2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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中田大樹氏(以下、中田):ちなみに、ちょっと次のテーマにもいきたいんですけど。サイバーエージェントの藤田さんと孫さんって、よく僕にも言ってたんですけど、けっこうタイプ的にはたぶんぜんぜん違うというか。真逆なんじゃないかなと思ってるんですけど。
嶋聡氏(以下、嶋):そうだね。中田社長はね、25歳から社長をやってるの。
中田:サイバーエージェントの子会社でですね。
嶋:サイバーエージェントの子会社でね。さっきも言ってたんだけど、ソフトバンクってそういうことあんまりないなって。
中田:なるほどなるほど。
嶋:それすごい話で、孫さんという人はビジョンを掲げて、織田信長みたいに「みんなついて来い」というタイプ。これ、フロントランナー型リーダーシップって言うの。最初に自分が立ってみんなについて来いって言うわけ。
藤田さんという人はね、いい人材を見つけたら、その人に力を発揮してもらう場所を作る。そしてその人が働きやすいようなかたちで環境を整えて、力を発揮してもらうんですよ。これをリーダーシップ論で言うとサーバント型リーダーシップ。サーバントというのはね、シビルサーバントって言うでしょ。公僕みたいなね。その人を助ける、支える型リーダーシップ。
孫はともかく織田信長で走り出してみんなついていくわけ。フロントランナー型。サーバント型リーダーシップの特徴は、部下に孫正義みたいなフロントランナー型リーダーシップを持っている人をたくさん配すんですよ。わかるでしょ?
自分はどちらかと言うと後ろで助ける。そこで配す。若いときからそうやって配す社長たちっていうのは、25歳だからね。25歳のときに配す社長たちというのは非常に孫正義的なフロントランナー型。どんどん前に進むという人を配して、グループ・組織として全体を大きく成長させていくというリーダーシップが藤田さんじゃないかなと思いますね。
中田:おっしゃるとおりで。僕も25歳のときから、社内企業みたいなかたちでやらせていただいていて。仮に僕が孫さんの下にいると、たぶん今みたいなことはできていなかっただろうなと思っています。
藤田の考えやカルチャーなどの価値観の中でやれているからこそ、自由にやれている。逆にいうと、孫さんみたいなのも憧れももちろんあるんだけど、そこに追いつくための環境は、たぶんサイバーエージェントにはすごくあるんじゃないかなと思っていまして。
僕が孫さんを超えれる気はまったくしないんですけど、サイバーエージェントでこの立ち位置にいるからこそ、孫さんを目指せるんじゃないかなというか、目指していいんじゃないかなと思っていて。
リーダーシップが違う中でその下の人間がやれることの違いなんじゃないかなとすごく思いますね。
嶋:私、中田社長と付き合ってて本当にいいなと思ったのがね、25歳で社長でしょ?
中田:はい。
嶋:今、松下幸之助と孫正義という2人が出てきたけど、松下幸之助も孫正義も起業したのが24歳のときだった。で、(中田氏は)25歳。1年しか違わない。
中田:そうなんですけど(笑)。がんばります(笑)。
嶋:何が言いたいかというとね、もしそういう道を選びたいと思って、もちろん自分で起業するというのも1つの道だけどなかなかリスクもある。
中田:たしかに。
嶋:それから今はすごいスピードで動いてるから、ゼロから始めるよりも、例えば私なんか本当にそう思うんだけど、サイバーグループみたいなところに入って早くからやらせてくれるんだったら、サイバーグループの今までの蓄積を利用してね、どんどん進んでいくというのは1つの方法論だと。
嶋:なぜこんなことを思っているかというと、今の時代、さっきもビジョンと言ってたけど、孫も昔から話していたんだけど、IT革命というのはまさに1994年くらいから始まった。
みなさんもご存知のヤフーが始まったのが1995年。そのころAmazonもできてます。Facebookが始まったのは2004年。サイバーが上場したのは2000年くらいだっけ?
