2024.11.26
セキュリティ担当者への「現状把握」と「積極的諦め」のススメ “サイバーリスク=経営リスク”の時代の処方箋
サブスクリプションは実際どう機能するか(全1記事)
リンクをコピー
記事をブックマーク
司会者:では、続きまして、PIANO SOFTWAREのバイスプレジデント Steven Spiecznyさんより「サブスクリプションは実際どう機能するか」というテーマでお話しいただきます。よろしくお願いします。
Steven Spieczny氏:本日は我々の顧客の例をもとに、サブスクリプションと我々のサービスがどのように機能するかについてお話しします。
我々は何百ものWebサイトを顧客に持ち、何十億もののユーザーインタラクションがあります。これから紹介するデータはそれらに基づいたものです。
このデータは初回訪問から継続までの道のりを紹介しています。一番左上にあるのが全ユーザーですね。最初に訪問する100パーセントのユーザーが、そこからどのようにして継続につながるかを紹介していきます。
すべてのユーザーのうち、68パーセントがすぐに離脱してしまいます。20パーセントは、もしかしたら2回目も来るかもしれないです。最後の12パーセントが最も重要な数字になってきます。何度も何度も戻ってきて、最終的には購読してくれるユーザーです。
どうしてこの12パーセントが重要なのでしょうか? 実はこの12パーセントのユーザーが、ページビューにおいては55パーセントを構成しています。なぜみなさまにとって、このデータが重要かというと、先ほどの12パーセント……ここでいう55パーセントのユーザーは最終的な購読につながるユーザーだからです。
では「最初にどうすればいいのか?」についてですが、まずウェブサイトのホームページ(トップページ)はとても重要です。FacebookやGoogleなど(のトップページ)に行くと「リンクはこちら」と書かれたところがあります。
今まではGoogleなどのサイトから誘導されるのは記事のページそのものだったんですけれども、最近はアルゴリズムが変わりまして、ホームページが重要だというところにまた戻ってきました。ホームページに複数回来た顧客は、1回もホームページに来たことのないユーザーよりも高いコンバージョン率が見られます。
ユーザーには、最終的に購読を促す前に、何度もエンゲージメントをする必要があります。
良い事例としまして、一つには広告ブロッキングへの対策が非常に有効的です。
記事を見る前に「まずは動画コンテンツを見てください」というように、広告を見ることを促すことです。最終的に動画を最後まで見ることまではしなくても、例えば会員登録をすることを促すことにより、最終的な購読率がふだんの10倍になることを期待できます。
Alexが先ほどニュースレターについてお話ししましたが、最終的な購読を促す前に、最初の段階で無料会員登録やニュースレター購読を促すことはとてもよいシステムです。
まず1回目の訪問をしました。そして2回目、再訪問しました。次の3回目の訪問で登録を促します。ここまで来ますと、その次のステップや、いろんなオファーとかプランを徐々に提供し始めます。
これがいろいろなオファーですね。例えばこの3つのプランがありますが、2年契約で1週間1.72ドルのもの。そして年間契約で、1週間1.9ドル。あとは月額ですね。こういった3つのプランを提供している事例です。
とても興味深いんですけれども、こちらはそれぞれのプロモーションについて話しています。ここで重要なことは、みなさまがオンラインECサイトのような考え方を持つことです。ユニクロやH&Mのようなオンラインプロモーションを例に例えて、自身のメディアでも同じように考え方をする必要があります。
購読プランを考えたあと、プロモーションもあわせて考える必要があります。プロモーションを取り入れることによって1ヶ月間の収益が64パーセントも向上しており、さらに2ヶ月目の収益も8パーセント向上しています。
我々はこれを「トライアル」と読んでいます。ここで言っているトライアルは、例えば「30日間無料でコンテンツを提供します」、または「60日間半額でコンテンツを提供します」というようなものです。
しかし、私たちはここで気づきました。無料トライアルは実際そこまで効果的ではないのです。なぜかというと、ユーザーが「あっ、無料だ」と聞くと、そこに価値を感じなくなってしまうからです。なので、トライアルを提供するにしても、ちょっと料金を安くしたりと、少ない額であっても料金を求めることによって、今後の継続率が上がります。
