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イベント未来予想図2020 〜コミュニティ文化とイノベーションを加速するイベントの仕掛け方〜(全5記事)

イベント集客のカギは「3つの期間」 打つべき施策の違いを解説

2019年11月27日、虎ノ門ヒルズフォーラムにて「データからひも解くイベントの未来ラボ 第1回 イベント未来予想図2020 〜コミュニティ文化とイノベーションを加速するイベントの仕掛け方〜」が開催されました。誰もが手軽にイベントを運営できるようになった今、イベントの役割はどう変わっていくのか。国内最大級の2大イベントプラットフォーム「Peatix」「イベントレジスト」の共同創業者が登壇し、イベント運営が身近になるまでの沿革やイベント運営のノウハウなど、多様な側面からイベントの未来についてディスカッションが行われました。

スマホ普及がビジネスを後押し

小島英揮氏(以下、小島):もう1つ、お2人のビジネスを支えたものとしては、スマホをみんなが持つようになったのはけっこう大きいんじゃないかなと。特にPeatixさんは、さっきちょっと話を聞いたら、PDFとか今、ついてる? 

藤田祐司氏(以下、藤田):ついてないです。

小島:申し込みした時に、PDFの紙ってよくあるじゃないですか。Peatixさんはないんですよね。

藤田:そうですね。Peatixが創業した2011年の頃って、チケットを申し込むとメールが届いてそこにPDFが添付されていてQRコードがあって、それが来ちゃうとなんとなくプリントアウトして持って行くのかなみたいな空気が流れていたんです。

サービス開始から2年目か3年目ですか。2013年にはPDFを廃止して、我々としてはいわゆる「Peatixのアプリの中にチケットがありますよ」というメッセージでした。最初からずっと言ってたんですけれども、PDFがあることによってスマホのほうにいかないということがありました。かなり議論はあったんですけれども、もうPDFを廃止して、スマートフォンのアプリをダウンロードしてくださいと。

結果としてはアプリを通じて、Peatixのいろんなイベントと出会ってもらうところの土台になっているので、そういう意味ではPeatixとしてはスマートフォンというのはかなり重要ですね。

小島:なるほどね。スマホを使うということは電波がすごく大事じゃないですか。さっき彼氏と行っていたライブハウスなんかは、電波が昔はすごく大変だったみたいです。

小笹文氏(以下、小笹):その時代はガラケーでした。はい。

小島:電波がなかなか入ってこない。

小笹:なかなか。

藤田:我々が創業した頃は、やっぱり地下のライブハウスだとどうしても電波が弱いとか、立派なビルの上・高層のほうだと電波が弱いみたいな問題は正直ありました。2011年、2012年、2013年ぐらいまではあったと思います。

最近はそこがかなり解消されていて、ほぼほぼ電波問題はなくなってきています。そこは環境もどんどん良くなっている。

小笹:ここ数年でだいぶ環境は変わりましたよね。

小島:だから完全にスマホにシフトしても、端末だけじゃなくて、通信環境もだいたい整ってきた。

一時的に電波状況が悪くなっても、オフラインで受付可能

藤田:あと大きいのは、スマートフォンが本当に普及してきている年代もある。2010年の頃ってiPhoneが出て、ファーストムーバーの方たちがそこにいってという感じだったんですけれども、今って幅広い年代の方たちがスマートフォンを使うようになった。

小島:そうですね。これは総務省のデータで、フィーチャ-フォンはもうなくなることが確定なので、簡単にスマホに移っていい時代ということですよね。

藤田:なので、若い方もご高齢の方もスマートフォンを持つようになってきたというのは、我々みたいなサービスにとってはすごく大きい。

小島:大きかったですよね。あとはけっこう便利になってきて1つ思い出したのが、とはいえイベレジさんにはオフラインチェックイン機能があるじゃないですか。

小笹:あります。

小島:オンラインでも問題なくできるはずなのに、オフラインチェックイン。これはなんですかね。

小笹:(笑)。

小島:僕が言ったんですね。全部スマホでできるようになって良かったんですけど、あまりにも人がたくさん来るところだと電波状態がよろしくないとか。

小笹:そうなんです。イベレジって、イベントのレジストレーションサービスだけじゃなくて、当日の運営とか、企画制作のところとかも入ってたりするんですね。AWSさんはそこをお手伝いさせていただいていることがあった。

実際に受付だったりとかの運営にも入っていただいていたりしていますと。あの時代って1日でどのぐらい……。

小島:8,000とか9,000とか。

小笹:(それだけの人数)が、同じ会場にいらっしゃると、さすがにネットワークをオリジナルでがんばって引いていても、時々ヒーヒー言うわけですよ。それで受付のところのネットワークが……。

