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アトツギ流 想いを通じて会社を変えていく方法(全3記事)

地方企業が東京のベンチャーに出資 いま、攻めの「肉食系地方創生」が必要なワケ

2019年8月5日、株式会社マクアケが「Makuake MEET UP DAY 2019」を開催しました。スタートから6周年を迎えたクラウドファウンディングサービス「Makuake」を運営する同社。本イベントでは、プロジェクト実行者、メディア関係者、流通関係者、金融機関・自治体をはじめとしたパートナー向けに、「アタラシイ未来」をテーマにしたカンファレンスや懇親パーティーなどが行われました。「アトツギ流 想いを通じて会社を変えていく方法」と題したカンファレンスには、企業の後継ぎとして奮闘する3名が登壇。“後継ぎ”ならではの企業経営の苦労や工夫に関するディスカッションの模様をお届けします。本記事では、

助成金は意外と簡単に活用できる

松岡宏治氏(以下、松岡):「アトツギを支援されるみなさまへ」というところです。これについては、とくに山谷さんが、いろいろな助成金や補助金を用いながら事業を育てていると思います。

山谷武範氏(以下、山谷):そうですね。三条市の例を言いますと、さっき言った中川政七商店と三条市で「コト・ミチ人材育成事業」をやりました。それでブランドを立ち上げるときに、ブランドの助成金として300万円。立ち上げた社屋のショップを作るだけで300万円。そのあと新社屋の固定資産税が3年間免除。そういったかたちで、三条市から助成していただいています。

あと、そのブランドを立ち上げて商品を作るので、新潟県から300万円が出ています。あと……。

松岡:数が数え切れないくらい(笑)。

(会場笑)

僕が気になるのは「申請が面倒くさいのではないか?」と思ったりするんですけれども、そのへんのフローはどうですか?

山谷:支援事業の銀行さんとすごく仲良くなっているので、すぐ話をもらえるんですね。それこそ県庁のほうからお話いただいたりします。みんないろいろな事業をやっていて、製造メーカーさんの工場をオープンにする「工場の祭典」というものを、今三条市でやっているんですね。ここに実行委員で入っていたり、それこそ海外に行くのも三条市から(助成金を)いただいたりしています。

「Ambiente」という展示会や、それこそ来週「NY NOW」の展示会があるんですけれども、それも三条市が3ブースか4ブースを借り切ってブースを一個丸々出します。企業からは「10万円でいいですよ。そこを貸すから出てください」みたいな。

松岡:10万円でいいんですか!?

山谷:ふつうだったら何百万円とかかるブースを10万円で。そういったものを三条市や新潟県はすごくやってくれているので、支援される方はもうぜひ支援していただきたいなと(笑)。

(会場笑)

松岡:それは三条市のメーカーじゃないとダメなんですか? 例えば本社がこっちにあって、三条市に工場を作って……。

山谷:たぶん新潟県は新潟県、三条市は三条市ですね。

松岡:なるほど。でもけっこう意外と簡単にとれるということですか?

山谷:意外と簡単に。

(会場笑)

意外とみんな知らないんですけれども、簡単にとれます。

「産地が儲かる」ために必要なのは“未来への投資”

松岡:なるほど。鷲尾さんは何か活用されたりしているんですか?

鷲尾岳氏(以下、鷲尾):いや、うちはもうぶっちゃけ助成金系は、手間が勝つということでやっていないですね。

松岡:(笑)。まったくやっていない。これからもやる予定はあまりないですか?

鷲尾:いいものがあれば、もちろんやりたいとは思います。その情報はやっぱり吸い上げるようにしていかないといけないな、とは僕自身の課題ではありますけれども。

松岡:加古川市はどうなんですかね?

鷲尾:隣の明石市に市民を取られまくって……。

(会場笑)

納税額が足りてないんじゃないかなという(笑)。そういう感じなんですよね。あまり還元されないなと思っていて。

松岡:なるほど。

鷲尾:そうなんですよ。あっ、すみません。(明石市の方が)いたら本当にごめんなさい。

松岡:(笑)。でもやっぱり、そういう意味合いで言うと「産地で儲かる」ということはけっこう大切なんですかね?

