2024.11.29
“マニュアル作成が進まない問題”をAIで解決 管理者の負担も軽減できる、先進AIツール活用法
提供:サイボウズ株式会社
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青野慶久氏(以下、青野):これは実は僕が教えてもらったことで、今名古屋商科大学でMBAを教えておられる北原さん。昔サイボウズのグループ会社の社長をしてくれてたんですけど、彼が「意思決定には品質がある」と言い方をした。
良い意思決定というのは精度の高い意思決定。もちろんそれもあるんだけれども、もう1つは納得できた意思決定かどうか。精度の高い意思決定だとしても、上から降ってきたみたいなね。こんな感じになったらみんなやりづらいよね。
それが「俺も戦略作りに参加したぜ」みたいなこんな気持ちがあったら、これは品質が高い意思決定と言えると。多少精度が低くても。そういう意味では大事なやり方だなと思うね。
大槻幸夫氏(以下、大槻):巻き込んでいくという、この感覚ですよね。昔経営の本で『経営は「実行」』という素晴らしい本がありましたけど、絵に書いた餅になっちゃうわけですよね。
青野:実際やるときには、「現場はなんでこんなことやらないといけないんだろう」って思ってたりすると、正しくてもうまくいかないよね。
だからツッコミがあがってもなんでもどんどん……逆にツッコミもらえると、僕が間違った意思決定する前に気付けるわけですよ。ラッキー、危なかったみたいな。あとでバカ扱いされるより、今バカ扱いされたほうがいいやみたいな。そんな感じですよね。
大槻:ここに至るまでの青野さんの変化というのが興味深いなと思って。ふつうの社長さんだったら突っ込まれたくないというか、そんな自分をさらけ出したくないとか、そういうのがあると思うんですけど。
大槻:ここに至ると、みんなが突っ込んでくれるから楽みたいな感覚になっていて(笑)。手放してる感というか、達観じゃないですけど。この感覚、おもしろいなって思うんですけど。どうでした? 最初からできたんですか?
青野:いやいやいや。もうぜんぜん。それこそ僕が社長になったのは2005年なんですけど、昔は戦略とかも自分で勝手に決めて「みんなやってくれ」とかやってて。で、うまくいかなくてね。2年間くらいでいっぱい失敗しちゃいましてね。ぜんぜん業績も出ないし、離職率も高い。
1回ギブアップしちゃったというか。自分の中では人生1回終わった感じがあったんですよね。「あぁ、俺こんなに能力ねぇんだ」みたいな。そこがある意味、開き直りというか、悟りというか、覚悟というか、バカなんだからバカにされて当たり前。そう思った。
「ごめん、俺バカだからみんな教えて」「どんどん意見出して」ってやったら、意思決定の精度も上がるし納得感も上がるし、事業戦略説明会もしなくてもみんなよく理解してるし、楽だなみたいな。
大槻:育休のときもそうおっしゃられてましたよね。自分でできないから権限委譲してって。あの時期もそういう時期でしたよね。
青野:そうそう。早く帰らないといけないからね。任せていかないといけなくてね。そういう意味では制限されるっていいことなのかもしれないね。手放すにはね。
大槻:多様な個性、100人100通りとサイボウズは言ってますけど、1回縛ってみて、残業なしっていうのもプロセスの中ではありなんじゃないかっていうことでしょうね。
青野:ありかもしれませんね。1回全員育休だとかって男性もやってみてね。体感してみることで手放せるものに気付けるかもしれませんね。
大槻:寂しさはありましたか?
青野:めっちゃありましたよ。だって育児休暇取って帰ってきて、なんにも問題なかったですからね。「俺いるのか!?」っていう話ですよ。
大槻:だからああなっちゃったんですね(笑)。Twitterばっかりな(笑)。
青野:もうTwitterやるしか仕事ねぇぞみたいな(笑)。
大槻:そんなことはないですけど(笑)。おもしろいですね。
青野:そんなことがありましたけどね。
大槻:その事例でおもしろいのがこれですよね。
青野:あ~これすごかったね!
