ミッションは「知識労働の生産性を向上する」こと

北原佳郎氏:みなさま、こんにちは。ラクラス株式会社の北原と申します。

今ご紹介があったように、「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」という話は、当社(がやっていること)はちょっと違っております。(RPAテクノロジーズが運営するサービス)「BizRobo!」との関係はずいぶん昔から、本当に初期からのユーザーではあるんですけれども。

今日は展示ブースに来られた方々からも、「御社はちょっと違うんですね」という話をされているんです。人事業務に関しまして、AI等々を使って効率化してきたという事例を、ご紹介させていただきたいと思います。

今日、いろんな部門の方が来られる中で、人事の方にはずいぶんブースに寄っていただきました。人事関係のシステムなり、人事なり教育なりに関わられている方々って、どれくらいいらっしゃるでしょうか。ちょっと挙手をお願いできますでしょうか。

(会場挙手)

ありがとうございます。では、さっそくですけれども始めて参りたいと思います。

まず最初に、当社のことを簡単に紹介させていただきます。(やっている事業は)RPAとは違うんですけれども、「BizRobo!」さんと当社はまったく同じ、RPAテクノロジーズと同じミッションを掲げております。「知識労働の生産性を向上する」ということでございます。

日本は人口減少社会を迎えております。ご存知のとおり、人口が減って働き手が減って、真っ先にエンジニアが足りなくなって、実際に給与計算の担当者もなかなかいなくなってきていると思います。

人口減少のみならず、ドラッカーが「21世紀における企業の競争力というものは、結局のところ、知識労働者がどれだけ働けるかというところにあるんだ」と言っております。

「21世紀における唯一の意味ある競争力要因は、“知識労働の生産性”である」と言い切っているわけでございます。

当社は、RPAテクノロジーズさんとともに、先端の情報技術によって知識労働の生産性を向上させていきたいと考えております。

その方法とは、知識労働者を“反復労働”から解放することです。

日本企業、あるいは日本の知識労働者は、なぜか反復労働が大好きです。給料計算という、1ヶ月あるいは1年間に渡る反復労働を正確に繰り返すことを、一生懸命やるという傾向があると思います。私にとっては大変不思議なことであります。

反復労働は、この先どんどんコンピューターに置き換えられてまいります。その部分でいくら専門性を持って、責任感強く、納期通りに反復労働を繰り返す技術を身に着けたところで、それはご本人のキャリアになりませんし、会社にもプラスになってこない。

知識労働者は、何らかの新しい価値を生み出すという仕事に就かないといけない。だけども、未だに反復労働をせざるを得ないような仕事がいくつかございます。

今日はそれを解決する1つの方法論を、あるいは実際のサービスをお話したいと思うわけであります。

クラウド黎明期に創立した「人事クラウド」リーディング・カンパニー

簡単に当社の紹介ですけれども、2005年の5月、14年前に作っております。まだ“クラウド”という単語がなかった頃、ASPとかSaaSと言ってみたり、そういう単語は出てきておりましたけれども、一番最初からクラウドといったもので事業を始めております。

対象にしておりますのは、大企業向けの人事クラウドサービスでございます。

もともとなぜ2005年という初期からクラウド(事業)に入ってこれたのかと言いますと、その前、私どもはソフトバンクにおりました。そして、クラウドが普及しない一番の原因は通信回線が高いことでした。

1999年ごろから、人事をビジネスとしてやっているんですけれども、そのときに孫正義さんから「この先、通信回線は絶対早くなる。定額で高速になる。ならなかったら俺がやるから」という話がございました。

そのときに、クラウドといったものをサーバーをどこか1ヶ所に置いて、それを共通で使うというコンセプトに集中して事業を作っております。

そのあと、プライバシーマークは当たり前として、SOC1、SOC2というような報告書、あるいはデータセンターとかオペレーションセンターの二重化といったことを繋ぎまして、大企業様にも使っていただけるようなクラウドサービスを目指しております。