鷲尾:そうですね。というか正直、うちも産地なんですよ。加古川市の志方町という場所なんですけれども、靴下の産地なんですね。そういう「産地を復活させよう」みたいな感覚で、市ではなくて、それこそ地域の金融機関がお金をしっかり使ってほしいなということは思うんですけれども。

でも「お金を借りる」となったときに、担保とか「返ってくる」という保証をとりたがるじゃないですか。でも今の時代は「お金を入れたから儲かる」ということが、クリアに方程式で見えてるわけではない。

松岡:そうですね。

鷲尾:しかも今までの成功実績も、それこそクラウドファンディングだって今はまだアレですけど、僕が最初やったときなんて「クラウドファンディングって何ですか?」と言われて、「いや、銀行さんがご融資がなかなか難しいとおっしゃるから自分でやったんだよ」と。

(会場笑)

みたいなスタンスになっちゃうんですよね(笑)。結局、どうしても決算書が強いんですよ。BSとPLを見られたときに、僕の場合は会社が経営難の状態でスタートしているから、貸してくれないんですよ。経費の削減しかすることがないんですよね。だから攻められない、という状態が最初のスタートでした。

3年経ちましたけれども、「優秀な成績が収められていますか?」となると、今になってもPLで見たらぜんぜんなんですよ。でも僕個人のやってることであったり、これからの未来に投資するような感覚でお金を貸してくれと。ちょっと喋りすぎですね。ごめんなさい!

(会場笑)

本当の課題はリスクマネー供給の強化

鷲尾:あと5分……(笑)。

松岡:積み残しながらやりましょう(笑)。

鷲尾:すみません。次に回してもらって大丈夫です。

松岡:その点で言うと、リスクマネーの供給みたいなところで、やっぱり地方においてプレイヤーが少なすぎるな、とは思っています。クラウドファンディングも一種そのものではあるかなとは思うんですけれども、結局補助金や助成金といったものしかない。

これまでは高度経済成長期でモノを作れば売れる時代だったので、そこにお金を入れることはあまりリスクマネーではなかったと思うんですけれども。これから日本の人口が減っていって、モノが売れなくなってくる時代に、「そこに対してチャレンジしようとしている人たちをどうお金の面で助けていくのか?」ということは、今の地方においてすごく課題感があると。僕もいろいろな地域を回っているんですけれども、そう思いますね。

岩田さん、その点で言うと「支援者に向けて」というところで(笑)。

(会場笑)

岩田さんにおうかがいしていなかったので(笑)。

岩田真吾氏(以下、岩田):いやいや……松岡さんとの位置がちょっと(遠くて)ね(笑)。

(会場笑)

今、リスクマネーの供給というお話がありました。確かにそうだなと思う半面、地方創生がはやったじゃないですか。「お金をください」という草食系の地方創生はいいかなと。むしろ地方の中小企業が東京のベンチャー企業を買収しにいくとか、そこに出資するというときに、例えば「うちがちょっとだけ入れるから、その10倍ぐらい一緒に入れてくれる」とか。

松岡:岩田さん、入れられてましたよね。

岩田:うちはベンチャー企業にも入れています。というのは、さっき鷲尾さんがおっしゃっていたとおり、ビジネスというのは成功するか失敗するかわからないからビジネスであって。かつベンチャーや新しいことをやるということは、「千三つ」みたいな言葉もある。

地方企業が東京のベンチャーを買収する「肉食系地方創生」

岩田:それで、僕はその試行回数や失敗回数をどれだけ多くするかが経営者の1つの仕事だと思っていて。自分は自分なりに、自分のアセットを使って高速回転しようと思うんですけれども。それが絶対に成功するかといったら、「絶対成功します!」と言ってやっていますが、わからない。

そういうときに、自分と志を同じくする人とか、「自分がもう1人いたらこれをやってみたい」とか、自分が想像もつかないおもしろいことをやっている同世代の仲間や若い人たちに、少しでも「仲間として一緒にやりたい」ということで、「なけなしのお金をちょこっとだけ入れさせて」というような感じでエンジェル出資みたいなことをやりました。

そのときに「地方で中小企業のみんなで500万円ずつ出し合って100社ぐらい集まったら、それで5億円になる。金融機関にもう5億円を乗せてもらって、10億円のファンドを作ってみんなで出資していこうぜ」という話を夢のように語っていた時期があるんですよね。

それで、地域の金融機関さんも呼んで一度勉強会をやったんですよ。ただ、みんな「まだ早い」みたいな感じと(笑)。

(会場笑)

