麻雀漬けの毎日から学んだ「負けないやつが強い」

石倉壱彦氏(以下、石倉):みなさんは起業家なので、生き方という意味ではすごく共感できると思うんですけど、(会場の)みなさんは学生ですと。

さっきの堀江くんの話だと、夢中になっていたけど、いろいろ変わってきたというところがあった。堀江くんは学生時代に起業したけど、あとのお二方は新卒の時代や学生時代もあったと思います。大学3〜4年生ぐらいの時って、将来働く上でどういうことを考えていて、どういうことに夢中になっていたんですか? その延長線上で今の起業につながっていると思うんですど。

塩田元規氏(以下、塩田):どうやって就職先を選んだかという話だね?

水野雄介氏(以下、水野):どういうことに夢中になっていたか。俺、みんなよりぜんぜんイケてないというか、できない学生でほぼ麻雀をやってた。就職の活動のときは友達に、「電通のOB訪問に行こうぜ」と言われて「行こう」と話をしたんだけど、俺は電気通信系の会社だと思ってたの。理系だから。

塩田:電通ね。わかるわかる。

水野:そうそう。「ああ、電気通信系なの。OK」みたいな感じなくらい、世の中のことを知らなかった。ただ、麻雀は今も経営にはすごく活きているなと思って。

塩田:へえ。

水野:(麻雀と経営は)すごく似ているんだよね。藤田晋さんとかの経営を見るとすごくわかるんだけど、結局、流れと押し引きと場の状況を見て、どこで勝負して何をゴールにするのか(を学んだ)。麻雀は負けないやつが強いのよ。経営も一緒で、潰れなきゃいいのよ。それはいいんだけど、学生の時はそういう感じだったかな。

野球が好きで高校教師を目指した水野氏

水野:就職のときにどういうことを考えていたかというと、「なんだか幸せな人生を送りたいな」と思っていたと。その幸せな人生には夢があって、「やっぱり仲間がいるのがいいな」と思っていた。そのときに俺の視点から見えたのは、「高校野球の監督をやろう」「そしたら毎年甲子園を目指せるじゃん」と思ったから、先生になろうと思っていました。

塩田:なるほど。そこから学校の先生なんだ。

水野:はい。それで先生。

塩田:野球のほうが先なんだ。

水野:野球が最初です。野球部のコーチもやりながら、物理を教えていました。

塩田:なるほど。

堀江裕介氏(以下、堀江):水野さん、先生だったんですか。

塩田:ガチの先生でそこから起業したんだよね。

水野:そうですね。はい。

塩田:その後に入ったのは人材の会社だったね?

水野:そうそう。まずは非常勤というかたちで大学院のときに先生をやって、そのあとワイキューブで3年間働いて起業しました。

好きなことより、好きな“もの”を仕事にしよう

塩田:ちなみに20〜21歳ぐらいの人たちに、「俺そうだったよ」という話だけだと、「じゃあ俺も監督でいいのか」みたいな(考え方をする人もいるかもしれない)。いいと言う人もいるかもしれないし、自分の人生やキャリアで一番悩むフェーズだけど、なにかアドバイスある?

水野:さっきのつながりの話なんだけど、仕事とはいえ、人生の5割とか7割ぐらいの時間を使うじゃん。やっぱり輝いている人って、好きなものを仕事にしている人が多いなと思うんだよね。

「好きなこと」と「好きなもの」は違うし、「好きなことを仕事にしよう」の賛否もけっこうあるんだけど、「人を楽しませることが好き」ではないけど、(人が楽しいと思えるような)好きなものを仕事にするという(選択肢もある)。「みんなが何のために人生を送っているのか? 何のために生きているのか?」と考えたときに、やっぱり幸せになるために生きているんだよね。

好きなものを仕事にしていると、結果としてほかの人より深く思考ができるのよ。ほかの人より深く思考ができると、ほかの人よりも使う時間の総量が増えるから、仕事ができるようになる確率が上がる。結果、自分が幸せになれる確率も上がるし、それは仕事になってくる。

