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亀山塾・ヤンキー編(全6記事)

「人生は『めんどくさい』との戦い」 DMM亀山会長が“コツコツ積み上げ”の大切さを語る

若者の就職支援を行う、株式会社ハッシャダイ。地方在住で18〜24歳の中・高卒者たちに、自らの選択肢を広げることを目指した「ヤンキーインターン」というプログラムを提供しています。2019年3月には、インターン生に向けた研修講演が行われました。ゲストは自身も高卒18歳で上京したDMM.com亀山敬司会長。インターン生を交えたトーク内容を6回に分けてお届けします。第2話の今回は、コツコツ積み上げることの大切さを語ります。

毎日のほとんどが地味な仕事の積み上げ

橋本茂人(以下、橋本):次の質問です。どうすれば、人生一発逆転できますか? 亀山敬司(以下、亀山):一発逆転ってのは、あれか? つまらない人生を送ってたやつに突然チャンスが来るっていう、『アラジン』みたいなやつ?

インターン生(以下、イン生):はい。それです。

亀山:ないない(笑)。王女様に偶然出会って、がんばったら王子様になっちゃうなんて絶対にないね。普通は「出会う」より「がんばる」のほうが先だろ。がんばったやつが王女様に出会って王子様ってのはあるかもだけど、逆はないね。

日頃コツコツと信用や力を積み上げたやつが、たまたま運に恵まれたときにデビューするだけよ。ギターを練習してないやつが、たまたまフレディ・マーキュリーに巡り合ってもQueenには入れてもらえないだろ。偶然を待ってるやつの人生は絶対に逆転しない。

イン生:亀山さんの周りになら、そんな話もあるかと思いまして。

亀山:どんなイメージもってるんだよ(笑)。

(会場笑)

亀山:俺がインタビューで「新しい事業始めました」とか、「こうやって儲けました」とか、派手な話ばかりしてるのは、そっちの方がウケるからよ。「コツコツやる」なんて話を聞いても面白くないだろ。

でも、実際に日頃やってる仕事なんてのは地味なもんよ。深夜にひとり電卓叩いたり、社員の相談に乗ったり、段ボール箱の経費を1円でも下げようと見積書を比べたりと、毎日のほとんどが地味な仕事の積み上げよ。

だいたい、「一発逆転」なんて言い出すのは、今が底辺だと思ってるからだろ。

イン生:はい。ここから上を目指そうと思っています。

亀山:でも、底は簡単に抜けるからな。まだまだお前らの足元には下があるから。間違っても、一か八かの勝負なんて考えるんじゃないぞ。マンガの『カイジ』や『闇金ウシジマくん』に出てくるような地獄まで落ちると、この世に戻って来れなくなるぞ。

(会場笑)

積み上げないやつには「かもしれない」がない

亀山:カイジとかは何も積み上げてないわけよ。コツコツが嫌だからギャンブルで体張ってるわけ。裏切られても死にかけても、まだギャンブルで一発逆転とか言ってる。バカなのよ。

まだウシジマくんのほうがマシよ。高利貸しで稼いだ金をコツコツ積み上げてる。でも、あいつがダメなのは人を殴りながら稼いでること。金と一緒に恨みも積み上げてるから周りが敵だらけになる。マンガだから生き残ってるけど、本当だったらすぐに死んでるし。

イン生:最終回で死にましたよ。

亀山:あら、そうなの? リアルだね(笑)。

まあ、どっちのタイプにせよ、騙したり騙されたりしながら奪い合ってる。一発逆転しようとしたら、身体を張るか他人から奪うしかないからね。でも、そんなやつは、結局は最後に同じことをやられて逆転よ。上手くいっても一瞬だけ。すぐにまた逆転されて前より悪くなるね。

そもそも誰と逆転しようってんだよ。他人なんか無視して自分と勝負しろよ。地道にストイックに力を積み上げてきたやつが、ある日爆発するからカッコいいんだろ。

お前らも5年先か10年先かは分からないけど、積み上げてきたことが何かの機会にきっと爆発する。……いや、「きっと」はないか。爆発する「かもしれない」(笑)。

(会場笑)

亀山:でも間違いないのは、積み上げないやつには「かもしれない」がないってこと。

イン生:それってやっぱり運が必要ってことですか?