あと思った以上にうちの事務局負担もデカくて、ちょっとやりきれていないんです。今振ってもらって思い出しましたけれども、それはやりたいんですよ。

松岡:それはいいですね。

岩田:やってみたいなと思っている1つの、攻めの地方創生です。「肉食系地方創生」だと思っています。

鷲尾:めっちゃいいですね。

松岡:今、銀行さんいらっしゃっていると思うので、岩田さんにお話いただいたら、たぶんつながるんじゃないですかね(笑)。

(会場笑)

そんな感じで「支援事業者に向けて」というところで言うと、あとスライドが2枚なんです。時間も2、3分しかないので、その他のみなさんに関しては、直接ご質問いただこうと思います。

人口減少時代に「地方へ来てもらう」チャレンジ

松岡:最後に、これからチャレンジされることを締めの言葉も含めて、お三方に一言ずついただきたいなと思っています。そうしたら、最初は岩田さんから自己紹介をしてもらったので、鷲尾さんからいきましょうか。

鷲尾:「Makuakeを経て」というよりかは、「うちの会社としてこれからどうするか?」という感じで。

松岡:ありがとうございます(笑)。

(会場笑)

鷲尾:すみません、そこに縛られると言えないなと思ってしまって(笑)。

松岡:そうですね。

鷲尾:やらなければいけないこととしては、働いてくれている従業員のステータスを社会的に上げることが僕の課題だと思っています。地方で新しい従業員を雇うということに関して言うと、「この会社で働きたい」と思ってもらうことがもっとも大切です。

これから人口は減っていくので、従業員の確保は採用がもっとも難しくなっていく。そういう状況なので、ワシオ株式会社で働きたいと思ってくれる方を増やすためのいろいろなチャレンジをしたいです。

松岡:めっちゃ重要ですね。

鷲尾:今考えて、やっていこうと思っています。

松岡:ありがとうございます。

そういうところは中小企業さんや当社でも「働きたい」と思ってもらうということは、すごく重要なことなのかなと思いました。ありがとうございます。そうしたら山谷さん、お願いします。

山谷:Makuakeを経て……これからも新商品を年に何回かは出していかなければいけない、ということは重々承知しています。それに対してMakuakeをどのようにうまく使って、チャレンジしていくのかということ。

あと今考えているのは、民泊です。三条市の燕三条に人を呼んで、「どう泊まらせるか?」「どう工場を回らせるか?」ということを考えていて、チャレンジしていきたいなと思っています。

松岡:燕三条中の職人さんが山谷さんのところに紐づいているから、山谷さんが人を呼べば職人さんのところにも需要が(生まれると)。

山谷:そうですね。

松岡:なるほど。さっきのお話じゃないですけれども、そういう「産地のために」というところは、やっぱりすごく重要なのかなと思いました。ありがとうございます。

夢は、マーク・ザッカーバーグにオリジナルTシャツを着てもらうこと

松岡:では最後に、岩田さん。締めていただいて(笑)。

岩田:はい。

(会場笑)

すごくプレッシャー(笑)。今日はありがとうございました。狭いところなりの、いい感じのデキだったかと思います。うちはMakuakeをこの間やったばかりで、今出荷しています、みたいな感じなので、お二方のところよりもまだまだ手前なんですけれども。

今回やってみて、商品を作って直接ユーザーに触ってもらうということは、B2Bの我々素材屋としてはすごくニューなことなんですよ。それはやっぱり非常に学びも大きかったし、ほとんどリスクのないかたちで事前に発注をしていただく、というかたちでできたMakuakeの仕組みは、すごくよかったなと思いました。

もっともっと知らない人もいるので、そこで得た知見を日本中に広げていかなければいけない、ということは1つあるんですけれども。あと、それをどうやって海外に……世界にはもっとたくさん(人が)いるわけじゃないですか。日本が1億人に対して、世界は60億人いるわけなので、もう1つは「その人たちに届けていく方法は何かないのかな?」ということ。

これはまだ妄想なんですけれども、「Tシャツといえばベンチャー企業」だと。それで「ベンチャー企業といえばシリコンバレー」だと。なので、誰かこの中にマーク・ザッカーバーグの友達がいたら。

(会場笑)

ぜひ紹介してもらって、マーク・ザッカーバーグにも(MITSUBOSHI 1887のウールTシャツを)着てもらいたいな、みたいな(笑)。

松岡:毎日ね、毎日(笑)。

岩田:それぐらいのことを妄想として掲げながら、やっていけたらいいかなと思っています。今日はどうもありがとうございました。

(会場拍手)

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  • NTTドコモの社員でありながら6社で副業する山田崇氏 企業人材が紡ぐ地方創生と次世代キャリア形成の可能性

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