ここで見せているのは継続率です。
3つの数字がありまして、一番右から、81パーセントは無料トライアルを提供した場合の継続率ですね。真ん中がちょっと減額した額で提供をした場合の継続率で、89パーセント。最後に一番左、一番大きな数字なんですけれども。こちらは「今すぐ支払わなきゃいけない」というプランを出した場合の継続率で、これが一番高くなっています。
このページから抜け出す方法はトライアルをクリックする以外にないんですね。これを鍵付きコンテンツと呼んでいて、このコンテンツは「ハードペイウォール」と呼ばれています。もしかしたらちょっと理解できないかもしれないんですけれども、実はこれが最も効果的なんです。
みなさまはコンテンツ提供者として、何がプレミアムのサービスで、何を無料サービスで提供するべきかを考えることが重要です。
プレミアムコンテンツにおいては、鍵付きコンテンツを提供してもいいのです。なぜかというと、それを見ることによりユーザーが「このコンテンツには価値がある」と思ってくれるからです。
これはちょっと難しいかもしれません。「この先は読んではいけませんよ」と言ってしまうので、そこでユーザーエクスペリエンスは止まってしまうからです。しかし、たくさんのプレミアムコンテンツを持っておくことにより、ユーザーは自然と「これはとても価値のあるコンテンツなんだ。料金を支払ってもいいかな」と思うようになります。
ここではオファーを表示する頻度を示しています。だいたい、サブスクリプション(購読)にいくまでの平均的なオファーの表示回数は5.5回です。
左がコンバージョンの平均シェアであり、下がオファーの表示回数なんですけれども。ここからわかるように、5回を過ぎてしまうと一気に購読の可能性が減ってしまうんですね。
なので、ここで何回オファーを表示するかを考えることが重要です。1回では少なすぎるんですけれども、10回では多すぎる。だいたい3〜5回が最適な数字です。
初回訪問からユーザー登録、さらにオファー表示まで来ました。次は実際に購読するまでのステップを見せていきます。
ここでは年間契約が最も重要だということを示しています。実際に新規ユーザーを獲得しやすいのは月次サブスクリプションですけれども、結果的に継続してくれるユーザーは年間購読しているユーザーです。
年間購読のユーザーのライフタイムバリューは月間購読の3〜4倍です。長丁場で見ると、月間購読よりも年間購読のほうがユーザーの継続率が高いのです。
価格を提示する際は、プランが2つあることがとても効果的です。また、3つプランを提示することにより、右の表にあるように、コンバージョンや収益の増加が大幅に見られます。
ここに3つ見えますね。ここで「2年間」「年間」「月間」の3つのプランを提示しているんですけれども、みなさんはここで最も購読率が高いのはどのプランだと思いますか?
これは心理学になってしまうんですけれども、人間は3つのプランを提示された際に、一番安いものは「価値があまりないのかな」と思ってしまう。逆に一番高いものは「ちょっと自分には余裕がないかな」と捉えて、最終的に真ん中を選ぶパターンが多いです。
ここでも3つオファーを提供しています。2年間のオファーは、年間購読の金額を単に2倍しているだけで同じコンテンツ・同じ価格なんですけれども、ユーザーは心理的にどうしても「それはちょっと高すぎるな」と思ってしまって、真ん中を選ぶケースが多いです。
また、サブスクリプションモデルを始めてからも、そのまま継続して同じ額で進めるのではなく、何度も価格を変えて最適なプランを探していく必要があります。
この一番下の黒いラインが最もベーシックなプランを提供しているユーザーの表です。青いラインがとてもプレミアムなコンテンツの表です。
まずベーシックプランを見ていくんですけれども、最初は10ドルで始めてどんどん上がっていって、25ドルのところ……これを「価格の崖」と呼んでいるんですけれども、ここで一気に落ちてしまっています。なので、アメリカのメディアですと最適なベーシックプランはだいたい平均的に25ドルあたりの年間購読が最適かなと思います。
さらに、プレミアムコンテンツですと75ドルという高価格まで上げることができるんですけれども、その価格を超えた瞬間、一気に購読率が下がってしまいます。いつも我々が口を酸っぱく言っているのは、自分のメディアにとってどの価格が最適かを常にテストする必要があるということです。