小島:スローになっちゃうんだよね。本当はピッピッピッてできるのに、ピッてやったら止まっちゃうみたいな。「これはオフラインしかないですね」と言って、お願いして作ってもらったことがあるような気がします(笑)。

小笹:それでもう(返事は)「はい」か「YES」しかないので、翌年にはできてました。

小島:でもこれは通信環境だけの話で、スマホでできるようになっていること自体にはぜんぜん変わりはないので。5Gなんかも出てきたらだいぶ変わってくるんじゃないかなと。

小笹:だいぶ変わるかなとは思いますね。

「早割期間」は開催1ヶ月前に締め切る

小島:はい。では、またリアルなことに入ろうと思いますが、そうはいっても、人が集まらなければイベントにはなりません。今日は本当にたくさんの方に来ていただいてありがとうございます。僕はまさに、そうだったんじゃないかということがあって、今回も途中でPeatixを導入しようといったような話になった。

小笹:このイベントがということですね。そうそう。

小島:これ、実はこのイベントだけではなくて、みんながたどる心理状況ですよね。最後にグワーッと。

小笹:最初はとりあえず主催者のほうは「いいイベントを作りました。みんな来てください!」といったような感じで告知をするのですが、「思ったより手応えないよね」となりがちです。

藤田:まさに我々のことですよね。

小笹:「あれ?」といったようなことになる。みなさん、見てますか?

小島:どうですか? このグラフに心当たりがある方はどのぐらいいらっしゃいますか。

(会場挙手)

共感スライドでございました。

小笹:よかった。

小島:ではでは。これは実際に何が起こっているのか。イベレジさんのデータですね。

小笹:これは、我々が主催しているイベントの細かい数字を抜いたざっくりとした山なんです。かなりBtoBのお客さんであったりするなど、「こうしたやり方をするといいですよ」といったような話をしますね。

だいたい前半で早割、有料チケットの場合といった前提でいきますが、前半で早割期間のようなものを設けて、最後1ヶ月、通常の販売期間といったようなかたちにして、「できるだけ早割期間の間で安心しましょう」といった話なんですよ。

そのときに何をやるかといった、わりとビジネス系のイベントでは、もともと告知するハウスデータなどがあったりするので、それを一発案内するといったかたちで、プレスリリースなどを打つこともあります。最初はそれである程度は集まるんですよ。

しかし、当然うまくいくタイミングとその逆といったことが出てくるので、そうしたときにはソーシャルといったメルマガなどであれば、自分たちでもできる。ここはなるべくお金を使わないでできる集客活動を、頭で考え抜いてやりきりましょうと。

それで早割期間が終わりというのは、早割期間といった言葉自体がものすごく引きになるので、やりませんよね。

集客施策は段階的に 「打ち手枯渇」を防ぐ

小島:締め切りを1回作るといった感じですね。

小笹:はい。1ヶ月前などを目安に一旦締め切りを作ったときに、蓋を開けてみるとどれくらい集客があったのかといったことをもう1度見返したあとに、もっときちんと対策を取らなければいけないといったことであれば、ここからはじめて有料の施策などを打てばいいと思うんですよね。

例えば広告を打つといったように、ビジネス系のイベントのお客さんというのは、3ヶ月くらい前から一生懸命有料広告で集客しているんですが、そうすると。

小島:最後に打つ手が実はなくなってしまうといったことにもなりますよね。

小笹:そうなんですよ。ずっとやり続けて、あれもこれもというのでは、どれがいいかわからないまま当日を迎えるといったようなことにもなりかねないので、「施策を段階に分けてやっていき、最後はすこしお金を使うという集客のやり方がいいんじゃないの?」といった話をしていたりすることがありますね。

小島:ちなみに、告知はメルマガで2.5ヶ月前。だいたい3ヶ月か4ヶ月のスパン。

小笹:そうですね。わりとビジネス系のイベントというのは、大きいものでは4ヶ月くらい前。短くても2ヶ月くらい前などから告知をはじめたりもするので、だいたいゆとりはあるんですよ。じっくり「この期間に戦略を練る」とやったほういい。

小島:結果的にはいいことになりますし、お金もたぶんムダ打ちが少ない。

小笹:そうですね。

イベント開催までを「3つの期間」に分けて考える

小島:一方で、これはPeatixさんからお持ちいただいたものです。一瞬似ているんですが、期間がぜんぜん違いますね。

藤田:そうですね。Peatixでイベントをやっている方たちの平均データといった感じになりますが、だいたい1ヶ月半くらいのスパンです。我々の中では3つの期間に分かれていると考えています。1番左側がいわゆるイベントページを公開したタイミングです。公開直後の1週間ぐらいの時期。

