10代の子どもたちを支援する、認定NPO法人D×P

今井紀明氏:簡単に自己紹介をしちゃおうと思うんですけれども、僕は最近、ゴビ砂漠を250キロメートル走ったので、ぜひ拍手で迎えていただきたいと思います。

(会場拍手)

自己紹介ですけど、(ゴビ砂漠では)250キロメートル走ってきて、サハラ砂漠の挑戦から3年連続で250キロメートルを走ったんですね。うちは寄付系のNPOで、砂漠のマラソンだけで2,000万円ぐらいご寄付をいただいて、仕事をしてきました。

僕は本業で認定NPO法人D×Pをやっているんですけれども、今、寄付のプラットフォーム「SOLIO(ソリオ)」というのをやったり、起業家と共に行動を起こしていく「やさしい未来ラボ」というオンラインサロンもキャンプファイヤーの家入さんと一緒にやったりしています。

若者が未来に希望を持てる社会を目指す

僕の時間は10分間ぐらいなので軽く説明しようと思っているんですけど、NPO法人D×Pは大阪が拠点です。なので、今日は大阪から1人で来ています。今は東京にも進出しましたけれどもね。

うちのNPOは、けっこういろんな人が働いています。今は社員が11人で、スタッフが全体で20人ぐらいいて、継続の寄付者さんが600人ぐらい。あとは単発の寄付者さんたちが700人ぐらいNPOの仲間に来ています。それで、ボランティアさんも400人ぐらいいる。いろんな方々に支えられているNPOになっています。

去年の年間収入の8,000万円ぐらいのうち、7割が寄付です。かなり個人の寄付者さんに支えられて仕事をしてきているNPOだと思っています。

サポーター企業さんも、だいぶ増えてきています。(ドリンクを)飲みながらも、ちゃんと真面目に話しますね(笑)。D×Pは「ひとりひとりの若者が自分の未来に希望を持てる社会」というのがビジョンです。対象にしているのは10代。15~19歳の不登校・高校中退経験のある子です。例えば親の代わりにお金を払わなきゃいけなかったり、先生が苦手だったり、お金がなかったりという、なかなか厳しい生徒もいます。

日本には孤立しがちな子どもが多い

僕は昔、イランとかザンビアというアフリカの一部の国で途上国支援をやってきましたけど、日本の子どもたちの支援ってけっこう特殊です。とくに、孤立しがちな子どもがすごく多いという印象があります。そこの部分を僕たちは支援しています。

(スライドを指しながら)少し生徒の話をすると、この「ひかる(仮名)」という子は児童養護施設にいて、2年前にオンラインの相談でD×Pと出会いました。

虐待の相談もあったんですけれども、東京で子どもの貧困問題にアプローチしているNPO法人キッズドアさんにつないで、そこから自分で外に出始めました。引きこもりだったんですけれども、動き始めた。そういう子もいたりします。

けっこう生活的に厳しいとか、いろんな子がいるんですけれども、僕らはそういう子を対象にして仕事をしています。

(スライドを指しながら)とくにうちが対象にしているのは、この通信制高校の子たちで、今(全国に)18万人ぐらいいるんですね。少子化なのに、唯一生徒数が伸びているのが通信制高校です。不登校の経験者が4割ぐらい、編・転入者が7割ぐらいいます。また、定時制高校の生徒数は9万人ぐらいいます。生活保護を受給していたりと経済的に困難な家庭の生徒もいます。

課題として、通信制高校を卒業するときに進学・就職しない率が4割ぐらいという状態で、社会的な所属先がない状態で卒業しているということがあります。

言いたいことは何かと言うと、生徒はやっぱり一人ひとり、可能性がすごくあるということです。D×Pが関わった生徒で不登校だった子で、ベンチャー企業で働いている子もいます。

あとは、ひきこもりで、ゲームをすごくやっていた子がいました。長期間誰にも会っていなかったんですけども、その子にはたまたま、D×Pの事業を通じて出会いました。ゲームの攻略サイトとかがあるじゃないですか。そこのゲームライターを請け負って、それを仕事にしました。今もゲームに関する会社で働いています。いろんな企業で働いてる子たちがいます。

オンライン・オフラインを問わず、子どもたちとの接点をつくる

(スライドを指しながら)じゃあD×Pがその中で事業として何をやっているかと言うと、こういう仕組みを作っているんですね。うちは「つながる場をつくる」と、あとは「仕事」と「住む場所」。この3つを事業としてやっています。とにかく、つながれない子たちとつながる。

(スライドを指しながら)これは学校の中でやっていますけど、1~2ヶ月間ぐらい定時制高校で授業を持っているんですね。ここにボランティアさんが全4回の同じ授業で生徒と関わるんです。人と関わることにハードルがある高校生も多いので、まずここで関わりをつくって、少しでも「大人に関わってもいい」と思ってもらう。

