世界63ヶ国でサービスを展開するLIFULLグループ

早川くらら(以下、早川):では次はLIFULLのクリエイティブ本部コミュニケーショングループの野尻様からお話しいただきましょう。自己紹介と簡単な変遷をお願いします。

野尻翔子(以下、野尻):株式会社LIFULL クリエイティブ本部コミュニケーショングループの野尻翔子です。よろしくお願いします。私の役割としては、コーポレートに関する活動や中核事業のLIFULL HOME’Sのサービスに関わる取材対応であったりというトラディショナルな広報業務が中心です。

社会人としてはアパレル会社のSEを経て、そこから広報の代理店に転職しました。7年間の広報の代理店での経験をもとに、事業会社の広報としてさらに経験を積みたいと、現在のLIFULLに移りました。社是の「利他主義」や経営理念などに共感し、昨年の7月からこのLIFULLに加わりました。

LIFULLは半蔵門に本社があり、海外のグループ会社も含めて、世界63ヶ国でサービスを展開しています。グループの規模としては全体で1,500名程度です。

中核事業は先ほどお伝えしました「LIFULL HOME'S」で、みなさんもCMなどでご覧いただいているかなと思います。不動産・住宅情報のポータルサイトとして、賃貸や売買、投資情報などを掲載しています。

その他にもグループ会社で、社内制度を利用して新規事業として立ち上がった「LIFULL介護」や、引っ越し、トランクルームなどの事業があります。そのほかの会社では、不動産のアグリケーションサイトで世界ナンバーワンの「Mitula」や「Trovit」を運営しています。

日本でのアグリゲーションサイトの認知はまだまだですが、海外では利用が進んでおり、国内と海外で異なる事業展開を進めています。

設立20年目で社名変更&マスターブランド戦略へ

野尻:弊社は1997年に設立をし、設立20年のタイミングで社名をネクストからLIFULLに変更したことが、かなり大きなターニングポイントだと思っています。社名変更については、当時の担当者からのエピソードをもとにお話します。

変更の理由としては、中核事業の「LIFULL HOME'S」だけでなく、先ほどお伝えした新規事業であったり、海外事業の展開も多くなり、さらなる事業展開を見据えたためです。

海外での展開を行っていくにあたり、ネクストという一般名称ではなく、「あらゆるLIFEをFULLにしたい」という思いを込め、LIFEとFULLからなる「LIFULL」を社名として採用しました。

「LIFULL」は社内公募で、141個の中から選びました。当時、社是や経営理念などはありましたが、コーポレートメッセージやステートメントを社名を変更したタイミングで、改めて定義しました。

そして、今までサービス名のみだったところを、マスターブランド戦略のもと、すべてのサービスに「LIFULL」という冠をつけ、サービスを展開していく戦略を取っています。

20年間使ってきた以前の名前(ネクスト)に馴染みがあった社員が多かったので、社名やコーポレートメッセージ「あらゆるLIFEを、FULLに。」を、社外はもちろん、社内への浸透も意識し、社内イベントや全社総会、コーポレートサイトで丁寧に説明や発信を続けました。

例えば、キックオフイベントにあわせて、ブランディングパートナーであった方と制作したムービーを流したり、ステートメントやメッセージの整理を体系立て、社内に浸透を図りました。

社内には、社是や経営理念、ガイドライン、スローガンがもともとありました。改めて私たちLIFULLがどうありたいかを定義し、社外に対して発信するメッセージを、コーポレートメッセージやステートメントとして明確に切り分けながら、発信をしています。

戦略・コミュニケーション・デザインをワンチームに、一貫した発信を行う

野尻:細かいですけど、それを詳しく書いたのがこれです。(スライドを指して)上から3つ目までの社是と経営理念とガイドラインは、1枚のカードにまとめています。

経営理念を実現するために、私たちがどう行動するべきかを常に意識し、考えなくても自身の行動に移すことが大事だと思っているので、役員からメンバーまで、このカードを常に携帯しています。

また、(スライドを指して)この下のコーポレートメッセージとステートメント、LIFULL ACTは、ステークホルダーのみなさんにもご理解いただけるように、コーポレートサイトで社外に対しても発信しています。

