新規事業開発の現場でよくある4つの課題

現状の新規事業がどうなってるのかというところを、これからお話しさせていただきます。新規事業開発における課題って、いろんな企業さんのトップとやらせていただくと、主にこういったことを言われています。「アイデアを考えるんだけど、先行企業ってやる価値あるの」みたいな話であったりとか、「ユーザーインタビューとかをやりながらユーザーの新しい価値を発見しました。ただニッチで、企業としてこの領域のビジネスをするべきなのか」という話ですね。

また、「アイデアはあるんだけど、社内で意思決定ができなくて、結果実現しない」という、アイデアの屍たちがたくさんいるパターン。あとは、今めちゃめちゃイノベーション組織ができています。新規事業開発室とか、デジタルトランスフォーメーションなんちゃらとか。ただ「それを引っ張る人材がいない」。これはどちらかというと、マネジメント側から見た課題なのかもしれません。

なんでそうしたことが起きるかというと、「今までの手法が取られ続けていること」にあるんじゃないかなと思っています。何か新規事業を開発しようとしたときに、よくやる分析手法とか、フレームワークってこんなものなのか、と僕も思ったりします。

同じフレームワークが使い回されすぎて、独自性が失われてしまっている

しかし、「フレームワークってそもそも何のためにあるのか」を一度考えてもらえるとわかるんですが、再現性を高めるためなんですよね。なので、「ある一定のフレームで考えると誰でも正解にたどり着けます」というのが、フレームワークの本質的な考え方です。

メジャーになってるフレームワークはとくにそうで、企業の方々が同じように考えて、これだけに頼って同じような分析をしていくと何が起こるかというと、正解がコモディティ化していくんですね。

マーケティングのフレームワークって、ポジショニング戦略とか、コストリーダーシップとか、基本的に差別化をしていくためのフレームワークになってくるはずなんです。そのフレームワークを使った結果、独自性が喪失されてしまっているという、非常に皮肉な状況になっちゃっているのかなと思います。

当然、企業として新規事業で取り扱うべき問いや課題がどんどん枯渇していって、もう規模感のある課題とか意義のある課題というのは、あんまり残されていない状態になってしまっています。「じゃあ、現状、何を新規事業にしていいのかがわからない」みたいなことが、いろんな企業で起こってるのかなと思います。

結果、個人としても「これ、社会的に意義のある課題なんだっけ」というのをなかなか見出せなくなっている。何がやりたいのか、どういう社会にしたい、というビジョンが不足している状況になっちゃっているのかなと思います。

新しい価値を発見するために“未来視点”で今必要なものを見出す

そこで僕らは、「未来視点で考える」というのが非常に有効に働くんじゃないかなと思っています。「未来視点で考える」というのは、よく「バックキャスティング」という言い方もされています。「フォアキャスティング」が、現在を分析しながらその延長線上で課題を見つけ出して、事業を作っていく手法。バックキャスティングは、強制的に未来を発想しながら、今必要なものは何なのかということを見出していく手法です。

新規事業を未来視点で考えていくといいポイントって、僕は4つあると思っています。1つは今「問いが枯渇している」というお話を散々させていただいたと思いますが、未来ってそもそも社会の前提条件が異なってます。例えばで言うと、超高齢化社会が何年か後に訪れると決まっていますよね。老人が半分になったときに「今と同じ課題なんだっけ?」って、絶対違うと思っています。未来の社会課題って実は、(まだ見たことのない課題が)ゴロゴロしていますよという話です。

2つ目は、未来を一度考えてみると、今起こっていることの意味がわかるようになるんですね。のちほどこれを詳しくご説明します。今起こっていることを未来の兆しとして感じられるようになる。

未来の兆しが感じられるようになるとどうなるかというと、先行企業になれるんですよね。未来の1歩目、兆しというのが敏感に感じられるようになって、そこにビジネスとして投資していけると、今までは「考えたけど先行企業がいる」状態だったものが、自社が先行企業になれる。