中田:2000年ですね。上場したのは。
嶋:何が言いたいかというとね、IT革命というのは2つの分野だけが伸びたんです。1つは広告業、もう1つが小売業。1990年代から始まったIT革命は、2つの分野だけがすごく変革した。
例えばFacebookでもGoogleでも、要するに広告モデルでしょ? Amazonとかさ、中国でいうAlibabaとか、日本だと楽天。これは要するに小売業だね。その2つだけが伸びていった。サイバーエージェントは広告業。この2つだけが変わったのがIT革命。
今度ね、AI革命という時代なの。広告業というのはGDPの1パーセントくらい、小売業というのは7パーセントくらい。あと93パーセントは入ってないんだよ。93パーセントが、これからAIというのものに入っていくと大きく変わる。
それはサイバーエージェントもそうだけど、いろいろ業態を変えてるでしょ? 広告業だけじゃなくゲームやったり、AbemaTVやったり。そうするとAIの時代にも、AI革命という新しい革命がこれから始まる。この前、SoftBank Worldというところで孫が「日本はAIの後進国になってしまった」と言ってましたね。
私はただね、あれゆっくり読むと「まだ間に合う」って言ってた(と思う)。今言った1994年くらいにヤフーができたころに、まだAmazonできたばっかりだし、GoogleもFacebookもできてないし。
今がAI革命の始まりだとすると、これから第2のGoogle、Facebook、Amazon、そういうものが出てくる。今度は小売だけじゃなく、あるいは広告業を超えたかたちで。
そういうようなところにみなさんが挑戦する時期だと思う。残念ながら、日本にはそういう人が少ない。だから間に合わせるためには、今言われたように25歳でサイバーの社長になれるんだから。リスクも正直言ってミドルリスクだよ。
中田:そうですね。
嶋:ミドルリスクでやって、そこからスタートして、そして世界を目指すんだよ。そういうことをやるにはぴったりだと、正直思う。だからがんばってほしいんだけどね。
中田:がんばります!(笑)。今後の話もあったと思うんですけど、松下幸之助が昭和で、孫正義が平成だとすると、令和になって、AIみたいな話もあったと思うんですけど、この先の時代に求められるリーダーシップとか、求められるスキルセットとかってなにかあったりすると思われますか?
嶋:今言ったように昭和の時代になぜ松下幸之助が伸びたかというと、電気革命を読み切ったから。女性が多いけどね、昔は電気釜を作ったときに松下幸之助は「電気釜なんか作ると女性を堕落させる」と言われたわけ。
中田:楽するってことですね。
嶋:朝ごはんはお母さんがかまどで炊いて、「はじめちょろちょろ中ぱっぱ」とやるからおいしいんだって言われたんですね。だけどそれが電気革命という時代に伸びた。平成というのは孫正義のことでいうと、IT革命によって伸びた。リーダーシップが違うんだよ。電気の時代とIT革命の時代。
令和の時代というのはどういう時代が来るかというのをまず読まなくちゃいけない。1つは孫はAI革命と言っていると。
動画が5Gになるんだけど、携帯電話が今4Gですね。5Gになると動画がどうなるか? そのときのリーダーシップというのは、たぶん製造業とIT革命と違うように、その時代も違ってくると思います。
中田:なるほどなるほど。
嶋:今日はせっかく若い人たちだから申し上げると、まず志を高く持ってほしい。志を高くというのは、完全に世界を見てほしい。日本だけじゃなくて。
嶋:平成の時代の最初の世界の時価総額トップがどこだか知ってる? NTTだよ。平成元年。今の世界の時価総額トップは1位がMicrosoftで、2位がAppleで、Google、Facebookとずっと並んでるんだけど。
中田:そうですよね。
嶋:平成元年、30年前の世界の時価総額トップは1位がNTT。ベスト10、今の時価総額トップのベスト10のうち7つはIT。いわゆるGAFA+Microsoft+中国のAlibaba、Tencent。平成元年のときは10社のうち7社が日本だった。
だから令和はね、そういうような時代を目指すリーダーシップがいるんだよ。そうするとリーダーシップの質が変わってくるわけ。
日本一を目指そうと思ったら、富士山に登るんだったら下から上がっていきゃいいの。世界一のエベレストだとね、8848メートルだっけ? 6000メートルくらいのところのキャンプまでヘリコプターで行くんだよ。そこで体を慣らして、それで最後の2000メートルを登るわけ。そういうことが必要になってくるわけ。
