2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
テーマトーク(2)ライフネット生命保険(全1記事)
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藤澤恵太氏(以下、藤澤):ありがとうございます。徐々に空気ができたきたなというような感じでございますけど。続いてはライフネット生命保険の岩田さんにご登壇いただければと思います。どうぞよろしくお願いします。
(会場拍手)
岩田佑介氏(以下、岩田):みなさん、こんばんは。足元の悪い中、ご参加いただきましてありがとうございます。ライフネット生命の岩田と申します。
クリークの藤澤さんに、シンパシーを覚えたんですけど、実は私も大学2年生の時に、若気の至りでM-1グランプリに出たことがありまして。200人の前でスベるという経験をしてから、人前で話すと冷や汗が出るという体質になっておりますので(笑)。みなさん、温かく聞いていただければと思います。残念ながら、中身に笑いはありません。よろしくお願いします。
私のプロフィールですが、今は三足のわらじを履いて活動しております。本業は、ライフネット生命でフルタイム勤務、2つ目は社労士事務所を自分で開業、3つ目は立命館の客員教授をやってます。ライフネット生命保険という名前を聞いたことある方、いらっしゃいますでしょうか?
(会場挙手)
ありがとうございます。生命保険会社というと何千人もいるようなイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、当社は社員数150人の会社でして、他の生命保険会社に比べるとスモールな組織体制で運営しています。
僕らがやっていることはシンプルで、インターネットで生命保険を届けて、その分安い保険料で生命保険の保障や便利なサービスが受けられるという価値提供です。今でこそ当たり前のようにインターネットでも生命保険が買える時代になっていますが、当社が開業した当初はそうではありませんでした。
岩田:次に、僕の複業の話なんですけれども、自分のクライアントさんの中に、DIYメーカーで、特に突っ張り棒で日本一のシェアを誇っている会社さんがいらっしゃいます。このDIYというキーワードから、最近、組織に対する気づきが深まってきたので、今日はそのお話をさせてください。
たとえば、スタイリッシュで機能的な家具って、お金さえ出せば買えるわけなんですけど。多少カタチが歪んでも、DIYで自分で苦労して作った家具の方が、ちゃんと愛情を持って長く大切に使いますよね。それって組織づくりも一緒だなと気づいたんですね。
つまり、自分で作った組織こそ、人は愛情を持ち、結果としてエンゲージメントもあがるんじゃないかということで。それなら、「ほしい組織は自分で作る」という感覚を、どうやったら人事として社員のみなさんに持ってもらえるだろうと。そういった観点からいろいろと取り組んでいます。
また、社労士事務所でコンサルティング活動をしていても、多くの方から、組織づくりについて、「まず、どういうことをしたらいいんですか?」と正解を求めるようなご相談を多くいただきます。
いつもその時に思うのは、組織づくりには「正解」などなく、あなたが「どんな組織にしたいのか?」というwillの方にこそヒントがあるのかなと思っています。今日は、当社の社員のwillベースでの、組織のDIYの具体例を何個か、ご紹介できればと思います。
岩田:まず、うちの新卒社員には、全社向けの研修・勉強会を自分でプランニングしてください、という仕組みがあります。これは、なぜかというと新入社員にとっては、基本、研修は「受ける立場」で会社から与えられるものだと思っていることが多いですよね? そこを、なるべく自分たちで受けてみたいと感じるような研修を、自らプランニングして、全社研修としてやってくださいということを、新入社員に課しています。
そうすると何が起こるかというと、新卒たちが勝手に「自分たちがどういう組織を作りたいか」とか、ライフネット生命の課題は何か、今後どういう組織にしていきたいのか、という未来の組織ビジョンを同期内で語りあい、そのテーマにフィットした外部講師を、自分でコンタクトをとって呼んでくるということが起こっています。
人事をやっている方なら知っている方も多いかもしれませんが慶應大学で幸福学を研究されている前野先生や、ユニリーバの人事責任者の島田由香さんなど、組織づくりの本質を突くような、渋いセレクションになっています(笑)。
これも最近本当にびっくりしたんですけど、急に若手社員の子に呼び出されまして、会議室に。「岩田さん、エンゲージメントって知ってますか?これからはやっぱりピアボーナスですよね。当社にも入れましょうよ。」と組織づくりに対してのディスカッションが始まりました。
「わかった、じゃあ検討しておきます」と言ったら、「大丈夫です、全部uniposというベンダーから提案も受けていて見積もりも貰っているので、予算を確保いただきたいです。」と言われました(笑)。
ピアボーナスをやるためには、社内規程なども改定しないといけないのですが、この話を12月ぐらいに初めて聞いて4月ぐらいに導入するというスピード感で進めています。社員が自ら発案した施策は、持続するし、組織にきっちりと根付くというのがすごくおもしろいですね。
