長期的には、電気自動車が必要とする化石燃料はガソリン車よりも少ない

ハンク・グリーン氏:気候変動と戦うため、電気自動車を買うように勧めるのはなかなか有効なように思えます。しかし、ある人たちは、エンジンが必要がないだけで、発電所では化石燃料を燃やすのだから、電気自動車でもまだ化石燃料が必要ではないかというかもしれません。

それも一理ありますが、長期的に見た場合、電気自動車が必要とする化石燃料は、ガソリン車と比べてずっと少ないと言うことができます。特にアメリカではそうです。電気がずっとクリーンになってきているので、みなさんの想像を上回るかもしれません。しかし、それ以外にも念頭に置いておくべきいくつかの要素があります。

まずは車両そのものです。2016年の段階でアメリカの平均的な純ガソリン乗用車は1リットルあたり9キロメートル、22マイル走ります。これは平均的な数字にすぎません。

車によっては4キロしか走らないものもあれば、14キロも走るものもあります。州間高速道路のハイブリッドカーやトラックの燃料効率について話しだしたらきりがありません。それに、電気がどうかに関わりなく、車を製造する過程こそが温室効果ガスの排出に繋がってしまいます。ガソリンを精製することもそうです。しかし、一番複雑に関係してくるのが電気です。

どれだけ環境負荷が少ない発電ができるかは場所によって異なる

電気がクリーンかどうかはあなたの住む場所によります。アメリカのほとんどの場所では、天然ガス、石炭、そして核分裂のコンビネーションが用いられます。それに少しの水や風、太陽光、油、なども用いられます。しかしこれらの数値は州により異なり、地元の天然ガス資源やその日の風の強さなどでも変化します。

例えば、アラスカには十分な量の天然ガスと水力発電資源があるので、発電所が電気を作る際に生じる廃棄物は非常に少ないのです。つまり、アラスカの電気を使って電気自動車をフル充電すれば、1リットルあたり48キロ、または112MPG走ることのできるガソリン車と大体同量の排出量になるというわけです。

その数値は国際平均の5倍、最高のハイブリッドカーの2倍から3倍も良い数値です。とても効果的です! そして極端に悪い場所、例えばコロラド州は、エネルギーの観点から言えば最も汚い州の一つです。コロラド州ごめんなさい。しかし、コロラド州の電気の半分は石炭を燃料としています。石炭は他の燃料と比べて排出量が多いのです。

しかし、そこでも、電気自動車はガソリン車と比べて性能が優れていると言えます。コロラドの電気をフル充電した場合、1リットルあたり20キロ、46MPGのガソリン車と同様の排出量、つまり2016年現在の世界基準の2倍は良い数値と言えるのです。

それはなかなかいい数値です。しかも、ほとんどの国ではコロラドの数値よりアラスカの数値の方が近いのです。

発電所は、車のエンジンよりも効率的にパワーを生み出せる

結局大切な点は、発電所は車のエンジンより、パワーを生み出す能力に長けているということです。その理由の一つはまず、単純に発電所はエンジンより大きいということです。物体が大きければ、その熱を保つのに使うエネルギーが少なくて済みますので、より効率的になります。

あなたの住む町の電気がどこからきているかによって、その詳細は異なるにせよ、世界的にその基準は変わりません。一般的により多く石炭を使っているインドや中国においては、アメリカのガソリン車とその国の電気自動車の排出量は大体同じになります。それでも平均的なインド製のガソリン車よりは効率が悪いのです。

しかし、水力発電のパラグアイや地熱に富むアイスランドにおいては、電気自動車と対抗するには、ガソリン車が1リットルあたり90キロも走れるようでなければならなくなります。

では、結局電気自動はガソリン車と比べて本当に効率的なのでしょうか? 答えはイエスです。でも、あなたの地域の電気の資源がクリーンでない場合は別です。ですから、多くの理由が関係します。いずれにせよ、気候変動はたった一つの問題に起因しているのではありません。多くの原因となる問題があるのです。その問題に対処するためには世界中の人たちが大きな変化を起こさなければならないのです。