だからさっきサイバーがいいって言ったのは、ゼロから始めると時間が限られてるから富士山になっちゃうわけよ。6000メートルのキャンプまで行こうと思ったら、25歳で社長になって。普通に25歳で社長になったらゼロみたいなもんだけど、いろんなネットワークとか現在のサイバーの資源というものが使えると世界を目指せる。それが経営的に可能になってくる。
平成元年、まだみなさん生まれてないけど、そのときは世界の時価総額7つが日本だった。今、あれだよ。日本で一番時価総額が高いのはトヨタで。
中田:そうですね。で、ソフトバンクですもんね。ほとんどアメリカと中国みたいな。
嶋:そうなんだけど。トヨタが、たぶん44番くらいだけどね。だから令和に求められるリーダーシップは、少なくとも世界のベスト10に入るためには、そのリーダーになるためには何のスキルが必要かということを考えなくちゃいけない。
具体的にいうと、今言ってるようにエベレストを狙うわけだからさ。6000メートルまではヘリコプターで行かなきゃいけないんだよ。麓から登ってたら届かない。そういう意味ではさっきから言ってる……君にも、中田社長にもぜひがんばってほしいんだけど!
中田:がんばらないといけないですよね。
嶋:そういうリーダーシップが必要だと思います。具体的にね、さっき言ったようにまあ英語くらいはやっておいたほうがいいよというスキルはそうだけど。まずは志を高くね。まずは志を高く。
中田:そうだと思います。
嶋:日本で一番じゃなくて、世界でトップになるためにはどうすればいいか。そうすると、世界のトップになるためにはどういう人間に……例えばね、語学をなんでやれと言うかというと、難しいところは通訳に頼めばいいんだけど。やっぱりリーダーシップとして将をたくさん集めなきゃけない。武将ね。自分の手足となる。
自分の手足となる武将を呼ぶときに、それが日本人だけで本当にいいのか、という発想なんだよ。インド人を使ったほうがいいかもしれないし、ほかの国でもいいかもしれない。中国人のほうがいいかもしれない。そういうふうに考えていったら語学ってさ、難しいところまではいいよ。通訳に頼めばいいから。コミュニケーションの道具は必要でしょ? と考える。だから令和に求められるリーダーシップは“志高く”。
中田:ということですよね。どの山を登るかを決めることがたぶん重要で。どの山を登るかによってやり方がぜんぜん違うっていう話と。
嶋:そうそう。
中田:だからこそエベレストを登るのと、そのへんの山を登るのと、富士山を登るのとはぜんぜん三者とも違う。
日本国としても、うちとしてもそうですし、ソフトバンクもそうだと思うんですけど。30年前って、日本の企業の時価総額がすごく高くて、NTTだったりいろんな会社が入ってたのに、そうじゃなくなってしまったというのはファクトとしてあると思うんだけど、ここからどうできるか。
たぶん僕も含めてだし、藤田もそうだし、これから社会に出ていくみんなもその世界の中でどういう立ち位置、山を登りにいくのかみたいなところを決めるというのが、すごく大事なところですよね。
嶋:そうですね。まだ間に合うんだよ。まだ間に合うし、やっぱり松下幸之助も孫正義も大きなパラダイムシフトに乗ったからあそこまで行ったわけ。藤田さんもそうだよ。IT革命という大きな波に乗られたからすごいリーダーになられた。
だからみなさんはチャンスだと思う。「少子高齢化で日本はダメになる」みたいなことしか聞いてないでしょ? 30年前はベスト10のうち7社があった国だって言われて、たぶんみんな「え!?」と思ってると思うんだよ。
まだ間に合うし、当然私も経営をやっていた人間として具体的に考えなきゃいけないから、エベレストに登るためのルートをサイバーは作るべきだよ。
中田:はい。
嶋:20代で社長になれると。副社長がおられるそうだから、聞こえるように言っとくけど(笑)。20代で社長。そこにいろんな装備がくっつけられるようにして、そしてエベレストに登れるようなものを組織として持つ。それはサイバーにとってもいい話だしね。
2000年に225億を調達して、まさに今、ベンチャーを超えて雄としてやってらっしゃるところはね、やっぱりそういう組織を作って。今はこうやって私は、孫正義とか松下幸之助とか話してるけど、みなさんの中からそういう人が出てくる。みなさんに、それを期待しますね。
中田:ありがとうございます。ここでちょっと時間がもう終わりなんですけど、質問を1個だけいっていいですか?
