プラスチックが再利用につながらない理由

ステファン・チン氏:周りを見渡してみてください。どのくらいのプラスチックが目に入りましたか? プラスチックは本当に至るところに存在します。

(gazou1 0:10)

実際、科学者は海の最も深い場所でも、最も高い山の頂上でもプラスチックをつけています。

第二次世界大戦以来、私たちは80億メトリックトン(1メトリックトン=1000kg)ものプラスチックを生産してきました。その中で、たった9パーセントしかリサイクルされていません。しかし、それは人間が怠慢だとか悪いとか言うだけではないのです。では、私たちの生活において再利用を難しくしているものが何なのかを見てみましょう。

空港で購入するようなプラスチックのボトルに入った飲料水について考えてみましょう。毎分100万本ものプラスチックボトルが世界中で購入されています。単純にプラスチックボトルが1つの物質でできていると考えてしまいがちですが、それこそが1つ目の問題なのです。

プラスチック物質の2つのグループ

プラスチックという単語は全く異なる化学物質の集まりを指して使います。大まかに言うと、プラスチックはポリマーで、これは分子の重合体になります。形成の過程で、ポリマーは好きな形に変えることができます。そのため、様々な用途で使用できるのです。

現在では、全てのプラスチック物質は2つのグループに分けることができます。熱可塑と熱硬化性樹脂の2つです。熱可塑の独立した繋がりは比較的弱い化学結合から構成されています。物質が再度温められると、分子はその結合から自由となり新しい形へと変化することができます。

熱硬化性樹脂は、ポリマーの鎖はぴったりと結合した複雑な繋がりで構成されています。

この物質の繋がりを壊すほどに温めると、プラスチック自体が破壊されます。これが理由で、熱硬化性樹脂はとても強いのにも関わらず、リサイクルするのは難しいのです。

化学製品の中にはたくさんの異なるタイプの熱可塑がありますが、その中でもアメリカで最も一般的なのはPETとHDPEです。ポリエチレンテレフタラート、もしくはPETは透明で、適温で耐えることができ、破損にも耐えられます。高密度ポリエチレン、もしくはHDPEはより過酷な温度にも耐えられますが、PETのような透明度はありません。両方のプラスチック共に一般的なボトルに使われています。

リサイクル工場が両方のブラスチックを受け入れられるわけではない

しかし問題なのは、すべてのリサイクル工場が両方を受け入れてはいないと言うことです。ですからみなさんは適切に廃棄するために、どのタイプのプラスチックを捨てようとしているのか、また地元のリサイクル業者がどのタイプのプラスチックを受け入れているのかを知らなくてはなりません。

それでも、きっと間違いは起きるしょう。なぜなら1つの商品なのにいくつかのプラスチックの混合物である場合があるからです。例えば、ボトルはPETで作られていても、ふたがポリプロピレンの場合、これは別々のプラスチックです。

多くの人がゴミを捨てる前に、注意深く分別をすることがないため、リサイクル業者は受け取った全てのプラスチックを分ける必要があります。しかも、こういった分別作業は完璧に行われなければなりません。

例えば、プラスチックPVCがリサイクルされてしまうと、PETにダメージを与えたり、変色させたりする酸を生み出します。たった1本のPVCボトルが10000パレットものPETを破壊してしまうと言うことです。

密度と熱を利用した分別方法

こういった問題を避けるために、リサイクル業者は分別方法をいくつか持っています。まず一つ目は密度を使用することです。水に浸すとPETは沈み、それ以外は浮かびます。

他の方法は熱です。プラスチックは種類によって柔らかくなる温度が違います。

そのため、温度で異なる物質を分別することができるのです。

しかし、ほんの少し違う物質が混じるだけでも甚大な被害があるため、リサイクルは高額になってしまうのです。例えば、ニューヨークで1トン分の資源ごみを地中に埋めるより、リサイクルする方が200ドル余計にかかります。どんな種類のプラスチックを何の問題もなく分別するプロセスに投資したところで、リサイクルは大変なことです。

金属やガラスと違い、プラスチックはリサイクルする度に品質が下がっていきます。例えば、アルミニウムは元素なので何度溶かして使用しようとも、アルミニウム原子のままです。一方、顕微鏡レベルで言うと、プラスチックはとても長い分子の鎖になります。例えば、リサイクルすることができるプラスチックの1つであるHDPEは、100,000もの繋がったエチレン分子を持つことができます。

プラスチックが温められて何か新しいものに姿を変える時、この鎖のいくつかは壊され、物質の質は下がっていきます。業者はそこに新しいプラスチックを加えるので、リサイクルされたプラスチックでさえ新しいプラスチックが必要となってしまうのです。

プラスチックの寿命を延ばす技術「カスケード利用」

プラスチックの寿命を延ばす技術としてはカスケード利用というものがあります。これは、物質を相当低いレベルのものにして使用するというものです。飲料水ボトルとして始まったプラスチックが単なる棒になる前に、フリースジャケットに生まれ変わったりするということです。それでもまだ十分ではありません。残ったプラスチックは燃料のために燃やされるか、投棄されるのです。

小さなプラスチックの断片が最終的にはゴミになってしまうのですから、プラスチックのリサイクルなど存在しないのです。多くの場合、1回のリサイクルで終わることはありません。

2009年、世界中で採取された約4パーセントのオイルとガスがプラスチックになりました。そして、それ以外の3から4パーセントがその生産用のエネルギーとして使われています。現在では、プラスチックを断念しようとはしておらず、継続させるのに十分な理由があります。

健康にも、利用可能性としても、食べ物の安全に関しても大きな利点があるのです。けれど、私たちはプラスチックの使い方についてはもっとうまくできるはずです。

つまり、今あるプラスチックの寿命を延ばすための新しいリサイクル技術を開発することや、一度しか使えないような商品をなくすこと、どのプラスチックを使うのか、どうやって混ぜるのかについて慎重になることが大切です。