通信メディアコンサルティングのエキスパート・浅川秀之氏

浅川秀之氏(以下、浅川):最初に、私が日本総研の中で通信メディア・ハイテク戦略グループのリーダーをさせていただいておりますので、簡単にご紹介させていただければなと思います。日本総研は三井住友フィナンシャルグループのグループ会社です。

三井住友フィナンシャルグループの中に銀行、日本総研があり、三井住友VISAカードもグループ会社の中の1社です。

日本総研自体は、社員数自体は2,500名近くおりますが、私が所属する、コンサルティングやリサーチをやっているところは、そのうちの1割に満たない程度の人数です。私どものチームは通信メディアコンテンツなどの領域を専門としており、市場としてやはり重要ですし、動きも非常に早いというところで、そこに専門性を置いたリサーチコンサルティングチームという位置づけになっております。

チーム自体はもう20年以上になりますが、私がリーダーをさせていただいてから、7~8年ぐらいとなります。昔はどちらかというと通信・インフラだけの調査やコンサルティングが中心だったのですが、昨今ではIoTやAIといった技術がさまざまな市場を一気につないでしまって、サービスまでも含めたご支援、コンサルティングが増えています。

テクノロジー領域を中心に幅広くリサーチ・コンサルティングを提供

取組みテーマとしては研究開発や、全社戦略や新規事業戦略というテーマで取り組んでおります。最近はやはりAIやIoTに関する相談が多いです。サービス面ではヘルスケア・医療・教育なども含めて幅広くリサーチ・コンサルティングをさせていただくかたちです。

海外展開のご支援もありますし、数としてはそんなに大きいわけではないのですが、テクノロジー系企業のM&Aなども手掛けております。最近はベンチャー投資などもありますので、その辺のご支援をするところも多いです。

今年、我々のグループで『変革のテクノロジー』という本を出させていただきました。IoTや5G、最近は量子コンピューター、ブロックチェーンなどいろいろなテクノロジーがあると思います。

変革のテクノロジー 最新技術の本質理解と経営戦略

冷静に考えると、テクノロジーはあくまで道具です。自社のビジネスをしっかり見据えて、ツールを使ったほうが良い場合も、使わなくていいものも多分にあります。ビジネス自体が大きく変わる場合もあれば、軽微な影響の場合もあります。趣旨としてはその辺をどう見るかという視点で「ビジネス×テクノロジーの本質はどうなりますか」ということを書かせていただきました。

少子高齢化社会とモバイルWi-Fiルーターの役割

最近はスマートフォンだけでなくタブレット、ノートパソコン、モバイルWi-Fiルーターを持ち歩いて、外出先でもいろんなものに繋ぎたいという方がやっぱり増えてきています。総務省のデータでも分かるように、パッと目につく黄色の伸びているところがスマートフォンとなります。

また、スマートフォンほどの伸びではないのですが、その下の赤丸の先で伸びているのがタブレット端末です。それ以外の固定のパソコンが下がってきており、手に持って動ける端末に極端にスイッチしているところがあります。

生産年齢人口がどんどん減少していく中で労働参加率を上げていかないといけないところがあります。今後は高齢者や女性など、多様性も含めたいろいろな就業の機会を増やしていかないといけません。

最近はテレワークがキーワードになっておりますが、柔軟にかつセキュアな通信環境が重要となってきます。昔からテレワークと言わわれているのですが、この1年、半年くらいのキーワードとして出てきています。

テレワークの在宅勤務だけでなく、サテライトオフィスも最近は増えています。家の近くの大きな駅などにオフィス環境を作り、そこを利用する。また、カフェなどでのモバイルワークもあります。大きく3つに分類されるのですが、今後は働き方が変わっていかなければいけないという環境の中で、モバイルWi-Fiのルーターの役割は大きくなります。

仕事以外のエンターテイメントという意味では、ゲームアプリ市場規模が増えていることもあります。そういった観点で、さらにモバイルWi-Fiルーターが普及・加速していくのかどうかを我々が予測したところでございます。

モバイルWi-Fiルーターの契約数は「意外と伸びない」

予測の仕方は、これまでのデータをもとに統計的に回帰で予想するものと、あとは別途、ユーザーに対してWebアンケートで、実際に使ってみたいかどうかという意向をうまく聞いて出すというミックスで予測しました。

その結果が下記のグラフになります。予測手法および検証は、重回帰分析をベースとした独自予想モデルと、その予想結果に対してWebアンケートの調査結果をもとに検証を加えるというところです。

ポイントとしてはグラフの2018年までの黒い線がほぼ実績と思ってください。この実績の数値も実はいろいろなデータが落ちていて、そこを元に我々が推計したということで、ほぼ実態に近いと自信を持っているものです。

このような数字があるところと、赤などの色がついているほうが予測なのですが、結論的には「意外と伸びない」というところがあり、急速に飽和様相に入っている可能性があります。

ユーザーの状況や回帰のモデルから見ても、堅調に増加するという結果を出しているのですが、基本的には飽和様相を示していると見ています。

理由についてはいくつかが想定されております。1つは、個人利用と法人利用にわけた際に、個人利用の予測にもありましたが、Wi-Fiルーターには持ち歩くものと、最近出てきた据え置き型のタイプのものがあります。

個人が持ち歩く端末利用と、法人利用とが一巡した可能が飽和傾向の要因としては大きいと想定されています。しかしながら、個人の据え置き型利用については伸びている傾向があります。モバイルWi-Fiは下がっている可能性が高いですが、それを超えるくらいに据え置き型利用が増えてきている想定です。

ユーザーは通信速度よりも価格の安さを重視

今回の調査により、例えば、提供者側が価格競争で安くしていくことを怠ったりすると、ネガティブシナリオになる可能性は十分にあるのではないかということが、アンケート結果から見えました。

また、さらなる情報通信環境の変化として5Gを意識したところ、5Gになったからと言って極端にユーザーが増える訳ではなく、微増ぐらいの結果となりました。理由としてはアンケート結果より、ユーザーの価格に対する感度が想定以上に強かったためです。

例えば、「価格が1割増して、ブロードバンド性が倍になる」といった場合、ユーザーのほとんどは興味がない状態となると想定され、今の電波状況である程度満足している可能性があります。端的にブロードバンド性や通信環境を考えると、少なくとも最初の頃はあまり響かない可能性が見えてきました。

次に今後も継続して伸びるかというところについては、来年度以降の伸びは収まり、飽和傾向に移行していきそうな状況となります。そのため、過度の期待は厳しく、価格重視の競争市場の様相が増すだろうと想定されます。

個人の端末と据え置き型で比較すると、個人の端末があまり伸びない可能性があります。これはモバイルのみに利用している訳ではなくて、安価で固定の代替面になっているためが考えられます。これはアンケート結果で明らかになったものですが、持ち歩けるモバイルWi-Fiを持っている個人でも、外で使うためではなく、価格が安いから使っているという人がかなりの数存在することがわかりました。