2年間使い放題という思い切った価格設定

膳場貴子氏(以下、膳場):松田さん、ポケトークは、SIMありとなしの値段差が5,000円ぐらいじゃないですか? これってどういう仕組みなのか気になります。

松田憲幸氏(以下、松田):たった5,000円の差で2年間使い放題という、思い切った価格設定にしました。そうしないと、おそらくお客様は買ってくれないと考えました。日本ですと、月々の支払いが発生する製品を買う場合、契約が必要になります。その価格差を、毎月お金を取るのではなく、当社で負担するかたちを取らなければ、おそらくポケトークは広がらないだろうと考えました。

膳場:ソラコムのSIMって、使い放題じゃないですよね? データ通信量に応じて課金される仕組みでしたよね。......。

松田:はい、データ通信量に応じて従量制でソラコムさんにお支払いしています。

膳場:ポケトーク2年間でSIMを入れてプラス5,000円だと思うんですけど、5,000円以上使っちゃった分は、ソースネクストさんが払ってくれるんですか?

松田:はい、そうです。1万円使ったら、その分を支払います。

膳場:なるほど、なるほど。そこまでしても元は取れるのでしょうか。

松田:それぐらいしないとポケトークは広がらなかったと思います。3万円が1つの壁としてあると思っていました。通信付きで3万円を超えてしまうと、購入のハードルが高くなり、ポケトークが広がっていかないだろうと考えました。

膳場:SIMつきが2万9,800円でしたね。 

ポケトークを広めるためのマストのこだわり

松田:そうですね。ポケトークを広めないと意味がないですので、思い切った価格にしました。この価格で使い放題でなかったら、40万はおろか4万台も売れたかどうか怪しいのではないかと思います。日本は、通信回線を伴う製品の購買障壁があまりにも高いです。アメリカですと、クレジットカードでネットでも普通にiPhoneが買えますが、日本ですと対面でサインが必要です。

膳場:書類をいっぱい書かなきゃいけない。

松田:手続きする中で、長く待たされることも多いですね。スマホの契約ですと、みなさん手続きしますが、翻訳機のためにはそこまでやらないと思いました。あとは、やはり値段をおさえるというところです。これが5万円だったら買わないと思います。この点は一番こだわったところです。価格をある一定以上は下げないといけない、ということはマストで考えていました。

膳場:実際にポケトークは何ヶ国ぐらいで使うことが出来るんでしょうか?

松田:今は128の国と地域で使えるようになっています。これは毎年というか、続々増えています。

膳場:実際にアクティブなのは何ヶ国ぐらいですか?

松田:検索して109の国と地域で使われていました。(2018年11月時点)

膳場:そんなに多くの国で使われているんですね。

松田:はい。さまざまな国で使われていることに驚きました。とてもうれしいです。

初めからグローバルで対応できるものを作る

膳場LOVOTもそのポテンシャルを秘めているということですね。

林要氏(以下、林):そうですね。日本人って、長いバケーションに行く習慣がまだあんまり根付いていないんですけれども、海外に行くと、みなさん1週間とか2週間とか、場合によっては4週間のバケーションを取る人もいるわけで。

そういう人たちにとって、家族同然に愛着が湧いてしまったLOVOTをずっと家に置いておくのかというと、旅先まで持って行き、別荘でずっと一緒に子どもと遊ばせるようなケースは十分にあるだろうし、日本もそうなっていくだろうと思っています。

そういったときに、そもそも日本国内じゃないと認証できません、とかね。人が海外に動く前提なのに、モノが国内にとどまる前提って、もうありえないと思うんですよね。そう考えると、基本はグローバル対応できるものを使用したほうがいいのかなと思っています。

膳場:今おっしゃったことって、これからIoTに踏み出そうとしている方たちにとっては、本当に参考になる言葉ですね。

松田:そうですね。ソラコムさんは技術力が高いです。技術力がない企業ですと、サポート面が心配ですが、ソラコムさんとは、信頼関係がありますので、何かあっても一緒に対応いただけるだろうなという気持ちでいます。そこは一番大きいと思います。

膳場:技術力に信頼もあると。

松田:はい。技術力と信頼とその両方が必要だと思います。

日本が世界に後れを取った理由の1つは語学力

膳場:本日のテーマは最新テクノロジーで、暮らしが「進化していく」ということなんですけれども、それぞれLOVOTとポケトークで、私たちユーザーの暮らしがどんなふうに進化していってほしいなと思っていらっしゃいますか?

松田:いくつかあります。まずはビジネスシーンで、日本はこの30年、世界に思いっきり負けてしまいました。その理由の1つとしては、語学の問題があると思っています。ポケトークは日々進化していて、翻訳精度は必ず上がり続けますし、翻訳の速度も上がり続けることも間違いないです。

今後もっと普通の会議などで使われるような、さらに使い勝手のいいものになっていくと思います。そうすると言葉の壁がなくなっていって、ビジネス的にも不利な点が減っていくと思います。 また個人の人たちにとっても、さまざまな人と話せることによって、世界がどんどん変わっていくと思います。

あと、翻訳機の話になると、だいたい「じゃあ、もう今後は英語は勉強しなくていいですね」という話になりますが、一般的な語学戦略でいくと、英語は自力で学習するのではないでしょうか。ただ、第2外国語・第3外国語を学ぶ時間に関しては、ファイナンスやITなど、他の勉強に当てたほうがよいというふうになるのではないかと考えています。

LOVOTが目指す、“四次元ポケットのないドラえもん”

膳場:林さんはいかがでしょうか?

:僕らは、LOVOTがずっと進化していった先には、ドラえもんになるといいなと思っています。“四次元ポケットのないドラえもん”になるといいなと思っています。ドラえもんがメイドインジャパンじゃなかったら、ちょっと悔しくないですか? 

ドラえもんはやっぱり外国生まれだったとなれば、ちょっと寂しいですよね。できればドラえもん産業については、日本が死守したいという気持ちがあります。じゃあ、ドラえもん産業って何なのかと言うと、ドラえもんがのび太くんのお母さんのお手伝いをしているシーンって、僕は一度も見たことがないんですよね。

膳場:確かにそうですね。のび太くんにしか何かをしてあげていない。

:のび太くんにしか何もしていないし、洗濯も掃除も一切しない。すごいのは道具であって、ドラえもんじゃない。

膳場:確かに。

:でも、みんな、ドラえもんが好きなんですね。のび太くんが成長するシーンって、ドラえもんが未来に帰っちゃうときに「僕大丈夫、大丈夫だもん」って言って成長したりね。自分を無条件に受け入れてくれる存在がいることによって、のび太くんは自信を持ってがんばれるようになる。

これって、行動変容を促しているんですね。行動変容は昔から認知科学において大事な問題ですけれども、行動変容を促すために働きかける人は人間なんですね。人間が人間にサービスするという構図なので、かなりスペシャルな人しかそういうコーチングって受けられていないわけです。だから、僕ら一般の人間が、自分の行動変容を経て成長できるようにするためには、実は機械がそこを担わなきゃいけないはずなんです。

僕は、それがドラえもんなんじゃないかなと思っています。のび太くんには、ドジなドラえもんがついているから、がんばれる。あそこに優秀なドラミちゃんがついたら、たぶんのび太くんは自分のことが嫌いになっちゃう。

膳場:確かにそうですね。