大臣や企業の代表など、ハードルの高い登壇依頼のコツ

日比谷尚武氏(以下、日比谷):じゃあ、いただいている質問をもとに、少し後半を読み切った後にどうしても聞きたいということがあれば、手を挙げていただくようにしますので。投稿していない方はそのつもりでお願いします。

(Sli.doの質問を見て)じゃあ、これ。「どうやったら大臣に来てもらえるのでしょうか? 大臣のような登壇者の声掛けの方法というのもどうやってしていきますか?」。

登壇していただくのが難しいなと思われる人たちに、どうやって声かけするか。どうでしょうかね。

松林大輔氏(以下、松林):2つあって、まず大臣で言うと、基本的に企業がやるイベントは、大臣が来にくいんですよね、やっぱり。それはそうじゃないですか。1個の企業を応援することはできないので。

我々みたいに社団法人でやっているという、“1個の企業の利益にならない内容やテーマ設定”は、来やすいです。だから、そういう設計で登壇依頼をお願いするというのが1個。

あとは、誰からお願いするかというところはけっこうやっぱり重要です。うちも、そういう大臣のネットワークを持たれている方を探しまくって、そこからいくという感じですよね。

日比谷:経産省に後援いただいたりもしていますが、それも社団法人ならではというか、公益性のところがポイントになっている。

松林:そうですね。

日比谷:経産省の人材室の方々とお話ししてたら、「働き方イベントが増えて政策発信の場が増えたのはとてもうれしいんだけれども、みんながみんな(登壇依頼が)来ちゃって、きちんと適切な場なのか選定するのが大変」とも。これは官庁に限らず、企業の代表とかにお願いする場合も同様ですよね。

「自分たちの名前ややっていることを売り出せるんだったら、どこでも行きまっせ」ってモードのときやそういうタイプの方と、「引っ張りだこ過ぎて、さすがにちょっと遠慮します」みたいなモードのとき、やっぱりありますよね。

だからいいタイミングで、「彼らは今発信したがっているな」っていうところに、フッと。例えば本を出したときとかね。

松林:そうです。だから「誰からお願いするか」で言うと、例えば僕とかをうまく使ってもらえると(笑)。

日比谷:汎用化して置き換えると、例えばキーマンの人とかハードルが高いなという人でも、相手の事情とか……。発信したい・したくないとか、いろいろあるから、それを調べたうえでアプローチをするし、アプローチをするにしても直接行かず、ホップステップする余地をいかに探すかみたいなことですよね。

松林:さっきも言った企業のイベントとかは、企業でやるにしても任意団体をつくってとかじゃないと、一企業がやるイベントに登壇するというのは非常に難しいということ。

「なぜ出てほしいのか」を伝えることが一番重要

日比谷:酒居さんはどうですか? 大臣とは言わず、いかに大物に登壇いただくかみたいな話で言いますと。

酒居潤平氏(以下、酒居):いや、でもお二方がおっしゃったとおりで、本当にその方々の打ち出されていることを徹底的に調べて、あとはいかにツテでやるかというところはけっこう重要かなと思います。その方に直接のツテがなくても、つなげて、つなげて、つなげて、みたいな。けっこうそれも重要だと思いますし。

あと、例えば僕らの業界でスタートアップの経営者の方々になると、官公庁とはまた違って、僕はダイレクトにTwitterとかFacebookでメッセージを送って登壇依頼をしたりとかで、引き受けていただくケースもけっこうあります。

ただ、どっちにしろ重要なのは「出てください!」ということだけ伝えるというより、なんで出てほしいのかという想いをやっぱりいかにちゃんと伝えるかというところだと思っていて。

そこに共感なくして、お金だけいくら積めばいいんだろうとか、そういうことではないんじゃないかなとは思います。

日比谷:そうですよね。そういう意味でいうと、関係性をあらかじめ作っておくみたいなことって大事かもしれないですよね。

酒居:そうですね。

日比谷:at Will Workだと1年おきにカンファレンスをやることが決まっているので、1年間理事があちこちで活動する中で、「あ、この人おもしろい」とか「この方に話してもらったらいいな」という人を見つけたら、なんとなくリーチしたり、お声掛けしたりしておきますよね。