人事情報の管理意識はマイナンバーを潮目に変化

世に人事関係のクラウドサービスは多々あるんですけれども、今のところ「大企業向けである」と宣言しているのは、当社だけかと考えております。2005年当時は商談に行きましても、一番最初にやるべきことは啓蒙活動でございました。

「どうして人事情報を外に出すんだ。そんな大事なものをどうやって、どうして外に出せると思うんだ」というご質問に対して、「いやいや、そうではありませんよ」と宣教師のような活動をしながら事業を始めておりました。

ただ、大きく傾向が変わりましたのはマイナンバーでございます。同じお客さんのところにマイナンバー(管理)の商談をしに行ったところ、「マイナンバーというそんなリスクの高いものを、なんで社内に置いておくんだ」とお話をうかがいまして、その辺りから潮目が変わってきたなと思います。

最初の頃は、200人、300人規模の会社のクラウドで引き受けておりましたけれども、今は数千人、数万人という会社さんもクラウドを介して、もちろん十分なセキュリティチェックを行いながらお使いいただいております。

現在、管理対象人員、うちのサーバーに入っている個人情報は65万人分。企業グループで253社。その子会社も含めて約630社にお使いいただいているということでございます。

あらゆる人事情報をデジタル化し、自動処理できる統合ワークフローを提供

ここにありますけれども、人事BPOサービス、人事クラウドサービス、年末調整BPOサービス、マイナンバー管理サービスといったものを繋ぎ合わせて、人事に関するクラウドのフルサービスを提供しております。

求めているのはこういう図でございます。できれば一番頭のところで、今やスマホやタブレットなど、入力端末がいろいろとございますので、情報をすべて現場の入り口のところでデジタル化すること。これが1番目でございます。

すべてデータベースに繋ぎ合わせるための、統合したワークフローがあります。人事の世界で言いますと、ワークフローといった個別の情報と、あとはタイムカードの情報。これが必要ですので、そういったものをすべて統合したワークフローが(ある)。

そして、それらの情報はすべて1個のデータベースに入ってくる。これができますと、あとで簡単にお話ししますけれども、給与計算等々、1ヶ月に渡る繰り返し処理もすべて自動で処理できるようになってまいります。

デジタルで入った情報が、ストーンと上から下まで水が流れるように処理されまして、最終的にはデジタルデータのまま、今、国が進めております「e-Gov」でありますとか、お客さんの持っている会計データとの連携でありますとか、そういったものに繋がっていく。

All Digital、from Digital、Digital to Digital、Start to Endで、デジタル情報にしていくのが当社の求めている姿でございます。

こちらございますのは、実際のサービスの概要図になっております。お客様のところに必要なのは、ありとあらゆる種類のデバイス類、PCだろうがスマホだろうが構わない。それに対してそれを使って人事情報を扱うといったサービスを提供しております。

それを用いて、さらに給与計算等々をBPOで引き受けるというサービスも提供しております。その中で1つ大きいのが、今日紹介いたしますのが、年末調整BPOサービスということで、今までとはまったく発想が違ったサービスをご紹介できると思っております。

2番目は、統合とワークフロー。すべての情報をデジタル化して、それをデータベースに繋ぐということを、唯一のインターフェースで実現する。これが統合ワークフローでございます。

最後に、簡単に社保の申請をするシステムを紹介いたします。来年の4月から、資本金1億円以上の企業はすべて社会保険の申請を電子化することが求められております。それが実際どんなものであるかということと、どんな効果を生むのかという話をさせていただきたいと思います。

保険会社の控除証明書は500種類も 人事部の一大イベント“年末調整”

では、一番最初に出てまいりますのが、クラウドと画像認識AIで年末調整を効率化するところ。劇的に効率化することができました。「Hiiragi」というサービスでございます。

