時系列的に、創業間近のところから聞いていければと思いますので、鈴木さんからお願いいたします。

鈴木:はい。今お伝えしたように、社員の規模が15名ほどで、アルバイトを入れても30名いないぐらいなんですね。正直、社員の数が2桁になるまでは、そんなに組織がどうということは考えて動いてなくて。とにかくトップラインを伸ばしていく。サービスを伸ばしていくところにだけ、ひたすらコミットしていたんですけれども、社員が10名を超えたあたりから、「会社のミッションをどう自分が体現していこう?」ということは考え始めていて。

一番時間を割いているのは、とにかく新規事業を作っていくところにコミットをしています。今の「PATRA MARKET」というサービスを作るまでに、9個ぐらいサービスを潰して、今のサービスになっていて、けっこういっぱい失敗をしているんですね。やっと今、ちょっと芽が出てきたという感じで。

一応、会社の行動指針みたいなものが4つあります。「失敗を恐れずチャレンジする」「オープンで透明性のあるコミュニケーション」「ユーザーに全力で向き合う」「成功体験をちゃんと仕組み化していこう」というところの4つなんですね。

今はわりと自分が15名全員としっかりコミュニケーションを取れて、仕事をがっつりやれている状況なので、今挙げた4つの行動指針を社員に浸透させていくためにも、その行動指針を社内で一番体現している存在であろう、ということはすごく気を使っています。

自分が新規事業にコミットしているという部分でも、私はけっこう大きい失敗をたくさんやってきて、すごくかっこ悪いところを社員に見せているんですけど、そういう大きなチャレンジをすることは、そんなに怒られることではないし、そういうチャレンジがないと結局イノベーションは生まれないよね、というところを、みんなに一番近いところで見せていくことをすごく大事にしています。

山田:ありがとうございます。では成田さん、お願いいたします。

3〜5年スパンで事業戦略や新しい一手を考える

成田:今は全社の3〜5年ぐらいの具体的な事業戦略と、そこに向かうための事業ポートフォリオの見直しや、組織の再編をどうするかということに半分時間を割いています。もう半分は、具体的にその3〜5年後に行くための新しい一手を考えています。

その後半の7割ぐらいは、新しい事業やプロダクトのアイデアと、その具体的な実行の初期の立ち上げに割いていて、もう3割ぐらいが海外の人材採用や戦略、提携・投資に時間を割くと。そんな感じです。

山田:なるほど。ありがとうございます。じゃあ、村中さんお願いします。

DMMでの意思決定の流れ

村中:はい。僕もちょっと似ているかもしれないです。組織と権限委譲がうまく回っているかどうかの確認や、あとは事業の把握と方向性の決定。あとは今、DMMの事業がどんどん増えているので人も探しています。

いろんな事業をやり切れる人材というか。そういう人を常に探していて、その一環でCVCみたいな「DMM VENTURES」というのをやっています。あとマジョリティのM&Aであったり、普通に人を探したりすることに時間を使っていますかね。

山田:なるほど。DMMさんの事業体・組織体ってめちゃめちゃ興味深くて。僕らも「どうなっているんだろう?」とすごく気になる部分です。実際に村中さんはどこまで意思決定したり、どういう会議で意思決定をしていたりって、イメージが湧くようなかたちでご説明できますかね?

村中:今の体制としてはまず、事業部単位を重視しているということがあります。事業部の上に立っている執行役員がいて、その上に僕がいて、亀山がいるという組織構造なんですけど、基本は権限委譲しているので、事業部長で決裁できるものは決裁してもらう。事業部長が判断がつかないものは、執行役員が判断する。

それでも判断できないものというか、その過程で出てくる事業の方向性や決定に関しては、一緒に話して意思決定していると。より全社的なことであれば、今でいうと、CTOの松本と僕と亀山の3人で決めていくプロセスです。すべて現場に介入して物事を決めていったら、時間が足りないので……。

山田:そうですね。

村中:鈴木さんが15名の時から(組織のことを)やっているというのが衝撃で。

山田:(笑)。

村中:そんなのたぶんなかったです。

山田:いつまでなかったんですか?

村中:2007年ぐらいまでたぶんなかったです。そうすると1998年とかから始まっているので……。

山田:10年弱?

村中:10年ぐらいは。最初15名ぐらいの時って秩序はありました?

成田:うちも組織のことをやり始めたのは、70〜80人ぐらいからだと思います。うちは30名でIPOしているので、その時までは組織のことは一切考えていないですね。

村中:行動指針すらないです。

成田:行動指針もなかったです。

山田:(笑)。

成田:行動指針なんか4年目で作ったんです。6年目に聞いたら、役員の平均正解率が1.8個で。

山田:ほぼ正解できていない(笑)。ぜんぜん浸透してないですね。

成田:まったく浸透しない。

ミッション・ビジョン・バリューは、失敗しながら自分たちに合った方法を見つけるもの

鈴木:村中さんがDMMに入られたタイミングでは何名ぐらいだったんですか?

