人と機械が共感し、人を助けていく世界を目指す

河上純二氏(以下、河上):けっこう番組も進んできてるわけよ。後半戦に入ろうと思うんだけどね、この後ちょっと未来の話をしていこうと思うんだけど。

下地さんが将来的に、10年後ぐらいがちょうどいいかなと思うんだけど、10年後のありたい姿というのはどんなのをイメージしてたりする? 

下地貴明氏(以下、下地):あ、なるほど。端的に言うと、音声インターフェースの裏側にすべてEmpathが使われていたりする。

河上:やっぱそこなんだね。

下地:はい。(そこ)に、なると思います。

河上:デファクト(スタンダード)になっていたい?

下地:ですです。そこは間違いなく狙っていて。

今、プロダクトの方向をコールセンターに絞っている理由が、基本的には一番ナチュラルな会話がそこで成り立つ。どう振る舞うかがすごく取れる領域なんですね。

そのピーキー(特定の条件下では非常に高い性能を示すが、それ以外では安定性が低い)なデータを取ったうえで、「人と人の感情がどう動くか」に合わせたことを、機械に置き換えた時にどうするかが次のステップだと思っていて。それをやっていこうと思ってます。

やっぱり2017年、日本で言うと2017年にスマートスピーカーがAmazonで入ってきたじゃないですか。Amazonは小売りのことを考えて、ボイスコマースという領域をがんばって立ち上げようとしていて。2017年時点で2,000億ぐらいスマートスピーカーを通じた買い物があったんですよ。

これ(売上)が上がっていきますと言った時に、我々の感情解析を使うとその仰角がどんどんどんどん上がっていきます、というところに仕込んでいくのが1つ狙いです。

ただ先ほども言ったんですけど、これはあくまでPL上跳ね返るところなんですが。Amazon側がいろんな商品展開をやっている中で、本当はユーザーの満足度を高めるために、何かコマースを(通して)ある程度のメンタルヘルス的なサポートをしてくれると助かる人って、出てくると思うんですよ。

我々としてはそこを狙いたくて、表面はそこ(コマース)をやるんですけど、裏面では人のサポートができている......人と機械が共感して人を助けていく世界をやっぱり作りたいなと思っていて。

夢みたいな話をしてたいへん申し訳ないんですけど。狙いとしてはそこをやらないと、本当にエシック(倫理)的にかなり悪質というかイービル(悪)な世界に入っていくので、そうではないというところをどれだけ僕らがやっていくかが重要だなと。

“コマースが結果として消費者を救う”世界を実現したい

河上:ごめん、どういう意味? 悪質、イービルの世界ってどういう意味? 

下地:端的に言うと、逆を言うとですよ。「今この感情であったら物が売れる」「この人が必要じゃないものに対しても売れる」と言うことができるわけじゃないですか? それを「ひたすら売れるものなんですよ」と、突き詰めていった瞬間にかなりイービルじゃないですか。

河上:今、そっちの傾向が強くなっている世界観だと思うけど。

下地:そうだと思います。そうではなくて、それは自分のユーザーの状態に合わせて、ユーザーをある種救うというか。

ある種、例えば精神状態をチアアップしたりとか。落ち込んでいる状態を少し戻してくれるみたいな、何かアイテムをアマゾン側から言って(おすすめして)くれる話だと、かなりいい世界ができるじゃないですか。

それでも、物は売れているわけですよね。だから「物は売れて良かったね」という話なんだけど、それでユーザー自体も救われていく世界があって。

いわゆる元気になっていくと、体力ができていくと消費欲求も高くなっていって、どんどんどんどん消費するようになったらいい状況が作れるんです。

これが何も関係のない物を売っていく話だと、お金だけ浪費して、ずっと鬱々としてたけど鬱々としたものが解決しないまま悪い方向に徐々にいって、(結果として)消費が落ち込んでいく可能性もあります。

及川真一朗氏(以下、及川):確かにね。利益率の高いものを売っていこうという方法になっちゃうかもしれないですね、それだとね。

河上:強引に売っていく形にはなってるもんね。

及川:それをハッピーの方にどう持っていくかというのは、そこがけっこうポイントですよね。

河上:今、マーケティング領域の活動を卑下しているわけじゃないけど、とにかく1回目のリタゲが追いかけてこない? 俺そんなに求めてなかったんだけど、2週間ずっと出る。

下地:ちょっと踏んじゃっただけなのに。

河上:そうそう。(PC)画面を見せながら友達とか会社で説明してたりすると、「あれ、こいつ何、日焼けオイル......」

(一同笑) 

河上:……ってなるじゃない?

音声で本質的なインサイトを拾うことで、より消費者に寄り添ったマーケティングができる

河上:こういう改革感は表層的な世界観だから、そこはみんなと共通認識したいわけです。そんなに真面目に来るんだったら、今度は俺の(考える)10年を真面目に話そう。

下地:純二さん!