たぶんカンファレンス、イベントをいっぱいやられていると、「この人に出てもらえたらいいな」とか「チャンスがあったら差し込んでおこう」ってね。

酒居:そうですね。最近よくコミュニティマーケティングというお話があると思います。イベントのコミュニティで重要なのって、参加者のコミュニティももちろんできたらいいんですけれども、それ以上に僕は、登壇者のコミュニティがすごく重要だと思うんです。

なので、登壇者の方々と、いかにずっとみんなでつながれる関係を作るかという、そこの登壇者のコミュニティ作りというところは気を遣ってます。

日比谷:連続開催したりね。

酒居:そうですね。

登壇者のFacebookコミュニティは“次回の種まき”

松林:細かい話をすると、登壇者だけの、うちでいったら過去に200人ぐらい登壇してくれてるから、登壇者だけのFacebookページがあったりする。

その人らだけの飲み会をやったりとかもするんですよ。それがすごく盛り上がるんですよね。

日比谷:例えばat Will Workだと働き方界隈の関連の発信とか、事業をやったりする有識者とか、アカデミアとか行政の人も入っている。そこに入ればだいたい何かつながれる。

松林:そうなんです。だからカンファレンスが終わった後に、過去の人も含めて打ち上げをやるんですけれども、だいたい30~40人に来てもらって。

日比谷:忙しいのに。

松林:忙しい中来ていると。そこがけっこう盛り上がるんですよね。

日比谷:すごいですよね。

松林:その場で、「この次、こんなイベントあったらいきたい」とか言われたら「それやりましょうよ」とかね。それで、「こんなところ登壇したいねん」「それだったらここありますよ」って紹介したりね。

酒居:そこで新しいのが生まれたり。

日比谷:紹介してもらったりね。

松林:「ほんまや、それはありますね」「それあったな」とか。けっこうありますね。

日比谷:それはちょっと立ち上げの後の話ですけれども、実際やった後の、イベント開催するんであれば、そういったネットワーク作り・コミュニティ作りも大事。つながってくれるよっていうことですよね。

「オペレーションをこなすだけ」の仕事にしない

日比谷:ちょっと次に行きましょうか。「自社のメンバーのモチベーションアップ、(イベント運営に)関わってくれるようになるためにはどうしていますか」と。

実はその後の質問が同じようなかたちで、「酒居さんはイベントの企画を担当され、運営は他のチームがやられている、丸投げしているということですが」……。

松林:「自分はきれいな仕事ばっかりやってるんちゃいますか?」と。

(一同笑)

酒居:僕も一応運営やってるんですけどね(笑)。

日比谷:じゃあ、自分もその1人だとして、「運営担当者のモチベーション維持はどうしていますか」と。「現実はイベントを回すのに必死で、いつの間にかイベント屋さんになってしまい、優秀な担当者」……たぶん真面目な方とかね、「優秀な担当者ほどキャリアになり、離脱するといったことがあるように思います」。とくにカンファレンスをやってると。

酒居:そうですね。カンファレンス以外のやつでもいいですかね? 

日比谷:いいんじゃないですか。今の酒居さんの話を。

酒居:それで言うと、まずは「オペレーションをこなして」みたいな目標設定はしないですね。

メンバーによく言っているのが、「僕たちはマーケティングチームとしてやっているので、イベンターを目指すのではなくてマーケターを目指そう」と話しています。

だから、例えば僕らはBtoBなので、そこから商談化させるとか案件化していくみたいな比率とか件数も(目標として)持ってますけど、そこの数字にはコミットしてもらう。その目標の立て方の中で、「じゃあ運営側でどういうふうに変えたら、どう(数字が)変わっていくんだろう」みたいなPDCAを回してもらうようにしています。

そういうところで、目線というか目標設定を工夫しています。

日比谷:なるほど。さらにこの質問の中にある、「現実はイベントを回すのに必死で、業務が大変多いんじゃないですか」みたいな。泥臭いところもいっぱいあると思うんですが、そこはどう乗り越えるんですか? 

