2024.11.29
“マニュアル作成が進まない問題”をAIで解決 管理者の負担も軽減できる、先進AIツール活用法
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田中泰延氏(以下、田中):次の方です。お迎えしましょう。岩下千捺さん。いらっしゃいませ!
(会場拍手)
千捺さん。質問を読み上げさせていただきます。おかけください、どうも。
「岩下千捺です。私は現在3年生で商学部にいます。サークルでフリーペーパーのデザインに関わる中で、デザイン芸術分野に興味が湧いてきて、本格的に勉強したい気持ちが強くなってきました。
就職活動が始まる時期に入ったのですが、一般企業への就職は気が乗りません。休学もしくはダブルスクールでデザインの専門学校に行くことも考えていますが、友達に相談すると「学歴が無駄じゃん」と言うし、せっかく早稲田に入学した手前、親にも言いにくいです。
そんな宙ぶらりんな状態で、実際はなにも行動を起こせぬままで時間を過ごしています。デザインの専門学校に入ると決めたわけでもないし、そういう気持ちで就活に臨みたくないので、結局就活も進めていません。最近は、具体的に動き出せずにモヤモヤしている自分自身にも嫌気が差してきました。
そういう迷いがある状態で、どうすれば覚悟を決めて道を選び、動き出すことができるでしょうか? また、このまま就活して社会人になったあとでも、デザインを学ぶ機会は作ることはできるのでしょうか?」というご質問です。岩下さん、なにか補足があれば、ぜひぜひおっしゃってください。
岩下千捺氏(以下、岩下):岩下です。すごくデザインがやりたいなと思ったんですけど、もう3年生になってしまったので、今から始めるのにはいろいろ遅いなと思うことが多くて。それで、こういう悩みになってます。
田中:「今から始めるのは遅いだろうか」という悩みは、世の中いろんなことにありますけどね。う~ん、そうか。
幡野広志氏(以下、幡野):デザインってまた、スポーツ選手と同じくらい幅が広いんですけど(笑)。デザインの何ですか?
岩下:誌面デザインや広告デザインなど、とくにグラフィックデザインです。
幡野:へ~。
田中:岩下さんは、高校を出るときに「美大に行こう」という気持ちはなかったの?
岩下:そこまで本格的に考えてはいなくて。大学に行くときはとりあえずという感じで。
田中:とりあえず早稲田。すごい。
幡野:俺も入りたい。
田中:商学部だから、まったくそういうことと違う勉強ですよね。商業のことだよね?
岩下:高校を卒業するときにちゃんと考えていればよかったんですけど、なんとなくで入ってきて。サークルは一応そういうデザイン系のところに入ったり。
幡野:どういうサークルなの?
岩下:フリーペーパーを作っています。イベントとかもやってるんですけど。あとは夏休みにフォント会社で……
幡野:え? 何会社?
岩下:フォントです。フォント。
幡野:フォント? 文字? なになに?(笑)。
岩下:文字です、文字です(笑)。
田中:フォント(本当)?
岩下:フォントです(笑)。
田中:フォント~(本当~)。
(会場笑)
幡野:font? 文字のフォントね。
岩下:はい。
田中:「美しい写植の文字でアッピール」だよね。「愛のあるユニークで豊かな書体」、あれね。モリサワフォントよね。じゃあ、大学に入ってから「デザインいいなぁ」と思い始めて、3年生を迎えてしまったということやね。
幡野:そういうことかぁ。デザインの仕事で働いていきたい?
岩下:できれば……。でも、やっぱり私なんかって……。
幡野:出た。自信のない人(笑)。「私なんか」ですよ。
田中:私なんか! あなたで「私なんか」だったら、50歳の俺なんかどうしたらいいんや。路頭に迷っとるわ(笑)。
幡野:我々はきっと、勇気を与えてますよ(笑)。
田中:なんとかなってる、っていうね(笑)。
幡野:今は21歳、22歳?
