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亀山塾・ヤンキー編(全6記事)

DMM亀山会長「思い通りにいかなくてもカッコ悪い大人になるな」 ビジネスパーソンに贈る“自己満足”のススメ

若者の就職支援を行う、株式会社ハッシャダイ。地方在住で18〜24歳の中・高卒者たちに、自らの選択肢を広げることを目指した「ヤンキーインターン」というプログラムを提供しています。2019年3月には、インターン生に向けた研修講演が行われました。ゲストは自身も高卒18歳で上京したDMM.com亀山敬司会長。インターン生を交えたトーク内容を6回に分けてお届けします。第5話の今回は、働くことにおける因果応報、働く大人として心がけたい振る舞いについて語られました。

人は結局「ふさわしい物」だけを得る

インターン生(以下、イン生):「お金を盗まれたりした」っておっしゃってましたけど、いろいろな方に事業を任せられてる亀山さんにとって、信頼できる任せられる人ってどこで判断してますか?

DMM会長 亀山敬司(以下、亀山):とりあえず、「良さげなやつに任せてみる」って感じだな。こればっかりは任せてみないと分からない。見る目があれば何度も盗まれてないからな(笑)。

(会場笑)

亀山:昔の俺は善良なやつが信頼できるやつだと思っていた。でも、ほとんどの事件が善良なやつの出来心。初めから盗もうとか思ってたわけじゃなくて、目の前の誘惑に勝てなかっただけよ。もともと真面目だったやつが権限を持ったときに魔が差すってやつだな。

昔読んだ小説なんだけど、銀行を舞台にした話でこんなのがあった。

主人公の青年は悪党で、なんとか金を盗んで贅沢をしたいと思う。そして金がある銀行に就職して、信用を得てから金を盗もうと考える。集金で100万円の金を預かった時に「持ち逃げしようか」と思うが、「いや待てよ。もう少し信用が付ければもっと大金を任せられるに違いない。それから逃げよう。」と、思いとどまる。

その後、青年は出世して億の金を任せられるが、「いやいや、俺はこれくらいじゃ満足できない。もっとがんばって出世してから持ち逃げしよう」と我慢する。そして、支店長から頭取へとどんどん出世していく。こんな調子で青年はがんばり続けて歳をとり、結局最後まで一銭も盗めずに、みんなから「立派な人だった」と尊敬されたまま生涯を終えましたとさ。おしまい。

ハッシャダイCOO橋本茂人(以下、司会者):含蓄のあるお話ですね。

亀山:うん。これは果てしない金を求め続けて、最後まで悪を実行できなかった男の話なんだけど、一方で、目の前の誘惑に負けないで、自分の志を大きく育て続けた男の話でもあるんだ。

金を盗むまでじゃなくても、経費をごまかしたり、バックマージンをもらったり、セコイ真似をするやつはどこの会社でもいる。善人や悪人に関係なく、意志が弱くて志が低いやつはケチな金に手を出しちゃう。

そう考えると、善良だけど誘惑に弱いやつと、悪党だけど意志の強いやつと、どっちがマシなのかな? どう思う?

イン生:善良で意志の強い人でありたいですが、自分はどっちなのかわからないです。

亀山:他人の本性が善か悪かなど誰にもわからない。自分の本性でさえよくわからない。俺なんかも未だに自分がどっちなのかわからないよ。ただ一つ間違いないのは、セコいやつはセコいものしか得ることはできないってこと。「人はそれぞれにふさわしいものを得る」ってことだな。

だから毎日、自分がなりたい者をイメージして、それにふさわしい行動を考えな。そうすれば自然と、何をすべきか、何をすべきじゃないかが見えてくる。

これから社会に出るお前らはいろんな所で試されると思う。とくに誰も見てないところで試される。誰も見ていないところで何をするかがお前らの真価になる。そして、それは考えてることがどうとかじゃなく、行動で表すしかないんだ。

だから、行動がブレないように強くなりな。「強さ」ってのは誰かに勝つことじゃなくて、自分が思った通りに行動できるかってことだから。

誰かに憧れているうちはその人を超えられない

イン生:亀山さんみたいになるには、どうすればいいですか?

