店舗を軸にコミュニケーションを図るアプリ「MUJI passport」

神尾武志氏(以下、神尾):時間もだいぶ遅くなってきて、一番疲れが出るときかと思います。主に私ですけど、若干見た目に華がないかもしれませんけど(笑)。元気よく最後のパートにいきたいと思っていますので! ぜひよろしくお願いします。

講演というよりは少しカジュアルにお話をしたいと思っているんですが。最後の部は『成果を生むために必要な、Web運営の「体制」』ということで、お三方にお越しいただいていろいろお話を伺いたいと思っています。最初に各社のご紹介をいただきたいと思っています。最初に角田さんからお願いできますでしょうか。

角田徹氏(以下、角田):良品計画の角田と申します。略歴が書いてあるんですけど、私は学生のアルバイトから無印に入って、店長をやって、エリアマネージャーをやって。ここでは、米国事業部長と書いてあります。すげぇかっこいいんですけど、MUJI USAというところの責任者をちょっとやらせていただきました。

日本の販売部長という営業のトップ、と言うとかっこつけちゃってるんですけど、国内の500店舗くらいの運営を任されていて。そこから今のEC事業部を担当させてもらっています。店舗あがりなので、ネットストアの店舗を最大店舗に仕上げるという目標を持って、今Eコマースをやっています。

角田:次のスライドのところで言うと、みなさんご存知だと思いますが、無印良品のWebサイトの運営をしています。あとはみなさんにぜひダウンロードしていただきたいのですが、MUJI passportというアプリがありますので、こちらの運営をしています。今は店舗軸をメインに、お客さんともコミュニケーションを図る取り組みをしていることが最大の特徴です。

リアルな接点を担当する宣伝販促部とデジタルコミュニケーション部門が1つの部署に

角田:どんな組織かと言うと、オープンコミュニケーション部ってちょっと堅いというか、変な名前だなと思われると思うんですが。旧宣伝販促というチームで店舗のコミュニケーションからソーシャルに向けてのコミュニケーション、すべてまかなうという。大きな舞台のデジタルを任されるEC部長を担当しております。

そこのEC課が、ネットストアの店舗運営とプラットフォームで制作をやらせていただいています。本社員の比率が多いのがEC課で、嘱託契約という専門職で雇っているのがプラットフォームというところです。今日はこんな組織の話ができたらなと思っております。

神尾:一部デジタルもやっていて、もともとリアルな接点を担当している宣伝販促部と、ネットストアを中心にやっているところが、この春に一緒の部署になったというのが、オープンコミュニケーション部ということですね。左上のEC部長が角田さんですね?

角田:はい。

神尾:ちなみにMUJI passportは今会員がどのくらいなんでしたっけ?

角田:今1,500万人ですね。

神尾:倍にせよと?

角田:そうです。「あと半年で倍にせよ」と言われて。絶対無理だと思うんですけど、がんばっています。

(会場笑)

神尾:まだダウンロードしていない方がいらっしゃったら、この場でお願いします(笑)。

角田:ぜひよろしくお願いします。

デジタルマーケで既存顧客との接点を持ち、新規獲得にも従事

神尾:続きまして、小倉さんお願いします。

小倉敏之氏(以下、小倉):三井住友カードのIT戦略部で部長をやっております小倉と申します。本日はよろしくお願いします。こちらに書いてあるとおりなんですが私は1995年に新卒で三井住友カードに入社したので、冒頭に池上さんのお話がありましたけれども、メンバーズさんができた年に入社しまして、今ちょうど25年目ということです。

経歴からいくと、デジタルマーケティング領域はぜんぜん経験しておりませんでして。どちらかと言うと、今まではベタなクレジットカード会社の業務を経験してまいりました。

今年の4月から、IT戦略部という業務部門にいます。名前的には情報システム部門っぽいんですけれども、マーケティング本部ということなので、今はそちらで部長をやっています。経歴としては半年程度ですが、今までの経験をしゃべっていきたいと思います。