(一同笑)

河上:ビジネスとしては当然BtoBに行って、BtoBからしっかりと事業化、マネタイズをはかったり、企業拡大をすることが一番大事だと思うんだけど。

さっきの話からくれば、根底にあるのは「人々に寄り添っていく」「感情に合わせてもちろんエスコートして助ける」というのは、Amazonだったりボイススピーカーかもしれないし、もっと身近なEmpathじゃないハードウェアがやるかもしれない。

基本的には人間の行動パターンって3ヶ所しかなくて、働いている場所・家・サードプレイスと言われているくくりね。飲み場だったり、動いている時。

この場所に絶えずそばにいて感情を捉えていて、本質的に彼が今寂しがっていて、または彼が本質的にはいつも悲しい表層が高い状態がずっと続いていて、みたいな。絶えずわかってくれていて、そのデータをそれぞれのサービスが拾っていって、物を売ったっていいと思うんだけど。

上地:ああ、いい。

河上:それが本質的に合っている、映像の提案も本質的に合っているものみたいな世界になっていけば、表層的なマーケティングではない……。

みんなが本当「良かった、ありがとう」と機械に対して感謝するような世界観ができあがっていくんじゃないかなと思っているんだよね。そうなって欲しい? 

AIに「人がどんなことに対して幸福を感じるのか」を学習させることが重要

下地:はい、そうなんですよ。我々が目指している世界はまさにそこで、今ってワンバイワンにしかなってないじゃないですか。対面的で。

それに対して「行動に合わせて……」とか何か言ってるじゃないですか。もっと取り得る情報としては(他にもあるのに)、意外と内面データをなぜ取らないのかという。

日によって上がり下がりがあるところに対して、すべて同じデモクラティックな分析をし、「男性30代の男はこっちに動いたからこれをやっとこう」みたいな話って、違うじゃないですか。

そこが気分や感情にトラッキングする非常に重要なところで、先ほど言ったメンタルヘルスのところを被災地の中でやったときは、上がり下がりがあったわけですよ。そういったところで、(いつ)何を声掛けるかが重要になってきているわけです。

内面の情報に合わせて、いろんなコンテンツをちゃんと最適なものを出してあげることが、これからの括弧付で「AI」というのが必要になると思うんですよね。

AI自体の、人間がどんなものに幸せを感じるかというところを学習させる力というのは、我々の技術は重要なんじゃないかなと。

我々だけでは済まないんですけど、他のものもマルチモーダルに使いながら、彼らが、ユーザーが喜ぶ世界って何だろうということは見つけていかないといけないし。

「シンギュラリティで人間のアレはもう越えられるんじゃい」などと話されていますけど。そもそも人間がこういうことをやってほしくないということを、しっかり学習していれば実はそうはならないような気がしていて。

そこのパーツになる技術としては、我々の技術は1つ……。僕らだけではできないと思いますけど。

さっきの道徳の話に戻っちゃうんですけど、そういう仲間と一緒に仕事をしていくイメージが僕の中にあって、それを応援してくれる人たちが今、実際に集まってきているのはありがたいと思ってます。

河上:純二もそういうタイプだよ。

下地:純二さん! ありがとうございます。

コミュニケーションを手助けするハブとしての役割

河上:マーケティング......一番俺がこの会話の中でテーマにしたいのが、適材適所の世界観なんだよね。みんながさ、「こういう仕事に出会えて良かったな」というふうになっていく場所を選んでいけるために、この感情ツール「Empath」が寄与してくれたらすごくいいなと思っている。

下地:ありがたいです。実際コールセンターの中で今やろうとしていることは、かなりそこに肉薄しているんです。

ただ具体的な話まで正直できなくて、私含め他のスタッフも、実際のコールセンターの現場の人たちとかなりディスカッションしたうえで、ヒアリングもさせてもらったうえで、一番困っていることって人間関係だったりするんです。

コールセンターだけではなくて、いろんな会社もそうじゃないですか。そこをどう助けるかって、やっぱりコミュニケーションだと思っていて、それを手助けするアイテムというか。

先ほど共感ですべての対話を楽にするというお話を冒頭さしあげたと思うんですけど、対話で1対1になってしまう瞬間をな何かこう......。

河上:ハブが必要? 

下地:三者的に、入ってくる瞬間にうまくいくことって多々ある。

河上:それが純二なのよ!

下地:そういうことですか。

(一同笑)

河上:人工的にはそうです。

サードプレイスで出会った仲間だから、自分をさらけ出せる

下地:僕はサードプレイスという言葉が大好きで、だからサードプレイスで出会った仲間で今やっているんですけど。一番さらけ出す場所なんですよ。さらけ出してるんだけど、「お前さらけ出してきれてないよな」ということをお互い感じていると思う。

「これは何だろう」ぐらいからすごく仲良くなって今に至っている気がします。でも徐々にお互いさらけ出していくんですけど。いろんな悪さもしましたしね。

河上:いいコンビネーションだと思うよね。会ってないんだけど。次回は山崎さんも来てもらいますか! 