2017年の社名変更のタイミングでは、ブランドパーパスがなかったのですが、2018年にLIFULLがどのようなブランドとして活動していくのかを設定しました。

このブランドパーパスは、クリエイティブ本部でつくりました。クリエイティブ本部には、大きくデザイン部と、さまざまな戦略などを立てるブランド戦略部があります。

このブランド戦略部は、LIFULLというブランドのマーケティングを担当するブランドマネジメントグループと、プロモーションなど戦略策定を行うストラテジーグループ、この2つで構成されています。

(スライドを指して)その隣のコミュニケーショングループが、メディアのコミュニケーションのプランニングや広報などを担当するグループです。

このクリエイティブ本部のもとに戦略からコミュニケーション、そしてアウトプットとなるデザインまでがワンチームとなることで、一貫した考えのもとに発想・発信しています。

ちなみにLIFULL Labは、社内のR&D(研究開発部門)の組織です。LIFULLの未来をつくっていく上で、まだまだ研究が進んでいない技術や機能、アイデアなどについて、社内の先頭を走りながら取り組んでいる部署になります。

ブランドメッセージ「しなきゃ、なんてない。」をマルチメディアで展開

野尻:私がいるコミュニケーショングループは、PR1.0から2.0として、“攻める”をテーマに活動しています。ファクトをベースとした活動だけではなく、自らファクトを作ってコミュニケーションを図り、昨年からストーリーのある戦略の発信を取り組んでいます。

メルカリさんには敵いませんが、弊社だけではなく、いろいろな方にもご協力をいただきながら、月に1本のペースでイベントを弊社で企画して実施、発信しています。CMの発表会だけでなく、海外のグループ会社や佐賀県とのPRイベント、福井県・鯖江市でのイベントも行いました。

この他に、地球上でまだ見つけられていない素材を食べることで、地球のためになる「Earth Cuisine(アースキュイジーヌ)プロジェクト」も進めています。(スライドを指して)左上は、間伐材……直近のものは竹ですが、食材として未知数な素材を食べるこのプロジェクトも、先ほどのR&Dのグループのリードのもとクリエイティブ本部全体で取り組んでいます。

LIFULLは、ブランドCMを制作しました。昨年からオウンドメディアを立ち上げ、インタビュー記事などを通して、ブランドパーパスのメッセージ「しなきゃ、なんてない。」を発信しています。オウンドメディアは、LIFULLの発信の起点として活用しています。

メッセージの「しなきゃ、なんてない。」は、オウンドメディアだけでなく、ブランドCMの放映、SNSでの「#しなきゃなんてない」をテーマにしたキャンペーンを行いました。

このキャンペーンは、SNSを通してみなさんの声を拾い、社会課題の解決に向けたLIFULLのアクションに繋がるよう、現在取り組んでいます。

早川:野尻さんありがとうございます。広報の現場を幅広くご経験されていらっしゃいますので、現場でのお悩みは、野尻さんにいろいろとおうかがいできればなと思っております。

では最後、安間さんお願いいたします。

ユーグレナに入社後、マザーズ上場・東証一部への市場変更を経験

安間美央氏(以下、安間):こんばんは。株式会社ユーグレナの安間と申します。私の場合、パワーポイントがシンプルなので、口頭で補足しながらいきたいと思います。

株式会社ユーグレナの経営戦略部に広報がついてまして、コーポレートコミュニケーション課というところで、広報と秘書を管轄しています。広報は一般的な広報全般と、オウンドメディアの運営などを実施しています。

経歴としては、大学卒業後に東急電鉄に入社して、どこに配属されるかわからない状態で、突然広報に配属されました。「広報ってなに?」と思いながら広報を経験して。そのあとジョブローテーションで、不動産系の部門に行った後に、「ちょっと新しいことをやりたいな」と思って転職をしました。

実は大学時代は生物を専攻しておりまして、その兼ね合いもあってユーグレナでたまたま広報を募集していたのを見たんです。ユーグレナって生物なので、そのあたりで親和性もあって。

「広報もやっているし、これはお互いに合うのでは!?」と思って、転職させていただきました。そうしたら、当時ぜんぜん意識していなかったんですけど、もうすぐ上場するという……要は未上場の会社だったんですね。

そのあたりは本当に抜けているんですけれども、一応前の会社が上場企業だったせいか、まったく意識していなくて。あれよという感じでマザーズ上場を経験し、東証一部への市場変更を経験し、今に至ります。