人を楽しませるエンターテイメントが好きでも、野球の選手になるのとゲームを作るのはぜんぜん違うじゃない? でも「人が楽しめること」という意味では一緒だよね。ゲームが好きなら、ゲームの会社をやるほうが絶対強い。俺だったら、中高生が好きだから、中高生のために仕事をしているし。“もの”っていう言い方はちょっと変だけどね。

だから、夢中になるもので言うと、キャリアを描く上では何を対象物とするのかが大事なのかなと思います。

抽象化しすぎるのはよくない

塩田:いろいろ抽象化して、当てはまるところを無理に探さなくていいってことだよね。

水野:そう。

塩田:よく自己分析したりして。俺は学生のときに野球が好きになって、野球のワクワクする感覚が好きだったから、このシーンと同じものがありそうなやつを抽象化して、ここの企業に(その要素を)見つける。「でも、それって野球が好きなだけじゃん?」みたいな。

水野:そうなんだよね。それが好きな理由というのは、そんなに単純じゃない。

塩田:なるほど。そこまで分析するのはむずいから、だったらもう……。

水野:そうそう。

塩田:“もの”か。

水野:好きなものを仕事にしたほうがいいんじゃないかなと思う。

塩田:おもしろいね、それ。

石倉:そういうものを探していく感じですかね。

水野:はい。

塩田:確かに抽象化するとおかしくなることはあるもんね。

水野:抽象化すると、その要素分解がちゃんとできていなかったり、あとはそんな単純じゃないから。

塩田:要素の一番大事なところが削ぎ落とされているときがあるもんね。

水野:あるある。

僕だけが「でかい波が来る」と確信した場所に行くこと

塩田:おもしろい。なるほどね。堀江くんは?

堀江:質問内容を忘れましたね(笑)。何でしたっけ?

石倉:いろんなことに夢中になってきて、いろいろ変わってきているなかで、大学3年生とか4年生の方たちがいて、まさに(堀江くんが)起業した時(と同じ年)だよね。

堀江:学生の時にどういうことを考えたか?

石倉:そうそう。

堀江:「起業したい人?」と言ったときに、めっちゃ(大勢が)手を挙げたじゃないですか。僕だったら、もうこの時点で起業(という選択肢)を捨てますね。

塩田:なるほど。おもしろいね。

堀江:10年後にメジャーになるものに対して、自分が最初に乗ることを意識していて。サーフィンでいったら、もう波が来るとみんながわかっているところで待っていると、乗れないんですよね。

誰も「波が来ない」と思っているけど、僕は「絶対来る」というデータを持っているものに乗るという感じです。僕は大学2年のときに起業しているんですけれども、2年間ほぼ大学に行かないで何をやっていたかというと、「Tech Crunch」で海外のスタートアップのニュースメディアの記事を読んだり、統計のデータをずっと読んでいて。海外の投資マネーと日本のベンチャーの投資金額は明らかに差があるよね。

塩田:うん。

堀江:僕が(起業家と)けっこういろいろ会いに行っていたら、(日本の起業家の「コミュニティは)かなり村っぽくなっていて、すごく(投資金額が)少ないと思った。ここのインナーサークルに入れば、簡単にお金が集まるのがわかったと。

みんなが就活でゴールドマン(・サックス)や電通を受けに行っていたなかで、みんなが超小さいと思っているけど、僕は今後でかい波が来ると確信している「起業」という世界に行っいたんですね。かつ、(起業する同世代の)人が少ないと。僕はそういうことを常に考えるべきかなと思っていて。

天才じゃないなら、勝ち方を覚えるべき

堀江:本当の天才は、何千人いても、たぶん大きい波に乗れるけど、自分自身が負けた経験があったり、自分自身が絶対的な天才じゃないとわかっているんだったら、どうやって勝つかを考えたほうがいいなと。

勝つことは、ものを好きになるための方法の1個だと思っていて。なんだかんだ人間って、得意なものは楽しくなると思っています。昨日も(プレーした)フットサルは、最初は楽しいなと思ったんですけど、野球のほうがやっぱり楽しくて。

「ほかの人よりうまいから楽しい」というところがあるんですね。ゲームに負けたらおもしろくないようなところがあるので、僕にとってはそれがワクワクだったんですね。

答えとしては、みんなが来ないと思っているけど、自分だけが確信的なデータや情報を持っていて、みんなとの考えにギャップがあるもの。今からそこに飛び込んでおくと、5年後にすごい波が来て、10年後には1人だけ数千メートル先までガーって行っている感じです。