大槻:サイボウズはもともと水道橋にオフィスを構えていたんですけれども、2015年に今の日本橋に移転してきまして。もちろん最初から日本橋に決まっていたわけじゃなくて、そのタイミングで……あ、これ名前出しちゃってますけど(笑)。いろんな物件情報があって。
青野:飯田橋、品川、六本木みたいな。
大槻:これをオープンに決めようということで、オフィス移転を語るプロジェクトのスペースを「kintone」で作って、みんなで情報共有しながら総務のプロジェクトが進んでいたんですね。ふつうの大企業だったら、たぶんプロジェクトチームだけで内々にすべて決めて、最終的にこうなりましたって言って大炎上すると思うんですけれども(笑)。サイボウズはそれをしないと。途中経過を出していく。
新しいコンセプトですね。プロジェクトを担当している松川さんがコンセプトはこれですという企画書を出して。社員からツッコミが入ってきてるんですよね。「これなんですか?」っていう。それに対して1個1個丁寧に説明していく。
先ほどのセッションで松川さんがおじさんセッションで話されていて、すごく炎上すると。例えばそんな高い物件に引っ越すんだったら、給与として還元してくれとか(笑)。いろいろな意見が出てくるんですよね。
もうヘトヘトになって、松川さんが何をしたかと言うと、先ほどの経営会議に持ってきて、「こんなになってるんです」という報告をしました。松川さんの思いとしては青野さんがきっと助けてくれると思ったと。「大変だな、松川さん」「松川さんが決めたとおりみんな従え」と言ってくれるんだと思ったら、青野さんがなんて言ったかと言うと、「大変だね」って(笑)。
青野:ははは(笑)。
大槻:「まあ、でもみんなと話し合って決めて」みたいな。「がっくりした」って言ってましたよ(笑)。
青野:え~助けてみたいな(笑)。本当これね、場所もそうですけど、どれを選んでもみんな文句言うし。キッチンのやつ覚えてます?
大槻:あ~ありましたね。
青野:キッチンを作るかどうかなんてめちゃくちゃ揉めて。キッチン作りたい派とキッチンなんか作ったら生ゴミ出るから嫌だみたいな派が出てね。でも相当ディスカッションして、キッチンを清掃する仕組みを作ってね。「それだったらいいや」みたいな落としどころをちゃんと見出してね。すばらしかった。
大槻:やっぱり意思決定の質が上がってる感じがありますよね。そこを無視して進んでたら最終的に「じゃあキッチン誰掃除するの?」って問題になってたかもしれないのが、早めに気付けたということですもんね。
青野:そう。みんなの叡智を集めてね。あとはやっぱり公明正大にすると、嘘によるトラブルとか、こういうものを防げるんじゃないかなと思います。
大槻:いきなり経営課題に入ってきましたね(笑)。
青野:このスライドを選んだのは大槻さんだからね。一応言っときますけど。
大槻:他意はないです(笑)。
青野:今社会問題になっているような大きな事件って、現場のちょっとした嘘、もしくは経営者がなにかを隠していたとか、そういうことが原因になっているのがすごく多いと思いますね。
それをやらないというのは、ある意味ディフェンスでもある。自分たちが生き残るためにも失敗を隠さないでいるっていうのが、実は生き残り戦略として大事なのかなとかね。そんなことを思いますよね。
大槻:無料サービスで「サイボウズLive」というのを提供していたんですけれども、システムが老朽化して。「kintone」が絶好調ですので、経営リソースをそちらに集中させようという青野さんの判断があったんですよね。この終了の意思決定も同じように公明正大に決めていったと。
青野:そうですね。これもオープンなところで議論して、議事録も公開しながら何週にも渡って議論してね。それで最後はいろいろ悩んだけど終了って決めたと。鈴木亜希子、登場です(笑)。このイベントプロデューサーです。
大槻:何回も登場(笑)。遅刻はするわ、青野さんに突っ込むわ。すごいですよね。これは先ほどの経営会議の「kintone」の議事録アプリで「サイボウズLive」がこういうふうに終了しますよと。これも最終的に終了を発表で知るというような大企業も多いと思うんですけれども、社員に対してすぐ公開して。
それに対してコメントが付けられますから、鈴木さんは「もっとお客様の立場に立って、終了するとなったら移行先とかいろいろ手配をしなきゃいけないから、余裕を持ったかたちで発表したい」。そんなコメントをくれたんですよね。
