ゾンビ化後の経過時間や水温で、浮き沈みが変わる

マイケル・アランダ氏:もうすぐハロウィンですね。この日は昔から、お菓子をどか食いしながらホラー映画三昧と相場が決まっています。ところで、もう何回観たかわからない『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を見ながら、ふと、ゾンビが大量発生する黙示録が起きたら、どうやって生き延びようかと考えたことはありませんか。

サバイバルの要は、事態をやり過ごす間、どこに隠れるかにかかってきます。これには、ゾンビが水に浮くか、沈むのかが鍵となります。例えば、ゾンビが沈むのであれば、食料を十分にストックしたヨットを隠れ場所にすれば、ゾンビはやって来ませんよね。

残念なことに、実験の被験体にできるゾンビは、今のところ発見されていません。しかし、ブタの死体で代用した法医学の実験や研究により、死後の体の特性については多くが明らかになっています。

シンプルな答えは「条件による」です。ゾンビは、ゾンビ化後の経過時間や、水温により、浮くか沈むかが変わってきます。実際に泳いでみるとわかりますが、人体の比重は水とほとんど変わりません。空気をたくさん吸えば、水より比重がわずかに小さくなり、浮かびます。

逆に肺を空にしてしまえば、水より比重がわずかに大きくなり、沈んでしまうのです。

なりたてのゾンビは水に沈む

ほとんどの映画では、ゾンビは呼吸はしていませんよね。ですから、たまたま肺に空気が詰まっているのでない限り、なりたてのゾンビは水に沈むはずです。しかし、時間の経過とともに、ゾンビは水面に浮かびあがってきます。そのわけは、人体の腸内にいる細菌です。

人が死んでも、腸内菌は死に絶えるわけではありません。死後、腸内菌は内側から人体を分解し始めます。組織を分解し消化するその過程で、硫化水素、メタン、カダベリン、プトレシンなどのガスが発生します。このようなガスは腸内に溜まり、その結果、死体は浮くのです。

これにどのくらいの時間がかかるのかは、その時によりますが、2004年に行われた実験では、ブタの死体を海に入れて―――隔離された場所であることを祈りますが―――観察したところ、3日後には浮かび上り、何週間も浮き続けたとのことでした。

1週間後には浮き上がり、体内のガスが抜けるまでは浮き続ける

ゾンビは外部がすでに腐っているため、このような内部からの腐敗にも免疫は無いはずです。つまり、ゾンビになりたての晩であれば、ゾンビは水に沈み、1週間後には浮き上がり、ガスが抜けるまで浮き続けるでしょう。

ゾンビがみなさんの脳を喰らおうと必死に犬かきで追いすがれば、体内に溜まったガスが放出され、ゾンビの「腹部膨張」は解消し、再び水に沈むであろうと考えられます。

水温も細菌の活動スピードに大きく関わるため、ガスが溜まる早さも変わってきます。冷たい海や湖であれば、冷蔵庫のような働きで細菌の活動は制限され、ゾンビが浮き上がるまでには時間がかかることでしょう。

黙示録対策の隠れ家を用意するにあたっては、このように不確定要素が多いため、ゾンビの浮き沈みを考慮に入れるのはやめた方がよいかもしれません。しかし、水中ではゾンビの動きは不自由かもしれませんし、お腹を空かせた魚が寄って来るかもしれませんので、ひょっとしたら、ヨットに隠れるのは、実はありかもしれませんよ。

そして、おそらくより重要な質問は、魚がゾンビになる可能性があるということです。