カルチャーフィットは採用段階から求めるのか

藤澤恵太氏(以下、藤澤):これからトークセッションにいく前に、三社のご登壇の内容を踏まえて、お近くの方と思いをシェアしてもらえればということで。参考になったことだったり、自社で取り入れてみたいことだったり、登壇者にこの後質問したいなということがあれば、ぜひシェアしていただければと思います。

2〜3分、お時間を取れればと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

(会場談話)

……そろそろ時間でございますので、よろしいでしょうか? ありがとうございました。よろしければ、どういうお話をされたか、1組だけお答えいただければと思うんですけど。こちらの方にいってみましょうか。あ、目を合わせていただけて。マイクをよろしいですか。

質問者1:貴重なお話をありがとうございました。今隣の方とお話ししてたのは、当社でもし同じようなことをやったら、「よし、やるぞ」と手を挙げる社員って何人ぐらいいるのかなというところで。

もともと採用の段階でカルチャーにどんぴしゃの人を採用して、その方が自発的にやっているのか、それともある程度広めに採って巻き込んで、そういう自発的なことをやる文化にフィットさせてるのか。どっちなんだろうという話があったので。

最初の段階からやっているのか、それとも入った方を巻き込んでなのかどちらかをお聞きしたいと思いまして。

藤澤:めちゃくちゃいい。こんないい質問いただけると思わなかったので、ありがとうございます。実はそのあたりも話していたことがあるので、トークセッションでぜひ回答していきたいと思います。ありがとうございます。

「自ら提案すれば組織は変わるんだ」という原体験を抱かせるには

藤澤:では、ここからトークセッションに移れればと思います。せっかくなので、今質問いただいたところからお答えいただければと思っているんですけど。ここからは質疑応答で、ちょっと思いついたとか、こういうこと聞きたいとかあれば、どんどん挙手いただければと思います。

では、カルチャーフィットは採用時なのか後なのかというお話ですね。フィットする社員が最初からいるのか、もしくは醸成を採用の時からやっているのか、施策があるからやってる。最初に聞こうとしていた質問と違っていて、困られているお三方にお願いします(笑)。そのあたりはどうですか?

岩田佑介氏(以下、岩田):当社の場合は、どちらかというと入社後からでしょうか。ニューカマープレゼンテーションという仕組みがあって、中途入社の方は入社してから3ヶ月経ったら、必ず執行役員会で「ライフネットのいいところとイケてないところ」を役員にプレゼンしていただきます。これは必ずやってもらっています。

そこで提案されたアイデアは、大規模な投資が必要でなければ絶対に進めるというルールがあり、その場でネクストアクションが決まります。こうした活動を通じて、「自ら提案すれば組織は変わるんだ」という感覚と原体験を、入社してから早々に持ってもらうようにしています。

過去の批判を含めた提案は、バイネームですべて閲覧可能

藤澤:例えば、「言うと批判しているみたいで評価下がるんじゃないか」とか、後で呼び出されて「お前何考えてんだ」って言われるんじゃないかみたいな。僕だったら怖いなと思うんですけど、そういったことは文化的にないんですかね。

岩田:文化としてもフラットですし、過去の提案者の批判を含めた提案も全部見れるのですが、かなり鋭い批判をしている人も結構います。それを見ると心理的安全性が確保されます。(笑)。

藤澤:鋭い批判が蓄積されているんですか?

岩田:そうですね。社内のファイルサーバーに蓄積されていますね。

藤澤:それめちゃくちゃ見たいですね。社内で見られるようになっているんですか?

岩田:はい、全員見ることができます。

藤澤:それバイネームで? 名前も載っているんですか?

岩田:はい。提案者のスライドが全部そのまま格納されているので。なので、心配な方はちょうどいい批判のレベルを、スライドを見ながら探っているようですし。攻めるタイプの人はかなり攻めてきます(笑)。

(会場笑)

攻めるやつは攻める、みたいな。

藤澤:強い攻めのスライドを見て「これぐらいだったら大丈夫じゃないか」と。なるほど。ありがとうございます。

「提案すること」のハードルを下げに下げているLIFULL社

藤澤:他の質問もいただいているので、進行していければと思うんですけど。事前の質問で私もすごく感じるんですけど、従業員発信のルールが通らない場合に、役員にどう説得するのかとか。ライフネットさんは先ほどのようなかたちだったと思うんですけど。

「どう会社と社員を説得するのか」とか、なかなかいいと思うけど導入してどう変わるかわからないとか。役員と社員をどう説得しているのかについて山岡さんに聞ければなと(笑)。お願いします。