3つ目は、新規事業をシンプルに定義すると、「未来の利益を生み出していく事業」だと僕は考えています。既存事業は今の利益を生み出していくものですね。じゃあ新規事業を考えて判断していくときに、未来を考えないと、未来に儲かる事業の判断ってできないよね、という話ですね。これは非常にシンプルです。

4つ目は、ビジョンドリブンな新規事業開発ができる点です。社会的意義のある課題が未来には残されていますので、「自分が未来をこう作っていく、こう変えていくんだ」という想いを個人として持ちやすくなるのが、1つポイントになりそうだと思います。

4ステップで“未来視点”の新規事業を生み出す

新規事業を未来視点で考えていくには、大きくは4ステップ、僕らはとっています。手法は違っても、どのクリエイティブの方々もけっこうこの4ステップを踏んでるんじゃないかな。

まず、把握します。把握した内容を抽象化して、価値に変えていく。それで、抽象化した内容をそれぞれ関係性で結びながら、より深い理解をしていく。最後にそれを言語化していくプロセスですね。それを未来視点で使ったときにどうなるのかを、今から少しお話をさせていただきます。

把握するというステップも、実はけっこう大事です。先ほどホテルとAirbnbの例をお話しさせていただきました。何か新規事業をこの市場でやろうと思ったときに、検討市場だけで考えていくと、今までの産業構造を前提にして考えていくことになります。なので、実際は何も見えないことが多いです。「わかっていることがわかったよね」みたいな。

僕らは、「検討市場の再構築をする」というのが、まず1歩目に把握する作業としては重要だと思っています。ユーザーの目的、顧客の目的ベースに市場を再構築していくプロセスを踏んでます。

「機能的な目的」と「意味的な目的」という言葉を使っています。例えばスキンケア市場で事業を起こそうとすると、機能的な目的は「肌をきれいにしたい」「きれいに保ちたい」というところですね。ただそれを実現する手段って、実はスキンケア、化粧水とかではなくて、食事とかフィットネスとか、さまざまな手段が実は同じ目的のもとに提供されてるよね、というかたちです。

まず検討市場を再構築し、人口×技術変化から社会変化を捉え直す

なので顧客の目的別に市場を改めて見てみると、実はいろいろな別の価値、別の市場が転がっています。それをまず可視化するところですね。

「意味的な市場」はどういうものかというと、「肌をきれいに保ちたい」というその欲求は、何のために肌をきれいに保ちたいのかを考えていく。例えば「自分に自信を持ちたい」とか、「良いパートナーがほしい」とか。そういったものがあるかもしれないんです。市場をどう捉えて、我々が事業として何を考えていくのかというのが重要であると。

この意味的な市場を見るのも非常に重要です。例えば「パートナーがほしい」みたいな意味が別の手段で叶えられちゃうと、その下に紐づく機能的な市場とか今の検討市場って、市場そのものがなくなってしまうんです。じゃあ意味的なものってどういうものなのかと考えながら、市場を把握していくのが非常に重要なポイントになってきます。

検討市場の再構築が終わったあとに何を調べるかというと、人口の変化と技術の変化を主にリサーチしていくというのが、WHITEが未来を考えていくときに取っているステップです。

僕らは、超高齢化社会とか、そういった人口の変化って、「決まっている未来」という解釈をしています。何年か後に人口構成がこうなりますよ、というのは決まっています。それと技術の変化を掛け合わせたところに社会の変化があると思っていまして、人口と技術を掛け合わせて、どういう社会変化があるのかというのを抽象的に捉え直すという作業が、次のステップで行っていることです。

例えば人口の変化で、団塊のジュニア世代が50代に突入するよ、みたいなのとか。2024年は3人に1人が65歳以上になるぞ、とか。あとは技術の変化でロボティクス技術とか通信技術が発展して、世界的規模でリモートワークが始まるんじゃないかとか。

こういったものを掛け合わせるとどういう社会の変化があるか。今も、もうそうなってきてるように、場所にも会社にも依存しない働き方が一般化するんじゃないか。こういう人口と技術の掛け合わせによる未来の変化の要因をたくさん出していって、マッピングしていく。