ナイトタイムエコノミーの可能性

司会者:続きまして、金山さん・鎌田さんに加えてスペシャルゲストをお招きして、先ほどからキーワードとなっています「ナイトタイム・エコノミー」の可能性について、トークセッションを行います。それではスペシャルゲストとして、渋谷区観光大使・ナイトアンバサダーとしても活躍されている、ヒップホップアクティビストのZeebraさん。どうぞお入りくださいませ!

(会場拍手)

Zeebra氏(以下、Zeebra):ただいまご紹介に預かりました、渋谷区ナイトアンバサダー、観光大使を務めています、Zeebraです。よろしくお願いします。

司会者:よろしくお願いいたします。どうぞご着席ください。またもう一方、今年11月に渋谷駅西口で開業する「渋谷フクラス」の総支配人を務めます、東急不動産SCマネジメント株式会社、渋谷推進部統括部長の長尾康宏さんにもトークセッションにご参加いただきます。長尾さん、どうぞお入りくださいませ!

長尾康宏氏(以下、長尾):こんにちは、今ご紹介に預かりました、このたび11月に開業します「渋谷フクラス」の総支配人をやらせていただきます、東急不動産SCマネジメントの長尾といいます。よろしくお願いいたします。

司会者:よろしくお願いいたします。どうぞご着席ください。みなさま、よろしくお願いいたします。それではここからは「煩悩」主催、鎌田さんにファシリテーションを務めていただきたいと思います。鎌田さん、よろしくお願いいたします。

鎌田頼人氏(以下、鎌田):はい。それでは僭越ながら進行を務めさせていただきます、よろしくお願いいたします。時間もないのでさっそくなんですけれども、Zeebraさんにおうかがいしたいと思います。

Zeebra:はい。

鎌田:Zeebraさん個人として、ナイトアンバサダーという立場で関わっていらっしゃると思うんですけれども、今の日本のナイトカルチャーをどう見ていますか?

Zeebra氏が感じる、渋谷のナイトカルチャーの変容

Zeebra:僕はたまたま、クラブの風営法改正の活動からこういったことに携わるようになってきたんですけれども。それこそ、例えばクラブの深夜営業が合法になったり、この何年間かでたぶん国としてもいろいろ変わっている状況なので、そこをどんどんフォローアップして、さらに大きな可能性のあるマーケットになっていったらいいんじゃないかなと思って、いろいろやっております。

鎌田:僕らも風営法が改正されてから、けっこう……昔からクラブなどに行っていたんですけれど、WOMB(渋谷区円山町にあるクラブ)などに行ったりすると署名をするような時期もありまして。

Zeebra:はい、はい。

鎌田:そこからだんだん変わっていったのかな、と思います。あわせておうかがいしたいんですけど、Zeebraさんはやっぱり渋谷というイメージがありますし、普段から(インターネットラジオ局の)WREPなどでDJもされていらっしゃいます。

Zeebra:はい。

鎌田:ここ数年で渋谷区自体のナイトカルチャーはどのように変わったと思われます?

Zeebra:ナイトカルチャーだけじゃなくて、渋谷区がここ最近で一番大きく変わったと思うのは、たぶん外国人の方がすごく多くなったということじゃないかなと思うんです。駅前にうちのラジオ局がやっているバーがあって、そこで月に1回パーティーをやって、DJをやってるんですけど。そこにも本当に早い時間から外国のお客様がすごくいっぱい来ます。

渋谷の夜のすごくいいところは、そういう所に来た外国人のお客さんが、日本人のお客さんたちと一緒になって遊んでくれるところ。我々が提供する文化を一緒になって楽しんでくれる。観光地に行って「旅の恥は搔き捨て」じゃなくて、どちらかというと「東京の街、若者たちってどんなことしてるんだろう」「クラブってどんなふうになってるんだろう」と、それを楽しんでくれるお客さんが多いなという印象ですね。

鎌田:確かに。最近のクラブは、本当に外国人がたくさんいますよね。

Zeebra:そうなんですよ。

鎌田:金山さん、今のZeebraさんのお話を聞いてどう思われますか?