就活は「よーいどん」で同じ線から並ぶのが当たり前じゃないとよく思っていたんですけど、『マリオカート』も抜け道みたいなものがあったじゃないですか。人生は不平等だから、僕はそういうものを探していましたね。

最近(発売された本で)『サードドア』とかありましたよね。海外の学生が、ビル・ゲイツなどの著名人に会いに行く本なんですけど、(その本のなかで)「人生は(ナイト)クラブみたいなものだ」と書かれていたんですね。

1つは、めちゃくちゃ高い金を払った人が(クラブの)VIPの席に入る。もう1つが、親がものすごく金持ちとか人脈のある人が入る。3つ目のドアが僕みたいなやり方。コネがあるわけじゃないし、お金があるわけでもない。「じゃあどうやって入るのか」を考えるのが、真の人生の波の乗り方だと思っていて。それに乗っちゃうとすごく楽しいから、それを探しにいきますね。

石倉:それは大学3年生ぐらいで考えていたことですか。

堀江:1年から2年の間に考えていましたね。

先生の話を聞いて覚えるのが体質的に苦手だった

石倉:そこって明らかに周りと違っていたじゃないですか。さっき「学生(時代)から自己分析をして自分の個性を認識して」という質問がありましたけど、なにか考えてました?

堀江:僕は田舎から出てきたので、大学に入学したときに、慶應ってすごいところだと思っていたんですよ。全員化け物みたいなやつばっかりというイメージだったんよね。行ったら「別にそうでもないな」ということに気づいて、テンションが下がっちゃったんですよ。起業家がいっぱいいると聞いていたんですけど、「いないじゃん?」みたいな。

「(これから大学生活で)何しようかな」と思ったときに、「あれ待てよ。俺、人の話を聞くの苦手だな」と。さっき(の学生からの質問)もあんまり聞いていなかったんですけど。先生の授業が頭に入らないタイプの人間なんですよ。本を読んだり、自分で経験していったほうが身になるとわかっていたんですね。先生が話したことを覚えたりすることが、僕は体質的に苦手だった。

だとしら「大学はむしろ出なくていいな」ということで、最初は図書室へ行って、プログラミングの本や起業の本などをバーっと読み漁った。そっちのほうが明らかに前進している肌感があったので、途中から自分のなかで(授業に)行かなくていいと決めて、それよりは自分が一番ためになると思う前進をして行こうと思いました。

石倉:なるほど。

堀江:あと、無理でした。人に言われて同じ授業を受けたり、朝授業に行けなかった。

石倉:そういう自己分析の結果というところですね。

堀江:そこで悲観する必要はないと思っていたから。

石倉:自分の良さを逆に活かしてという。

堀江:うーん。でも、僕はウケていたんですよ。例えばテストのときはいつも、「(時間なので)終わりです」と(先生が)言ったときに、いつも僕が教室に入っていくから、大学内でもすごい笑いが取れるんですよ。

石倉:(笑)。

堀江:それがおもしろいみたいな。僕、徐々にその授業で有名になっていきました。あとは僕のゼミって全部英語なんですよね。英語なんですけど、僕だけずっと堂々と日本語で話しているんですよ。だから目立つんですよ。「生き方って、このなかで超優秀になることじゃないな」と思って。僕なりの方法で勝ち残る方法があるのかを考えました。

石倉:さっきの質問した方の参考になっているかどうかわからないですけど。

水野:これはこれで、かなりセンスが必要ですね(笑)。

エンタメをプロデュースするときの2つのパターン

石倉:じゃあ、塩田さんお願いします。

塩田:この2人の話が対照的だったからおもしろいなと思って。軽くメタ的にしゃべると、エンタメのプロデュースをするときに、方向がぜんぜん違うところが2つあって。1つは、堀江くんっぽいというか、マーケットが存在していて、そこに対して誰よりも早く、誰よりも高い能力でスピードを持って勝負するということ。