その中で、私が今担当している業務は大きく2つ書いてございます。左下に書いてあるのが、私どもは「Vpass(ブイパス)」という名前で呼んでますけども、Webサイトがございます。あと同じくVpassでございますが、アプリも作っております。最近ですと、LINEなどの諸々のSNSを通じたお客様とのコミュニケーション企画と開発もやっております。

これだけだったらいいんですけど、最後にデジタルを活用したカード会員基盤の拡充ということで、営業計数(営業の数値目標)も持っています。カード会社、とくに我々は三井住友フィナンシャルグループなので、今までは銀行の店頭でクレジットカードに入会いただいていたことが多かったですが、そちらも先ほどの新生銀行さまのお話のとおりで、かなり店舗縮小もございますので、よりデジタルが重視していて、そこのミッションも持っています。非常に苦労しながらやっているところです。

体制でございますが、私の部署は全体で70名ほどおりまして、社員はその半分くらい。三井住友銀行などのグループ会社からの出向も、10名ほど受け入れております。あとは、メンバーズさんのオンサイト部隊ということです。

メンバーズさんの常駐としては、今9名ほど来ていただいていまして。オフサイトのほうでは合わせると22名から、業務の繁閑にもよりますけれども、最大で50名くらいでやっていただいております。

神尾:ありがとうございます。ちなみにカード会員さんは今、何人くらいなんでしょう?

小倉:1,000万ちょっとくらいです。

神尾:じゃあまた持たれていない方はよろしくお願いします(笑)。

小倉:私も数字(目標)もございますので、よろしくお願いします(笑)

ファンベースを作るために20アカウントを超えるSNSを運用

神尾:続きまして梅澤さんお願いします。

梅澤朋央氏(以下、梅澤):WOWOWの梅澤と申します。私は2011年に中途入社しています。実はそれまでは、メンバーズさんと同じようにベンダーサイドにいた人間でして。縁あってWOWOWに入っているんですけども、入った時点からデジタル領域の担当ということで、SNSの立ち上げや動画を活用したマーケティングをやっていました。

その後、いつの間にかスポーツ番組のプロデューサーをやらされるハメになりまして。数年ほど(所属していた部署から)抜けました。さらに2年ほど新規事業の立ち上げなどをやってですね。この春やっとまたデジタルというか、Webの領域に戻ってきたという経歴でございます。

神尾:左上の写真には触れたほうがいいですか?

梅澤:あ、大丈夫です。ちょっといい感じの写真がなくてですね。今度撮ってきます(笑)。

僕の担当領域は、WOWOWオンラインと言われているWOWOWのサービスサイトを統括しているのと、SNSですね。メールマーケティングがもう間もなくと書いてあるんですけど、今朝方(会社から)メール(マーケティングの話)も全部持っていけという話になりまして、ここも入りますので、メンバーズさんの支援がないとまずいなと思ってます。

WOWOWって毎年60万人くらいの(新規)加入者がいるんですけど、そのうち50何万人が辞めちゃうんです。その積み重ねなんですが、メインの加入導線がWebサイトなので、数字の進捗を追いながらやっているところです。

SNSに関してはいろんなアカウントがいっぱいあって、これもまた整理し切れていません。ファンベースをどう作っていって、そこから新しいお客さんをどう引っ張ってくるかということを考えています。

神尾:左の画面が運営されているソーシャルメディア。

梅澤:そうですね。

神尾:20個以上ある。ジャンルごとにあるような感じですね。

梅澤:ジャンルごとや番組ごとにあったりもして。ちょっと整理しないといけないなという感じですね。

梅澤:体制としてはデジタル推進部。名前が毎年変わっちゃうんですけど、この間まではデジタルマーケティング部と言っていて、この7月からはデジタル推進部になりました。

大きく言うと3チームあって、DMPを運用しているチーム、サイトとSNSを運用しているチーム、あとWMODはアプリのサービスで、WOWOWの見逃しサービス。いわゆる動画配信サイトですね。そのアプリ版をやっているチームがあります。

