“孫正義の参謀”が語る、藤田晋氏と孫氏の違い
中田大樹氏(以下、中田):ちなみに、ちょっと次のテーマにもいきたいんですけど。サイバーエージェントの藤田さんと孫さんって、よく僕にも言ってたんですけど、けっこうタイプ的にはたぶんぜんぜん違うというか。真逆なんじゃないかなと思ってるんですけど。
嶋聡氏(以下、嶋):そうだね。中田社長はね、25歳から社長をやってるの。
中田:サイバーエージェントの子会社でですね。
嶋:サイバーエージェントの子会社でね。さっきも言ってたんだけど、ソフトバンクってそういうことあんまりないなって。
中田:なるほどなるほど。
嶋:それすごい話で、孫さんという人はビジョンを掲げて、織田信長みたいに「みんなついて来い」というタイプ。これ、フロントランナー型リーダーシップって言うの。最初に自分が立ってみんなについて来いって言うわけ。
藤田さんという人はね、いい人材を見つけたら、その人に力を発揮してもらう場所を作る。そしてその人が働きやすいようなかたちで環境を整えて、力を発揮してもらうんですよ。これをリーダーシップ論で言うとサーバント型リーダーシップ。サーバントというのはね、シビルサーバントって言うでしょ。公僕みたいなね。その人を助ける、支える型リーダーシップ。
孫はともかく織田信長で走り出してみんなついていくわけ。フロントランナー型。サーバント型リーダーシップの特徴は、部下に孫正義みたいなフロントランナー型リーダーシップを持っている人をたくさん配すんですよ。わかるでしょ?
自分はどちらかと言うと後ろで助ける。そこで配す。若いときからそうやって配す社長たちっていうのは、25歳だからね。25歳のときに配す社長たちというのは非常に孫正義的なフロントランナー型。どんどん前に進むという人を配して、グループ・組織として全体を大きく成長させていくというリーダーシップが藤田さんじゃないかなと思いますね。
若いうちに起業するということ
中田:おっしゃるとおりで。僕も25歳のときから、社内企業みたいなかたちでやらせていただいていて。仮に僕が孫さんの下にいると、たぶん今みたいなことはできていなかっただろうなと思っています。
藤田の考えやカルチャーなどの価値観の中でやれているからこそ、自由にやれている。逆にいうと、孫さんみたいなのも憧れももちろんあるんだけど、そこに追いつくための環境は、たぶんサイバーエージェントにはすごくあるんじゃないかなと思っていまして。
僕が孫さんを超えれる気はまったくしないんですけど、サイバーエージェントでこの立ち位置にいるからこそ、孫さんを目指せるんじゃないかなというか、目指していいんじゃないかなと思っていて。
リーダーシップが違う中でその下の人間がやれることの違いなんじゃないかなとすごく思いますね。
嶋:私、中田社長と付き合ってて本当にいいなと思ったのがね、25歳で社長でしょ?
中田:はい。
嶋:今、松下幸之助と孫正義という2人が出てきたけど、松下幸之助も孫正義も起業したのが24歳のときだった。で、(中田氏は)25歳。1年しか違わない。
中田:そうなんですけど(笑)。がんばります(笑)。
嶋:何が言いたいかというとね、もしそういう道を選びたいと思って、もちろん自分で起業するというのも1つの道だけどなかなかリスクもある。
中田:たしかに。
嶋:それから今はすごいスピードで動いてるから、ゼロから始めるよりも、例えば私なんか本当にそう思うんだけど、サイバーグループみたいなところに入って早くからやらせてくれるんだったら、サイバーグループの今までの蓄積を利用してね、どんどん進んでいくというのは1つの方法論だと。
ミドルリスクで世界を目指せる時代
嶋:なぜこんなことを思っているかというと、今の時代、さっきもビジョンと言ってたけど、孫も昔から話していたんだけど、IT革命というのはまさに1994年くらいから始まった。
みなさんもご存知のヤフーが始まったのが1995年。そのころAmazonもできてます。Facebookが始まったのは2004年。サイバーが上場したのは2000年くらいだっけ?
中田:2000年ですね。上場したのは。
嶋:何が言いたいかというとね、IT革命というのは2つの分野だけが伸びたんです。1つは広告業、もう1つが小売業。1990年代から始まったIT革命は、2つの分野だけがすごく変革した。
例えばFacebookでもGoogleでも、要するに広告モデルでしょ? Amazonとかさ、中国でいうAlibabaとか、日本だと楽天。これは要するに小売業だね。その2つだけが伸びていった。サイバーエージェントは広告業。この2つだけが変わったのがIT革命。
今度ね、AI革命という時代なの。広告業というのはGDPの1パーセントくらい、小売業というのは7パーセントくらい。あと93パーセントは入ってないんだよ。93パーセントが、これからAIというのものに入っていくと大きく変わる。
それはサイバーエージェントもそうだけど、いろいろ業態を変えてるでしょ? 広告業だけじゃなくゲームやったり、AbemaTVやったり。そうするとAIの時代にも、AI革命という新しい革命がこれから始まる。この前、SoftBank Worldというところで孫が「日本はAIの後進国になってしまった」と言ってましたね。
私はただね、あれゆっくり読むと「まだ間に合う」って言ってた(と思う)。今言った1994年くらいにヤフーができたころに、まだAmazonできたばっかりだし、GoogleもFacebookもできてないし。
今がAI革命の始まりだとすると、これから第2のGoogle、Facebook、Amazon、そういうものが出てくる。今度は小売だけじゃなく、あるいは広告業を超えたかたちで。
そういうようなところにみなさんが挑戦する時期だと思う。残念ながら、日本にはそういう人が少ない。だから間に合わせるためには、今言われたように25歳でサイバーの社長になれるんだから。リスクも正直言ってミドルリスクだよ。
中田:そうですね。
嶋:ミドルリスクでやって、そこからスタートして、そして世界を目指すんだよ。そういうことをやるにはぴったりだと、正直思う。だからがんばってほしいんだけどね。
令和のリーダーに求められるスキルセットとは
中田:がんばります!(笑)。今後の話もあったと思うんですけど、松下幸之助が昭和で、孫正義が平成だとすると、令和になって、AIみたいな話もあったと思うんですけど、この先の時代に求められるリーダーシップとか、求められるスキルセットとかってなにかあったりすると思われますか?
嶋:今言ったように昭和の時代になぜ松下幸之助が伸びたかというと、電気革命を読み切ったから。女性が多いけどね、昔は電気釜を作ったときに松下幸之助は「電気釜なんか作ると女性を堕落させる」と言われたわけ。
中田:楽するってことですね。
嶋:朝ごはんはお母さんがかまどで炊いて、「はじめちょろちょろ中ぱっぱ」とやるからおいしいんだって言われたんですね。だけどそれが電気革命という時代に伸びた。平成というのは孫正義のことでいうと、IT革命によって伸びた。リーダーシップが違うんだよ。電気の時代とIT革命の時代。