クリエイターが正当に評価される仕組みをどう作るか?

河上純二氏(以下、河上):正直言えば、13年でここまで来てるって、けっこう長い月日をかけて来ているじゃない? 呉さんの人柄が出ちゃうことも多々あったし、もう少しほら、器用な人だったりとか、いろんな人のやり方だったら、もうちょっと短かったかもしれないけれども。

呉京樹氏(以下、呉):それはね、そうですよね。

河上:あるよね。たぶん周りにいるスタッフの人たち、「おいおいおい、いつなんだよ」とかって。

(一同笑)

おもしろい話があるけどさ。この1~2年くらい、まず近距離の未来の話に少し移していくけれど、この1~2年くらいのところで、まあ言える範囲でいいんだけど。「こんなことを考えてる」とか、「こういうことをやる話があるよ」というものがあれば、ちょっと聞きたいんだけど。

:そうですね。やりたいことは、さっき話した、クリエイターが正当に評価される仕組みを作りたいなと思っていて。そこにけっこうベクトルを一気に向けているというのが今のところですね。「じゃあどうやって作るんだ」という話になるんですけど、僕はそこにすごくデジタルの可能性があると思っていて。

デジタルっていわゆる人が作ったものが世の中に出た時に、そのクリエイティブやデザインがどれだけ世の中に影響を与えたかというデータが取れるようになってきたじゃないですか。昔はそういうものがなくて、例えば交通広告が出ても、どれだけの人が目にしたかというデータもないし。例えばテレビCMでは、そのテレビCMを見た人がどれだけ購入したかというデータも取れないとか。

ただ、やっぱり時代が変わってプラットフォームが変わって、デジタル業界になったら、そのデザインは何回クリックされたかとか、そのデザインからどれだけの人が商品を買ったかというデータが取れるようになれば。そして、クリエイターさんたちとそのデータをちゃんと結び付けることが現実的にできれば。

そうしたら僕の言っている、いわゆる一般的に「誰が見てもこの人はすごいんだ」という定量的なデータが手に入ると、世の中のクリエイターさんたちがみんな正当に評価を受ける世界ができるんじゃないかなということを、今すごく模索しながら。

逆にどちらかと言うと、そういったデータを持っている会社さんと一緒にコラボして、そういう世界観をつくるところに注力していっているところですね。

クリエイターとクライアントをつなぐ「CREATORS MATCH AWARD」

河上:なるほど。モチベーションにもなるしね、そうやってどれくらいの影響力、どれくらい見られたのかということをフィードバックしてあげるのはすごく大事だよね。

:そうですね。なので、小さいかもしれないですけれど、毎年「CREATORS MATCH AWARD」というものを5年連続で開催して。

河上:ちなみに、それはどこでやってるの? 俺たちも見に行けるの?

:一応招待制になってるんですよ。

河上:そういう業界の人たちに見てもらうのね。

:業界の人たちというよりはどっちかと言うと、別に一般的なオーディエンスに見てもらいたいというよりは、結局僕らは地方のデザイナーさんたちがほとんどなんですね。だから、普段はいわゆるお客さんとほぼほぼ会わない。なので、1年に1回お客さんと出会える場を設けるという、コミュニティに近い発想でアワードを開いてるんですよね。

河上:懇親会というか、みんなで話し合うような。

:なので、基本的に招待するのは我々のクライアントと我々のパートナー。お客さんも自分たちの(商品やサービスの)デザインをしている人たちが表彰されると、やっぱり喜んでもらえるし。今までずっと遠隔で話をしていた人が直接会って、あのデザインはすごく良かったですよね、というのがお客さんからクリエイターに届くという。どちらかというと、オーディエンスに対して届けるというよりは、お客さんとデザイナーさんが年に1回会う場所になっています。

河上:より距離を縮めて。

:より距離を縮めて、ディスカッションをして、来年ももっとよくするためにはどうするかという場にしたいなというのと、あとはスポットライトを当てたいという思いでスタートした。

クライアントとリアルで会うことの重要性

河上:業種的にはベンチャーと近いんじゃない?