ワールドスタンダードなクラブカルチャー

金山淳吾氏(以下、金山):渋谷区の大きな特徴の一つに、欧米からの観光客が多いんですよね。

Zeebra:はい、はい。

金山:それで、やっぱり欧米のクラブカルチャーを知っている人たちが、東京、とくに渋谷は「日本の音楽の一つの聖地だ」ということで、楽しみに来てると思うんですけれども。それをしっかりお店側が受け入れて、混じり合う関係性をうまく演出していってるなと思っています。

Zeebra:そうですね、はい。

金山:中にはやっぱり英語が喋れないというようなことで、なかなかウェルカムじゃない空気を作ってしまうお店も実はまだまだあるんですけれども。やっぱり音楽は一つの共通言語になっていって、そこはすごく渋谷の夜の底力になってるんじゃないかなという。

Zeebra:そうですね。クラブカルチャーというものは、すごくワールドスタンダードな部分があります。もちろん国ごとに特徴はあるかもしれないですけれど、全体を包むワールドスタンダードな感覚も、やっぱりあると思うので。我々だと、それこそどこかの国……中東でもヨーロッパでも、どこに行ってもやっぱりそういう所があって、そこに行くとなんとなくいつも同じような人が遊んでいる。そのへんもだいぶプラスになっているんじゃないかなと思いますね。

金山:あとびっくりしているのは、たぶん本当にZeebraさんたちの活動からだと思うんですけれども、「クラブとクラブカルチャーを守る会」の代表をずっとやられていて。

Zeebra:はい。

金山:DJたちがオーディエンスと一緒に街を清掃する光景が、渋谷でも当たり前になっているところもあると思っていまして。例えばハロウィンなどは、すごく課題として報道されることが多いんですけれども、実際には渋谷が一番きれいな朝はハロウィンの翌日ですよね(笑)。

Zeebra:本当に(笑)。

クラブに根付く“粋”のマインド

金山:クラブカルチャーを推進している方々が一丸となって、オーディエンスを巻き込んで街をきれいにしてくれる。負の側面と、そのカウンターで良い効果があるかなと思っています。

Zeebra:そうですね。やっぱり我々も「クラブカルチャー」と言うだけあって、「文化」だと思ってやっています。もちろん水商売を否定するわけじゃないんですけれども、そういった側面だけではなく、ちゃんと文化としてあることで、場所や地域に対する責任感なども生まれてくるんじゃないかなと思っています。

鎌田:そのとおりですね。それこそクラブカルチャーを守るときに「PLAY COOL」というコンセプトを打ち出していたと思うんですけれど、昔からクラブに遊びに来る人の中には「粋」という文化があります。遊ぶならきれいに遊んでいこうよ、という。たくさん踊って、お酒をいっぱい飲んで、だけど、やっぱり最後にクールに帰るやつらがイケてるよねというヒップホップなマインドがあると思うんですけど。

やっぱり外国人の方などがいらっしゃったときに、それが街全体にどんどん広がっていくといいですし。最近、道玄坂のYellow Blank Marketというところによく遊びに行くんですけど、DJバーなども増えてきたと思っています。そういうふうに外国人と話しながら「カルチャー、音楽があればみんなつながれるよね」というマインドが、渋谷の中にどんどん増えてきたことはすごく楽しいですね。

それでは次の質問に移らせていただきます。長尾さん。

長尾:はい。

「世界一低層にあるCE LA VI」

鎌田:このたび「渋谷フクラス」を立ち上げられると思うんですけれども、ナイトタイムエコノミーを盛り上げていく上で、参考にされた世界の事例などは何かありますか?