山岡早穂氏(以下、山岡):役員を説得するには、ということですね。うちの場合はいくつか......施策の話になるんですけど、設けていて。一社員であっても、社長に直接話せる機会が何回かあるんですね。

大きなものが2つあって、1つは先ほどご紹介したコンパというものなんですけど。コンパはディスカッションして終わるものではなくて、テーブルごとに話をして出たアイデアや施策を発表するんですね。アウトプットまでするというのが絶対ルールになっていて、そこで発言したものが実際に新しい施策として始まるということはあります。

あとはもっとカジュアルなものだと、社長が井上という名前なので、「いのさんランチ」というものを毎月やってます。うちは1,400人ぐらいの規模なんですけど、昔から未だに続けているものです。

これも新卒の社員からベテラン社員まで誰でも、決められたランチの時間に事前に予約をしておけば、社長とマンツーマンで話せます。ここで新しい提案も「僕はこう思うからやった方がいい」と直談判していけるような施策を散りばめていて、提案することのハードルをそもそも下げてるということがあります。

藤澤:「ランチやるぞ」といって、誰も申し込まなかったらショックですね。それはけっこう新卒も行くんですか?

山岡:そうですね。だいたい平均で12か15人ぐらい毎月参加しています。いのさんランチは月1回なので。

藤澤:なるほど。じゃあ予約殺到みたいな。

山岡:そうですね(笑)。あとは、何か提案があれば社長のメールアドレス宛てにいつでもください、とフルオープンにしていて。直接のメールで、誰からでも質問を随時受け付けるみたいなこともやっています。本当にハードルを下げて下げて、誰でもウェルカム感をめちゃめちゃ出していると思います。

藤澤:本当ならちょっと怖いところを、いきやすいようにしていると、なるほど。

SmartHR社の会議室のドアが閉まる日

藤澤:SmartHRさんはどうですか?

たけべともこ氏(以下、たけべ):弊社はまだ140人ぐらいなので、規模がぜんぜん違うんですけど。弊社の風通しの良さをお伝えするならば、経営会議の会議室のドアはフルオープンなんですね。あと、私が入社する時の面接でドアが閉まったのは、お給料の話の時だけです。

なので、どんな方が来社されてて、誰と打ち合わせをして、経営会議でどんな話があったか全部オープン。経営会議の議事録も全社員が見ることができますね。

藤澤:この間(オフィスに)行かしていただいた時も、ずっと扉が開いてましたもんね。

たけべ:藤澤さんに「え! ドア閉めるの忘れてません?」と言われたんですけど(笑)。はい、そういうカルチャーです。

藤澤:隣も全部開いていましたし、(会議室の仕切りも)全部透明で。社長さんが目の前を歩かれてましたよね?

たけべ:社員の食事風景とかも、お客さまにも見えるぐらい本当にオープンです。

藤澤:社長席とかもなかったですよね? 

たけべ:そうですね。社長室がなくて全員ワンフロアで。私は今、役員が斜め前と隣の席で。「おはよう」と気軽に挨拶できる感じですね。

藤澤:へぇー! じゃあ距離が近いですね。

たけべ:近いとは思います。でも140人の会社なので、もっと大きな会社さんで同じことができるかというと、ワンフロアに入りきらなかったりもすると思うので。

施策の成否を左右する「風通しの良さ」

藤澤:なるほど、なるほど。役員に決裁を取る際の障壁というのも、コミュニケーションが取れているので、風通し良く話せるということですか?

たけべ:そうですね。役員の個人的な判断では却下できないです。却下の時も、なぜダメなのか理由をきちんと添えてもらえるので。どうすればクリアできるかが明確にわかります。

藤澤:なるほど。登壇いただいた会社さんは全員、そんなに風通しがいいんですね。

たけべ:そんな顔をされると、クリークさんが風通し悪いみたいな感じになりませんか?(笑)。

藤澤:そんなことはないですよ(笑)、うちも部活とかありますし。SmartHRさんは52個もあるということですが、そこまでの規模ではないですけど。ほかにも、バースデーパーティーがあります。2ヶ月に一回開催するのですが、社員が1,500人ぐらいいるので、毎回200人ぐらい集まります。

いろんな施策をやっておりますが、「風通しの良さ」というのが施策につながるポイントだったんじゃないかなと思っています。

藤澤:けっこう質問が多いんですけども、もし何かあれば随時手を挙げていただければなと。

やらなければならない仕事でも「willの純度」を高める努力を

藤澤:あとは、「部下にやらされ感を感じさせず、自発的に仕事を進めるにはどうすればいいか」という質問です。結局、施策を上が掲げたからやらないといけないんじゃないかとか、それが義務になっちゃうと、社員発信じゃなくなってくるのかなと思うんですけど。ライフネットさんはどんな感じですかね?

