夜になると熱が高くなる理由

オリビア・ゴードン氏:体調不良はいやなものですよね。ところで、体調不良は夜になるともっと悪くなることにお気づきでしょうか。日中、ちょっと体が温かいな、気分が悪いなと感じる程度でやり過ごしても、日が暮れると、発熱街道をまっしぐらです。これは、気のせいではありません。熱は夜に上昇します。というのも、体は自然に、夜に体温を上昇させるようにできているからです。

体温は、脳の基底部の小さな部位である、視床下部が司っています。視床下部は、内部を通る血管の温度や、表皮から体温を検知します。このような情報や、体内で分泌される微量の物質から、適温である37℃以下を保っているのです。

ところで健康体であっても、1日中同じ体温がキープされているわけではありません。体内のリズム、つまり「概日リズム」により、上下0.5℃ほどの幅で、微調整が行われています。このリズムは、視床下部のごく小さな一部分である視交叉上核、略称SCN が、脳の他の部位や、網膜神経を通して送られてくる光や闇などの信号を受信することで統率されています。

通常はこのリズムにより体温は明け方の4時くらいには最も低くなり、夕方6時に、通常の範囲内で最も高くなります。そして、このサイクルは、体調が悪い場合でも変わりません。発熱時に熱が上がるのは当然のことですが、夕方にかけての体温上昇の仕組みにも、忠実に従うのです。

体調を把握したいなら18時~20時に体温測定を

それだけではありません。概日リズムは免疫システムにも影響を与えます。熱は、発熱物質と呼ばれる物質の刺激により発生します。発熱物質は、さまざまな出所があります。白血球は、侵入者を検知すると、発熱物質を血中に放出します。細菌に感染した組織が直接放出することもありますし、発熱物質そのものが放出する場合もあります。

出所が異なっても、機能は同じです。こうした発熱物質は、視床下部に体温の上昇を命じるのです。すると免疫システムも夜間の体温上昇と同様に、動きを見せます。例えば白血球濃度は夜間に上昇しますが、ある研究によれば、ある種の発熱物質も、夜間に同時に急上昇することがわかりました。

ところで、夜間の体温上昇パターンには、例外もあります。例えば、細菌性肺炎や腸チフスであれば、通常であれば1日で体温は上下せず、日中や夜間を問わずにずっと高熱が続きます。マラリアの一種は、1日サイクルではなく2~3日サイクルで急な高熱を発症します。

ですから、だるさが続く場合は、ある程度の期間の体温を測っておけば、診断がつくかもしれません。また、体調をしっかり把握したい場合は、毎日同じ時間での体温測定をした方がよいでしょう。その場合は、体温が一番高くなる、夜6時から8時の間がお勧めです。

もちろん、私は医師ではありませんので、1日のうちどの時間でも、発熱が気になる場合には、ぜひ専門の医療機関を受診してくださいね。