長尾:はい。11月に「フクラス」が開業しますが、12月5日にフクラスの中に「東急プラザ渋谷」という商業スペースがオープンします。その17・18階のテラスを一部使ったかたちで、シンガポールのマリーナ・ベイサンズの屋上でエンターテインメントレストランをやっている「CE LA VI Tokyo」が、日本に初出店します。

その中に、フォーマルなレストランや科カジュアルなバー、あとはクラブの区画ができあがるわけですね。それはたぶん深夜、朝までやるような営業スタイルをとると思いますので、そういう意味では新しいかたちでの店舗ができあがるかな、と思います。

金山:ちょっとだけ補足をさせていただくと、「CE LA VI」はシンガポールだけじゃなく、けっこういろんなインターナショナルシティで展開されてるんですけれども、渋谷フクラスの「CE LA VI」が、「世界一低層にあるCE LA VI」になるらしいですね。

これはなかなか許可が降りない。彼らのフィロソフィーからすると許可が降りなかったはずなんだけれども、「渋谷の街」という特殊性と、スクランブル交差点をストンと……そのアングルから見るスクランブル交差点が実は一番素晴らしい景色なんですけれども(笑)。たぶんあれをご覧になった「CE LA VI」のディレクターの方々が、「ここならいいんじゃないか」と。

長尾:はい、まさにそのとおりです。シンガポールもそうですし、だいたいかなりの高層で。今年10月・11月に、上海とドバイで新店がオープンされると思うんですね。今、金山さんがおっしゃっていたとおりなんですが、まさに見ていただいて。

スクランブル交差点が上から見られて、かつ首都高の3号線が深夜になると、車の行き来が非常に何度もあって、躍動感があるということでとても評価していただいたようです。私も何度か上がって見ましたけど、食事をしながらでも非常に話題になるような景色だと思います。

金山:この前、僕も初めて昼間に屋上に上がらせていただいたんです。ルーフトップで、けっこう大きい空地というか屋上空間があるので、本当に外に出て楽しむ方もいるんじゃないかなと思います。スクランブル交差点のビューもいいし、六本木ヒルズの上の首都高3号線の道がずーっとまっすぐに見えて、本当に素晴らしい空間ですよね。あそこでよかったですよね。

長尾:ええ。オープンしましたら、あとはみなさんに盛り上げていただいて(笑)。

金山:(笑)。

鎌田:確かに。やっぱり渋谷って、「若い人の街」というイメージがあると思うんですけど、だんだん年齢を重ねていくことで、意外と渋谷のおもしろさみたいなものも見つかってくると思っていて。僕はやっぱり、ほかの県の街などに行かないで、渋谷でずっと遊び続けたいなという思いがあります。そういう中で「フクラス」さんがそういうところを体現して、背負っていかれる。早く年老いたいな、と思っています(笑)。

日本一長い時間開いている観光案内所

鎌田:ありがとうございます。続けておうかがいしたいんですけれども、今渋谷の駅前が再開発工事において、商業施設だとかオフィスビルとか、すごくたくさん増えていると思うんですけれども。今後その商業施設が、ナイトタイムエコノミーとどう絡んでいくのかうかがってもよろしいですか。

長尾:はい。今回建てる「フクラス」もそうなんですが、観光支援施設も併設します。これは単純に観光案内所という意味に収まらず、そこで渋谷の一員になってもらうきっかけ作りをやりたい、という気持ちを込めてやろうと思っています。

まさに成田・羽田からリムジンバスが発着するバスの停留所の目の前にありますので、そこでまず一旦足を止めていただいて、渋谷を中心にいろいろなところで遊んでいただく案内をします。

それと共に、たまたま「フクラス」はオフィスも兼ね備えているものですから、東急不動産グループとしても起業していただくことも含めて、全体的に海外の方々とお付き合いしていけるきっかけ作りになるように。それがたぶん今後の展開にもつながってくると思うので、全部絡めていきたいなと思っているところです。