今現在、新しく出てきている人事クラウドサービスの中で、年末調整をペーパーレス化しましょうという会社はたくさんあります。決して1つや2つじゃなくて、たくさんあります。

今日は(会場に)人事の方々がおられるわけですけれども、まさに今、年末調整をされているのではないでしょうか。当社も「だいたい明日終わるかな」というくらいなんですけれども。

問題は、いくらクラウドを使ってデータのやり取りを電子化したところで、人事部の仕事は減りません。

なぜならば、「年調チェック」という言葉を聞いて、だいたいわかる方はわかると思うんですけれども、従業員が記入してくる保険料、あるいは住宅のローン、そういった控除証明書を読み取って確認する作業がございます。

あとで出てくる保険の電子申請もそうなんですけれども、なんでこの作業がろくでもない作業かというと、1つの作業に3分かかるのであれば、1,000人分には絶対3,000分かかると。そこには規模の経済が効かないんですね。そういうタイプの仕事であるからです。

人事部の方々がこの時期、「年調末日」とか呼んでおりまして、年末の一大イベントでございます。

従業員が書いてきた内容と保険証書の内容が合っているかどうか。だいたい6項目なんですけれども、契約者名・保険料・新旧・連動・適応制度・保険会社とこういったものを読み取って確認してまいります。間違いがあれば修正してまいります。

何しろ税金に関することですから間違えるわけにはいきませんので、2度チェックを行っています。なんでこれが難しいのかといいますと、保険会社ごとにいろんなフォーマットの控除証明書があるからです。

数えてみましたら、すべての保険会社で500種類以上ありました。その控除証明書ごとに書き方とかフォーマット、どこから数字を拾うのかといったものが(が違っており)、すべて確認を行っております。

これを人間がやりますと、ある程度の教育を受けさせて、それを間違いのないようにやってもらわなきゃいけないということが起こってまいります。やったことがある方はわかると思うんですけど、たくさんの罠が仕掛けられている。ある程度の知識がないとできない作業です。

もう1個、住宅ローンの残高証明書というのがあるんですけれども、これも100種類以上あります。全部フォーマットが違うということでございます。

こういう理由がありまして、年調チェックというのは未だに人事部の一大イベントとなっております。

膨大な数の証明書類の中からAIが適切なパターンを自動で判別

そこで、当社は画像認識AIを開発しました。

これは何をやっているかというと、600種類の証明書類がどこの保険会社が出したどのパターンの書類であるかを、自動的に判別するAIでございます。

一旦、どの保険会社でどれということさえ決まってしまえば、あとはテンプレートを貼り付けることができます。つまり、どの部分を読み取るかということを指定することができるということでございます。

(スライドを指して)これは、アクサダイレクトと書いてあって、太陽生命、ソニー生命と書いてあるんですけれども、全部フォーマットが違います。その中で読み取るべき場所を切り出すのですが、AIがどの保険会社のどの書類かということを判定しています。

その上、一旦わかってしまえばもう場所が違うわけがありませんから、読み取る場所を切り取ってくるというようなテクノロジーになっております。

AI自身はコモディティです。今、とても安く買えます。ですから、それ自身は難しくないんですけど、AIに覚えさせるためのデータを揃えるのがすごく大変です。

先ほど申し上げた600種類に対して、何百枚かずつのサンプルがないとAIがきちんと動いてくれません。それをやった結果、作業が非常に効率化したということでございます。

これは同じく他の保険会社ですけれども、AIが読み取る場所を保険会社ごとに控除証明書の種類を決めた上で、テンプレートが貼り付けられる仕組みになっています。

では、次にどうするのかと言いますと、こういうかたちで切り取った画像だけが出ててきます。保険の証明書は「新」と「旧」2つの制度がございまして、これらで保険の控除のやり方が違うんですね。