僕が運用しているオンラインとSNSは、メンバーズさんとWOWOWコミュニケーションズという子会社、もともとコールセンターをやっている会社なんですけど。当初はコールセンターのチームの中にデジタルマーケティングチームがあって、そこが全体を運用してくれていたんです。だけど、どんどん扱う情報量も増えてくるし、やらなきゃいけないことが増える中で、なかなか厳しいという。

あともう1社います。これはWOWOWのホームページを立ち上げた当時からいらっしゃるベンダーさんです。この3社でやってます。それぞれレイヤーがあって、役割に応じて体制を組んでいるという感じでございます。

神尾:これ全体で何人くらい?

梅澤:WOWOWコミュニケーションズの社内なども含めると30人くらいになっているかなという感じですね。

Web担当者になるのはイヤ? デジマ界の有名人の後任者の複雑な心境

神尾:わかりました。今回、小売・SPA(specialty store retailer of private label apparel:製造小売)の会社さん、金融・カードの会社さん、放送・サービスの会社さん。3社3様、業種業態は異なるので、それぞれ求められることとか、Webデジタルでの展開はもちろん違うところもあるんですけど。運営という意味ではたぶん両方あると思います。

どんなところが同じで、どんなところが違うのか。自分たちにどんなふうに活かせるのかなとちょっとイメージして、このあとの話を聞いてもらえるといいかなと思っています。

最初に人となりと言いますか、みなさんのお考えを聞くためにマルバツで5問の質問に答えてもらいたいと思っています。心の準備はよろしいでしょうか? 

1問目、「Webサイトを担当することになって、正直嫌だった」。どうぞ!

(角田×、小倉×、梅澤×)

おぉ。ちょっとつまんないじゃないですか。じゃあ2問目。バンバンいきます。「Webサイトを担当していて困らせられるのは、ほかの部署のことが多い」。

(角田○、小倉○、梅澤○)

あ、全員マル! 3つ目、「成果をあげるためには手段を選ばない」。

(角田○、小倉×、梅澤○)

マル、バツ、マル。次。「Webサイトの運営はコツコツやるよりドカーンと大きな施策をやるほうが大事だ」。

(角田×、小倉×、梅澤×)

お。違う。じゃあ最後。「自社サイトの運営は競合他社と比較して負けていない」。

(角田○、小倉×、梅澤×)

はい、ありがとうございました。今5問答えてもらったんですけど、角田さんと小倉さんは今年の春にWebデジタルの担当をされたんですよね。もっと言うと角田さんはぜんぜん別の遠いところから来たわけじゃないですか。正直、いきなり辞令がきてどう思ったんですか?

角田:正直、嫌だって言える雰囲気かどうか聞こうと思ったんですけど、聞く間もなく内示が終わったので。まあ戸惑ったんですが。当初嫌だったのは、僕の前任者が有名な人でして。たぶんみなさんも聞いたことがある、Kワナ(川名常海氏)という人なんですけど(笑)。この人の後任だったので、「ちょっと嫌だな~」と思っていました。今は非常にやりやすくて、居心地がいい。楽しいですね。

神尾:なるほど。前向きさが大事ですね。小倉さんはどうだったんですか?