村中:あんまり記憶にないんですけど、たぶん会社がいろいろ分かれていたんですよね。DMMの前身があったんですけど、その時でたぶん10名ぐらいだったと思います。いわゆる総合職で、10名ぐらいになります。

山田:なるほど、なるほど。最近すごくミッション・ビジョン・バリューとか、組織がどうのこうのという話がよく出回るようになったので、10〜15名から考えないといけないのかなと、僕らも思ったりして、いろいろやるんですけれども。

成田:メルカリの影響で。

山田:はい。メルカリがやったおかげで、こっちもいろいろ考えさせられると。でも、実際にやってみると、メルカリのやっていることをそのままやっても、ぜんぜんうまくいかないみたいな。そして失敗するみたいな。今50名ぐらいなんですけれども、失敗しながら自分たちに合った方法を見つけていくというのが、ようやく始まったぐらいの感覚ですね。

ですので、PATRAさんは、そんなものはあんまりやらなくてもいいかもしれないです。事業をもっとがんばったほうが、もしかしたら伸びるかもしれないですね。

鈴木:そうかもしれないです。考え直します(笑)。

上場前のクラウドワークスの売上の6割は、COO成田氏の業績

山田:成田さんも社長との関係性のところで、歳が10個以上離れていたり、経験もあって2回目、3回目の起業というかたちで始められていたりしまして。その中で成田さんがNo.2や取締役メンバーとして、ミッションの変遷というか、自分でも動きが変わってきたなというのを、上場する前と後で教えていただきたいです。

成田:上場までは売上の……例えば、プロダクトとセールスの両方の事業を持っていたんですね。プロダクトはみんなで事業を作っているという感覚だったので、誰がという話ではなかったんですけれども、セールスに関しては、上場時の売上の6割ぐらいは自分個人でやっているという感じです。

山田:個人?

成田:個人。僕がやっている業績が、会社全体の業績のだいたい6割ぐらいという感じで。

そこから2年ほどで、130名ぐらいまで増やしました。100名ぐらい増えたので、そのタイミングからは自分がプレイヤーとしてなにかをやるわけではなくて、事業部長やマネージャーの階層を作っていくという、当たり前のことをやったという感じです。

そこの時点では事業マネジメントが中心で、それが2年ぐらいですかね。そのあとは今お伝えしたような事業のポートフォリオとか、次の新規事業をどうするかとか。さっき村中さんがおっしゃった事業部長クラスの採用をどうするかとか。今はそっちにシフトしていっていると。

その役割がより大きくなっているというか。「海外をやらなきゃね」とか。国内だと「もう少し大きな事業に取り組んでいかなきゃね」とか。そういうふうに変わっていって、今に至っている感じです。

エンジニア社長とCOOの経営における役割分担

山田:なるほど。ありがとうございます。鈴木さんは、めちゃめちゃ今どきのメンバー構成で。エンジニア社長というのも、ここ5年ぐらいでエンジニア出身の方々が社長としてすごく動き出していて。そして、女性COOというところで、すごく今どきだなと。今を象徴するような経営体制なんですけれども、社長さんとの役割分担って具体的にどういう感じでやられているんですか?

鈴木:社長との役割分担。一緒にやり始めた時から、けっこう徹底してやっているのが、どっちが何をやるかという役割を分担して、手を動かしていくことを徹底しています。

彼がもともとエンジニアで、テクノロジー・技術のことは詳しい。私はどちらかというと、マーケティングやゼロイチを作っていく。新規事業を作っていくところが得意だったので、そこを明確に分けてやっていこうね、というところだけ決めていました。

今は役割分担でいうと、女性向けのサービスをやっているので、コンテンツサイドに関しては、社長が「こういうのがいいと思うよ」と言ってきても、1パーセントぐらいしかためにならないことがほとんどなので、無視していて。別に悪口じゃないんですけどね(笑)。

基本、外に出ていくコンテンツのことは、自分が今までリサーチしてきて、みんなでためてきた知見を一番大事にしてやっています。コンテンツサイドは、けっこう私が全部見ている感じです。

今、「PATRA MARKET」のシステムをすべて韓国から仕入れて、服を売っているんですけど、そこの現地のオペレーションも自社でオペレーションを組んでいるところです。その販売システムも自社で作っていて、CSのオペレーションも作っていて、受発注システムも全部内製している状態なんですね。

今日の調達のブログにも少し書かせていただいたんですけれども、今後はオフライン店舗をやろうと思っています。オンラインを持っていて、オフラインとIDを統合してO2Oというところで、シームレスな買い物体験を作っていこうと。

システムのところで、新しい体験を作っていこうという感じで作っています。そういうシステム面のところは、やっぱり私よりもエンジニアである彼のほうが得意なので、主に彼が舵を切ってやっている感じですね。

ですので、裏側のオペレーションやシステム面に関しては、社長が見ているところが多くて、その他のコンテンツサイドだったり、MDだったり、マーケティングなどを私が見ている感じです。

この事業を始めた時も、女性向けの「mellowneon」という、韓国買いつけのアパレルブランドを始めたんですね。最初は私1人でやっていたので、売上が単月500万円ぐらいにいくまでは、自分で服を選んで、自分で着て、自分で撮影をして、もう全部やっていました。社長は男なので、服を着せるわけにもいかないじゃないですか(笑)。

山田:確かに(笑)。

鈴木:なので、裏側のところだけサポートしてもらって、そこまでは自分でやって。そのあと、どんどん役割分担していってというのをやっていましたね。

山田:これはやっぱりエンジニア社長さんというところの特徴かなと思っていまして。うちだとアイデアは全部社長からまずバーンと出てくると。それをどうかたちにしていくかというところが、自分自身の役割かなと感じているんですね。

エンジニア社長さんだと、あるものをどうやってうまく実現していくかとか、どうシステマチックにしていくかというところは得意だけれども、最初のアイデアは鈴木さんのほうが考えられているというところで。これも同じNo.2としてもスタイルが違うな、というところはすごく感じます。資金調達も社長が動いているんですか?

鈴木:主に社長が動いています。

山田:なるほど、ありがとうございます。