このオペレーターの人は、2つが「新」なのか「旧」なのかをだけを選んでいる作業をやっています。ずっとスクロールしていくだけですので、スクロールしながら旧と書いてあったらそれを選ぶという作業をやっています。とても簡単な作業。日本語さえ読めればできるという作業をやっているところです。

もう一方の方はこういうかたちで、令和元年分の証明書であるかどうかということを、ひたすらチェックをしているのです。ときどき去年の証明書を送ってくる人もいますので、そういったことがないように、すべての証明書をこういった方法でチェックしています。

今まではそれを1つ1つ誰かが見て、「年度よし、氏名よし」と言いながら保険料の入力をしていました。それをこういうかたちの単純作業に置き換えたわけであります。

これは金額を入力している人たち用の画面です。金額を入力するために金額の部分だけが切り取られていって、その金額の部分を入力すれば、それでその人の作業は終わってしまうようになっています。

すべてを組み合わせますと、読み取るべき事項、確認すべき事項はカバーされるというのがミソです。

OCRを使わないのは、“完全に”正確であることを保証できないから

「OCR(光学文字認識)を使わないんですか?」ということをよく聞かれます。OCRもAIも税金とかに使うのはちょっと問題がございまして。何が問題かと言うと、100パーセントは保証してくれないということであります。

お客さんからもよく言われるんですけれども、「OCRで読んでいます」と言いますと、「OCRが正しいかどうかを証明できるんですか?」という質問をよく受けます。

残念ながらそれはできません。100枚あったらそのうちの3枚くらい、どれかはわからないけれども間違っている可能性があるというサービスを、お金が絡む仕事に使うことはできないと考えております。

今のところ当社は、切り取った画像を読むのは人間でやっています。OCRの場合、場所をきっちりと特定しないとできませんので、そういうかたちで人間様の目を信じてやっていく。

それでも読み取る場所がわかればいいということは、この仕事にもはや専門性はございません。

数字が読める、あるいは日本語が読めるという人を集めて作業をすることができます。というのが、AIと人間を組み合わせた仕事になっているわけであります。

読み取りが完了しますと、ご本人にはメールが送られます。「あなたの保険料控除はこうなっていますよ」というかたちで送られます。

ご本人が詳細を知りたい場合、クラウドにログインすれば、すべての詳細情報、あるいは当社がスキャンした画像等々が中に入っております。本人が確認して、そのデータを税務申告に使えるということでございます。

人事部が「これで終わり?」と驚いた データダウンロードするだけの年末調整

「Hiiragi」は単にクラウドだけではなくて、クラウド+BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)のサービスです。人事の方にやっていただくのは、データアップロードするだけです。

社員がクラウドに入力して、社員は証明書からの読み取り不要、入力も不要で書類を提出する。「Hiiragi」は当社が読み取った内容を確認する。ここまで終わりましたら、あとは人事部の方はデータをダウンロードするだけでございます。

今年も初めて使っていただいた社員の方々からは「これで終わりなのか?」と驚きの声をいただきました。人事部の方々からは、なにしろ1ヶ月間の仕事が、この年末調整という行事がなくなっちゃいましたんで、「これでいいのか」と言われております。

この業務は、10月の末に控除証明書というのが保険会社から送られてきて、その結果を12月の給与に反映させなければいけませんので、企業の規模が大きかろうが小さかろうが、許されている期間は1ヶ月間だけなんです。

大きな、従業員が多い会社様ほど、負荷は大きくなるわけです。そういった会社様からのご注文をいただいているということです。今のお客様の規模は、だいたい1,000人から30,000人くらいで、当社の方で(クラウドサービスを)作っております。

たぶん、AIと言いますと、控除証明書を自動的に判定して、かつ、数字まで読み取ってくれるテクノロジーじゃないかと思われた方もいるかもしれませんけれども、残念ながら、今のAIではそれはたぶんできません。100パーセントは保証してくれません。

そこで、AIと人間の組み合わせというかたちでの効率化をご紹介した次第でございます。