青野:そうだよね。すごく勇気のある発言でしたね。でもこれがあったおかげで、そのあとすごく適切にプロセスを踏んで、お客さんにも移行してもらえたし。これ社外に公開されたのは確か11月くらいだったんですけど、3ヶ月くらい前から全社員はこのインサイダー情報を知ってたんですよね。派遣の人も含めて全員が、インサイダー情報を見ながら発表に向けて準備していった。おもしろかったね。
これはスローガンですね。公明正大を浸透させるために1つスローガンを作ろうというので、「アホはいいけどウソは駄目」っていう、非常にわかりやすいものを作りました。これがね、今日取り上げたいポイント。
大槻:そうですね。
青野:公明正大って言うけど、何がないといけないか。これですよね。これ。(スライドの「心理的安全性」を指す)これがないと本当のことなんて言えねぇよっていうこと。
大槻:そうですね。心理的安全性。
青野:心理的安全性。アホはいいっていうところなんですよね。アホを駄目って言った瞬間に本当のことが言えなくなる。これは東大の熊谷先生と対談させていただいたときに、そのことをすごくロジカルにおっしゃってて。
彼は当事者研究という研究をされてます。どういうことかと言うと、例えば麻薬を何回もやっちゃう人がいらっしゃるじゃないですか。そのときに「なにやってんだ、お前!」って言っても残念ながら解決しない。
ちょっと落ち着けと。何回も繰り返しやってるねと。研究してみようと。なんであなたは繰り返しやるんだろうねって言って、向き合うんじゃなくてホワイトボードに研究をしていく。こういうふうにすると、ちょっと客観的になれて自分を責める気持ちを横に置いておける。誰かを責めたい気持ちを横に置いておける。これが当事者研究という考え方。
大槻:そうですよね。まさに今おっしゃったのはタイムリーな情報で、昨日でしたっけ。田代まさしさんがまた麻薬で捕まって。最近のネットの反応なんか見てても、まさにこういう感覚っていうのが、ちょっとずつ広がってるなと思うんですよね。
あれは気持ちの問題じゃなくて依存症で病気だからっていう、そういうことですよね。一歩引いて、その人がどうだっていうんじゃなくて、なんでこの人はこうしちゃったんだっけって研究してみる。
青野:そうそう、研究してみるっていう感覚だね。良い悪いじゃない。この感覚がないと、本当のことが言えなくなる。なんかやっちゃっても隠したいって思っちゃう。
「無責」っていう言葉を僕らは使ったりしてね。自責でも他責でもない。無責。なっちゃったもんはしょうがねぇよなみたいな(笑)。
大槻:そうですよね。
青野:えっと、これは……出た。寝坊(笑)。
大槻:寝坊の報告があったとしても、彼が「寝坊で遅刻しました」って書いていても、サイボウズ社内で何が起こるかと言うと、先輩社員が「この目覚まし強力です」「寝坊してしまいがちなときってこういうとき」とか。本当に無責に近い感覚で部下の寝坊と向き合ってるなっていうのが(笑)。
青野:本当だね。責めるんじゃなくてね。新たな課題を提示してくれてる。
大槻:きっと寝坊で大失敗したんでしょうね(笑)。だから優しくなれるのかも。
青野:気持ちわかるみたいな(笑)。
大槻:この感覚ですね。
青野:この感覚は大事ですよね。あとこれは、働き方のやつもオープンにしてますよね。例えばこの方だったら「金曜は在宅勤務します」と、はっきり自分で宣言しているということだったりとか。この人は複業ね。
大槻:「ガルーン」のスケジュールのラベリングに複業っていうのがあるので。これけっこうびっくりされるんですけど、「この時間複業やってます」っていうのを全社員に共有してるんですね。ここまでやるから複業が文化として根付くのかなって思う。
これがないと「あいつ、仕事イマイチだけど最近複業やり過ぎなんじゃないか」って疑心暗鬼というモンスターが、きっと頭をもたげてきちゃって。事実はこの時間だけなので、それを知ればなんともないっていう話ですよ。原因は別にあるっていう。
青野:隠れてコソコソ複業をしてると疑心暗鬼になっちゃうけど、これくらいしっかりオープンに。
大槻:はい。事実を出しておいたらぜんぜん問題ないっていうことですよね。
青野:これを出してても攻撃し合わない文化っていうのもね、それが大事ですよね。心理的安全性が大事ですよね。
大槻:ここでたぶん「じゃあ、そもそも私たちの会社に公明正大な風土を、どういうふうに作っていったらいいんですか?」っていう質問が出てくるかと思うんですけれども。ちょっとそのあたりをご説明いただいてもいいでしょうか?
