3人の出会いは過去に失敗したプロジェクト

藤岡清高氏(以下、藤岡):本日は吹野様、鈴木様、村松様のお三方からお話を伺います。まず、みなさんはどのような経緯で出会い、リンクウィズを創業されたのでしょうか?

吹野豪氏(以下、吹野):僕は以前に在籍していたパルステック工業で、インテリジェントロボットシステムの開発プロジェクトに取り組んだのですが、3人ともそのプロジェクトメンバーでした。

残念ながら、当時は失敗に終わりました。しかし、その後のCPUやハード性能の飛躍的な進化を目にし、「当時のメンバーが再び集まれば今度こそ実現できるのではないか」と思ったことがきっかけで、この3人で創業しました。

鈴木は前職のメーカーで実際にロボットを使っており、村松は前職が自動車測定器メーカーだったので、自動車業界や測定器の知見があります。3人それぞれまったく違った経歴だったことが今の商品開発にうまく活きています。

鈴木紀克氏(以下、鈴木):自分が創業メンバーになるとは想像もしていませんでしたが、ダメになったプロジェクトがすごくおもしろいものだったので、「あれをもう一度できるならぜひやってみたい、やれる機会は今しかない」と考えて踏み切りました。

村松弘隆氏(以下、村松):前職の会社にずっといることと再チャレンジすること、どちらがおもしろく、どちらが後悔しないかと考え、最終的にチャレンジすることを選びました。

この2年で社員数が5名から25名となり、自社プロダクトをリリース

藤岡:前回のインタビュー(2017年9月)から2年ほど経ちました。あの前後にINCJ(産業革新投資機構)からの資金調達をされて、さらに2019年6月にはシリーズ Bの総額9億円の資金調達を行いました。大きく成長されましたが、この2年の変化についてお聞かせください。

吹野:内部の変化で言えば、当時4〜5名だった社員が現在25名になりました。そして、もっとも大きいのは、当時はプロトタイプだった製品を、正式なバージョン付きのプロダクトとしてリリースしたことだと思います。

社員数が増え、R&Dにリソースをしっかり振り向けることができるようになったことで、これが可能になりました。お客様からのオーダーに対して精一杯仕事をすることも大切です。しかし、それに満足せず、弊社のミッションでもある「お客様の働き方ごと革新できるような、まったく新しいプロダクトを開発しよう」という思いが実現できるようになったことが、一番大きな変化です。

鈴木:「自社として製品を開発していこう」というマインドは、たしかに強くなりました。お客様にフィットするような製品を、試行錯誤しながら作り上げていく。社員全員で、そのための前向きな会話が交わせるようになったと感じます。

村松:営業面についてもずいぶん変わっています。2年前は営業マンが1人もおらず、僕と吹野が外に出ていたのですが、現在は8人ほどいるので以前の4〜5倍のスピードでPDCAが回せるようになりました。

「L-Qualify」はメジャーバージョンごと作り直してようやく市場へ

藤岡:現在は「L-Robot」と「L-Qualify」というプロダクトがあり、売上や収益はかなり増えたのではないでしょうか。

吹野:そうですね。現在は売上の7割がプロダクトで、主にL-Qualifyからの売上になります。開発に時間がかかりましたが、現在は販売に集中できており、収益状況はかなり改善しました。

藤岡:現状に至るまで、開発や販売にあたってさまざまな壁があったと思います。とくに伝統的な技術を扱う業界において、新規企業のプロダクトを導入するのはお客様にとってもハードルの高い話だと思います。経営陣のみなさんがどのようにそれを乗り越えてこられたか、お聞かせください。

鈴木:プロダクト開発については、当初考えていたL-Qualifyのバージョン1は使用方法が複雑でした。「将来、中小企業に使ってもらいたい」という開発コンセプトにそぐわなかったこともあり、使用されているお客様からいただいた意見などを盛り込んで、バージョン2の開発に着手しました。メジャーバージョンごと作り直す作業は非常に大変ではありますが、お客様からの評判も良くなり、使いやすさ・シンプルさを保つことは大切だと改めて感じています。

目指す将来像への共感をきっかけに導入が進む

藤岡:最初のお客様を捕まえるのはとても大変だと思うのですが、初期段階ではどのような方が導入してくれたのでしょうか。

吹野:前例のないものを導入するのは勇気のいることですし、通常のように製品の売り込みをしていても、買っていただけませんでした。

僕としては、ここ2年ほどロボットセミナーなどで、プロダクトの機能の説明をせずにリンクウィズの目指す将来像を話しています。「ロボットが助けることにより職人さんがより輝けるという新しいものづくりのかたちを5年、7年というスパンで目指しています」と話しているのですが、こうした目指す姿に共感いただき、講演後に名刺交換をした社長の方が導入してくださることが多いです。

当然プロダクトとして完璧だとは考えていませんから、「こういう夢を描いているので、一緒に研究開発してもらえませんか」とお話ししています。中小規模の企業で当社製品の導入実績が多いのは、彼らの人材不足などの悩みに寄り添って解決したいという弊社のビジョンに共感して導入していただいた結果だと考えています。

松村:営業活動のやり方は、かなり見直しました。プロダクトの良さをアピールするだけでなく、お客様の視点に立って、費用対効果や社内稟議を出してどうやって説得していくかまでをフォローアップできるようにしたら、手応えが変わってきた気がします。

パナソニックとの連携は、トップコミットメントと現場エンジニアの熱意で実現

藤岡:中小企業だけでなく、最近ではパナソニック社やミツトヨ社といった大企業と仕事をされる機会も増えているようですが、そこまで信頼を得るには大きな壁があったのではないでしょうか?

松村:ここは、営業部門がベンチャー企業の辛さを最前線で味わってきたところです。モノがよくても信用部分で他社に負けてしまうケースが多く、大変悔しい思いをしてきました。 しかし、パナソニック社との共同事業開発発表をきっかけに、風向きが変わりました。ありがたく感じると同時に、大きなチャンスだと思っています。

藤岡:今年2019年6月の、パナソニック社との共同事業開発契約締結のプレスリリースでの、パナソニック代表取締役の樋口さんと吹野さんの写真、ある意味衝撃的でした。樋口さんの目に留まるのがすごいことですよね。

吹野:実は、初めてパナソニック社にプレゼンしたのはずいぶん前のことで、その後しばらく休眠状態となっていました。しかし、2018年8月にパナソニック社内で展示をさせていただいた際に樋口さんからお声がけいただき、そこからの急展開でした。トップのコミットメントで組織がここまで動くのかと、思い知りました。

藤岡:それだけの大企業が相手だと、実際の契約ではいろいろと大変なこともあったのではないですか?

吹野:そうですね、トップコミットメントがあっても、実際に対応するのは法務部ですから。条件のすり合わせには苦労した部分もあります。しかし、お互いに1つのプロダクトを作りたいという共感や熱意が、僕たちだけでなく現場のエンジニア同士にもあり、最終的にはかなり異例なかたちでの契約をしていただきました。