及川真一朗氏(以下、及川):まあまあ、まさかその角度で振られるとは。

河上:急に行くよ、ダブルロックがぐいぐい進んでるから。

:(笑)。

及川:ジャックダニエルがなくなりそうだから。

河上:急に行くよ。

及川:でも、確かに会う場ってなかなか大事なんですよね。やっぱりみんな遠隔でそれぞれやっていたりするので。そこで情報交換しながらというのはね。(急に振られると思っていなかったから)気を抜いてた。

河上:(笑)。でもね、俺もたまにミートアップにゲストとして呼んでもらって行くんだけれど、一生懸命しゃべるわけさ。「リアルで会うことが大事です」と。そのベンチャーサイドとお金を出す側だったり、オープンイノベーション的な大きな企業にいらっしゃる方とやっぱり会うべきです、という話を一緒にするんです。気持ち的にはそう遠くないことだなと思うんだけどね。

地元のいいところを一番知っているのは地元の人たち

河上:時間がだいぶ来たから、ちょっと後半戦に入っちゃうけどね。呉さんはこういう人なので、もちろん今のクリエイターズマッチもこれからだし、これからももちろん全力を尽くしていくんだけれど、少しプライベートも含めて、呉さんの未来みたいなものを聞いてみたいんだけれど。飲んでいてもあんまり聞いたことないから。例えば10年後とか、15年後くらいの時に、どんな風でありたい?

:プライベートですか?

河上:全部含めて。

:(笑)。

河上:もちろん、いろいろあるから、コントロールしながら、酔っ払ってるけど、コントロールしながらしゃべってもらいたい。10年後のありたき姿みたいなものをちょっと聞いてみたい。抽象的でももちろんいいし、具体的でももちろんいいけど。

:そうですね。まず、日本国内においては、今もやっていますけど、僕はやっぱり地産地消を実現したいなというのはすごくありますね。

河上:もうちょっと掘り下げて聞くけど、呉さんの「地産地消」ってどういうもの?

:いや例えば、僕は教育事業で47都道府県回ってるんですよね。全国を回ったんですけれども、現実的な問題で、地方の観光ビジネスとか、いろんなものあるじゃないですか。僕らは今年、宮崎県の観光事業を手伝わせてもらってるんですけど、地方のいいところって地元の人が一番知ってるんですよね。

河上:そりゃそうだよね。

地方の情報発信力を上げることが本当の地方創生につながる

:そうなんですよね。ただこれはおもしろくて、地元の人たちがいいと思っていることが、みんながいいと思っていないんじゃないかというのも。要は、地元の人にとっては生まれたときから当たり前のことであって、それがすごいとも思っていないんですよ。

河上:当たり前だからね。

:だから、地方の情報発信力ってそこに問題があると思っていて。要はもう生まれたときからある環境のことって、意外に発信しないじゃないですか。だって、当たり前なので。それが例えば東京に出た瞬間に、「あっ、俺らの地元ってけっこうすごかったんだ」みたいなね。でも、これに気付いてほしいと思ってるんですね。

去年の「CREATORS MATCH AWARD」の「Rethink Creator Project」アワードで、準優勝、準グランプリに輝いた人というのは、北海道の方で、その人は北海道のいいところをプロモーションするポスターを作ったんですね。彼女は今、東京にいるんですよ。東京に来て気付いた北海道の良さみたいなものをテーマに、ポスターを作ったんですよね。こういうことって、いっぱいあると思うんですよ。

河上:あるね。

:でも、今はほとんどが世の中の、例えば広告クリエイティブって東京に一極集中していて。地方のパンフレットも、だいたい作るのは東京みたいな感じで集中している。僕はやっぱり、地元のクリエイターたちが自分たちのすごさをちゃんと理解して、自分たちが発信する、と(いうふうになってほしくて)。

なぜかって、情報のソース元で言ったら、(地方が)一番ソースが多いわけですよ。あとは、そのソースがすごいのかどうかというだけの勘なので、それをちゃんとインプットしていけば、僕はたぶん地方創生って実現するんじゃないかなと思ってるんです。だから、地方創生って誰かが手伝ってできるものじゃないんですよ。東京の人たちがよく「地方創生だ」って言って、俺らが地方創生してあげるというのがあるんですけど。

河上:もう、あげるの時点でね。

:そう、だから地方創生なんてしてあげるものじゃなくて、地方の人たち自身が自分たちで気付いて情報発信しない限り、実現できないんですよね。僕らはどちらかと言うと、地方創生を実現すると言っていますけれども、僕らがやるんじゃなくて、それをちゃんと教育や学びを通して、みんなが情報発信できる世界を作りたい。

それが僕の中で10年か20年か、何年かかるかわからないですけれども、やりたい世界というのが一つ、いわゆる仕事として実現したい社会。

河上:なるほど。なるほどね。