酒居:いや、もう大変です。

運営に向いているのは、イレギュラーに対してストレスを感じない人

松林:ちょっと話が違うかもしれないけど、向き不向きがあるでしょ、まず。

酒居:ありますね。

松林:“曖昧耐性”がけっこう広い人じゃないと無理じゃないですか。

日比谷:曖昧耐性。都合のいい言葉を生み出している感じがします(笑)。「鈍感力」みたいなやつですか。

松林:例えば営業的な目標、営業数字を追いかけて、決まった1個を追いかけるみたいなタイプの人は向いてないんですよ、絶対。イベントは。だってイレギュラーなことが多すぎるので。

酒居:そうですね。

日比谷:定型化されたフローを作るとしても……。

松林:トラブルもすごく多いし、運営でもいきなり登壇者が来ないみたいな。そういうイレギュラーなことが多すぎるんですよ。その曖昧さに1個ずつ、「これはなんでや」みたいなことを言い出していったら、頭がキーッてなるんですよ。

日比谷:なるほどね。

松林:だからその辺に耐えられるような人じゃないと。まずそこは見極めたほうがいいですよ、絶対。

日比谷:そもそもアサインする段階でね。

松林:アサインする(笑)。それがだから、そう。だからそこがすごく重要じゃないですか。

酒居:僕も本当にメンバーに申し訳ないんですけれども、開催10分前ぐらいに一気にレイアウトを変えたりとか、「やっぱりこのスライド全部変える」と言って、一気にスライド変えたりするんですよ(笑)。

日比谷:いつか刺されないんですか。大丈夫ですか。

酒居:いや、本当に。マジで怒られてるんじゃないかなって思うんですけれども。

なんかそういうこととかの変化に、ガーッて対応してくれる方じゃなくて「えー!」みたいな、それに対してすごくストレスフルになると、けっこう大変かもしれないですね。そもそももっとちゃんとしっかり企画しろという話なんですけど。

イベント運営を仕組み化するための2つの工夫

日比谷:ちょっと派生で切り口を変えた質問をします。

そんなイレギュラーなことが多いイベントの、仕組み化とか効率化みたいなことって、とくにたくさんやられていたり、毎年やっていたりする中で、見えてきたこととかやれそうなことってあったりするものですか? 

つまり、最初1回目は手探りで「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」とか「謝礼はいる、いらない」とかタクシー代つけたりとか……朝なんて登壇者が遅刻したとか、いろいろあるじゃないですか。

やっていくうちに、なんとなくパターンみたいな、あらかじめこういう準備をしておこうとか、こういうチェックリストを作っておこうとか、そういうのがいろいろ出てくると思うんですよね。

その辺は型とか効率化みたいな工夫をしたり、仕組み化をしてたりはされています? 回すのに必死で「イベント屋さん」になってしまう体制の問題もあるけど、全部泥臭い手作りを毎回やっているところがすごく……。

松林:それでも、そう。まず、さっきの僕の話でいくと、合っている人を選ぶというのが1個じゃないですか。

でも、それでもずっとやり続けたら頭がキーッてなるので、イベントの運営を仕組み化するという意味では、毎回イベントの後に反省会をやって。終わったらすぐにやるのが一番いいですよ。

終わった後に「次これやろう」っていうのは、めっちゃ細かいけど終わるごとに(やっている)。うちで言ったら「パートナー会」って20~30人のやつを、1ヶ月に1回ぐらい開催し続けてて。カンファレンスが年に何回か、アワードとかを含めてあるみたいな。

その運営ごとにやってますね。それはけっこうドキュメント化していっている。

酒居:それ絶対ありますよね。あと、僕らだとそれこそ週2回とかで数を回そうとすると……。

日比谷:なんかおかしいな。

酒居:(笑)。けっこうオペレーションが重要で。なので、データ化できるところはそういったデータの力、テクノロジーの力を使いますし。もう毎回、プロジェクトのタスクを全部バーッと出るフォーマットを作ってくれているんですね。それで、期限や開催日をスプレッドシートにピッと入力すると……。

日比谷:逆算して全部。

酒居:どのタスクを何日までにやらないといけないのかが、ズラッと全部出るんですよ。

日比谷:「それは欲しい」って思った人が、たぶん(会場にいる人の)半分ぐらい……。

酒居:(笑)。

松林:いいですよね。うちもあります。

酒居:めちゃくちゃ細かいんですけど。

松林:そんなスプレッドシート、たぶんあったと思う。うちでも。

酒居:それを誰がやるかという担当アサインと一緒に全部バーッて書いて、あとはSlackとかメッセンジャーを使いながら、ザーッと進捗確認をしていく。担当者がいて、その担当がアラートを出しながらやっていってくれるみたいな流れですね。

日比谷:業務効率化もいっぱいありそうですね。わかりました。