岩下:21歳です。
幡野:21歳なら、もうってことはない気がしますけどね。
田中:ぜんぜんいいんじゃない? デザインやりたいって……さっきも好きっていう話だけど、やっぱり好きなことをやるのがいいと思うけどなぁ。
幡野:現実問題を言っちゃうとさ。たぶん早稲田にも写真のサークルとかあると思うんだけど、僕が写真サークルの子の作品を見て、その子が「カメラマンになりたいんです」って言い出したら、たぶん「甘いぞ、お前」って思っちゃうと思うんですよ。
大学のサークルのレベルって、スポーツ選手で言ったら中学校の部活動レベルだと思うんですよ。はっきり言って、プロの現場では通用するものじゃないので。だからと言って、専門学校へ行ったところで、プロの世界で通用するかというと、またそんなこともなくて。
僕も写真の専門学校へちょっと行ったんですけど、半年くらいで中退しちゃったの。「ぜんぜん役に立たないな」と思って。そのときに何十人も同級生がいたんだけど、やっぱりほとんどの人が辞めちゃってるんですよね。クリエイティブなので、あんまり学校とかに行ってどうにかなるというジャンルではないんですけど……。
それでも結局、グラフィックデザインの中でも、超一流から四流までいるわけじゃないですか。寿司屋で言ったって、回転寿司から銀座の久兵衛までいるわけですよ。
実は「自分がどこのグレードにいたいか」ということが、けっこう大事なの。そこに合わせた教育を受けなければ……だって、久兵衛を目指している人が、回転寿司でバイトしてもしょうがないでしょ? 逆に回転寿司で勉強したからって、久兵衛で通用するわけじゃないじゃないですか。
だから、まずどこに行くかということは1つ必要かな……。そう言うとたぶん、活躍したトップクリエイターみたいな人を想像しちゃうんだけど、やっぱりそれはそんなに甘くはないので。
岩下:デザインというクリエイティブの分野で、自分が今からやっても、そういうふうに働いて給料を得られるというか、生きていけるとはやっぱり思えなくて……。
幡野:いや、それはないと思う。お金は絶対もらえるし、生活する程度だったらぜんぜん大丈夫。世の中そんなに人手が余ってるわけじゃないし、デザイン業界も人手不足なので。今から勉強していたら、それこそ三流、二流くらいだったら別にいくらでもいける。それは間違いないと思う。超一流とかだとちょっと話が変わってくるんだけど。
幡野:今は「できない」って思い込んじゃうことのほうが危ない。なんで「できない」って思っちゃうんだろうね?
岩下:自分よりもすごい人とかを見ちゃうと……。
幡野:いやまあ、そりゃそうでしょ。
岩下:この前の夏休みに、美大の人たちと一緒に活動したんですけど。そのときに、その方たちから学ぶこととか、「いいな、すごいな」と思うことが多かったので。できればそういう環境に行ってみたいな、と思ったのは1つあります。
田中:なるほどね。ちょっと実践的な話をするけど、僕はコピーライターとして電通に入ったわけですけど。コピーライターとして電通で働くということは、さっき幡野さんが言ったように、クラスA、もしくはBくらいのグラフィックデザイナーとがっつり組んで仕事をするわけですよ。
その人と「こういうフォントのほうがいいんじゃない?」とか「これは見え方もっとよくしたいね」とか話し合って、仕事を進めていけるわけですよね。もちろんコピーライターも、フォントやグラフィックのデザインの知識と、ある程度の発言力がなかったら成り立たない仕事でもあるので。専門じゃないけど、そこに関わって生きていくところを目指すのはどうですかね?
岩下:はい。
田中:けっこう偉そうなこと言えるで? 東京藝大とか出てる、めっちゃ売れてるアートディレクターに「違うんじゃないの?」って(笑)。それはある。ただ、自分がコピーライターならコピーライターとして意見を言えるっていう自信がないとバカにされて終わるけどね。
幡野:友達に学校のことを相談すると「学歴が無駄じゃん」って言われたってこと?
岩下:言われました。
田中:言い方がなんか腹立ちますよね。「学歴が無駄じゃん~」って。
幡野:だいたいその人、デザイン業界にいないでしょ?
岩下:はい。
幡野:なんでもいいんだけど、なにかを相談するときに、せめてそれをやっている人に相談したほうがいいよね。だって、その友達はせいぜい同い年くらいでしょ? 社会にも出てなくて、学歴が有効かどうかもまだわかってないわけだよね。それはただのマウンティングを受けてるだけだから。
田中:あのね、みんなも覚えててください。友達でね、マウンティングしてくるだけのやついるでしょ? そういうやつに相談しちゃダメです! ……同じこと言ってますね。
(会場笑)
幡野:だって、結局それで自信を失っちゃうわけでしょ? それは意味がないよね。僕も昔は、なぜか写真家でもないやつに「写真家になりたい」って相談してたの。それで「お前には無理だ」って言われてたの。
今から考えると僕がバカだったんだけど、「お前には無理だよ」って言ってきたやつも、なんでそう言ったんだろうなって不思議なんだけど。
やっぱり、友達に相談しても意味ないですよ。別に友達が人生の責任を取ってくれるわけじゃないし。美大に行くでもいいだろうし、専門学校でもいいだろうし、なにかしら勉強して、そういう世界へ行っちゃったほうがいいんじゃないですか。
岩下:普通の企業で就活とかじゃなくて、自分がやりたいんだったら、そっちに行ったほうがいいっていう?
幡野:やりたいんだったらやったほうがいいと思いますけど。だって、その業界に行きたいわけでしょ?
岩下:はい。
幡野:僕だったら、別に早稲田に通う必要もないかなって思っちゃうけど。だって、あと1年以上商学部に通って、時間とお金がかかっちゃうわけでしょ? その時間とお金をデザインのほうに振り分けたほうが、僕はいいと思いますけど。
田中:商学部で何の勉強してるの?
岩下:商学部で、一応会計トラックなんですけど。
幡野:会計トラック?
田中:(運転するジェスチャーで)トラック?
(会場笑)
何? トラックって?
岩下:マーケティング、会計、経営……? コースが5つくらいに分かれていて、会計トラックで財務とか勉強してるんですけど。
田中:財務!