金山:23時までオープンしている観光案内所は、たぶん日本で一番長い時間開けている観光案内所になるんじゃないかなと思うんですけどね(笑)。

鎌田:やっぱり外国人の方が日本に来て、どこに行けばいいかよくわからない。Wi-Fiもつながる所が少なかったり。そういう中で「とりあえずここに行けば何か情報が入るから行ってみようか」というノリで行ける所があるのはすごくいいことですよね。

長尾:気軽に立ち寄っていただける印象作りをしようかなと思っています。

鎌田:間違いないです。

金山:本当にすごくおもしろい観光案内施設です。夜遅くまで開いているのもそうなんですけど、アルコールの提供もされるんじゃなかったですか。

長尾:ありがとうございます(笑)。

Zeebra:(情報)ありますね!(笑)。

金山:渋谷のことはけっこう詳しいです(笑)。

分煙文化が促す街との接続

Zeebra:僕もこの話は金山君からずっとちらちらと聞いてたんですけれども(笑)、これは一番楽しみにしてるところですね。

今おうかがいしててすごく思ったんですけれど、それこそ先ほどの風営法改正をやったことによって、東急不動産さんなどの大手の方々が、クラブなどにも触手を伸ばしてくれることになっているので、本当にすごくうれしいですし。

海外を考えると、今はどんどんそういったタイプのお店がメインになってきているというか。これってたぶん時代もあると思うんですけど、海外に関してはやはり「禁煙」から始まったかなと思うんですよ。

やっぱりアメリカのあたりですと、もちろんクラブはお店の中はみんな禁煙ですよ。でも、外に喫煙ができるところがある。デカンタみたいなところがあるんです。だから最近の海外のクラブは大抵、ちょっと外に出られる空間があるんですけど。

日本は禁煙文化が遅かったので、分煙文化もまだまだ。だからこれからかなという気もするんですが、どんどんこういうふうに開放感のあるクラブやお店が増えていくんじゃないかなと思いますね。

鎌田:確かに。最近やっと渋谷のクラブでも、気づいたら「吸っちゃダメ」というところが増えてきたなと思います。そうやってルーフトップなどに一回出ることによって、箱に閉じ込められるんじゃなくて、ちょっと街と接続する部分が見えてくると、夜も楽しいなと思ったりします。

Zeebra:そうですね。それこそ銀座などに行ったら、今はそういう空気じゃないですか。でも、せっかくだったら、渋谷もそんな空気があっていいですしね。

鎌田:確かに。

Zeebra:やっぱり人口的にはどうしたって我々の世代ぐらいのちょっとオッサンたちの人数がだいぶ多いので(笑)。そういう連中が遊びに行く場所も絶対、作らなきゃいけないじゃないですか。そういうことを想像すると、なんだかいいなと思いますけど。

鎌田:間違いないです。誰もが楽しめる街になっていくといいですね。

モントリオールの施策に学ぶ、宮下公園の活用法

鎌田:さて、先ほどの「街との接続」という話にもたぶん関わってくると思うんですけど、今回、NEWSKOOLは夜間遊休資産として、クラブやバーじゃないけど、もしここでやったらおもしろいよねというところで、一回「寺」に焦点を当てて「煩悩」をやらせていただきました。ほかにどんな夜間遊休資産、使ったらおもしろいと思います? 金山さん、どうでしょう。

金山:世界でもけっこう事例がありますけれども、例えば美術館や博物館はよくある例じゃないですか。それ以外にも、日本はやっぱり公園の使い方があんまりうまくないな、という感じはあるんですよね。

やっぱり公園の中にいくつか機能があって。宅地開発をするときに、住宅の中に必ず緑地を作らなければいけないからと作られる公園があります。住宅地が近いので、夜にギャーギャー騒いでいたら、それはまぁ迷惑な話なんですけれども。

都市部には、周りに住宅地が少なかったり、もしくは(住宅地が)ない場所にある公園もあるわけなんですね。例えば来年開園する渋谷の宮下公園は、周辺にはそんなに大きい住宅施設はないんです。通りを2本挟むとあるんですけれども。

僕はそこで夜にもっとうまい使い方ができないかなということを考えていて。なにも音を出す音楽イベントだけが夜の楽しみではない。例えば、今年モントリオールに出張してきたんですけれども、モントリオールは夜にいろんなところの壁がプロジェクションマッピングウォールになって、そこで歴史教育などをやっているんですよね。

そういったアイデアとテクノロジーの使い方で、公園や単なる広場などの使い方はもっともっと可能性があるんじゃないかなと思います。

鎌田:確かに。あれ、宮下公園っていつ……?