司会者:どうぞ、どうぞ。
中田:実はリアルタイムで、嶋さんに対する質問を集めてまして、時間がないので1個だけ。
(質問を選びながら)あ、これ聞いていいですか? 「リーダーは嫌われても仕方ないと思いますか?」と。たぶんいろんな状況によっても違うと思うんですけど。
嶋:リーダーが考えることは基本的に先見性があるわけです。先見性があるというのは定義上少数者です。当たり前でしょ? 少数者だから、みんなそれをやろうというと反発があります。実はAbemaTVもそうかもしれないけど。
だけどそれはリーダーしか見えない分野があって、それにリーダーが確信を持ってたら、みんながどう言おうと嫌われようと、何度も続ける必要があります。ただしね、さっき言ったように愛嬌がないとダメ。嫌われてもいいけど、憎まれちゃいけない。この違い難しいんだよね。
中田:なるほどなるほど。
嶋:それからあと、「なぜナンバー2のままで、ナンバー1にならなかったんですか?」っていう。
中田:ははは(笑)。
嶋:私は昔から参謀になろうと思ってたんですよ。
中田:そうなんですか。
嶋:僕は岐阜県出身でね。関ヶ原の戦いってあったんだけど、そのときの徳川家康と戦って負けた石田三成という大名がいた。徳川家康というものすごく大きいところに、石田三成は20万石くらいで戦った。そこの家老がね、島左近っていうの。知らないだろ?
中田:知ってますよ。
嶋:僕の先祖じゃないかっていう噂がある。
中田:あ、そういうこと。漢字違うじゃないですか! 嶋さんと(笑)。
嶋:噂がある。一応古文書も残ってるの。
中田:あ、そうなんですか!
嶋:でも議員やってたから、経歴詐称になるか不安があったから言わなかった(笑)。
中田:ははは(笑)。
嶋:だから昔から参謀がね。普通のナンバー1になるんだったら、超一流のナンバー2になろうと思ったんですよ。
中田:なるほど。
嶋:それがまあまあ自分でできたんじゃないかなと思ってます。みなさんもいろんなパターンがあると思います。自分の人生にね。
嶋:今日申し上げたことは、さっき中田社長が言ったように登る山を決める。サイバーエージェントに入るならできるから言ってるんだけど、エベレストを目指してほしい!
中田社長はまだ若いけどこれからどんどん幹部になっていかれるから、君も整備してくれるんでしょ? みんながエベレストに登るための。
中田:そうですね。部下とかが。もちろんもちろん!
嶋:そういうふうにしてくれるという話だから、ぜひ志を高く持って、10年後くらいには……まず中田社長だな(笑)。
中田:僕はいいです(笑)。
嶋:もちろん藤田さんがそう言われるようになり、中田社長がそう言われるようになり。そしてまたみなさんがエベレストを目指してがんばっていただくことを期待いたします。
中田:ありがとうございます!
司会者:嶋さん、中田さん、ありがとうございました。個人的にも今日はすごく楽しみにしていて、リアルな嶋さんの目線からの令和のリーダーシップというのがすごく勉強になりました。時間がちょっと足りないかなと思うくらいだったんですけれども。
それでは第1部を終了したいと思います。嶋さん、中田さんに大きな拍手をお送りくださいませ。ありがとうございました。
(会場拍手)
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