そのあと、「申し込み停滞期」と我々が勝手に名付けたものですが、2週目から4週目くらいです。だいたいみなさん、「最初すこし来たのにそのあとぜんぜん申し込みがないよ」といったような期間を経験すると思います。

そしてここは「最後の1週間」といった感じです。

ここにも書かせていただいていますが、トータルの申込みのうち3分の1ぐらいは、最初の1週間くらいで来ます。それぞれ3つの時期で、打つべき施策というのはぜんぜん違うんですね。

小島:そうした意味では、イベレジさんと似ているんですね。

藤田:そうですね。それはなにかというと、例えば申し込み公開直後は、主催者のファンであるといった関係者の方たちへの告知も当然開始しますから、一番関係値が濃い人たちが申し込みをするということがあります。

Peatixの場合は、フォロワーに通知がいきます。Peatix自体のエンジンが回って通知が飛ぶので、それによって申し込みをしてくれる方たちが3分の1くらい出てくるんです。

そのあと、やはりしばらくは停滞してしまうので、最初の時期はその近しい人たちに届けるといったことをしっかりやったほうがいい。

小島:確実にきちんと来てもらう。

藤田:来てもらう人たちに、しっかりと声をかけるといったことがかなり大事です。この停滞している時期というのは、なにかイベントの情報は知ったけれども、「もうすこし近づかないと行けるかどうかわからない」といったくらいのファン層であり、どうしても申し込みをなかなかしてくれないということがあります。

小島:これは出し物側がなかなかわからないことで、申し込みが停滞しているんです。でも実際に起こっていることは、イベントがあるのはわかっていて「どうしようか」と思いはじめている。

イベント作りの過程(=ストーリー)を共有する

藤田:そうですね。この時期にすごく大事なのは、例えば「行くか決めるのは後でもいい」と思っている人たちに忘れられないようにするということ。

小島:もっとメールを送るのとは、またすこし違う。

藤田:すこし違いますね。例えば、イベント作りの過程を知らせる。「ケータリングが決まりました。こんなおいしいケータリングになりますよ」といったこと。また、例えば「小島さんと小笹さんとイベントのミーティングをします」といったようなことなども。

小島:おもしろい話になりそうですね。

藤田:なりそうですといったようなことを公開することで「イベントをやるんだ」としっかり伝えていく。

小島:でもそうするときは、その都度コンテンツを新しくしなければといけません。「いついつやります」といった定型文が来るようでは誰も興味を持たない。

藤田:おもしろくないと思うので、そこのストーリーを伝えていく仕組みが必要なんですね。

小島:ストーリーを作るというのは、告知をあの手この手でやるよりは、ストーリーを共有していくといったような感じです。

藤田:そこはかなり大事だと思っているのですが、もう1つ大事なのが、そうはいっても、申し込み総数の2割くらいはこの時期で作れるので、最初の1週間とこのあとの3週間で合わせると、半分くらいはここで作らなければいけないということ。でも、様子がおかしいぞといったことも当然出てきます。

小島:なるほど。すこし違うこと。

藤田:すこし違う。それにしても(申し込みが)少ないといったようなときは、やはりイベントページの作りが悪いといったことがあります。それこそイメージ画像が悪いなど。

小島:かなりOGPは重要な要素じゃないかと思っています。

藤田:すごく大事ですよね。パッと見て何なのかわからないとなると、だいたい飛ばされてしまいますから。タイトルが例えば「Peatixサミット」となっていると、「なんのサービスかわからない」というようなことになる。

中身が分かりにくいイベントタイトルで、分かりにくい抽象的な画像になると、かなり最悪です。やはり、そうしたことに原因があるんじゃないかなと。あとはリード文が伝わりにくいといったこと。

小島:極めてマーケティング的なやり方ですよね。誰に何を伝えたいのかが、端々に出ていなければいけない。

停滞期こそ告知強化 ポイントは登壇者の顔

藤田:そこの見直しの時期でもあるといったのはここです。真ん中の停滞期でしっかりと整えておくことが大事です。Peatixの場合は最後の1週間前が一番申し込みがグッとくる感じになる。そこで、例えば登壇者の方にしっかりと告知をお願いするなど、最後に告知強化をして来てもらうといったような感じで考えていくと、しっかりとイベント集客をしたことが分かるようになるというか、ムダに不安にはならない。

小島:かなりこの停滞期に「そうはいっても少ない」といったことを認知して、逆にどんなストーリーを共有するのかきちんと見ておかなければ、最後のピークはやってこないという。