金山:来年6月に。

鎌田:来年6月。宮下公園とか本当に周りに住宅などがないですもんね。

金山:そうなんですよね。線路もあるので、普通の生活音以上の音は出ているわけですからね。

NY地下鉄のパフォーマーの姿を目にして

鎌田:宮下公園とか、いろいろやってみたいですよね。Zeebraさん、どうでしょう?

Zeebra:そうですね。去年「RED BULL MUSIC FESTIVAL」ってあったじゃないですか。それこそ山手線の電車を借り切ってライブをやるとか。ああいうふうに、例えば駅などでももっといろんなことができたらいいんじゃないかな、と思ったり。

これはまたハードルが少し高いとは思うんですけれども、僕がニューヨークなどに行って「うらやましいな」と思うのは、地下鉄の駅の中でパフォーマーがすごくいっぱいいるじゃないですか。ああいう状況は日本では作れないのかなと思ったりもしますね。

鎌田:確かに。たまにTwitterとかで流れてきますけども、ニューヨークのああいうものはすごくおもしろいですよね。

Zeebra:うん。本当にドラムを出して叩いている人もいれば、歌っている人もいるし、マジックをやっている人もいる。たぶんあれも一応、ちゃんと場所は決まっていると思うんですけれども、ちゃんと区画整理をしながら、オフィシャルにそういうことができるようになってもいいんじゃないかなと思ったりします。

鎌田:なるほど、ありがとうございます。長尾さんは東急さん、商業施設そのものだと思うんですけれども。商業施設の屋上などはどうですかね。

長尾:今まさにお話がありましたけれど、商業施設の屋上などは検討しなければいけないんだろうなとは感じます。ただやはり音の問題や地域の方々との話もございますし、セキュリティの問題はあるので。単純にすぐ「じゃあこう」とはいけないのが、今まさにやれていない部分だなとは思います。

ただ商業施設だけではなく不動産を扱っている会社としては、使っていないものとか、これから使うにあたって、まだ少し時間があるものを有効活用するという考え方は引き続き、課題として持っていこうということで、会社としてはかなり(力を入れていく予定です)。

鎌田:なるほど、ありがとうございます。ぜひそれを使うときはNEWSKOOLもお願いします(笑)。

(会場笑)

除夜の鐘や花火を「うるさい」と言う人はいない

鎌田:やっぱり、確かに騒音問題はけっこう大きくありまして。例えば「煩悩」などは今回で4回目なんですけれど、過去に1回めちゃめちゃクレームが入りました。2回目かな、すごく怒られたことがありました。住職さんに頭を下げて、周りの町内の方などにも全員、「急いで菓子折り買ってこい!」という感じで、菓子折りを持っていって、なんとか最後までやれたときがあったんです。

やっぱりそういう中で、地域住民との調整や周りの方にどれだけ理解いただけるかは、(遊休施設を)使っていく上で大事になっていくと思います。

金山:僕は必ずしもこういったスタイルの音楽のフェスだけではなくて、夜間の観光資源を作っていくための夜の施設の使い方もいいと思いますね。よく例に出すお話があるんですけれども、除夜の鐘に「うるさい」とクレームを言う人はほとんどいないですよね。花火の音はこのライブの音よりも大きいんですけれども、「花火の音がうるさい」とクレームを言う人もいないですよね。