ここに来るまでに、ユーザーに一度は「イエス」と言わせてきました。ここで終わりでしょうか? 違いますね。ここからが勝負です。購読してくれたユーザーには継続してもらうことがとても重要になってきます。
これはどうやって進めていけばよいのでしょうか? 通常、既存顧客を継続させることよりも、新規顧客を獲得するほうがコストはかかります。
ここで示しているのは企業側のエンゲージメントですね。ユーザーにどのようなコンテンツを提供していくかということです。1回購読してもらったけれども、メールも来ないですとか、何も歓迎されている感じがしないと、どんどん解約率が上がってしまいます。
メールでもニュースレターでもクーポンでも何でもいいので、ちょっとずつ提供していくことが重要になってきます。
ここでそのようなニュースレターとか、新たなコンテンツの提供、クーポンを月間で1〜5日しか提供をしなかったりすると、13パーセントも解約率が上がってしまいます。
ここまでがんばってユーザーを購読まで持っていっても、コンテンツを継続して提供しないことにより、どんどん解約率が上がってしまいます。なので、何でもいいので、継続的にコンテンツを提供していくことが重要になってきます。
コンテンツをすぐに提供できる人は「新しいコンテンツを提供すればいいや」と考えるんですけれども、ほかにも方法はあります。例としては、購読して最初の「ようこそ!」というEmailですとか、調査レポート、インタビューとかアンケートを提供するなど、どんなコンテンツでもいいのです。
この表は収益の増加を表しています。そしてこの小さい点は、企業側のさまざまなテストを表しています。UI/UXを変えることですとか、デザインのアップデート、さらに新たなコンテンツを提供することも含まれています。
例えば小売などのデジタルマーケティングですと、よくA/Bテストなどを行います。「試しにこの日にメールを送ってみる」ですとか、さまざまなプランを試してみるのがA/Bテストです。その小さな努力を積み重ねていくことにより、このように収益をどんどんと増加することができます。
一番の事例は『The New York Times 』です。なぜかというと、1つはジャーナリズムがとてもすばらしいことです。加えて、彼らは10年間もこのサブスクリプションのカーブを描いてきています。
このような『The New York Times 』や『The Economist』などのlong runnerがとてもうまくサブスクリプションビジネスをやってきているんですけれども、新しく入ってくるメディアも大丈夫です。最初からコツコツと小さなテストを積み重ねていくことが重要です。
最後のスライドです。このように何度もテストを行い、仮説を立てたり実際にデータ収集・分析を繰り返すことはとても重要です。小さく始めることがとても大事だし、効果的です。そこからどんどん試していって積み重ねていくことが重要です。
プレミアムコンテンツなどを提供する際には、ただ単に記事をどんどん出していくことを考えるだけでは足りません。もっともっと、どのようにしたら向上できるかということを常に考える必要があります。
ありがとうございました。
(会場拍手)
2024.11.21
40代〜50代の管理職が「部下を承認する」のに苦戦するわけ 職場での「傷つき」をこじらせた世代に必要なこと
2024.11.13
週3日働いて年収2,000万稼ぐ元印刷屋のおじさん 好きなことだけして楽に稼ぐ3つのパターン
2024.11.20
「元エースの管理職」が若手営業を育てる時に陥りがちな罠 順調なチーム・苦戦するチームの違いから見る、育成のポイント
2024.11.20
成果が目立つ「攻めのタイプ」ばかり採用しがちな職場 「優秀な人材」を求める人がスルーしているもの
2023.03.21
民間宇宙開発で高まる「飛行機とロケットの衝突」の危機...どうやって回避する?
2024.11.19
がんばっているのに伸び悩む営業・成果を出す営業の違い 『無敗営業』著者が教える、つい陥りがちな「思い込み」の罠
2024.11.18
20名の会社でGoogleの採用を真似するのはもったいない 人手不足の時代における「脱能力主義」のヒント
2024.11.21
初対面の相手から本音を引き出す「核心質問」のやり方 営業のプロが教える、商談成功のカギを握る質問力アップのコツ
2024.11.13
“退職者が出た時の会社の対応”を従業員は見ている 離職防止策の前に見つめ直したい、部下との向き合い方
2024.11.22
40歳以降の「つみたてNISA」と「iDeCo」運用の優先順位 老後のための資産形成のポイント