タニタの考える働き方改革

二瓶琢史氏:ご紹介いただきまして、ありがとうございます。株式会社タニタより参りました、二瓶琢史と申します。

この前にお話しされていました澤(円)様に比べますと、いきなりザ・サラリーマンみたいなかたちで登壇してしまって、ちょっと場違いになってしまったかなと反省しておるところですけれども。

本日は、タニタの考える働き方改革ということで、私どもの現在の取り組みであります「日本活性化プロジェクト」につきまして、大変僭越でございますが、私からご紹介、ご説明をさせていただければと存じます。

こういう場で私どもの取り組みをご紹介させていただくことは大変光栄でございます。同時にそこそこ緊張もいたしますので、ちょっと噛み噛みになったりお聞き苦しい点が多々出てきてしまうかと思うのですが、どうぞ最後までのお時間、お耳を拝借できればと存じます。よろしくお願いいたします。

まず、私ども株式会社タニタの概要を若干ご紹介させていただきます。最近「タニタ食堂」という事業をマスメディアでずいぶん取り上げていただきましたので、この数年、「食の会社ですか?」と言われることもしばしばあるのですが、本業はものづくりの会社でございます。

本社は東京都板橋区にございます。代表取締役社長は谷田千里と申します。今日の話にも若干絡みますけれども、いわゆる直接雇用の従業員は、海外法人も含めたグループ全体の人数として、今だいたい1,200名前後になっております。ただ、私のおります本社だけで見ますと、従業員数はだいたい210名ぐらいでございます。

主な事業内容は、家庭用や業務用の計測計量機器の製造・販売業になります。とくに最近は健康関連の計測機器の製造・販売に注力しております。わかりやすいところでは、いわゆる体重計。それの進化型として、からだの筋肉や脂肪の状態をはかることのできる体組成計。あるいは歩数計。その進化型として、消費カロリー……何キロカロリーぐらい消費しているかがわかる活動量計を、現在の主力商品として事業化させていただいております。

ほかにも、クッキングスケールですとか、変わったところでは塩分計というのもございます。あるいは睡眠計や血圧計といったものも開発しております。

社長から「社員のフリーランス化をしたい」

会社の設立は1944年にさかのぼります。おかげさまで、今年はちょうど会社設立から75周年という節目の年を迎えさせていただきました。

先ほどのお話と若干重複しますけれども、計測機器・計測デバイスの開発・販売を本社が担いつつ、グループ会社でフィットネス事業、あるいは例えば今一番有名になった「タニタ食堂」といった食堂事業などを展開させていただいております。

グループ全体としては、「『はかる』を起点に健康をつくる」といったことをスローガンに業務を進めさせていただいております。

今日はこういう場で、私どもタニタの働き方改革のお話をご紹介させていただけるということで、お声がけをいただきました。その一番のきっかけは、私どもの社長の谷田千里の著書として、3ヶ月ほど前に『タニタの働き方革命』という本が出版されたことです。日本経済新聞出版社様から刊行されており、1,500円ぐらいの定価で今も店頭に並んでいるかと思います。

この書籍では、「社員をフリーランス化してみる」という取り組みを紹介させていただいています。この書籍をご覧いただいた方には若干重複する部分も含まれてしまうと思うのですが、社員のフリーランス化について、私の目線から少しご紹介、ご説明をさせていただこうと思います。

ちょっとだけ自己紹介をさせていただきますと、生まれは1968年(昭和43年)になります。今は50歳を少し超えたぐらいです。社会人になったのが1990年。最初は自動車メーカーに就職いたしました。縁がございまして、株式会社タニタには2003年の1月から中途入社で、いわゆる転職で入っております。

いわゆる知的財産の管理や企業法務の関係の仕事にずっと従事してまいりましたけれども、タニタ社内でのいろいろなジョブローテーションなどがあって、2010年から人事関係の仕事に就きました。そういう意味では、人事関係の仕事はまだ始めてから10年足らずで、その部分はまだまだ若輩の状態かなと思っております。

2011年からは人事も含めてタニタ社の総務の責任者を拝命いたしまして、当時からいくつかの人事施策を企画し実行してきたという状況です。

そんな私に、ある時社長からお題が下りました。2016年1月、年始早々に社長から「社員をフリーランス化をしたいね」という話がいきなり……本当にかなりいきなり投げられた次第です。

こちらは先ほどの書籍の一部抜粋でございます。第3章の書き出しの部分なんですけれども、そのときの私の様子です。私、どうもポカーンとしたらしいです。「何を言い出すんだ、この社長」というのが、その時の率直な感想でございました。

目指すのは「働き方も、健康に」

話を聞いてみると、社員をフリーランス化するとは、雇用契約をやめて業務委託契約に切り替えようということで、よくよく考えていろんな方とお話ししてみると「おもしろそうだな」と思うようになり、2016年はこの社員フリーランス化の仕組みづくりにかなり注力するようになりました。