青野:一番下の風土のところですよね。公明正大な風土を作る。私の中ではこの4つがセットなんですよね。多様な個性をちゃんと尊重しながらも、嘘つかない。1人ひとりが自立して議論して……。
大槻:そうですね。ちょっと古かったですね。
青野:こういう感じでね。
大槻:上の2つは目に見えるのでみなさん取り組みやすいんですけど、ここですよね。
青野:(スライドを指して)ここなのよね。僕が仕事してないように見えるのはここをやってるから。見えにくいところを。
大槻:なるほど(笑)。
青野:僕は発信し続けようかなと思ってますね。とくに公明正大。これわかりやすいね。公明正大。嘘つかない、隠さない。これを徹底的に。厳しいこと書いてるね。必須条件だから、できない人は去るくらいの勢いだぞと。
大槻:けっこう青野さんは「kintone」のピープルで発信はされてますよね。いろいろな時事ニュースを引用してとか。
青野:そうですね。やっぱりここを守り通さないといけない。これは先ほどの熊谷先生の当事者研究と近いんですけども。なにか問題が見つかったときに誰かを責めるのではなくて、自分を責めるのでもなくて、研究しようっていうのがこの問題解決メソッドとなります。
これは穴埋め問題なんですね。なにか起きましたというときに、実際何があったんだろうねと箇条書きにしてみる。それを事実のところと、解釈のところを分けてみる。
事実っていうのは見たこと聞いたことをそのまま、それについて何を思ったか(ということ)。現実の捉え方の中にも事実と解釈が含まれてますから、実際何が起こったのか、研究視点で見ればやっぱり事実は洗い出さないといけない。
それを見た上でなんでそうなったんだろうね。どうあると嬉しいんだろうねって穴埋め問題をしながら、じゃあ次何しようっていうプロセス。まさに僕らなりの当事者研究だね。これがあると意見が対立したときに議論が建設的になる。
大槻:そうですね。多くの会社でなにか紛糾したときに「みんなが言ってます」とか(笑)。よくあると思うんですけど。じゃあみんなって誰っていうと、みんなって解釈なんですよね。
青野:じゃあA君とB君と……。
大槻:2人かい! みたいな(笑)。
青野:そうそう、実際にはね。具体的には何言ってんだ? 何が起きたんだ? 本当こうやって穴埋め問題していくと、落ち着いて責任をなすりつけ合うことなく無責でできるっていう。こういうことですよね。
青野:あとこれもちょっとアピールしたいんですけど、やっぱ給与制度大事だなぁと思いますね。減点主義にしとくとね、なかなか言えなくなりますよね。だって言っちゃったら減点されて給料に響くんだもん。給与制度がそんなとこは見ないっていうことが大事。サイボウズの場合だと、働く時間や成果もスキルも、もちろん成功も失敗も全部見るんだけど、最後は適当に決めます。
大槻:あはは(笑)。これいい加減っていう意味じゃないですよね。
青野:落ち着くところに落ち着くだろうと。良い加減みたいなね。そんな感じ。これもある意味議論で決めるから、納得いかなかったら交渉してきてくれてもいいし。
大槻:そうですね。最近も社員のほうから自分の給与、市場価値、こんなオファーをもらいましたとか、そういった情報をもとにこれくらい欲しいですっていうのを、上司と話し合う。報酬希望アプリでしたっけ? 「kintone」でアプリができあがって。
毎年11月12月に給与について話し合うんですけれども、そこで社員のほうからも「これくらい欲しいです」というのを話し合うためのアプリができて。そういったところを通じてディスカッションを通じて決めていくっていうことになりましたよね。