企業でいえば、ビットコインゲームとか、例えばビットコイン〇〇と(いうトレンドが)出たときに、みんなが同じことをやるんだけど、もう(すでにマーケットが)あって正解っぽいから、それを誰よりも速く(とりに)いく戦い方。これはエンタメのプロデュースでもあるんですね。時流に乗る。とにかくその波に乗るという戦い方。

もう1つは、「あの人がつくったものだ」とわかる作品があるじゃないですか。例えば、宮崎駿監督の映画を観たらわかるじゃないですか。それはその人にしか作れない。その人の内側にあるものは、マーケットがあるかもわからないし、時代もあるかわからないけど、競争も別にないという。

大きくこの2つがあるのかなと思っていて。堀江くんはどちらかというと、どう波に乗るか。マジョリティがすでに存在しているところに入るのって、市場でいうと遅れて入るのは戦い方として一番よくないから、早くいい波を捉えたほうがいよね、という話だったと思う。

ミッチーの場合は、会社をやっているという感じより、学校をつくるみたいな感じだよね。

水野:そうだね。教育を変えたい。

塩田:「もうこれ以外やりたくないな」という、別に一生かけてもいいという覚悟がある)。なんかそういうものは波がないよね。

水野:うん。

自分が1番になる方法が「波に乗ること」

堀江:僕の場合はたぶん、けっこうコンプレックスがあったのも関係していると思っていて。

塩田:そうなんだ。

堀江:僕の場合のコンプレックスは、甲子園に出ていないこと、あと大学に行ったときも、自分より優秀で、自分より物理・数学のできるやつが見つかっちゃったとか。自分のことを天才だと思っていたのに、そういうのって、いるわけですよ。そういうコンプレックスがあった。僕のコンプレックスは、大学のときはなにかで1番になってみたかった。

塩田:なるほどね。

堀江:1番だったら楽しめるだろうと。

水野:1番になる方法が波に乗ること。

堀江:そうですね。

塩田:なるほど。おもしろい、おもしろい。ちなみに、大学ではどんなことで1番になったの?

堀江:それぞれの1番があると思っているんですけど、僕の場合は超簡単に1番になれたと思っていて。大学のときにまわりに起業しているやつが1人もいなかったから。

塩田:堀江くんの時代でそうなんだ。

堀江:細かい受託みたいなものをしてる人はいたんですけど、自社サービスでやっているやつはいなかったので。

塩田:いなかったんだ。へえ。

堀江:「大学のなかで起業しているやつって、誰?」と言ったら、僕の名前がパッと出てくるみたいな状態だったんですよね。

その時点で「なるほど、真っ向勝負で強いやつと戦うよりも、なにか別の戦い方ってあるんじゃないか?」みたいな。それこそ、マッチョ思想だと思うんですよね。真っ向から戦いにいくよりも、冷静に自分が勝てるところを探していって、その国で楽しむみたいな。僕はそういうタイプなんですよ。

塩田:大企業で出世レースしたり、銀行だと何千人も同期がいて。

堀江:絶対に勝てない。

水野:(笑)。

塩田:何万人の中で1番になるという戦いを避けたってことだよね。

堀江:そうですね。まず学校に行けないやつが会社で出世できるわけないし。だって僕、学校に行くために学校に一番近い家を借りたりしたのに、それでも無理だったから。

塩田:でも、そこまでいくと逆に悩まないよね。もう無理だってことがわかるから。

堀江:そうそう。だから、僕は逃げ場がないんですよ。

塩田:逆に楽なんだと思う。さっきの話でいくと、もうできないことがクリアだから。

水野:確かに。

塩田:中途半端にできるものがあるほうが選択肢が多いんです。

堀江:僕は選択肢がなかったんです。

水野:そうですね。そういう意味でいうと、塩田さんが一番選択肢があるんじゃないのかな。

塩田:あっ、今?