小倉:直近が持ち株会社にいましたし、(IT戦略部が)新しい部署ということで正直何をやるのかが、あんまりよくわかっていなかったところがあります。Webサイトの運営自体は、メンバーズさんにもしっかりやっていただいているので、大丈夫かなと思ったんですけど。

私は営業経験があんまりなくて。先ほど申し上げたとおり、けっこう大きな営業計数を持っていましたので、Webサイトよりも営業計数のほうがちょっとプレッシャーだなというところが正直な感想です。

神尾:なるほどなるほど。よりビジネスが成果目標みたいなところがということですね。梅澤さんはもともと、そういう我々と近しいところから来られたので。それがある意味専門性ということで来られたという感じですね。

Web担当者あるある:他部署から急な依頼が飛んでくる

神尾:Q2。これ、会場にいるみなさんも多いと思うんですけど。デジタルとかやっていると、いろんな部署と関わりがあると思うんですよね。(関わりがあるのは)どのへんですか?

梅澤:やっぱり、Webだとなんでもできると思っている人が多いですよね。

神尾:あるあるですよね。角田さんはどうですか?

角田:一緒ですね。急に「明日できるんでしょ?」と言ってくる人が非常に多い。右から左みたいなことをすぐに言ってくるので、笑いながら怒るようにしています。

神尾:小倉さんは、そんなときにどう対処するんですか?

小倉:ある程度しょうがないと思うんですよね。依頼するほうも慣れていなくて。昔の紙だったらなんとなくわかったんですけれども、Webってピピッと書いて「まあこんな感じで」みたいな。私も着任するまでは(そう)思っていました(笑)。あんまり人のことを言えないなというところで、部下にはちょっと泣いてもらっている感じだと思います。

神尾:そういう(ほかの)部署側の気持ちもうまくわかって、実現してあげるのが、わりと部署の心構えとしては大事という感じですかね。

小倉:はい。

急な施策はもったいない。Web施策で大切なのはコツコツやること

神尾:みなさんバツをあげていたので、「Webサイトの運営はコツコツやるよりドカーンと大きな施策をやるほうが大事だ」というのは、「いやそうじゃないよ」と。「コツコツやるほうが大事だよ」とお答えいただいたと思うんですけど。このへんはどうですか? 

例えば無印良品さんだと、「良品週間」という会員さんは10パーセントオフという期間があるので、そこに向けて施策を集中することが大事だよね、とか。三井住友カードさんもWOWOWさんもキャンペーンだったり、ポイント何倍みたいな話もあると思いますし、そういうところに施策を置くのはけっこう大事だと思うんですが。

角田:とくにうちは小売なので、営業展開計画がおおまかに決まっています。これは半期でだいたい決めていくんですけど。ここに向けた準備を進めていくことが、やっぱりコツコツということだと思っていて。

急に「来月何するぞ」というのはあんまりうまくいかなくてですね。計画を立てて、それぞれのチーム体制を作って、1個のプロモーションを上げていくこと自体がすごく大事だと思っていて。

さっき言っていたのは、「良品週間」という10パーセントオフの企画です。ネットは通常期の10倍から15倍くらい売れる日になるので、メンバーたちにはここに在庫をどう持ってくるかとか、プロモーションを何個あてられるかということを事前にやることが、本人たちの成果につながる。コツコツやるほうが、施策として大きな成果が出るかなと思います。

Webサイト設計の考え方は、道路整備をするようなもの

神尾:梅澤さんは?

梅澤:僕は本当はコツコツやるのがすごく苦手なんですね。面倒くさいのでやりたくないんですけど。最終的には、だいたい「面倒くさいことって大事だよ」となるので、しょうがないからコツコツやるしかないなと思っています。

ホームページってわりとお客さんが迷わずに、自分が知りたい情報にたどり着けるようにしてあげるのが、必要最低限だと思うんですけど。道路などに例えると、そこの道路整備を怠ると、だいたいお客さんがどこに行っていいかわからなくなっちゃって離脱してしまう。

そうすると道路の例えでは事故が起こっちゃうようなことになるので、それを避けるためにもコツコツと手入れするしかないなと思っています。

神尾:なるほど。ありがとうございました。じゃあもう1個だけ。成果をあげるためには手段を選ばない。これみなさん○でしたっけ? ×でしたっけ? このへんはあとで聞きます。ありがとうございました。