暑い日で涼むために、温かい飲み物を飲む?

マイケル・アランダ氏:夏で気温が上昇すると、みんなこぞってビーチや山へ涼みに行きます。しかし、世界でも乾燥した地域では、暑くて乾燥した日にはみな熱い飲み物を飲んで涼みます。そんな習慣について聞いたことがない人にとっては、そのような方法で涼むのはあまり道理にかなっていないように思われるかもしれません。寒い雪の日に暖かいホットココアを飲んで温まると言うのなら分かりますが、温かい飲み物で涼むとは一体どういうことでしょう?

実は、この古くからの伝統には根拠があるのです。ただしコンディションが揃っていなければ効果はありません。2012年に発表された研究では、被験者たちはエアロバイクで運動をし、その後非常に冷えた状態の水から摂氏50度ほどの水まで、さまざまな温度の水を飲みました。そして、75分後に研究者たちは被験者の体内にどれほどの熱がこもっているかを計りました。

すると、温かい水を飲んだ時が一番体内の熱が低かったのです。しかし、ここで鍵となるのはその時の状態で、研究者たちは被験者たちの皮膚から汗が完全に蒸発できるようなコンディションを作っておいたのです。その環境は湿度が低く、扇風機が回っていて、被験者たちは多くの衣服をまとっていませんでした。

このような環境下では汗が熱を散らすので、汗を蒸発させることで体内の温度はほとんど下げることができるのです。水分が蒸発する時、その状態は液状からガス状に変わります。この変化の段階にはエネルギーが必要となります。詳しくいうと、その変化のために周囲から熱エネルギーを吸収して用います。汗の場合はその周囲となると皮膚の熱エネルギーを用います。

熱い飲料は体に汗をかくように促します。内臓にある熱のセンサーを活性化させます。このセンサーは、体がもっと汗をかくように指令を出すよう、脳へメッセージを送ります。それで、温かい飲み物は内臓を温めてしまうのですが、内臓がさらに温まることにより、汗の蒸発を増やしてくれることにつながるのです。

湿度の高い場所にいる時や、脱水状態の時は逆効果

2018年に発表された論文では、いくつかの研究結果が含まれていて、研究者たちは冷たい飲み物には反対の作用があると提唱しました。冷たい飲み物は汗を抑えるので、体温を上げてしまうというのです。しかし、だからと言って温かい飲み物に手を出す前に、覚えておいてください。体温の冷却効果は、汗が完全に蒸発しないと生じないのです。

ですから、もしあなたが湿度100パーセントの場所にいるなら、温かい飲み物を飲んでも暑くなるだけです。それで、フロリダのような場所ではこの方法が有名でないのです。それに、もし水分が蒸発しやすい環境下にいたとしても、温かい飲み物を飲むときには気をつけなければなりません。

もし脱水状態にあるなら、温かい飲み物でかいた汗による水分の損失を補うことができません。それに特に風の吹いていない状態では、汗をかく方が蒸発する速度を上回ってしまいます。もしすでにびしょびしょに汗をかいている状態だったら、もっと汗をかいたところで涼しくはなりません。

それに、どんな服をどれくらい着ているかも関係があります。洋服から汗が蒸発しているより、皮膚から直接蒸発している方が熱が下がります。ですから、もしアメフトの選手や消防士のようにたくさんの洋服を身につけている場合、温かい飲み物は飲まない方が良いでしょう。

そのような場合には、体から熱エネルギーを吸収してくれるので、冷たい飲み物を選んだ方が良いでしょう。それに心理的な要素も関係してきます。ほとんどの人は、冷たい飲み物の方がリフレッシュしてくれると感じるのです。結局、専門家は自分が美味しいと感じる温度の飲み物を準備した方が良いと言っています。暑い場所や運動中の場合は、かいた汗を補うのに十分な水分量を摂取するほうが大切なのです。飲みやすければ、たくさん飲めるというわけです。そうすることで、熱中症などから身を守ることができるのです。