マッキンゼーの人間は常にメタ認知をしている

尾原和啓氏(以下、尾原):僕は、ここに書かれたことがどういうバックグラウンドがあって大事かという話をしていますけど、一番大事なことは『0秒で動け』というタイトルだと思うんですよ。例えば、世紀の嘘本として『ゼロ秒思考』という本があるんですけど。

伊藤羊一氏(以下、伊藤):はい。

尾原:あれは帯に「マッキンゼー流」のようなことが書かれているんですけど、嘘なんですよ。

伊藤:そうなんですか。

尾原:はい。でも、あれはマッキンゼー流につながる本としては、ものすごく正しい本なんです。これはさっきの話に近くて、マッキンゼーの人間から『ゼロ秒思考』がどういう本なのかを言うと、A4紙1枚にとにかく考えをバーッと書いてみましょうというのがゼロ秒思考なんです。

なんだけど、そもそもマッキンゼーに合格するような人間は常にメタ認知しているから、ゼロ秒思考なんかしなくてもいいんです。僕らは常に頭の中に箇条書きがされていっているんですよ。

伊藤:なるほど。

尾原:だから僕らにとって、マッキンゼーに受かる人間にとって、『ゼロ秒思考』で書かれていることはデフォルトでできていることなんです。当たり前にできていることだから、あんなものは要らないんです。

でも大事なことは、「まとまった思考をやってみよう」「今までにないことをやってみよう」ということをやるときに、一般の読者の方が一番引っかかるのは、実は書き出すという作業なんです。

そこに赤羽さんはフォーカスをして、ロジックツリーとかイシューアナリシスはいいんだけど、その前に書き出すことをちゃんとやらないとマッキンゼー流につながらないということで、普通の人が上れる階段の一段目を作ってあげたんですね。

伊藤:なるほど。

尾原:だから、そういう意味ではあの帯の「マッキンゼー流」というのは正しい。マッキンゼーの流れにつながるものとして読むと正しいんです。

伊藤:そういうことなんですね。そこはちょっと誤解なきようにと。

尾原:今は「アウトプットの時代」「人がアウトプットできない」「みんな個性とか自分を出せ」とか言っているけれど、自分が何者かということを主張できないことに対して、みんなうじうじ、もやもやしていて。

そこにやっぱり伊藤羊一さんの、もともと自分を表現しなかった人が表現するという。こういう躯体の人にとって、さなぎから蝶になったとは言えないんですけれども、なんか一皮むけたと思うんですよ。

そうやって自分を出すことによって、自分を短く表現することによって、より自分らしくなってきたという人生と乗っかって「1分で話せ」と言われると、やっぱりみんな動くと思うんですよね。

すごい人が当たり前にやっていることを言語化した価値

伊藤:これね、本当に多くのいわゆるプロ筋の方から言われているんですけど、これも『ゼロ秒思考』とちょっと近いのかもしれないです。結局『1分で話せ』は、鈴木おさむさんや山本一郎さん、それからコピーライターの小西利行さんなど、書いたり話したりすることを生業にされているいろんな方から「俺らはこれを普通にやっている」と言われたんです。

尾原:そうそう。

伊藤:尾原さんも『0秒で動け』に対してそう思われますよね。「俺らはね、これを普通にやっているんだ」と。だから山本一郎さんなんか、「そういう意味ではなんにもおもしろくない」と。だけど、「これを言語化したことがすごいんだ」と。

鈴木おさむさんからも「よく書けたね」と言われて。俺は別に自分がやってきた道筋を原稿化しただけなんだけど、そこを表現するのが、ビジネス書としてはすごいと。突き抜けていくこともすごく大事なんだけど、そういうイケてる人が当然のようにやっていることを原稿化するのは大事なんだなと、そのとき初めて聞きました。

尾原:そうなんですよね。インターネットによってどんどんつながって、堀江(貴文)さんや箕輪(厚介)さんなど、すごい方が見えてきちゃうじゃないですか。そうなりたくなっちゃうじゃないですか。でも、やっぱり1歩目が一番難しいんですよね。しかもその1歩目は残念ながら、堀江さんも箕輪さんもすごい人だから、そもそも1歩目なんか気にしたことがないんですよね。

伊藤:そうなんですよ!

尾原:そういう意味ではやっぱり、みなさんは1歩目にもやもやしていて、その1歩目をどうやって踏み出せばいいかに悩んでいる。かつ、1歩目を踏み出すにはskillだけじゃなくて、Willも大事じゃないですか。

伊藤:そうです、本当にそうですね。

尾原:そうするとこのくらい、むさくるしいくらいに熱い男が人生を懸けて言ってくれたほうが。

尾原氏「僕は業界の屯田兵」

伊藤:『1分で話せ』のときはね、僕が人にプレゼンをするために稽古をして言ってきたことを全部言語化しただけなんです。既に言語化しているから、それを並べてみただけなんですね。「だけ」と言ったら変なんだけど。だから「これ、大丈夫かな」と思ったんですけど、それ自体があんまりなかったと言われて。

だから『0秒で動け』のときは明確に、「俺は経験でこうやってきたんだよ」ということを解説するのも、1つの本としてすごく重要なのかなと思ってね、そうしたわけです。本にはだぶん何種類かあって、そういう本に触れることも、自分が明るくないところはすごく重要なのかなと思っていて。それが(尾原氏の著書の)『アフターデジタル』なんですよ。

(会場笑)

尾原:そこで来る。ありがとうございます。

伊藤:これは別に隣にいるからヨイショをしているじゃなくて、『アフターデジタル』はそういう本なんです。盒馬鮮生(フーマー・フレッシュ)のスーパーマーケットは、実際に行かなきゃわからないんですよ。

だけどやっぱりそういうのも、ビービットさんも……要は尾原さんも、「大事なのはその先なんだよ」「OMOのその先なんだよ」みたいなことを、敢えてそこ突っ込んで、我慢して寄り添っているでしょ。それはかなり意識されているんですか?

この記事は無料会員登録で続きをお読み頂けます

既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。

登録することで、本サービスにおける利用規約プライバシーポリシーに同意するものとします。

SNSで会員登録

メールアドレスで会員登録

パスワードは6文字以上の文字列である必要があります。