ちゃんとした文化資源になっていく、そうしていけるものは、おそらくそういったクレームなどのネガティブな話にならない。どうやってその景色を作っていこうか、街づくりでいうとシビックプライド(都市に対する市民の誇りや当事者意識)になるんですけども、シビックプライドコンテンツにしていけるかという話になると思うんですよね。

また来月に「渋谷音楽祭」というのをやるんですけれども、過去には和太鼓の演奏などをやったんです。和太鼓はその地域の人たちが喜ぶんですよ。でも、そこにDJが立つと「それ大丈夫か」という話に(笑)。

Zeebra:(笑)。

金山:そうなっちゃうわけですよね。そういったところの合意形成をうまくやっていけると(いいなと思います)。

Zeebra:そうですね。

金山:ただ施設があるから有効活用しましょう、ということじゃなく、どういう思想と対話で、コンセンサスを作っていくかということで、やれることを増やしていくといいんじゃないかなとは思いますね。

鎌田:間違いない。

Zeebra:例えばそういった音楽とか、こういったイベントになると、若い人たちが入ってくるじゃないですか。そういうものがなくなったときにどうやって若い人たちを入れるかも考えたらいいのかなと思っています。

例えば「街がこういうことをしますよ」というときに、おとなしいイベントに関しては大人の人たちは入ってきやすいと思うんですけど、若い人たちが「これ、なんか感覚が新しいな」と思って行けるようなものでもあってほしいなと思います。別にうるさい必要もまったくないし。

異なるカルチャーのかけあわせで新しい観光資源が生まれる

金山:話が脱線しちゃうんですけど。みなさんたぶんご存知だと思うんですけど、来年のオリンピックの開会式の演出を野村萬斎さんがやられるじゃないですか。野村萬斎さんの肩書き、「クリエイティブディレクター」ですよ。びっくりしません? 伝統工芸士じゃなかったっけ、って話なんですけども(笑)。

(会場笑)

でも、ああいうことがたぶんすごく大事で。今までそうじゃないカルチャーの中で、しっかりと伝統や文化を守ってきた人たちが、違った立場で新しい資源をデザインしていったり作っていったり。このコラボレーションをNEWSKOOLでプロデュースできると。

鎌田:確かに。

金山:すごくおもしろいんじゃないかなと思いますけどね。

Zeebra:僕、そもそも『10億円会議』でおもしろいな、と思って立たせていただきましたので(笑)。渋谷区も本当に私みたいな者を観光大使にしてくれたりとかですね。

金山:(笑)。

Zeebra:とにかくすごく先進的な区だと思うんです。僕はやっぱり、若い人たちの意識や意見をどれだけうまく尊重できるか、どれだけうまく取り込んで一緒に街を作っていけるかがポイントかなと思ってます。

渋谷がアイデアによってアップデートされる街の象徴に

鎌田:なるほど、ありがとうございます。けっこう時間も押しているので、質問を飛ばしながらやっていこうと思います。若いといえば若いNEWSKOOLもこれからどんどん関わってくる中ではあるんですけれども、先ほど発表された「ホワイトナイトプロジェクト」にも、僕ら20代を中心に構成されたNEWSKOOLがどんどん混ざりながら、誰もが楽しめる夜を作り上げたいと思っています。

こういうナイトタイムエコノミーの活性化によって、渋谷の未来はどうなっていくと思われますか?

金山:例えば僕の場合は観光協会という観光事業の推進と、渋谷未来デザインで新しい街の使い方を考えるという、二足のわらじで仕事をさせてもらってるんですけれども。やっぱり今渋谷に抱いている期待に対して、提供できているものがもしかしたら足りていないかもしれないことが一つの課題かなと思ってます。

観光客もそうなんですけれども、これだけ多くの世界から注目される街の一つなので、「こんなことやりたい」「あんなことやりたい」というアイデアを持ってきてくれる人たちがいっぱいいるんですよね。でも、街の制度や仕組みがなかなか追いついていかないんですよね。