亀山:そんなキラキラした目で見るんじゃないよ。「インチキ宗教に引っ掛かるな」ってさっき言っただろ。すっかり騙されてるじゃない(笑)。

(会場笑)

亀山:俺のことを大して知らないくせに、勝手に崇拝するんじゃないよ。そんなやつに限って、ちょっとしたことで「見損ないました」とか言うのよ(笑)。

誰かに憧れてるうちはそいつを超えられないからな。さっきから俺の話をメモしてるけど、いい話だけでなく「そこは違うな」ってことも書いておかないと。良いところは教師に、悪いところは反面教師にな。

イン生:はい、すみません。騙されないように注意します。

(会場笑)

亀山:俺は地元の祭りで神輿を引くことがあるんだけど、そのとき横にいたヤンキーの兄ちゃんに、「亀山さん、俺はあんたを超えるからな!」とガンを飛ばされたことがあってね。「お前だれよ?」って感じなんだけど(笑)。

(会場笑)

どうせなら、それくらいイキがってほしいなぁ。さっき「なんでもいいから勉強しろ」とか言ったけど、同じやつの話ばかり聞いてちゃダメだからな。変な宗教やフェイクニュースの信者になっちゃうから。いろんな人から、いろんな話を聞いて、自分の頭で考えな。自分でブレンドした自分だけの宗教を作らないと。

思い通りにいかなくてもカッコ悪い大人になるな

イン生:会社に入ってから心がけることはありますか?

亀山:うーん、そうだなぁ。「思い通りにいかなくてもカッコ悪い大人になるな」ってことかな。

会社に入ったらいろんな人に出会うだろうけど、たぶん中には、やる気のない先輩とかもいると思うんだよね。お前らがはりきって仕事をしても、「そんなの適当でいいんだよ」って言われたり、改善しようと提案しても、「言われた事だけやってろよ」って怒られたり。そんな尊敬できないカッコ悪い大人はどこの会社にでもいると思うんだ。

カッコ悪い大人がなんでカッコ悪いかっていうと、「どうせ俺なんて」と開き直ってるからなんだよ。「どうせ、俺なんて出世しない」と諦めて、「どうせ、部下に慕われない」とスネてるから、パワハラやセクハラでうさを晴らそうとする。

まだお前らが「カッコ悪い大人」をカッコ悪いと思っているうちはいいんだよ。だけど、そんな大人と長く一緒にいると「自分だけが真面目にやるのは馬鹿らしい」とか思いだしてくる。「あの人がやってることに比べれば、これくらいはいいかな」と自分の目線も下げてっちゃう。そして気がつけば、軽蔑していた大人と同じようになっていくこともあるんだ。

まあ実際、カッコつけるってのは大変なのよ。苦労の割りには報われないから。でも、カッコ悪いのは悲惨よ。自己嫌悪で自分が嫌になるから。だから、報われなくても自分で自分を褒めながらカッコつけといた方がいい。

べつに自己満足でもいいじゃない。どうせ俺たちは自己満足のために生きてるんだから。

仕事ではなく“人生の達人”になりたい理由

イン生:亀山さんっていろんな人から見た視点があると思うんですけど、亀山さん自身が自分の人生を振り返ってみてどういった人生だったのかと、聞きたいなと思いまして。

亀山:「人生を振り返る」って、終わった人みたいじゃん(笑)。

(会場笑)

亀山:どんな人生かね〜。好き放題やってきただけかな。大した人間でもないし、どっちかっていうと根性なしよ。でも、たぶん俺は人よりちょっと欲深いんだろうな。興味があるものとか、望むものとかが。

俺は商売で成功したいんだけど、それだけじゃ嫌なんだよね。仕事もできて、女にモテて、家族からも愛されて、友達もいる。そんな美味しい人生を望んでる人間なのよ。仕事の達人というより、人生の達人になりたいわけ。

たとえば、100億稼いでも家庭が壊れてるとか、家庭円満なんだけど家賃が払えずに友達から借金するとか、どっちも嫌なんだよ。それくらいなら、500万円くらい稼いで家族や友達がいるほうがいいのよ。

みんなもそれぞれに自分の理想の未来を想像してみな。「そこは豪邸なのか?」「山奥のテントなのか?」「一緒に飲める友達がいるのか?」「彼女はいるのか?」「子どもがいるのか?」それがお前らの目指すハッピーになるわけ。

イン生:理想通りの未来になるための方法というか、秘訣とかありますか?

亀山:もともとの理想があっても、人は日常の中で自分を見失っちゃうもんでね。俺も商売に熱中しすぎて家庭をかえりみない時があった。でもそれだと、思ってたのと違う未来になっちゃうよな。

俺はたまに、1ヶ月くらいの一人旅に出るんだけど、日常からしばらく離れると、そんな自分が見えてきたり、本当に大事なものが確認できたりする。

お前らも旅とまでは言わないけど、ときどき幽体離脱して遠くから自分を見るってことはしといたほうがいい。大事なものをなくしてから「あちゃー、そんなはずじゃなかったのに」ってならないようにな。

司会者:旅より幽体離脱の方が難しいと思うんですけど……。

亀山:確かに。そりゃそうだ(笑)。

(会場笑)

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