上場時から2017年の9月までは広報とIRを管轄していて、その後IRが抜けて秘書が自分のチームに入りました。

バングラディシュの栄養失調問題から辿り着いたのが「ミドリムシ」だった

安間:弊社の紹介としては、2015年12月に、世界で初めてユーグレナの屋外大量培養技術の確立に成功した、東大発のベンチャー企業です。和名がミドリムシで、ワカメや昆布と同じ藻の仲間です。

(スライドを指して)これは実際ミドリムシの入った緑の液体ですが、もう目に見えないくらい小さい生物で。場所は石垣島の、太陽さんさん、きれいなお水のところで育てています。

補足すると、ミドリムシは59種類の動物・植物の両方の栄養を持っていて、理論上ではそれとお米などの炭水化物でカロリーさえあれば生きていけますよ、と言えるくらいです。

創業ストーリーとして、そもそもじゃあなぜミドリムシの事業をしているかということに関して。社長の出雲充が、大学時代に行ったバングラディシュで、栄養失調の問題を目の当たりにしました。それを解決するため、栄養豊富な食料を作ろうと考えて、ミドリムシに辿りついたんですね。

なんで? と疑問を感じるかもしれないんですけれども。実際にバングラディシュには、お米とかパンはあった。じゃあ、なにが足りないかというと、お野菜やお魚やお肉だった。

では、野菜・お肉・お魚の栄養素を摂れる食べものがないか。そういうものを探そうと思ったときに、動物・植物両方の栄養素を持っているミドリムシに行きつきました。

そこから培養方法確立のための研究を重ねて、食品として展開しようというのが始まりとなります。どうやってミドリムシの大量培養に成功したかについては、ホームページなどに載っているので、ぜひご覧ください。

上場タイミングは、社会に対してメッセージを発信するチャンス

安間:事業展開としては、先ほどもちょっとお話させていただいたんですが、機能性食品や化粧品等の開発、販売のほか、バイオ燃料の生産に向けた研究などを行っています。一見すごくバラバラに見えて、実際にも多様です。

(スライドを指して)向かって左上が「緑汁」という青汁タイプのドリンクで、右下が「one」というオールインワンタイプの化粧品です。この2つは通販で展開しています。年齢層としては、とくに中高年の方々から厚い支持をいただいています。

ミドリムシは、一見「ちょっと(食べるのは)……」と思う方もいると思うのですが、総じて健康的で商品は美味しいので、ぜひお試しください。

右側の工場のようなものはプラントで、実は日本初のバイオジェットとバイオディーゼル燃料を作ることができるプラントです。

SDGsについて、簡潔に説明させていただくと、先ほど私が入社して、マザーズ上場、東証一部上場を経て今に至る話をさせていただきました。実はそのタイミングに合わせて、社会に対してメッセージを伝えることができるかなというところがあって。

マザーズ上場前は「ミドリムシ? なにそれ、えー、食べるの? どうして?」みたいな追及がすごく多かったです。マザーズに上場したときに、“グリーンジャンボ”と言われるくらい株価も上がりました。私たちの会社は、食品の銘柄なんですが、研究から事業として進んできたバイオ燃料の見込みなども入っているようで。

そのときに、「なんだこの会社は。いろいろなことをやっているぞ」という声が増えたかと思います。もともとあったバングラディシュの話で、そんな熱い思いがあるのか。この会社は食品もやってバイオ燃料もやって、かつ東大発だったのか、と。

上場をきっかけに、より会社に対する注目が集まりました。会社の理解がすごく進んだんですね。それから東証一部に鞍替えをして、そのあと伝えているのがSDGsです。

会社の根幹である“SDGs”をPRのテーマとして設定

安間:先ほどお話ししたように、もともとがバングラディシュで食料問題から会社が始まっていることもあって、「私達にとってはSDGsは会社の根幹だよね」と思っています。

あと、会社の理念自体が「人と地球を健康にする」で、まさしく人と地球、私たちの未来を考えていく会社です。今までやってきたことにも、実際これからやっていくものも、SDGsにすごく合致しているのが事実なので、それをきちんと伝えていこうと思っています。

バングラディシュでの活動に関しましては、(スライドを指して)1の貧困をなくそう、2の飢餓をゼロにしようというところですね。

実際にバングラディシュで何をしているかと言いますと、日本国内のヘルスケア事業で展開している食品にドリンクや化粧品などをご購入いただくと、売上の一部をバングラディシュの小学校の子どもたちに、ミドリムシ入りのクッキーを給食として配っています。