下地:ぜひぜひ。

河上:一気コール浴びせてあげましょう。

(一同笑)

河上:一気コールと場末感を出して。

及川:じゃあボトル1本買っておきますんで。

磯村尚美氏(以下、磯村):これ(感情分析ツール「Empath」)をみんなに付けてもらいましょう。

河上:そうだね。彼に、誰も観客が誰1人いないのに、プレゼンやってもらうの生放送してみましょう。なぜそれがうけるのか。

下地:やり切ると思いますね。

河上:どういう人柄なのかも、ビジュアル想像もできてないから。

下地:なかなか相当切れますよ、彼は。

河上:あぁそう。おもしろいね。おいくつの人なんですか? 

下地:33になる年ですかね、今年で。

河上:一番熱い頃だね。

磯村:今おいくつなんですか? 

下地:私は37です。

河上:いいね。

下地:ありがとうございます。

河上:だって俺ヨンパチだよ。

下地:いやいやいや、何言ってるんですか本当に。まだまだ。

河上:頼むよ。

下地:頼むよと言われましても(笑)。ちなみに僕も山崎もゴールデン街でカウンターの中に立っていた方なんで。

河上:そうなんだ。中に立ってたんだ。

下地:はい。これ(バーテンダー)はやらないんで、ステアで......。

河上:大好きなんだ酒は。お酒大好きな人なんだよ。

下地:お酒の場は大好きですね。

河上:俺だってゴールデン街2回しか行ったことないからね。

下地:マジっすか。いくらでも......言ってくださいよ。

河上:緊張するよ。あのコミュニティ。

下地:そうなんですよ。あれね、良くないと思うんですよ。

河上:緊張するよ!

リアルタイム感情分析の結果は……

下地:......良くないのかわかんないですね。今、渋谷にオフィスがあるんですけど、「のんべい横丁」ありますよね。のんべい横丁はものすごくオープンなんです。一見で行っても大丈夫。お客さん同士がすごく迎えてくれる。

ゴールデン街はだめですね、あれ……。それがいいか悪いかはちょっとまた別の文化の問題なんですけど。

河上:下地さんに連れて行ってもらおうよ。

下地:いくらでもお連れしますよ。

及川:ゴープロ持っていったらいいじゃないですか?

下地:ゴープロ......怒られちゃうんで。

及川:怒られちゃうね。撮影NGだもんね。

河上:新しい表現方法したい。俺もシータとか持っていく、360度撮れる......。

下地:お店の中入ったら、お店の人が許せば全部オッケー。そこは交渉ですよね。

磯村:これ(感情分析ツール「Empath」)付けてね、ドキドキをね。入った瞬間はかなり緊張してる。

河上:俺をドキドキさせてどうするの?

(一同笑)

下地:平常なんで、持ちネタっぽかった。

及川:「いつも言ってます」みたいなね。それきたらこれ、みたいな。

(一同笑)

河上:そういう人がいないと、あのコミュニティは入っていけないじゃない? どう考えても。

下地:そうですね。道先案内人がいるか、狂っている人が1人で突入するか、どっちかしかないです(笑)。どっちかというと狂ってる方だったので、ひたすらすべての......。

河上:ぜんぜんわかんないでしょ? それが。

下地:僕はすべてのドアを開けられる特殊能力者です。どんなとこでも、どこに出張行ってもどこでも開けられます。

及川:出張先の飲み屋街でということですよね? 

下地:はい。

及川:スナックとか? 

河上:だってゴールデン街がんがん扉開けて入ってたんだよ。

下地:「気になるな、ガシャン」みたいな感じでやります。いくらでもやります。

河上:すごい。がんがんいっちゃうわけよ。

及川:付いて行くのが一番いいんじゃないですか。

下地:すごいバーもいっぱいありますし、変な店もいっぱいありますからね。ガチャガチャやります。

及川:取りあえず1回開けてみる? 中の空気......すいません、みたいな。

下地:「あーはい」って。ゴールデン街では僕はそれをやったことがなくて、必ず開けた店で全部に入ってました。

及川:入るんですか。で、1杯飲む? 

下地:1杯は飲む。

河上:さすがだね、おもしろいね。

下地:やっぱり失礼なので。

河上:宴もたけなわだけどね、けっこう喋ったよ今日は。

下地:すいませんね。

河上:ぜんぜんいい。ぜんぜん大丈夫。

下地:酔っぱらいの会話で申し訳ない。

河上:ぜんぜんオッケー。

磯村:そろそろ結果診断を見たい。

河上:出せるの? そうか出してみようか!

磯村:忘れるて終わるところだった。

下地:ちょっと酔っぱらってたから。

磯村:C!

下地:C! 「元気」は真ん中であった。

磯村:元気は真ん中であった? 

下地:元気はまあ......。

河上:でも38パーセント!

下地:「喜び」は38パーセント! 一番大きく占めたのは喜びであったという。やっぱさすがであります、純二さん、さすがです。

河上:明るいってこと?

下地:明るかったです。これで悲しみが30パーセント占めていると、これはすいません、呼んだやつがやばかったという話になるので(笑)。

河上:じゃあもう良かったということだね、これは。

下地:バッチリです。4割近く喜びが出ているので。

河上:オッケー。今日はもうこのEmpathの画面を見ながらお別れするよ。みなさん、またね。さよなら。純二Cでした。

及川:お疲れさまでした。

下地:ありがとうございました。