水野:大企業でも行けるし、今でもそうだけど、全体の能力が高いから。

塩田:なんかありがとう。

(一同笑)

堀江:俺は能力が低い。

塩田:(笑)。

水野:いやいや。突出した能力があるから。

堀江:(笑)。

アカツキの哲学を形づくった経営者たちの話

塩田:俺が大学を卒業する頃は、それこそベンチャーがあんまりなくて。なかったときに「なんかベンチャーってかっこいい」という想いがあったんですよ。周りに言うのが重要だから、「ベンチャー好きかも」と、とりあえず言いまくっていたら、外からいろんな情報が入ってきて、結果、ベンチャービジネスコンテストとか、起業おままごとみたいなものをやらせてもらった。

そのときにある人に出会って、「『会社経営とは何か?』という話をイケてる経営者にインタビューしたらいいよ」と言ってくれて。そして学生団体を作って、幸せと経営みたいな、数字だけじゃないものをどう経営に取り込んでいくのかということを、いろいろな人にインタビューしていった。

そのときのインタビューをもとにしたのがアカツキの哲学なんですけど、とにかく感動した。おじいちゃん経営者が「いい会社はね、人と雰囲気を大事にするんだ」と話してくれて。そういうことを言うから、もうむっちゃ感動していて俺もそういう会社をつくりたいなと思ってスタートした。

人生は旅だから、すぐにゴールがある。「なにかを手に入れたい」とあんまりにも思いすぎるとつらくなるから、やっぱり人生は遠回りがいいんですよ。お金が足りなくなったりすると、一番最初に自分で雰囲気の良し悪しを切り捨てちゃうんですよ。それでまた学んでいく。だから最近やっと、大学のときに感じた想いと統合されてきた感じですかね。

じゃあ、次に行っちゃいましょうか。

石倉:これは僕からの質問だけど、このお三方はもう起業家で自分のやりたいことを明確にやってきた方ですが、僕はもともと大企業にいて、まずベンチャーに憧れて、次に起業家に憧れて仕事をやってきました。去年、仕事をちょっと辞めて、半年間自分が何をやるかを考えた。でも、38歳になっても「人生どうしよう?」と悩んでいるんです。

塩田:そのとおりだよ(笑)。

石倉:いい意味でイッちゃっている起業家が周りにいたので、僕は彼らみたいにはなれないけど、彼らのやりたいビジョンや彼らを支えることだったら、誰にも負けないというのがあった。なので、今の投資の仕事をさせていただいているところはあるんですけど。

やっぱり人によっていろいろなタイプがあると思うんですよね。引っ張っていくタイプと、支えることでよさが出てきたりもあると思うんです。だから、みんながみんなこういう(引っ張っていく)感じだったら、それはそれで大変な世の中だと思う。

堀江:思いつきました。

石倉:思いついた?(笑)。

塩田:いや、聞いてないから(笑)。

石倉:いいよ、いいよ。

「やりたいこと」が見つからないなら「やりたくないこと」を考えよう

堀江:今の話で思いついたんですけど、たぶん好きなことを探そうとしてもけっこう難しいわけで。

塩田:そうそう。

堀江:好きなことを探そうとしても、絶対ムリだなと思っていて。今、点と点がつながった感じがしたんですけど、人からなにかを言われたり、人から何時間も教わったりという決まった感じが無理だったんですよね。というのは、「嫌い」を潰していった結果、起業家になったから、本当に嫌なものを探したほうが好きなもの見つかる。

塩田:それはあるんだよね。「やりたい」を出すのが難しいときに、「やりたくないこと」を考える。

堀江:それで輪郭が見えてくるじゃないですか。

塩田:俺も大学のときに、「満員電車に乗りたくない」とか、(やりたくないことを)全部書いた。それも重要かもしれない。

堀江:選択肢が多いなかで好きなものをポンッと点で探すのって、けっこうきついんですよね。

水野:まあね。

塩田:確かに。むちゃくちゃきついですよね。あと、やっぱりなにかが起こる、好きなことを探そうというと、みんな自分探しの旅に出すぎるというか、目の前のことをやってみて、自分がどう反応するかがけっこう重要だったりするじゃん。

起業も、最近は情報が多いから、なにかやった気になるんだよね。だけど、体験しないと何ももわからないから。今日のこの話を聞いても体験しないと結局何もわかってないから、踏み出して味わって、また(新しい情報を)受け取る。

人は好きなことをひとつ“だけ”見つけようとする

塩田:昨日、「Zen 2.0」というイベントに登壇したんですけど、そこでお坊さんからすごくいい言葉を聴いたんです。「パラダイムを変えろ。見方を変えろ。人生の捉え方を変えろ」と。

堀江:お坊さん、そんな横文字使うの?