青野:オープンだよね。おもしろい。ということで、徹底的に情報をオープンにシェアする。これが基本かなと思います。あと何分くらいですか? あと8分くらい。よし、ラストいきましょうかね。
青野:私たちが最近よくお伝えしてるんですけれども、情報伝達と情報共有の違いについてよくお話します。Eメールってあるじゃないですか。たぶんみなさんも仕事で使っておられると思いますけど、あれはやっぱり情報共有とは言えない。宛先を選んで出してるから、宛先に入らなかった人たちは知らないわけですよ。ある意味Eメールって、出せば出すほど情報格差を生んでるんです。
情報格差っていうのは知ってる人が強い。権力格差を生みます。また経済格差にもつながるかもしれない。そういう社会じゃなくて、とにかく見たい人はみんな見ようぜと。社長と大槻さんが何話してるかっていうのも、ほかの人も横から見れるし、割り込めるし、共有されたところでやりとりをしようっていう。これが僕たちの基本的な考え方です。これ大事だね。
青野:こんなサイボウズ流のやつをアピールしてみましたところ、去年出ました『ティール組織』ってやつがよくできてて。それを見事に明文化してくれましたよね。もしまだ読んでない方がいたら、ぜひおすすめしたいと思います。
(スライドを指して)今日は私の理解しているサマリーですけど。日本の組織ってこんな感じになってますよね。年功序列で下から入って上に上がっていくみたいな。こういうモデルにしておくと、情報は隠したがるんです。だって失敗したことが出たらエスカレーターから落ちちゃうから。
上に行けば行くほど少ない椅子取りゲームになってるわけですよ。椅子取りゲームから落ちないようにしようと思ったらね、嫌なことを隠すしかなくなるんです。ある意味、組織モデルが公明正大を阻害しているわけです。だから組織モデルごと本当は変えないといけない。
フレデリック・ラルーさんが出しているのは、ティールってこんな感じなんですよと。もっと1人ひとりが自立して好き勝手に動いている。椅子取りゲームとぜんぜん違う世界です。自分が思うところで思うように働けばいい。主体的。権限が任されている。でもね、誰かが困ってたらすぐ助けに行ける。1個の仕事に捉われなくてもいい。
こういう組織モデルであれば、情報を公開することはむしろプラスになります。自分が困ってたら「困ってるよ~」って言ったら助けに来てくれるわけです。「こっちの木大変だからそろそろ誰か来て!」って言ったら、「おぅ、わかった。俺今手空いてるから行くわ!」みたいな。こういう感じだよね。
大槻:おもしろかったのは、冬が来たときに、森は生命体ですから森と例えられていて、誰かが「冬が来るから冬支度しろ」って言うわけじゃなくて、森の中で生きている生命体はみんなそれぞれそれを感じて準備するでしょうと。その感じが近いですよね。
青野:ね。冬が来てるよ~って情報を誰かが発信してくれたら、「あ~そうなんだ!」と思ってみんな準備するわけだよね。
大槻:サイボウズって今、青野さんの感覚としてはどうですか? ティールに……。
青野:いやもうぜんぜん、ぜんぜん。
大槻:ぜんぜんですか?
青野:社長とかいうやつがいる時点で違いますね。(スライドを指して)だってこれ社長が誰かわかんないじゃないですか。ここまで行かないと。僕がこんな偉そうに役職名を乗ってる時点で、まだサイボウズはぜんぜんティールじゃないなと。
大槻:目指してはいるんですか?