岩田:やはり組織なので、shouldとmust、つまり「やらなくちゃいけない」とか「やるべきだ」みたいな施策はどうしてもありますよね。そこで僕がよく言うのは「willの純度」を高めようということ。

仕事なのでどうしてもshould、mustは出てくるけど、willが何パーセントなのか、という純度はかなり意識しようね、と若手社員に伝えていて。濃度が下がっているんだったら上司に言ってくれと。上司はそれを上げるように努力するし、別の機会を人事が探すこともできる。そこは月1の1on1で、正直にお互い向き合っていくのを今やってますね。

藤澤:willの純度を高めるという言葉は、社内から出てくるんですか?

岩田:私がよくこの言葉を使っています。たとえばメンバーに、「どれぐらい今、やりたい仕事ができてますか?」と聞くと、自分で「この仕事はおもしろくないですね」とか、「この仕事はwillベースで結構コミットしてます」とか、メンバーから出てくるようになりました。最初は一切出てこなかったです。

藤澤:そういうのは人事としていろいろ施策として、どういうふうに出てるか出てないかをチェックしていったりするんですか? 

岩田:そうですね。まだまだ徹底はできていないですが、評価制度もその趣旨になっているので。各部門の上長が毎月の面談で聞いています。

藤澤:なるほど、ありがとうございます。

A対Bの二項対立ではなく、最善のプランCを考える

藤澤:「働き方の新ルールって、総務と人事のどちらが担当するかという議論になりませんか?」という質問があります。「これは人事の担当なんじゃないか」とか「総務が担当するんじゃないか」とか。なすりつけあいになりかねないと思うんですけど、そのあたりはどういうふうにすみ分けされてるんですか?

たけべ:人事か総務かではないんですけど、弊社でこの前議論になったのが「採用広報って広報なの? 人事なの?」ということで。正直今、どっちもリソースがパンパンだよね、となって、結果的に採用広報を新しく採用してもいいんじゃないかということになりました。

弊社の価値観に「最善のプランCを見つける」というのがあるんですけど、業務を押し付け合うA、Bだけじゃなくて、Cを考えるのもあるんじゃないかと。そう考えることがけっこうあります。

藤澤:なるほど。プランCを考えようとか、そういう施策が人事や総務から出てくるというような?

たけべ:そうです、そうです。なんなら「ちゃんとプランC考えた?」って聞かれるぐらいですね。

(一同笑)

「どっちがやるべきか」より「どっちがやりたいか」

藤澤:LIFULLさんはどうですか? 

山岡:なすりつけあい、みたいなことはあまりなくて。これはカルチャーの部分なんですけど、採用で一番大事にしているのが、ビジョンフィット、カルチャーフィットです。スキルよりもうちのビジョンにフィットするという方を採用するのが第一優先なんですね。

カルチャーとしては、挑戦することだったり、利他主義という社是を掲げているんですけど。自分のためだけじゃなくて周りの人のためになることとか、会社のためになることを優先的にできるという考え方をすごく大事にしているんですね。

その考え方がベースにあるので、どっちがやるべきだよねという議論よりも、どっちがやりたいか。さっきの内発的動機のところで、どっちがやりたいかが一番プライオリティーが高くなることが多いです。

わかりました、ありがとうございます。1つぐらい質疑応答というかたちで「これ聞いてみたい!」というものがありましたら。……あ、はい、ありがとうございます。

質問者2:2つあるんですけど。 

藤澤:どうぞ!