外のアイデアと、外で進化するテクノロジーに、仕組みが追いついていないのが現状で。これは仕方がないことだと思うんですけれども、街の仕組みを変えるスピードを上げていける、いいチャンスなんじゃないかなと思っています。

だから、なるべく多くのアイデアが寄せられて、「こんなことになっちゃってるよ!」という現状を見せて、国や東京都や渋谷区、法律や条例などの行政の仕組みがしっかりとアップデートされていくような、時代を推進し象徴する街になっていけたらいいなと思っていますね。

鎌田:なるほど、ありがとうございます。そうやって混ざりあっていくことが楽しくなりますよね。ちなみに最後にちょっと、Zeebraさんに個人的に。やっぱり『10億円会議』のときに、すごくサポートやアシストをしていただいたなと思いながら(笑)。

Zeebra:いえいえ。

鎌田:ほかの審査員の方々もいらっしゃる中で(笑)。

Zeebra:今日ここで呼ばれて出てくると、なんだか癒着みたいに思われたらやだな、と思ってたんですけど(笑)。

(会場笑)

鎌田:そんな中で、やっぱり渋谷という街と関わりながら、僕らはすごいアイデアを出していって、そこに渋谷区さんがどうやって都市設計を変えていくかというところでマッチしていくのが理想だと思うんですけど。

日本人はパーティーがそんなに得意ではない

鎌田:これからNEWSKOOLや「煩悩」がナイトカルチャーをどんどん引っ張っていく中で、何がキーポイントになっていくと思われますか?

Zeebra:なんて言うのかな……例えば海外の事例みたいなところで、今度のWhite Night Weekもそうなんだけれども、たぶん日本は欧米に比べるとまだまだパーティーがそんなに得意じゃないんですよ。欧米の人たちはパーティーをするのに慣れているから、例えばそれこそ……先ほどどなたか、イスラエルのテルアビブに行ったという話をされていましたね。

(会場挙手)

あっ、ですよね。僕も去年White Nightのときに行ってきたんですけど、普通に市役所の前でレイブパーティーをしているんですよ。もうガンッガン音が出ていて(笑)。それで、朝までそんな感じで遊んでると。なんだったら子どもも夜に出かけていいらしいんですね。それが当たり前になっていて、本当に安全ですし、まったく犯罪もないということなので。

ただ単に、ああいうふうにやっていけば変わるんじゃない? と思うんですよ。でも、そのために大切なのは、やっぱり地域の住民のみなさんの平穏をちゃんと担保することだったり。一緒にみんなで作っていく。だから先ほどもお話をしていたと思うんですけれど、渋谷と街はそういうふうに、みんなで作る。住民の方々のものでもあるんですけれど、我々のようにそこに行く人間のものでもあるというか。

自分のものって大切にするじゃないですか。だから、自分のものだと思って遊びに来てくれる人がいっぱい生まれたらいいなと思いますよね。

イベントの肝は「八方よし」の考え方

鎌田:確かに、間違いないです。僕にイベントを教えていただいた師匠が、実はここにいらっしゃるアフロマンスさんなんですけど、アフロマンスさんと話していて思ったのが、「八方よし」ということをすごく大事にしていて。

例えばお客さんがめっちゃ遊んでくれることもうれしい。次にスポンサーがいらっしゃる。それ以外に土地を貸してくださる方がいて、町内会の方がいて、クラブの先輩たちがいて、アーティストさんがいて、僕たちもいる。

その全員に対してどれだけいいものを作って、みなさんが楽しめるものを作っていけるかというところに、僕たちNEWSKOOLは若い方々と(取り組んで)行きたいと思いますし。かつ斬新で、今まで見たことがない体験を作っていけると楽しくなると思っております。

司会者:では、大変盛り上がっている最中ではございますが、トークセッション終了のお時間となりました。貴重な話ばかりで、私も非常にワクワクいたしました。以上でトークセッションを終えたいと思います。

鎌田:みなさん、本当にありがとうございました。

(会場拍手)