(一同笑)

塩田:いっぱい使っていた。

堀江:パラダイムシフト?

塩田:「Exploration」。探求だと。人生は未知へ挑戦し探求していく旅と捉えたほうがいいと言っていました。好きなことを1個だけ探そうとするじゃん。それは難しいから、100個あっていいんだよと。

堀江:あと最近気づいたんですけど、好きなことって1個だと心が折れるときがありますよね。

塩田:(笑)。

堀江:「俺はこれしかない」というのは、ある意味執着じゃないですか。

塩田:執着だねぇ。

堀江:例えば、サーフィンみたいなことがあることによって、「なんか自分の生きている世界って小さいし、こっちが折れてもこっちは楽しいじゃん」みたいな。「就活なんて失敗していいじゃん」ぐらいのほうがいいなって。

ジェフ・ベゾスも目指したソニーのすごさ

塩田:みんなは知らないと思うけど、Amazon CEOのジェフ・ベゾスがあるインタビューで「Amazonは何の会社か?」とインタビュアーに聞かれたときに、「Amazonの話をする前に、ソニーの話をしていいか?」と言った。

「ソニーという会社は何の会社か? プロダクトを作ってるのか? でも、彼らはプロダクトを作っている会社の定義ではなく、自分たちは1つのライフスタイルを変えるすばらしい商品で、すばらしい体験を届ける会社だと言ったんだよ。だからAmazonはサーバ屋でも、ECサイトでもなく、最高のカスタマーエクスペリエンスを提供する会社だ」と。

そういうほうがいいじゃん。燃えるじゃん。

自分で自分を許すことの大切さ

石倉:困難に遭ったときの乗り越え方は?

塩田:どうですか?

堀江:起業して以来、いつも病んでるようなもんです。

(一同笑)

病みながらも、僕は最後に折れない何かがあると思っていて。ある意味、“抜き”がうまいやつは生き残っている気がするんですよね。真正面で全部の課題を解決しようとするやつって、鬱になっちゃったりして、ポキっと折れちゃうんですね。僕だったら「塩田さん、飲みに行きましょうよ」と言う。

塩田:ああ、言うね。

堀江:この前も飲みに誘ってもらったりした。だから、まじめに生きすぎちゃうと折れちゃうケースがあるから、僕は“抜き”というものを肯定する。

塩田:自分で自分を許すということね。そういう時間を取ったりとか。

堀江:そうですね。これをやらなければ続けられないような。

塩田:なるほど。

水野:俺も近くて。本当に困難なものは何なのかをちゃんと見極める。困難なものはけっこうあるんだよ。それに度合いもあるから、自分にしかできないものではない場合は、自分でやらなくても大丈夫だったりするから。

俺、1年前のこととかまったく覚えてないのね。

堀江:覚えていない。

水野:正直、まったく覚えてない。

堀江:そう。

水野:一昨日何を食べたかとかも覚えてないから。

塩田:いやいや。

堀江:1個前の質問すら覚えてないですよ。

水野:正直そういうのもあったけれども、今は未来のことしか見ていない。みんなができるなら、そういうのも大事なのかもしれない。

堀江:でも、みんながんばろうとするんですよ。諦めないのって精神論だし、精神にも限界があるから、楽しむ工夫をすることがけっこう大事かな。

「ピンチはチャンス」は長くは続かない

塩田:俺も近い。成功者の本ってだいたいポジティブシンキングだと言われるから、僕もピンチや困難が来たときに、「いや、見方を変えよう。がんばって」という感じで、「ピンチはチャンス」と言い続けた。とにかく「ピンチはチャンス、ピンチはチャンス、ピンチはチャンス」と言い続けてきたけど、それで一定がんばれるの。でも、長くは続かないね。だってさ、ピンチはピンチなんだよ。

(一同笑)

ピンチはチャンスと思い続けていても、倒産するんですけどね。そのときに俺が楽になったやり方は、恐怖や不安を許すこと。「怖いんだな」「倒産したらヤバいと思ってるんだな」ということを消さない。「怖いわ」と口に出す。

(パネルトーク終了)