岩田:次にパラレルキャリアについてです。これは、冒頭申し上げた勉強会という枠組みで、「起業」の勉強会を開催したのですが、会社内の部署横断メンバーで「複業で起業しよう」というチームができあがりました。
これはすごくいいなと思って、人事としても後押ししていこうというので、そこから複業の推進施策が始まっています。ただ最初についた火ほど、うまく広がらなかったので、「なんでなのかな」と思っていたら、意外と人事に申請しづらい、本当にやっていいのかわからない、本当に複業したら怒られるんじゃないか、みたいなことを耳にしたんですね。
じゃあ、人事総務部長が本気で複業していたら、社員からのこういう誤解も解けるのでは、と思いました。それが、いま、私が三足のわらじを履いている大きな理由です。
社内の部活動として、パラキャリ部というのを社内で作っています。最近、複業申請を社員がしてくる際に、「岩田さん、このビジネスって個人事業主の方がいいですか? 法人作った方がいいですかね?」というようなことまで相談してきてくれるようになったのですが(笑)、私はその手のプロではありません。
だったら社内でナレッジシェアしようと思ってパラキャリ部を立ち上げ、すでに複業している人たちが、これから複業したい人たちに情報提供するという場作りをしています。12、3人いますね、今。社員の約10パーセントが複業を始めている状態です。
岩田:次に、ビジネス部門からのフィードバックで始まった施策を、1つご紹介します。当社でがん保険を開発した際に、がんサバイバーの方に、インタビューをしたんですね。どういうことでお困りなのかと聞いていったら、「がんと就労」というテーマが、日本における社会課題だということが浮かび上がってきました。
たとえば、がんに罹った時に「自分ががんですよ」ということを社内にカミングアウトできないという問題があったり、両立支援のための休暇制度等もまだまだ整備されていない状況が把握できました。
このように商品開発のプロセスを通じて見えてきた課題を、人事にフィードバックいただきまして、それまで僕もまったくこの領域に知見はなかったんですけども、一緒に勉強して、どうやったらがんに罹患した方が働きやすい社会を作れるか、ということを考えてきました。
就業規則をどうやって変えていけばよいか、がん罹患者の方が、就業と両立する上で必要な施策は何か等を検討して、規程改定を行いました。
更に、これで終わらなくて、ビジネス部門から言われたのは、「ライフネット生命は、確かにがん罹患者の方が働きやすい環境が整った。けれども、もっとこれを他の企業の人事にも広げないといけないんじゃないの?」と言われまして、ビジネス部門と人事で連携して、「がんアライ部」という活動をやっています。
今僕が申し上げたような「がんと就労」というテーマを、企業の人事の方に広げていこうというような取り組みです。お手元の資料に、がんアライ宣言という資料が入っています。「がんと就労」に積極的に取り組んでいきます、ということを、ぜひみなさまも宣言をしていただければと思います。
岩田:最初にDIYの話をしたんですけど、多くの人にとって組織というのは、所与であり、そこにあるもので変えられないものだったりとか、経営や人事が動かないと変わらないと思い込んでいる人が多いんですけれど、実は「自らの手で変えられる」という体験を積んでいただくと、社員の現場発信での施策が生み出されてくるのかなと思っています。
もちろん、先ほどのがんアライ部の事例では、自分の組織だけでなく、社会そのものも変えていこうというところまで昇華されています。
最後に、うちの社風を表すものなんですけど、社内SNSに、「勝手にライフネットイノベーションセンター」というグループが立ち上がっていて、ここに毎日毎日こういうことやったらどうだ、ということが投稿されています。
こういうカルチャーってすごい素敵だなと思っています。僕からの話は以上です。ぜひ、がんアライアワードに応募ください。
※注:今年のアワードエントリーは9月上旬に締切。がんアライ宣言は年間を通じて可能。
(会場拍手)
藤澤:岩田さん、ありがとうございました。率先して自ら動かれているという姿勢がすごい印象的だったかなと思うんですけど、最後LIFULLさんにいく前にですね、もしご感想ご質問がございましたらいただければ......ありがとうございます。
質問者2:ありがとうございました。おうかがいしたいんですけども、このカルチャーになったきっかけとかはあったりしますか?
岩田:明示的な組織の変化としては、人事制度の改定にあると思っています。成長度評価というものを導入し、自分のwillに寄り添ってオーナーシップを持って仕事に取組み、その結果、マインド・スキルが成長している人こそ、この会社ではバリューがあると再定義しました。
そうすると、みなさん、会社の中で自分が「何をやりたいのか?」を探すようになってきていますし、人事評価でも常に上司から、「あなたは何に挑戦したくて、どんな風に成長したいの?」聞かれます。人は、問われ続けると、willが発露できるようになるのだなと感じています。
質問者2:ありがとうございます。
藤澤:ありがとうございます。後ほどトークセッションでもいろいろお話できればなと思いますので、一旦ライフネット岩田さんの登壇は以上という形でございます。ありがとうございました。
(会場拍手)
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