幡野:たぶんデザインには必要のないものですね。フリーランスになったら必要かもしれないけど。
田中:デザインと財務、「ザイ」だけ似てるけど違うだろうね。
(会場笑)
幡野:デザインと財務。そうですね(笑)。やりたいことが見つかっちゃってるんだったら、すぐやっちゃったほうがいいんじゃないですか?
岩下:でもやっぱり、ここまですぐ行動に移せていなかったり、自分のレベルがそこまでじゃないと思ってるということは、自分でもそこまで本気でデザインをやりたくないということなのかなって……。
幡野:デザインのほうに行って、「やっぱりやりたくないな、違うな」と思ったら、また変えればいいじゃないですか。だって、健康な人はきっと、人生80年とか生きるんでしょ? 別にいいんじゃない?
大学を卒業してどこかに入って、そこからずっと辞められないなんて、それはもはや懲役だからね。別に仕事なんて、どんどん変えればいいじゃない。変えちゃいけないことなんて、別になにもないでしょ。
岩下:行ってみて嫌だったら……。
幡野:行ってみて嫌だったら、辞めたほうがいいと思う。
岩下:辞めてって感じでも大丈夫ですか?
幡野:ぜんぜん。
田中:俺を見てみぃよ。電通に24年も行ってたのに。
幡野:24年って、(辞めるのに)勇気がいりますよね。
田中:やっと嫌だっていうことがわかったよ。あと、向いてないってわかったからね。
幡野:やりたくない仕事なんて、やらないほうがいいよ。僕は基本やりたくない仕事はやってませんけど、みんな苦労してがんばってやっちゃう。
田中:そう! みんなね。これだけ言っときたい。自分がやりたいことのためにやりたくないことをやる、って思い込んじゃいけない! ……さっきと同じこと言ってますね。
幡野:やりたくないことをやると、なにかあるんですかね?
田中:なんかね、みんな人生はサウナみたいなもんだと思ってるんですよ。「う~~」って耐えて、そのあと水風呂に入ると「気持ちいい」みたいな。それはもうサウナだけでいいですよ(笑)。そんなのを人生でやっちゃうと大変。そういう感じを味わうのに、サウナとかカラムーチョがあるんじゃないですか。それだけで十分ですよ。
(会場笑)
幡野:でも、まず早稲田の学歴が無駄になるとも思わないしね。間違いなく……。だって、デザイン系の職種では逆にいないので、なんだかそっちのほうが勝てる気がしますけど。
田中:本当ですね。早稲田から休学なりなんなりしてデザインやったとか。思い切って中退してデザインやったとかって、優秀かつデザインが好きなんだっていう。
幡野:もし僕が面接担当だったら、おもしろいなって思っちゃいますけどね。そんなにデザインが好きなんだ、というふうに思うけど。むしろグジグジと決められなくて、ダラダラいっちゃってる人よりも、はるかに印象はいいんじゃない?
なにも実績がないんだから、自信がないのは当たり前じゃないですか。しかも大学のサークルのフリーペーパーでしょ。それは実績にはならないと思うので。でも、実績なんて積み重ねていけば、必然的に自信になるし。結局、業界に入らないと経験が積めないので、その業界に入っちゃうのが一番いいんじゃないかな。
岩下:ありがとうございます。
田中:僕からはさっきも言ったけど、進路を曲げずに今からデザインをやるんだったら、広告代理店とか雑誌社で1回やってみて。文系のまま、デザインを生み出す勉強に1回トライして、それがダメだったら好きなほうへ進路を変えればいいし。そういうふうにいくつか選択肢があると思えばいいんじゃない?
幡野:文系のままでも別に行けないことはない。行ける行ける。じゃあまた、「電通入っちゃえば?」っていう。
田中:あ、今ちょっと人事局長に電話します! (電話をかけるフリで)「もしもし!」。今日はもうこれ(電話をかけるフリ)ばっかりやるからね。
(会場笑)
幡野:好きな仕事をしたほうがいいですよ。人生1回だと思うので。
岩下:はい。
田中:本当にみんなを代表して質問してくださって、大変よね、こんなところでねぇ。僕はマウンティングしかしてないけれどもね。
(会場笑)
幡野:学歴は無駄にならないですよ。無駄にならないと思います。
岩下:ありがとうございます。
田中:ちょっと楽しみなので、「こんな進路になりました」っていうのも、ぜひ教えてください。岩下さんでした。ありがとうございました。
(会場拍手)
幡野:デザインとか広告って、なんでこんなに人気なんですかね?
田中:あと、最近は映像クリエイターとかね。なんででしょうね。自分のふだんの「ちょっと好き」と職業が地続きになっている感じがするとは思うんですよ。
幡野:やっぱりキラキラした感じに見えるんですかね。
田中:なんかね。褒められるみたいな。
幡野:確かに。そうですね。
田中:そんなに褒められへんですよね(笑)。
幡野:そうですね。そうそうそう(笑)。
田中:でも、好きを目指すことはすごくいいことだと思いますよ。なんでもないよくわからない会社に入っちゃって、なにしてるかわからないというよりは。失敗しても、好きはいいと思うんですけどね。親御さん世代には、また違う意見があるかもしれませんが。
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