バングラディシュに行くとわかるんですけど、みんな元気なのですが、サッカーとかをするとすぐ疲れちゃったり、あと小学生かなと思うと高校生で、(体が)小さかったり。なので、そういう子たちが健康になっていくことで、今後の未来を支えていくことをやっております。

あとはバイオ燃料事業に関しましても、バイオジェット・ディーゼル燃料実証プラントの竣工を起点に、日本をバイオ燃料先進国にするというその決意を「GREEN OIL JAPAN」として宣言させていただいています。

ここ1ヶ月くらいを考えても、小泉環境相やグレタさんなどのニュースが多く報じられていて、最近よく聞くという方も多くいらっしゃるのかなと思うんですけれども、今、気候変動が注目されています。

ヨーロッパでは“乗る恥”という言葉も出てきているとのことで。要は飛行機に乗ることで、CO2の排出が進んで、温暖化へと進んでいく。そこでバイオジェット燃料を使うことで、排出するCO2を減らすために、私たちは2010年からバイオ燃料の研究開発に取り組んでいます。

今のバイオ燃料につながる部分もあるんですけど、バイオ燃料は重要なんだろうけども、ちょっとピンとこない。私もはじめは正直ピンときませんでした。目に見えて変わらないからですね。

みなさまによりわかりやすく、自分たちはどういうことをやっているかをお伝えしたいね、と。

18歳以下のCFO(チーフフューチャーオフィサー)を公募

安間:それでこのたび、8月9日に「CFO募集、ただし18歳以下」という広告を朝日新聞の一面に出させていただきました。このCFOは「チーフファイナンスオフィサー」じゃなくて、「チーフフューチャーオフィサー」“最高未来責任者”です。

これは未来の主人公になる子どもたちの意見を社会、そして私たちの会社に反映させていくための企画です。地球や人の未来から考えて、今するべきことを伝えてもらうことを目的とさせていただいてます。

私たちの会社のCFOとして役員的なかたちで入ってもらって、私たちのこれからの事業活動に対して、例えば「5年後までに絶対にしなきゃいけないし、未来には重要だけど、今年は見送ろうかな」みたいな話があったときに、CFOには「いや、それは今やらなきゃいけないよ」みたいなことを言ってもらって。

本当に意味のある活動はなんだとか、そこからできることはなにか考えていくことで作っていただきました。

募集が終わりまして、実はCFOはほぼほぼ決まっていて、今月中には発表になる予定です。

その関連としてもう1つ、ミシュランでも星がついているとても有名な銀座のお寿司屋さんと弊社で、「寿司が消える日」という企画をSDGs週間の初日に発表させていただいています。

地球温暖化が進むと、魚が消滅してしまうことに……要は「このままだと近い将来、お寿司が食べられなくなってしまいますよ」という企画をネットを中心に実施させていただきました。

この企画は東大の海洋の先生にもご協力をいただいて、乱獲とかは除いて、単純に地球が温暖化して海面の温度が上がったりすることによって、鮭やイクラは2千何十年までに食べられなくなってしまうと。

「みんなが大好きで、日本が誇るお寿司が、今のままだと食べられなくなってしまうよ」ということを、自分事化しやすいものとしてキャンペーン化させていただきました。最近は、このような取り組みをさせていただいています。

今後は体制を整えて“攻め”の広報に挑戦したい

安間:広報体制について、広報を募集していたので広報として入りましたが、そのとき広報担当は誰もいませんでした。専任という意味では私が初代広報で、広報としての機能などを作ってきました。

現体制は私がいて、あと広報メンバーは3人います。1人はだいたい企業やソーシャルビジネスなどの担当をしていたり、ヘルスケアやプロジェクトケアの担当。もう1人はWebコンテンツ系を担当していて、計算すると、月にだいたい20から30件の取材対応があったりして、けっこうパンパン。

さっき矢嶋さんがおっしゃっていた意味では、“受けの広報”です(笑)。ただ、それぞれ関連がない事業がたくさんあるので、「この事業にはこの媒体は重要」など(相性)があって、絞り切るのはなかなか難しいところもあって。

“攻め”の課題は、今本当に体制を見直す必要があると思ってます。人が足りなくて募集中なので、いい方がいましたらご紹介ください(笑)。

(会場笑)

安間:ありがとうございました。

早川:ありがとうございました。みなさん、ありがとうございます。

(会場拍手)