その当時、総務部長という役職では少し動きづらいところがあると思いましたので、社長補佐という、わかるようなわからないようなポジションに変えていただきました。

実際に私自身も2016年末にはタニタを退職して、2017年1月からは個人事業主になりました。我々はこれを「日本活性化プロジェクトメンバー」と呼んでおりますけれども、そういう立ち位置になりました。このプロジェクトの推進業務、あるいは社長の補佐業務を「受託」というかたちで、今も続けている状況でございます。

その「日本活性化プロジェクト」でございますが、タニタにとっては人事施策の最前線という表現になろうかと思います。どういうことかと申しますと、会社と個人の関係性を「雇用」にとらわれず見直してみようじゃないかというお話です。それが社員のフリーランス化といいますか、個人事業主化ということです。

フリーランスや個人事業主という言葉は、一般名称としては当てはまるのですけれども、もともとフリーランスでやっていらっしゃる方とは就業環境なども若干異なると思いますので、本当はもう少し個性的な名前、呼び方がそのうち出てくるといいかなと思っています。

そういうことも若干あって、社内では「活性化メンバー」や「日本活性化プロジェクトメンバー」と呼んでおります。目指すところは「働き方も、健康に」ということです。

人材流出を防ぎ、やる気が出る仕掛けをつくるには?

谷田千里が社長に就任したのが2008年でございますが、その頃からの社長の懸案事項をご紹介させていただきます。

まず1つは、経営は山あり谷ありで、良いとき悪いときがあると。良いときはいいけれども、悪いときにどういった手を打つかが大事であるということでございます。これを、人的リソースに落とし込んで考えてみますと、業績が悪化すると良い人が抜けてしまうというリスクが考えられます。

ちょっと掘り下げて考えますと、いわゆる良い方、良い人材は、「業績が悪くなったから、はいさよなら」ということは、あまりないと思っています。こういう方は組織に対するロイヤリティや責任感が非常に強うございますから、会社の業績が悪くなったときほど、むしろ「自分はがんばるぞ」「最後まで踏ん張るぞ」と言ってくれる方のほうが多いのではないかと思っております。

それでもやはり、ご家族やご家庭の事情などもいろいろございまして、業績が悪い状態が続いて給料がぜんぜん上がらない、ボーナスも出なくなったというところまでいきますと、本人の意向とは別に、ご家族のためにやむにやまれず退職する・転職するという選択肢を取らざるを得ない。そういったこともあるかと存じます。

そういうことにならないよう、なにか仕掛けといいますか、対策を取ることが、谷田千里の懸案事項の1つでございました。

2つ目の懸案事項としては、人材がいわゆる人“財”、つまり財産であるためには、その人のやる気が出るような仕掛けが必要だということです。

逆に言えば、やらされ仕事や、仕事が他人事になっているうちは、本当の意味でのやる気は出ないのではないか。踏ん張りがきかないのではないかということです。そういったやらされ仕事できつい状況になると、最悪の場合、メンタル不調にもつながりかねない。

したがって、やらされ仕事にならないで、やる気が出てくるような仕掛けも必要であると。これが2つ目の懸案事項でございました。

個人の主体性を高める「日本活性化プロジェクト」

具体的には2015年末から、社長の谷田の中では検討を始めており、2016年の始めから私も一緒になって、ほぼ1年をかけて検討と準備を進め、2017年の1月から本格的にスタートしました。「日本活性化プロジェクト」の趣旨や制度の大枠をなんとか言語化してご説明しようとすると、だいたいこういうことだと思っています。

「日本活性化プロジェクト」とは、まず会社に過度な負担をかけることなく、社員や……もう少し広義に言いますと、会社に貢献する人の「報われ感」を最大化して、「やる気」を引き出したいと。こういうことです。

その具体的な施策として、雇用関係の終了と業務委託契約による業務発注。仕事をする人が自分の仕事として、仕事に取り組む状態を作りたいということです。

それによって期待する効果としては、なんといっても個人の主体性が高まるということです。その延長として、ライフスタイルやライフステージに応じて仕事を続けていける。そういう仕組みにもなるのではないかと。

私どもとしては、これが真の働き方改革になるのかなと位置づけております。これを実現する個々人を「日本活性化プロジェクトメンバー」と呼んでおる次第でございます。世の中では、2016年ぐらいから「働き方改革」というキーワードをかなり耳にするようになりました。今では、聞かない日はないぐらいになっております。

次に、国が進めている働き方改革について少し紹介したいと思います。現在考えられている、施行されている働き方改革は、おおむね残業時間の上限規制や休暇取得の奨励といったことに、高度プロフェッショナル制度を補完的に組み合わせるものです。

誤解されないようにあえて強く明言させていただきたいのですが、私どもタニタは、今の働き方改革に関連する法律・法制・仕組みに、別に異を唱えるつもりはありません。むしろ、過剰な労働力の提供が横行しているような状況においては、適切な規制は絶対必要だろうと考えております。