青野:目指してはいますね。ここに向かっていきたいなと思います。
青野:あと5分くらいかな。これをぜひお話したいんですけど。今、働き方改革をやろうっていう話じゃないですか。そのときによく生産性向上を先に持ち出す人が出てくるんですよね。働く時間を短くして残業を減らすわけだから、その分生産性を上げようぜって。
いやいや、それをやろうとするとね、もうギューッて圧縮するしかないですよ。今きついのにさらにきつくなるわけですよ。
大槻:無茶ぶりですよね。売上目標が変わらないのに残業するな。
青野:残業だけ減らせって本当そうなっちゃう。その短期的な発想ではなくて、まずいろんな人たちがどんな犠牲を背負って働いているのか見てみよう。その犠牲を1個1個解放してみよう。時間が厳しい人、場所が厳しい人、複業やりたい人、いろんな人がいる。
その多様なやつを1個1個カバーしていくと、みんな連携プレーをせざるを得なくなる。自分がその働き方をしようと思ったら、次の人にうまくバトンタッチをしないといけない。連携プレーというのが出てくる。連携プレーが出てくると、業務フローの全体最適化というやつが進むわけです。
みんなでもうちょっと効率よく働けねぇかって、こういうふうな発想になっていくわけです。このプロセスでいくとめっちゃ生産性が上がるんです。仕事を一から見直しを始めますから。「この仕事本当にいるの?」みたいな話も出てくるわけです。
でも、それを時間を削減するところから入っちゃうから、きつい仕事がよりきつくなって終わっちゃう。それが僕の思うところです。考え方の基盤としては、大事なのは1人ひとりで戦うのではなくて、バラバラなやつがチームで戦うんだという。こういう発想をしてほしいんですね。
よく多様性が大事と言う方がいらっしゃいます。多様性を尊重しよう。気持ちはわかる。でもね、もう一歩踏み込みたい。多様性はうまくやると力になる。力になる。渋谷区の長谷部区長が「ちがいをちからに変える街」っていうね。
大槻:いいですよね。あのフレーズは。
青野:いいですねぇ。しびれますよね。違いは組み合わせると力になる。認め合うんじゃないんです。例えばね、僕がめちゃくちゃピッチャーやりたいとする。そしたらね、キャッチャーやってくれる人を見つけてこないといけないわけですよ。全員ピッチャーをやりたかったら困るじゃないですか。キャッチャーをやりたい人がいたらラッキーですよ。「お前! 仲間になろう!」「俺の球受けて」って。2人ハッピーってね。
大槻:確かに(笑)。
青野:この感じですよね。サイボウズの中では本当よく見る。
大槻:最近本当に多いですね。部署を超えて連携するチームがめちゃくちゃ増えてますね。「ソーシャルでつぶやくのが得意な人来て~」とか、ありますね。
青野:あるある。あそこに人脈があるからとかね。俺はあの地域にめっちゃ詳しいとかね。スポーツこれやっててとかね。いろんな違いを組み合わせて、みんな活躍してくれるよね。やっぱすげぇなみたいなね。あれがおもしろいですよね。
青野:もう1回戻ってきますとね、そういう多様な人たちが一緒に楽しく働くためには公明正大のインフラがいるねと。そのためには心理的安全性。アホなことをやっても詰められないっていうベースを作る必要がありますねと。そんなことを思っております。
青野:あとなんだ? オープンな経営。そう、オープンな経営。あとは製品の宣伝となっております。
大槻:PRです(笑)。
青野:私がちょっとお話しましたけれども、サイボウズのグループウェアの特徴は書けばみんな見えるというところですね。他社さんのグループウェアと何が一番違いますかって言われたら、サイボウズの場合はスケジュールを書けばみんな見えるし、kintoneでアプリを作ったらみんな見える。隠さない限りはみんな見える。でも、その公明正大のベースが本当に多様な個性を力に変えるには必要だなと思っております。
大槻:ということで、こちらのセッションは以上とさせていただければと思います。ご清聴いただきましてありがとうございました。
青野:ありがとうございました。
(会場拍手)
サイボウズ株式会社
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