物理的に離れた支社と、本社が同じ熱量でいられる理由

質問者2:1点目は山岡さんにおうかがいしたいんですけど。連結で1,400人が、四半期に一度は拠点に集まるということだったのですが、物理的に離れている拠点のメンバーも本社と同じぐらいの熱量で自発的に何かをできているという事例があれば、どうやって実現しているのかをおうかがいしたい、というのが1点です。

2点目はお三方におうかがいしたいんですけど。自発的に何かをやるというのは、先ほどもリソースがパンパンというお話がありましたが、業務時間に余裕がある、あるいは9時17時で業務が終わるというような環境がないとできないんじゃないかと思うんですね。

自発的なことを推進するには、業務削減とか無駄の削減とか、そういったものが両輪じゃないと成り立たないんじゃないかなと私は思っているんですが。そういった点で取り組まれていることがあれば、おうかがいできればと思います。よろしくお願いします。

藤澤:ありがとうございます。

山岡:拠点の物理的に離れているところの話なんですけど、コンパという施策は拠点でも開催するようにしています。また、さっきお伝えしたもの以外に、部長以上のマネージャークラスが全国の拠点を回ったりするようなこともしています。社内報に関してはイントラネットで公開しているので、さきほどお伝えした役員コラムも含めて全部の拠点が見れるようにしています。

また、拠点発信のものとして今すぐ浮かんだ事例としては、大阪の支店なんですけど、ここは基本的に営業社員のみがいるところなんですね。本社が発信する社内報ではなく、大阪からの社内報を、逆に本社とか他の支店に届けたいと「大阪通信」というものを発信してくれたりしたことがあります。逆社内報みたいな感じですかね?(笑)。3、4年前になると思うんですけど、こういったことを定期的に続けてくれていたりということがあります。

質問者2:ありがとうございます。

藤澤:ありがとうございます。逆社内報という言葉が出ましたね。

山岡:今作りましたけど(笑)。

藤澤:(笑)。

白旗を上げやすい空気

藤澤:2つ目もぜひご回答いただければと思います。業務上の時間管理とかも含めてだと思うんですけど、たけべさんはいかがですか? 

たけべ:弊社の場合は、「人事労務をラクラクに」とうたっているサービスなので、自分たちの業務がパンパンというのは良くないよね、という意識はあります。日頃から業務をより効率的に、と考えているところはありますね。

あとは会議室のドア開けているよという話に繋がるんですけど、私も今日あった会議の議事録を全社員が見れるようにしているんですが、そのぐらい「私が今日何をしたか」を誰でも知ることができる状態なので、「明らかに業務が今たけべさんに偏っているよね」となったら必ず誰か助けてくれるだろうし、空気的には白旗を上げやすいです。

なので、私も「こういう施策をやりたいんだけど、正直日頃のタスクでぜんぜん手が回らないよ」という時は、自分から言える空気感があります。

藤澤:確かに、そういったシステムを売ってるのに、自身の会社でできていなかったら……というところですよね。

たけべ:平易な言葉でいうと、すごいホワイトだなと思います。

藤澤:透明感もすごくありますしね。ありがとうございます。

掻き立てられるくらいやりたいことがあるなら、その思いを受け入れる

藤澤:ライフネットさんもぜひ。岩田さんお願いします。

岩田:当然、働き方改革や業務削減もやってはいます。ただ、逆にいうと「時間があったらやりたいな」ということは、実はそんなにやりたいことではないと思っていて。寝食忘れてやりたいと思えるぐらい、掻き立てられるものがあるかどうかが大事だと思っています。

最悪それで、自分の部署の仕事への時間的なコミットメントが一時的に下がっても、それは受け入れるべきだと思っています。それだけやりたいことがあるんだったら、絶対そっちをやったほうがパフォーマンス出ますし、やりきった後の経験は、長期で見たらきっと本業に返ってくるので。

それぐらいの懐の深さと、メンバーのwillを応援する姿勢はライン長には持っていてほしいと思っています。

藤澤:ありがとうございます。最後に、山岡さん。

山岡:けっこうライフネットさんの考え方に近いんですけど、さっきお伝えしたワーキンググループは全部時間外なんですね。業務時間外なので、やりたいという社員が意欲だけでやるんですよ。忙しい社員ほどワーキンググループをやってプロジェクトを兼任していることが非常に多くて。

モチベーションは活かすという方針なので、そこは上司への理解は会社が求めていて、マネージャー向けの研修もけっこうあるんですけど、ミドル層に対してメンバーがやりたいという意識や内発的動機をきちんと活かせるようにサポートする、というのが基本姿勢になっています。本業も有志プロジェクトもどちらもですね。

質問者2:ありがとうございます。

藤澤:ありがとうございます。プロジェクトツリーもすごかったですもんね! 施策で全部が見えないぐらい、会社で施策としていろいろやられているかたちでございました。

この後もいろいろ質問があるかと思うんですけど、この後懇親会がございますので、続きはそちらで実施ができればと思います。トークセッションもお時間ということで、これで終了させていただければと思います。本日はありがとうございました。

(会場拍手)