亀山:同じようなやつが同じように努力しても、「運」のあるなしはあると思うよ。まあ、それでいえば、俺の場合は8割がた運だな(笑)。

ビデオレンタル店が当たって、その金でDMM作って、エロのおかげでアマゾンに食われずに済んで、その後FXやゲームやソーラー発電で稼げた。わらしべ長者みたいなもんよ。運がなきゃこんなにうまくいくはずがない。

……おいおい、そこでうなずくなよ。そんなに、うなずかれると腹が立つ。

(会場笑)

亀山:俺もべつに何もしなかったってわけじゃないからな。2割くらいは俺の努力よ。でも、残りは運に委ねるしかないだろ。

「運」は人じゃどうしようもないから「運」なのよ。変な石を買ってもインチキ宗教に入っても、絶対に「運」は変わらない。そんな無駄なことに金や時間を使うくらいなら、今の自分にやれることをやるだけよ。やるべきことをやらないやつは、「運」が目の前に来てもスーッと通り過ぎて行っちゃう。

仮に、宝くじに当たったとしても、いい気になってすぐに使っちゃって、それでも足りなくて借金しちゃって、当たる前より不幸になって、最後には、「あの時、宝くじにさえ当たらなければ」と、自分の不運を呪うんだ。

20代のうちに「本当の信用」を積み上げておけ

橋本:20代の間に何を一番に積み上げたらいいのでしょうか? お金、キャリアなど色々あるかと思いますが。

亀山:なんだかんだ言っても、やっぱり一番は「信用」だな。今のお前らが積み上げられる金や知識はたかがしれてる。それより何倍も価値があるのが「信用」だな。フォロワー数や「いいね!」みたいな薄いもんじゃないよ。「お前なら安心だ」と言われる本当の信用。

「信用」ってのは、買えないし、奪えないし、育てるにはものすごく時間がかかるもの。一度なくしたら取り戻すのも大変で、とても壊れやすいもの。だからこそ、それにはすごく価値があるのよ。「信用」さえあれば、多くの人が味方になってお前らを助けてくれる。なんの取り柄がなくてもどこかに居場所はできる。

人を騙したり裏切る連中は、この「信用」を積み上げられない。人間関係を換金して消費していくだけ。会った人を傷つけて、恨みをかって、敵にしていく。特に今はSNSで「あいつはこういう奴だ」と噂が広まるからな。会ったことのない人までが敵になっていく。

同じ数だけ人と出会っても、会った人たちを順に味方にしていくか、敵にしていくかで、お前らの未来は大きく変わるってことだな。

人生は「めんどくさい」との戦い

橋本:こんな質問も来ています。「東京に来たことが良かったのか、今の自分が前進しているのか、不安になることがあります。どう思いますか?」

亀山:「どう?」って、俺に聞かれてもわかんねえよ(笑)。

(会場笑)

亀山:ただ少なくとも、一人で東京に来たことには価値があるんじゃない。東京が怖いか怖くないかも、来てみないと分からないだろ。田舎の良いところも悪いところも、離れてみないとわからないだろ。

前進してるかどうかは、昔と今を比べてみな。田舎にいた頃に地元で「カッコいいな」と思っていた人が、今はカッコ悪く見えたりすることってない? 高級車を乗り回したりとか、いろんな女とヤッたことや腕力を自慢するやつとか、「あの頃は憧れてたんだけどなぁ」みたいなのない?

イン生:あります。

亀山:もし、昔の知り合いがカッコ悪く見えたなら、それは今お前たちの周りにいるやつらの方がカッコいいってこと。そして、「昔の自分が恥ずかしい」って思ったら、それはその頃の自分より今がマシになってるってこと。つまり成長してるってことよ。どう、わかる?

イン生:はい、わかります。でも、ときどき地元に帰りたいと思うことはあります。

亀山:「昔の自分に戻りたい」と思ったなら帰ったほうがいいけど、「寂しいから帰りたい」なら、もう少し辛抱しな。しんどくても今は、自分を成長させてくれる場所に身を置いたほうがいい。

そりゃあ、気心の知れた仲間と一緒にいるほうが楽しいに決まってる。でも、自分を変えたくてここに来たんだろ。戻るんなら何かを変えてから戻れよ。ここはスポーツジムみたいなもんだからな。周りが運動してればお前らも一緒に走れるだろ。でも、家に帰ったらめんどくさくてトレーニングする気にならない。

人生は「めんどくさい」との戦いよ。でも、俺たちみたいな意志の弱いやつは、自分だけじゃ変われない。だから、自分の周りにいるやつがすごく大事。べつに都会でも田舎でも何処でもいいのよ。自分を高めてくれると思える場所にいろってこと。

イン生:がんばってみます。

「ダメなのは俺だけじゃない」思考は、世界を狭くする

亀山:ハッシャダイでは途中で辞めちゃうやつはいるの?