藤田:そうですね。そこはしっかりやったほうがいいと思います。

小笹:ビジネス系のイベントなどでは、まさに停滞期で細かいスピーカーの人たちの情報など、セッションの内容などが固まってくるんですよ。最初の告知のときは半分くらいしか決まってはいない状態で。

小島:そうですね。タイトルもなんだか未定が多かったりして。

小笹:半ばくらいで決まってくるので、このときにセッションごとのきちんとした案内ページを作っていくというのは、そのセッションの登壇者の顔が見えるOGPの画像を入れこむといったことです。

小島:たくさんのコマ数があるセッションではすごく大事なんですよね。

小笹:そうですね。登壇者がわからなくても10人いるのであれば、それぞれの紹介ページで必ずその人の顔写真が出るようにOGP設定していくなど。

藤田:拡散してくれる。

小笹:そうです、そうです。公式で投稿する。例えば、「小島さんが登壇します」といったことを投稿すると、小島さんが間違いなくそれをシェアしてくれるなど。でも、そこがイベントのイメージ写真ばかりであれば。

小島:終了ですよね。

小笹:小島さんもシェアしないし、そんなものをたくさん意図的にシェアされても、見ている方としては飽きてくる。先ほど藤田さんがおっしゃったように、どんどん気持ちが上がっていくというよりも、どんどん気持ちが萎えていきますよね。「なにか、みんな行くのね」といったような。

小島:同じ情報の露出をあげていっても、いいことにはつながらないということですよね。

小笹:そうですね。

藤田:時期によってということは、いろいろと考えていったほうがいいんじゃないかと思います。

参加率が高いのは「有料かつ事前支払いがあるイベント」

小島:あと、これもおもしろいデータです。これはPeatixさんからいただいたものですが。

藤田:かなりマニアックなデータにはなるんですが、有料と無料の場合の参加率が左側のほうですね。わかりやすい部分でいうと、有料で事前支払いがあるイベントの方が参加率が高いんです。

無料の場合は、これは前のデータなので、今ではもうすこし低いという感じもあるんですが、半分くらいしか来ないといったようなことがあります。やはり有料にするか、無料にするかというのは、かなり重要なポイントになるんです。

右上のものは、これもマニアックなデータですが、曜日別の参加率というもの。何曜日が参加しやすいのかといった話なんですが、やはり有料のイベントの場合にはそんなに差がない。フラットに何曜日であっても、きちんと参加してくれています。

小島:無料イベントの場合は、金曜日にやっちゃいけない?

藤田:無料イベントの場合は、金曜日にぶつけるとギリギリで飲み会に行かれてしまうといったことで。

(会場笑)

金曜日の無料イベントの参加率は58.5パーセントですね。ですから、無料イベントの場合は曜日によって参加率が極端に下がることがあります。さらにマニアックなことでいえば、何時にイベントを開始するかでもまた変わってくるんです。ここも有料イベントの場合はそこまで差はありませんが、無料イベントではかなりばらつきが出てくる。夜8時以降のイベントでは、もう半分くらいしか来ないといったような。

小島:朝は行くつもりなんだけれども、どれくらい差し込まれる仕事があるかで決まるような感じですね。朝は無料でもかなり参加率がいいですもんね。

藤田:そうなんですよね。金曜夜8時以降の無料イベントなんてもう最悪。

(会場笑)

ビジネスイベントをあえて月・火に開催するのもあり

小島:イベントが悪いというよりも、セレクションが悪いと。

藤田:そうですね。これはあくまでも平均値ですが、ただ、こうした傾向を知っておくと、自分たちのイベントシリーズをやっていくときに、「いつも水曜日の7時スタートでやってきた。しかし、今回は火曜日の6時半開始にしてみよう」といったように、曜日と時間帯を意識してやってみると、どういった変化があるかを考えてみることが重要だと思います。もちろん、無料にするか有料にするのかといったことも含めて。

小島:すごく有益なデータですよね。

藤田:ありがとうございます。

小笹:ビジネス系のイベントでいくと、わりと主催側は木・金曜日にやりたがるんですよね。そのまま休みに突入できるといったこともあるので。そう思う人は世の中にたくさんいるんだったら、あえて月・火に置いちゃうといった手もありますよね。ソーシャルなどで見ていると、かなり今は同じ日にぶつかって、みなさんイベントのはしごをしているかもしれません。

小島:そうした意味では、競合が少ないほうがいいといったことですよね。

藤田:そこはあると思います。

小島:それこそイベントがものすごく少なかった時代は、「せっかく来てくれるんだから金曜日で直帰していただけるように」とそうした時間にしていましたが、今はもう他のコンペティションがかなり厳しいですから。

藤田:かなり多いので。

小島:きちんとこうした傾向を見なければいけないといったことですね。

藤田:そうですね。

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