そのあと、週1でカフェにつないでいきます。うちは、食事を提供するカフェを持っています。ご飯をきちんと食べていない生徒も多く、食事をきっかけに、生徒と定期的なつながりを持つことができます。

だからうちは、授業で出会って、単位認定されている授業を持っているのでそこで出会って、カフェを提供して、就職までつなげていくというのをやってきています。今はこれを関西の6校と連携して動いています。東京と埼玉・札幌・岡山でも授業を行なっています。

学校の現場で出会える生徒たちもいるのですが、オンラインも重要視しています。やっぱり10代の子たちは非常に、オンラインにいるんですね。なのでD×Pはソリューションとして、(オフラインでは)学校内でのつながりをつくること、オンラインでは「LINE相談」というのもありますが、「ひま部」というSNSがあります。(注:学生の、学生による、学生だけのコミュニティサービス。現在は、「Yay!」にリニューアル)。

数十万人が登録していて、そのうちの3割が不登校・中退状態だと聞いています。その子たちとつながっていくために今、オフラインとオンラインで動いてきているというのが、僕らが事業としてやっていることです。

あとは今、住む場所としては(シェアハウスの)「リバ邸」と組んでやっています。全国に50軒ぐらいありますけれども、D×Pは2軒持っています。今は関東と関西でD×Pと関わった10代も住むようになりました。相談のなかで話を聞くと、親元から離れたいという10代も多くいます。そんな10代に、安心して住める場所を安価に提供するためにもリバ邸との提携を行っています。

約4,000人の子どもたちを支えるセーフティネット

(スライドを指しながら)今日はこれが最後になりますけれども、では僕らが何をやりたいかと言うと「若者がいきるセーフティネット」をつくりたいと思っています。僕らは寄付をもらいながらやっている事業ですけれども、オンラインとオフラインでD×Pにつながる(というのを考えています)。

困難を抱えた10代とつながるのはとても難しいです。行政のサポートや企業のサービスもありますが、なかなか10代に届かずに、既存のセーフティネットから抜け落ちてしまうことがあります。

僕たちは、そんななかなか出会えない10代に出会えるように、学校のなかやオンラインに切り込んでいって、つながっていきたいと思います。そして、NPO、企業、仕事、住む場所…と社会にあるリソースと高校生をつなげていきます。僕らはビジョンを実現させるために、セーフティネットをつくっていきます。

(スライドを指しながら)それで今、生徒数が4,000人ぐらいですね。今年でたぶん5,300人とか5,400人ぐらいになりますけれども、それを仕事としてやっているというのが、私たちの事業になっております。

じゃあ、最後になります。今後の事業展開として、僕らは寄付をもらいながら何をやっているかということです。

寄付というのは、小規模であったとしても「社会を変える資本」なんですね。いいですか? もう1回、繰り返します。(年間収入について)僕らは今、年間8,000万円ぐらいと伝えましたけれども、モデルをつくりながら今もどんどん生徒たちとつながって、事業をつくっています。

これらの事業の実績を踏まえ、行政と連携/提案したり、さまざまな団体にノウハウをシェアしたりしながら、社会全体に波及していきたいと思っています。

そういったことがきっかけになるので、寄付というのは小規模だとしても「社会を変える資本」なんです。そういうことがあるので、その部分をみなさんとつくりたいなと思って、いつも仕事をしています。

希望がないならば、つくればいい

それで、最後に僕がいつも思っていることを1つだけ言いたいと思っています。それは何かと言うと、「希望がないならば、つくればいい」ということです。最近、暗いニュースがすごく多いですよね。

僕らは8期目のNPOですけど、経営してきて思ったんです。確かに最初は人もついてこなかったですし、寄付型のNPOになる3期目まで、なかなかやることにお金が伴わず、できなかったんです。

だけど、やり続けてきて思いました。今は小規模かもしれないですけれども、実例ができてきているし、あとは今年になってオンラインの相談も急激に増えてきていて、ニーズもすごくあるんですね。NPOさんなどからのニーズもあるので、それで一緒にやったりすることも出てきています。

僕らがこれまで展開してきて思うのは、事業をつくって汎用性を持ってやることが出てきたら、一緒に変えられる人々も増えていくということです。ボランティアの人も、今は400人ぐらいいます。やっぱり仲間が増えてくるんですね。そして、月額の寄付会員のサポーターさんも増えてきました。寄付も一緒に事業を作る仲間です。そこの部分を自分たちでつくればいいという話なんです。そう思って、いつも考えながらやっています。

僕の話は、とりあえずこれで終わりたいと思います。今日は楽しみながら、飲みながら参加できればと思います。ぜひよろしくお願いします。ありがとうございました。

(会場拍手)

司会者:ありがとうございました。