橋本:何人かは来なくなりますね。音信不通になるインターン生もいます。

亀山:やりたいことが見つかって辞めるならともかく、東京に居ついたままズルズルと楽なほうに行っちゃうやつもいる。でも、逃げてばかりいると会えるやつがどんどん変わっていくからな。叱ってくれるやつがいなくなって、慰めてくれるやつばかりになる。

そして、お互いに顔を見合わせて、「ダメなのは俺だけじゃない」って安心し合う。そのほうが楽だからね。でも、尊敬しない者同士が集まってグチっていても何も変わらないからな。自分の世界がどんどん小さくなるだけよ。

だから、もし、サボって来にくそうな仲間がいたら、できるだけ声をかけてやりな。そいつは説教される勇気がないだけだから。「ぜんぜ〜ん怒ってないから」っておびき出して、のこのこやって来たら説教してやりな(笑)。

(会場笑)

亀山:説教するのはそいつのためだけじゃなく、お前らのためにもなる。「教わる」だけじゃなく、「教える」で学ぶこともあるってことよ。わかる?

イン生:はあ、なんとなく。

亀山:うん。まあ、今は「仲間を減らしたくない」くらいでいいから、声をかけてやりな。

人を説得する力さえあれば何でもできる

橋本:次の質問です。「営業力って本当に必要なんですか?ヤンキーインターンで営業研修に行っているのですが、『今やっている事が本当に将来役に立つのだろうか』みたいな事が多々あるのですが。」

亀山:あちこち飛び込み営業とかやってるの?

イン生:はい。飛び込みもありますが、最近は電話営業も多いですね。

亀山:う〜ん、そうだなぁ。営業やってるとナンパが得意になる。

(会場笑)

亀山:何回もやってるうちに度胸がつくだろ。ナンパも営業も勇気がいるよな。知らない人に声掛けるってのは大変なことよ。

俺もお前らくらいの頃は露天商をやってたけど。初めて原宿の路上でやったときは恥ずかしくて逃げたくなった。でもそのとき、初めてネックレスを買ってくれた女の子のことは今でも覚えているよ。

100人に声掛けたら99人は冷たくされるんじゃないかな。でも、1人くらいは話を聞いてくれる。それがお前らの成功体験。99人から傷付けられたキズがお前らをタフにする。そして話を聞いてくれた1人が、お前らの勇気になる。

営業力ってのは、相手に近づいて、気持ちを伝えて、説得するってことだから。ようはコミュ力よ。これから社会に出ていく中では絶対にいるもんだな。どんな場所でも人にさえ好かれたら何とかなる。愛嬌さえあればどこでも生きていけるよ。人間、最後の最後は好きか嫌いかだからな。

イン生:確かに、お客様から「お前が気に入ったから契約する」と言ってもらったことがあります。

亀山:そうか、いいね〜! 相手の目を見ながら笑顔で話せるってことは、授業に入れたいくらいの重要なスキル。だけど、学校では教えてくれないので、せっかく学歴が良くても面接で落っこちるやつは山のようにいるよ。

経理だろうがプログラマーだろうが、人と関わらないでできる仕事はないからな。俺なんかは人との関わりだけで仕事をしてきたから。

IT企業の会長とか言われているけど、プログラムは一行も書けないし、ゲームもFXも3Dプリンタもやったことない。でも、代わりにそれをやってくれる社員とコミュニケーションができた。みんなをそそのかしながら仕事をやってきた。だから、お前らも人を説得できる力さえあれば何だってできるってこと。

イン生:ありがとうございました。営業力つけます。

亀山:でも、口先だけ達者になってもダメよ。すぐにメッキは剥がれるから。誠意をもって相手のためにもなる、心に刺さるような営業力が大事。

そして、お客さんだけでなく、上司や仲間を説得できる営業力を持てば、それは人間力よ。

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